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ニュース・フラッシュ

2011年10月10日 サンティアゴ 神谷夏実

チリ:Hydro Aysenプロジェクト、建設差し止め訴訟を却下

 チリ南部Puerto Montの上訴裁判所は、チリ南部第XI州(Aysen)で計画されているHydro Aysen水力発電ダム建設プロジェクトにおいて、「環境評価委員会は適切に評価を行い、違法性もない」として、建設承認の撤回に関する訴訟を却下する判断を示した。Hydro Aysen水力発電プロジェクトは、発電能力2,750 MW、総建設費70億US$で計画されている大規模ダム建設で、Baker川、Pasqua川に計5か所のダムを建設し、1,900 km離れた首都圏を含むチリ中央部地域への電力供給を目的としている。同発電所の発電能力は2010年のチリ全土の発電能力(15,558 MW)の約18%に相当する大規模プロジェクトである。
 Hydro Aysenプロジェクトの建設許可申請に対し、地元の環境評価委員会が2011年5月に建設を許可する判断を行ったが、これに対し、首都サンティアゴを含む大規模な建設反対運動が展開し、環境保護団体が建設許可取り消しを求めて訴えていた。環境保護団体は今回の判断を不服とし、今後最高裁判所に訴えを起こすと発表している。
 チリの電力供給事情は2011年9月末の大停電の発生もあり、供給体制の脆弱性が指摘されている。2008年以降のアルゼンチンからの天然ガス供給途絶後、その代替として、石炭、石油火力発電所からの電力供給に対する依存度が高まっているため、再生可能な国内エネルギー源としての水力発電に対する期待が高い。また、供給の安定を図る上でも、チリ南部での水力発電と送電網の整備が重要な課題としてクローズアップされている。チリ南部の水力発電所建設の重要性は、現在単線の送電網を新規の水力発電所の建設とともに複線化、ネットワーク化し安定供給につなげる必要がある。Hydro Aysen計画では、2,000 kmに及ぶ送電線建設計画も検討されており、現在環境影響評価が審査中である。また、同じ第XI州では、Energia Austral社(Xstrata Copperの子会社)も水力発電所建設計画(Cuervo, Blanco and Cóndorの3プロジェクトと送電線建設で構成、発電能力1,100 MW、建設費30億US$)もあり、今後これらのプロジェクトを組み込んだグリッド構築が課題となっている。
 チリの電力コストの高さ、供給安定性は鉱業投資においてもリスク要因となっており、電力の安定供給はチリの鉱業競争力を維持するためにも求められている。チリ政府は、水力発電開発計画と環境保護、安定した電力供給ネットワーク構築の課題への早急な取り組みに迫られている。

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