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ニュース・フラッシュ

2014年9月15日 北京 森永正裕

中国:レアアース輸出規制に関するWTO敗訴を受けた中国国内の論調

 中国のレアアース輸出規制に関し、一審に引き続き「違反」であるとする上級委員会(最終審)の報告書が、8月29日、WTO紛争解決機関会合において正式に採択された。これを受け、中国国内のメディアが専門家の意見を紹介している。

 2014年9月12日付メディアでは、以下の専門家および関係者の意見・見解を掲載している。

(1) 中国WTO研究院/対外経済貿易大学 陳衛東教授:
敗訴を受け、中国は何らかの代償を払う必要が生じた。選択肢は3つ。①期限内にWTO裁定である関税と輸出規制を撤廃または見直しを行う。②関税と輸出規制を維持する代わり別の市場開放を行うべく米・EU・日と交渉を行う。③関税と輸出規制を維持し米・EU・日の報復措置(制裁課税等)を受ける。中国政府は、国内の資源税の導入など、全体的な産業政策から見た判断を、利害を秤に架けながら選択しなければならない。最も重要なのは、国内企業がレアアース等資源を十分に確保できることである。

(2) 中国政法大学国際法学院 孔慶江教授:
法律的には、WTO裁定に従い期限内にWTOルールに合致する体制を構築しなければならない。業界管理としては、①レアアース開発権の市場化改革を強化する。②環境管理監督を強化し環境保護コストを高める。これらの措置により、供給面での調整を図るべきである。

(3) 商務部条例法律司 李成鋼司長:
中国政府はWTO裁定を真摯に評価し、WTOルールに適合する方法により、資源管理・資源保護を実現し、公正な競争を維持し、持続可能な発展を実現しなければならない。WTOの紛争解決手順規則に従い、適切な事後処理をおこなう。WTO裁定では、加盟国による自由貿易の確保、自然資源管理の尊重が謳われており、紛争関係者との協議により事後処理を進めていく。

(4) 内モンゴル科学技術大学鉱業学院 李継林副院長:
敗訴を受け、国家のレアアース産業政策は見直しを迫られるだろう。関税撤廃と輸出規制の廃止はやむを得ない措置であろう。輸出規制は、資源保護や生態系保護、資源の利用率向上と効率的生産経営を実現し、無秩序な生産と低価格化を防止していた。輸出規制と関税撤廃により、今後、低価格化、違法生産、平等で秩序ある輸出をどのように確保するのか、が重要な課題である。近年、政府はレアアース産業の大規模集団企業化を進めている。この実現により、業界内の協調・自主規制・秩序ある運営が図られ、WTO敗訴によるリスクを回避でき、さらには対外貿易や海外進出でも利点を生かすことができるだろう。

(5) 工業信息化部希土弁公室 賈銀松主任:
国家によるレアアース6大企業集団化が加速するだろう。特に採掘・精錬分離・総合利用の三段階に応じた業界の統合再編を進める必要がある。工業信息化部による認可ならびに政策的支援が一層重要になる。

(6) 中国工程院副院長 兼 中国レアアース協会会長 乾勇氏:
輸出規制や関税撤廃により、業界管理が一層困難になるが、政府関連部門は産業の現状と市場規律およびWTOルールに適合する産業政策を進めなければならない。特に、科学研究機構は積極的にレアアース実用分野での研究開発、技術革新を進め、中国のレアアース製品の国際競争力を高めていくべきだ。

 また、同じく9月12日付他メディアの論説記事では、今回の敗訴により、違法採掘や密輸、闇取引の増加による市場攪乱と価格下落に対する懸念が業界内部で広まっており、政府の取締り強化と、政府主導で統合再編が進む6大企業集団が団結して市場の秩序維持に取り組まなければならない、としている。

 また、「工業のビタミン」と称されるレアアースの国際的な重要性に言及し、中国は世界最大の埋蔵量を誇るも総合的な研究開発水準は先進諸国から遅れているため、研究機関や大学が協力して、応用技術や高度加工などの開発を推進し、付加価値の高い製品を生産することで、バランスのとれた産業発展を目指すべきだ、としている。

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