![]() |
|
|
![]() ![]() |
![]() |
リチウムの資源と需給
-Lithium Supply & Markets Conference 2009(LSM’09)参加報告- <サンティアゴ事務所 大野克久 報告>
|
![]() |
![]() |
1. リチウム資源量について リチウム資源は、塩湖かん水及び鉱石の2種類に大別され、両者を合わせた資源量は金属リチウム換算で約2,916万tと試算され、その比率は2:1である。 また、塩湖かん水全体の資源量1,866万tのうち、チリ、ボリビア及びアルゼンチンの3か国で80%を占め、鉱石資源量1,050万tのうち、米国が47%を占めている。 ![]() 図1.世界:リチウム資源量の内訳
2. 世界のリチウム生産量 2008年のリチウム生産は、塩湖かん水及び鉱石合わせて約12万t(炭酸リチウム換算)であり、その生産比率は、60:40である(SQM試算)。 塩湖かん水からのリチウム生産は、SQM(本社:チリSantiago)、Chemetall(本社:独Frankfurt)、FMC(本社:米NC(ノースカロライナ)州・Charlotte)といった各企業及び中国で行われており、その比率は各々29%、28%、16%、27%とされている(2007年FMC試算)。 鉱石生産では、Talison Minerals(本社:豪Perth)がPerth南東250kmのGreenbushesに所有する世界最大のタンタル・リチウム鉱床(リチウム生産対象はSupodumen(リチア輝石:LI20・Al2O3・2SiO4)、資源量35.5百万t、Li20 3.31%)から世界生産の約70%を採掘しており、そのリチウム精鉱の2/3(グロス量で約10万t)は中国へ輸出され、新疆ウイグル自治区、四川省及び江西省で炭酸リチウムが生産されている。 3. 主要なリチウム生産企業 塩湖かん水からのリチウムを生産している企業概要は以下のとおり。 (1)SQM(本社:チリSantiago) SQMは、チリ第Ⅱ州Atacama塩湖のかん水を利用して世界シェア49%を占めるカリ肥料(KCl,K2SO4)を生産しており、炭酸リチウムは肥料生産の副産物との位置付けである。 同社がAtacama塩湖に保有する鉱区のリチウム埋蔵量は、炭酸リチウム換算で4,000万tと試算されている。また、現在の生産能力は炭酸リチウム換算で40,000t/年であるが、2010年には60,000t/年に拡張予定である。 (2)Chemetall(本社:独Frankfurt) Chemetallは、1923年のMetallgesellschaftによるリチウム生産に端を発し、その後買収等を経て、現在はRockwoodグループ(本部:米NJ(ニュージャージー)州)傘下となっている。 リチウム部門では、炭酸リチウム、水酸化リチウム、金属リチウム等を生産しており、リチウム化合物全体では世界の50%以上のシェア、炭酸リチウムでは約30%の世界シェアを有している。 主要生産拠点は、Atacama塩湖及び米NV(ネバダ)州Silverpeak(Las Vegas北方350km)であり、Atacama塩湖のかん水からは炭酸リチウム及び水酸化リチウムを生産している。 2008年の生産規模は炭酸リチウム27,000t、水酸化リチウム4,000tであり、2020年には各々50,000t、15,000tに生産規模拡大を予定している。 (3)FMC(本社:米NC(ノースカロライナ)州・Charlotte) FMCは、肥料、農薬等の化成品メーカーで、ソーダ灰生産では世界最大である。 同社のリチウム事業参入は、1986年のLithCo買収に端を発し、当初はリチア輝石からリチウムを製造していたが、1997年からアルゼンチン北部(チリ国境沿い)のHomble Muerto塩湖のかん水からリチウムを生産しており、現在の生産規模は、炭酸リチウム換算で17,000t/年である(操業は100%子会社であるMinera del Altiplanoが実施)。 4. リチウム需要及び用途 世界のリチウム需要は化合物全体で、2004~2008年間の年平均伸び率は5~7%であるのに対し、二次電池用リチウム需要は20~22%と著しい伸びを示している。2008年のリチウム化合物全体の需要は115~118千t(炭酸リチウム換算)であるが、2007年比伸び率は1~2%と低率である。これは世界的な景気低迷の影響によるもの見られる(SQM)。 また、2007年の地域別需要については、日本、中国等アジアが世界のリチウム需要の53%を占め、最大の市場となっている(FMC)。 ![]() 図4.リチウムの需要(用途別、2008年) ![]() 図5.リチウム需要(製品別、2008年)
![]() 図6.リチウム需要(地域別、2007年) 5. 今後の需要予測 SQMでは、2009~2018年の10年間でリチウム化成品需要は、ハイブリッド/電気自動車(HEV/PHEV/EV)用1※を除き3~5%成長、2020年のハイブリッド/電気自動車用需要では、控えめに見積り20~30千t、多めに見積り55~65千t(ともに炭酸リチウム換算)と試算している。 イリノイ工科大学では、HEV/EV1台当り10lb(4.536kg)の炭酸リチウム(換算量)が必要で、2015年には250万台が生産されると仮定すると、2015年には炭酸リチウム換算で11,000tが必要になると試算している。 Chemetallでは、2020年時点でのハイブリッド/電気自動車用リチウム需要の控えめな予測量30千t、多めな予測量60千t(ともに炭酸リチウム換算)と試算している他、コンサルタント企業であるTRU Group(米)は、現在開発検討中のプロジェクトを含めても、2017~2018年にはリチウム不足が生じると試算している。 6. Atacama塩湖現地調査 LSM’09カンファレンス後の1月29、30日の両日、Santiago北方約1,500kmに位置するAtacama塩湖において、SQM及びChemetalI(両社で世界の約45%の炭酸リチウムを生産)のリチウム濃縮工程及びCarmenにおいて両社の炭酸リチウム精製プラントの現地調査にJOGMEC調査団は参加した。 ![]() 図7.Atacama塩湖位置図 1※HEV:ハイブリッド自動車、PHEV:プラグイン・ハイブリッド自動車、EV:電気自動車 Atacama塩湖で操業中のSQM及びChemetallにおけるリチウム濃縮工程は同一で、Atacama塩湖でかん水を汲み上げ、広大な蒸発池(SQM:1,000万m3)を利用し、SQMでは8か月、Chemetallでは12~15か月間をかけて、かん水中のリチウムを0.2%から6%まで濃縮する。濃縮かん水はAtacama塩湖西方230kmのAntofagasta近郊Carmenに所在する精製プラントまで運搬され、炭酸リチウムが生産される(生産能力SQM:40,000t/年、Chemetall:27,000t/年)。なお、SQMでは、水酸化リチウムも製造(6,000t/年)している。 ![]() 図8.Atacama塩湖での濃縮工程 ![]() 図9.リチウム精製フロー(Carmenプラント) |
![]() |
![]() |
|
![]() ![]() |
![]() |