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ボツワナで銅鉱山を操業する豪州中堅鉱山会社Discovery Metals Limitedの危機
< シドニー事務所 栗原政臣・研究スタッフ:Daniel O’Toole 報告 >
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はじめに ―DMLの紹介―DMLは、アフリカ南部ボツワナ共和国の北西部で2012年からBoseto銅・銀鉱山を操業する豪州QLD州Brisbaneベースの中堅鉱山会社である。DMLは、2003年Discovery Nickel Ltd.として主にニッケルを対象とするジュニア探鉱会社として設立され、2004年からボツワナでの探査を実施するようになった。2005年にはボツワナ北西部における堆積性銅鉱床の可能性を見出しBosetoプロジェクトの最初の7鉱区を取得、2006年には会社名をDiscovery Metals Ltd.と変更し、主な探査対象鉱種を銅に修正した。2008年には既存7鉱区の南西端からナミビア国境までの5,700㎢の探鉱鉱区を取得、2012年には類似の銅鉱床を胚胎する可能性のある既存鉱区南側に4鉱区を追加取得した。現在DMLは、Boseto鉱山のあるボツワナ北西部のKalahari Copperbeltと呼ばれる地域に18鉱区11,872㎢の鉱区を所有する他、マンガン、金、ニッケルを対象とする鉱区も所有している。 Boseto鉱山は2010年の採掘権認可後、2011年には建設が開始され、2012年6月に銅精鉱の生産が始まり、2012年9月にはKhamaボツワナ大統領等を招いて開山式が行われた。DMLはBoseto鉱山の鉱石埋蔵量(確定及び推定)を3,110万t(品位:Cu 1.4%、Ag 19.2 g/t)、鉱物資源量(精測、概測及び予測)を1億3,100万t(品位:Cu 1.3%、Ag 16.2 g/t)、Boseto周辺の予測鉱物資源量を7,620万t(品位:Cu 1.2%、Ag 15 g/t)と計上している1。Boseto鉱山の設計は鉱石処理量300万t/年、フル操業時には精鉱中の銅量3.6万t/年及び銀量110万oz(34.2 t)/年を生産すると発表されている2。 2012年12月時点で、DMLの時価総額は7億9,010万A$で、ASXに上場するアフリカに資産を所有する約200社の探鉱・鉱山会社の中で13番目に大きかった3。 1 Discovery Metals Limited, 19 April 2013, March 2013 Quarterly Report 2 Discovery Metals Limited, 4 June 2012, Boseto Copper Project Commissioning and Development Plan Updates 3 Australian Security Exchange, Feb 2013, Mining Indaba 2013 Security Exchange Session資料 ASX - Equity Financing for Africa 1.Cathay Fortune Corp.による買収提案(1) 2012年9月21日:DML、拘束力のない買収提案を受領4 (2) 2012年10月11日:DML、CFCの提案を謝絶6 2012年10月11日DMLは、CFC及びCADFに対して買収提案はBoseto鉱山の操業及び拡張計画、更なる探査による資源量増加の可能性、ボツワナに操業鉱山及びマネージメントチームを所有するという戦略的価値、及びDMLの希少性を適正に評価していないと伝えた、と発表した。 [メディア報道] (3) 2012年10月23日:DML、敵対的買収に関する通知を受領8 Off-Market Takeover Offerの中でCFCの設立者で最大株主のYu Young氏は、DML取締役会がdue diligence(適正評価)の実施及び更なる協議を拒んだことが直接株主に提案する今回の決定につながったと述べている9。 [メディア報道] (4) 2012年10月25日:CFI、Bidder’s Statement発表 (5) Bidder’s Statement11 e) DMLが当事者となる資金調達もしくはその他重要契約に関連してchange of control(資本拘束)条項が発動されない(no change of control provision being triggered)こと。 f) 重大な訴訟がないこと。 Bidder’s Statementには、DML株主がこのOfferを受け入れなければならない理由として以下のように述べられている。 ① 提示額の一株当り1.70 A$は、DML株の最近の取引レベルに対して十分なプレミアムが設けてある。例えば、2012年10月30日前30日間のDML平均株価の51%プレミアム。 ② DMLには鉱山操業、開発及び資金調達に関して重大なリスクが存在する。 ③ DMLは2012年8月8日に一株当り1.20 A$で50,000万A$の新株募集を行った。今回のCFIの提示額はそのDMLの提示額に対して42%のプレミアムとなる。 ④ 提示額は、アナリストの平均評価価値の40%プレミアム額となっている。 ⑤ これまでDMLに対し同様の買収提案はない。 4 Discovery Metals Limited, 4 October 2012, Indicative, non-binding proposal for all DML’s shares 5 Discovery Metals Limited, 23 November 2012, Targets Statement - Board Recommends S/holders Reject Offer 6 Discovery Metals Limited, 11 October 2012, Update on indicative, non-binding proposal 7 The Australian, 12 October, Discovery Metals spurns $830m China bid 8 Discovery Metals Limited, 23 October 2012, Receipt of notice of intention to make a takeover offer 9 King & Wood Mallesons, 23 October 2012, Discovery Metals Limited (ASX: DML): Off-Market Takeover Offer 10 The Australian Financial Review, 24 October 2012, CFC turns hostile on Discovery 11 Cathay Fortune Investment, 8 November 2012, Cathay Fortune Investment Limited - Takeover bid for Discovery Metals Limited (“Offer”) - Dispatch of Bidder’s Statement 2.DMLの拒否とCFIの反応、Offerの失効(1) 2012年11月23日:DML、CFIの提案に応じないよう株主に対し提言12 (2) 2012年11月29日:CFI、Bidder’s Statement補足1を発表 [メディア報道] [メディア報道] Change of Control条項については、DMLは2012年11月23日発表のTarget’s StatementからBosetoプロジェクトの資金調達には同条項が含まれている旨開示し、CFIに対して関連する条件の放棄について以前から申し入れている。しかしCFIは依然としてOffer条件から放棄しておらず、その結果一方的にOfferを失効できる状態にあるため、DMLはCFIに対してchange of controlに関連するOffer条件について正式に放棄するよう申し入れると述べた。 [メディア報道] 12 Discovery Metals Limited, 23 November 2012, DML Board recommends Shareholders REJECT Takeover Offer 13 The Australian Financial Review, 30 November 2012, Thwarted suitors blast Discovery’s logic 14 Discovery Metals Limited, 11 December 2012, First Supplementary Targets’s Statement 15 Discovery Metals Limited, 23 January 2013, Second Supplementary Targets’s Statement 16 The Australian Financial Review, 24 January 2013, Discovery Metals dips on raised costs 17 Discovery Metals Limited, 1 February 2013, Third Supplementary Targets’s Statement 18 The Australian Financial Review, 2 February 2013, Cathay Fortune drops bid for miner 3.DML株価の下落、及びその後表1に、DMLやCFIの発表等とDML株価の変化をまとめた。図1にDML株価と銅価の推移を、図2にDML株価及びASX資源関連銘柄(S&P/ASX 300 Metals & Mining)について2012年4月2日を100%とした経時変化を示す。 DMLの株価は2012年6月のBoseto鉱山生産開始前から一株当り1.3~1.4 A$で推移し、2012年8月上旬から9月上旬にかけて主要株主のM&G Investmentによる3,720万株売却等により一時0.88 A$まで値を下げるが、9月7日の開山式を機に上昇に転じCFCから受けた拘束力のない買収提案が発表された10月4日以降は1.60 A$台で推移、最高で1.75 A$(10月24日)に達した。しかし、2012年12月まで1.60 A$前後で推移していた株価は、2013年1月9日には1.50 A$台となり、1月23日のBoseto鉱山の採掘品位及びコスト情報を含むDMLのTarget’s Statement補足2発表後には1.30 A$となる。さらに1月30日のCFIのBidder’s Statement補足5発表、 1月31日のDML2012年Q4報告書発表、及び2月1日のCFI撤退表明と下げ続け1.00 A$台となり、週明けの2月4日にはついに一株当り1.00 A$を切るに至った。その後2月15日の提案終了日後の週明け2月18日には前取引日比15%下げ0.79 A$となる。さらに2月20日には0.65 A$となり3月はそのまま0.60 A$台が続いた。4月に入っても株価の下落は止まらず4月4日には0.50 A$台に、4月5日には0.40 A$台に、そして取引停止前日の4月18日には0.34 A$となった。一株当り0.34 A$という株価は世界金融危機の影響で値を下げた2008年から2009年にかけて以来となる。 銅価は2013年2月中旬以降下落傾向を示しASX資源銘柄にも影響しているが、その下落傾向に入った時期がCFIからの提案終了時期と重なったこともありDML株価に対しては非常に大きな打撃を与える結果となった。 2013年3月26日DMLは、新たな資金調達のために新株を発行する計画を発表した19。4月19日からは資金調達準備等のために株取引停止に入ったが未だ新株発行の発表は行われていない。 [メディア報道] 表1 DML発表等と株価の変化
![]() 図1 DML株価と銅価の推移 ![]() 図2 DML株価及びASX資源銘柄(S&P/ASX 300 Metals & Mining)の推移 (2012年4月2日を100%として表示) 19 Discovery Metals Limited, 26 March 2013, Approval of Project Financing Restructure 20 The Australian, 25 April 2013, Cathay revives bid for Discovery Metals おわりにDML会長のGordon Galt氏(当時、2013年5月20日辞職)は2013年2月5日株主及びASIC(豪州証券投資委員会)に対して、CFIの買収提案失効に関する声明を発表し、その中で今回の提案はBoseto鉱山のcommissioning期間という操業の不安定な時期を狙ってなされ、さらに資金調達の際に一般に付されるchange of control条項に関しての条件をCFIが放棄しなかったのは、いつでも一方的に提案を失効できる状態を維持するためではないかと指摘した21。これに対しCFCのYoung氏はASICへの訴えを一笑に付しCFCは買収プロセスを通じて多大な労力、時間及び金融資産を費やし誠実に提案を行ったと反論した。DMLが提供した情報は一貫していなかったために株主に対してBoseto鉱山等の資産価値を証明できなかったとし、豪州当局等は開示条項をもっと厳格にするよう方針を改善すべきと述べている22。 その後2013年5月21日、DMLは会社売却の手続きを開始したと発表した23。発表の中でDMLは、2013年4月22日の週に資金調達を行う予定だったが、CFCは新株の購入を拒否し、他の株主に対して資金調達に協力しないように呼びかけ、さらにDMLは競売にかけられるべきとするレターを送付したとし、また同じ時期に他の関係者から様々な打診を受けたことから、CFCを含めた関係者に対して入札による会社買収の正式な手続きを行うことを決定した、としている。DMLは既に関係者に対して入札への参加を呼びかけ、いくつかの会社とは守秘義務契約を締結し、そのうちいくつかの会社はdue diligenceを開始している。Due diligence等全体の評価には約4週間必要と思われ、DMLは提案締め切り日を2013年6月10日としている。一方でDMLは、CFCは先のレターを発送した後にDMLに対して新しい買収提案を行っていたことを明らかにした。提案はdue diligenceの結果に基づく素案としながらDML株価一株当り0.35~0.40 A$を提示額としていた。DMLは既にCFCと守秘義務契約を締結、CFCはdue diligenceを行っている。またDMLは、豪州の会社法により先の買収提案期間の終了日である2013年2月15日以降4ヵ月、もしくはASICによる承認がなければ、CFCは当初の提示額を下回る提案を行うことはできない旨指摘している。 何れにせよ2012年6月にDMLが操業を開始したボツワナ共和国北西部にあるBoseto銅・銀鉱山はKalahari Copperbelt最初の鉱山であり、現在操業している唯一の鉱山である。今後commissioning期間が終了し生産量が安定してくればキャッシュコストが減少することは十分考えられる。Kalahari Copperbeltにおける堆積性銅鉱床のポテンシャルを見出し9年に及ぶ探査・建設からようやく鉱山開発に至ったDMLの今後の動向を引き続き注視していきたい。 21 Discovery Metals Limited, 5February 2013, Letter to Shareholders 22 The Australian Financial Review, 18 February 2013, Billionaire hits back at Discovery 23 Discovery Metals Limited, 21 May 2013, Potential change of control process; Corporate updates |
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