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  平成25年 5月23日 2013年28号
ボツワナで銅鉱山を操業する豪州中堅鉱山会社Discovery Metals Limitedの危機


< シドニー事務所 栗原政臣・研究スタッフ:Daniel O’Toole 報告 >

 2013年4月19日、Discovery Metals Ltd.(本社:QLD州Brisbane、以下DML)は、豪州証券取引所(Australian Security Exchange、以下ASX)に対して、自社株式の取引停止を申請、同日ASXにより承認された。以降、最初の停止期間が終了する4月23日に4月26日までの期間延長を、さらに4月26日に5月2日までの自発的な株式の取引停止を申請しASXに承認された。5月2日以降、資金調達の協議を行っている旨発表されていたが、5月21日会社売却の手続きを開始したと発表、同日DML株の取引が再開された。DMLは、2012年6月にボツワナ北西部のBoseto鉱山において銅及び銀の生産を開始した豪州の中堅鉱山会社で、開山以来2013年Q1までに銅約1万t、銀約15 tを生産している。本稿では、探鉱ジュニアから鉱山の開発まで至ったDMLが自社株取引停止に至るまでについて紹介する。

 2012年12月末時点で1.63 A$だったDMLの株価は、取引停止前日の2013年4月18日には0.34 A$まで下落している。

はじめに ―DMLの紹介―

 DMLは、アフリカ南部ボツワナ共和国の北西部で2012年からBoseto銅・銀鉱山を操業する豪州QLD州Brisbaneベースの中堅鉱山会社である。DMLは、2003年Discovery Nickel Ltd.として主にニッケルを対象とするジュニア探鉱会社として設立され、2004年からボツワナでの探査を実施するようになった。2005年にはボツワナ北西部における堆積性銅鉱床の可能性を見出しBosetoプロジェクトの最初の7鉱区を取得、2006年には会社名をDiscovery Metals Ltd.と変更し、主な探査対象鉱種を銅に修正した。2008年には既存7鉱区の南西端からナミビア国境までの5,700㎢の探鉱鉱区を取得、2012年には類似の銅鉱床を胚胎する可能性のある既存鉱区南側に4鉱区を追加取得した。現在DMLは、Boseto鉱山のあるボツワナ北西部のKalahari Copperbeltと呼ばれる地域に18鉱区11,872㎢の鉱区を所有する他、マンガン、金、ニッケルを対象とする鉱区も所有している。

 Boseto鉱山は2010年の採掘権認可後、2011年には建設が開始され、2012年6月に銅精鉱の生産が始まり、2012年9月にはKhamaボツワナ大統領等を招いて開山式が行われた。DMLはBoseto鉱山の鉱石埋蔵量(確定及び推定)を3,110万t(品位:Cu 1.4%、Ag 19.2 g/t)、鉱物資源量(精測、概測及び予測)を1億3,100万t(品位:Cu 1.3%、Ag 16.2 g/t)、Boseto周辺の予測鉱物資源量を7,620万t(品位:Cu 1.2%、Ag 15 g/t)と計上している1。Boseto鉱山の設計は鉱石処理量300万t/年、フル操業時には精鉱中の銅量3.6万t/年及び銀量110万oz(34.2 t)/年を生産すると発表されている2

 2012年12月時点で、DMLの時価総額は7億9,010万A$で、ASXに上場するアフリカに資産を所有する約200社の探鉱・鉱山会社の中で13番目に大きかった3



1 Discovery Metals Limited, 19 April 2013, March 2013 Quarterly Report

2 Discovery Metals Limited, 4 June 2012, Boseto Copper Project Commissioning and Development Plan Updates

3 Australian Security Exchange, Feb 2013, Mining Indaba 2013 Security Exchange Session資料 ASX - Equity Financing for Africa


1.Cathay Fortune Corp.による買収提案

(1) 2012年9月21日:DML、拘束力のない買収提案を受領4
 2012年10月4日、DMLはCathay Fortune Corp.(上海ベースの非公開投資会社、以下CFC)から2012年9月21日に拘束力のない買収提案を受けたと発表した。提案によると買収はCFC75%、China-Africa Development Fund(以下CADF)25%の共同事業として行われ、DMLの発行済全株式を一株当り1.70 A$で獲得する。提示された1.70 A$/株は、提案の行われた9月21日までの20日間のDML平均株価に56%のプレミアムを、30日間の平均株価に50%のプレミアムを上乗せした額である。CFCは2012年8月6日にDMLの株式5,663万株(発行済株式の12.81%)を初めて取得、この提案前までに株式13.7%を所有していた。2012年7月時点で7,410万株(同16.76%)を所有していたM&G Investment Fundが2012年8月から9月にかけて3,720万株を売却していたため、CFCは買収提案時点で筆頭株主となっている5


(2) 2012年10月11日:DML、CFCの提案を謝絶6

 2012年10月11日DMLは、CFC及びCADFに対して買収提案はBoseto鉱山の操業及び拡張計画、更なる探査による資源量増加の可能性、ボツワナに操業鉱山及びマネージメントチームを所有するという戦略的価値、及びDMLの希少性を適正に評価していないと伝えた、と発表した。

 [メディア報道]
 2012年10月12日付The Australian:最新のDMLの株価は1.64 A$とCFCの提案を僅かに下回っていることから投資家は買収が進展することを希望しているとし、観測筋の一部はDMLの買収提案謝絶を驚きを持って迎えた7


(3) 2012年10月23日:DML、敵対的買収に関する通知を受領8
 2012年10月23日DMLは、CFC及びCADFからCathay Fortune Investment Ltd.(CFC75%、CADF25%、以下CFI)を通じてDMLの全株式(既にCFCが所有する株式を除く)を一株当り1.70 A$で取得するOff-Market Takeover Offerを通知されたと発表、受領したTakeover Offerを公開した。これは、9月21日のCFCによる提案がDML取締役会によって謝絶されたのを受け、株主から直接株式を購入する方針に切り替えたもの。

 Off-Market Takeover Offerの中でCFCの設立者で最大株主のYu Young氏は、DML取締役会がdue diligence(適正評価)の実施及び更なる協議を拒んだことが直接株主に提案する今回の決定につながったと述べている9

 [メディア報道]
 2012年10月24日付The Australian Financial Review:資源資産の外国資本による所有は特に豪州では微妙な問題であることから、一般に中国企業は敵対的買収を避け、協議を重ね取締役会の支持を得る傾向にあり、今回のCFC及びCADFの敵対的買収は特異なケースである10


(4) 2012年10月25日:CFI、Bidder’s Statement発表
 2012年10月25日DMLは、CFIからDML株主へのBidder’s Statementを受領した旨発表、Bidder’s Statement(10月25日版)を公開した。さらに2012年11月5日DMLは、11月8日にCFIから株主に向けてBidder’s Statementが発送される模様と発表し、11月8日には株主に対して発送されたBidder’s Statementを公開した。


(5) Bidder’s Statement11
 Bidder’s Statementの主な内容は以下のとおり。
  ① Bidder:CFI(CFC75%、CADF25%)
  ② Offer:CFIはDMLの株を諸条件のもと、一株当り1.70 A$で購入する。
  ③ Offer期間:2012年12月13日に終了(最終的に2013年2月15日まで延長された)
  ④ Offer条件:
    a) CFIはDML株の51%以上を獲得する。
    b) CFI及び関連企業はDML買収に必要な全ての認可を取得する。
    c) DMLに関連して重大懸念事項が発生しない(no material adverse change)こと。
    d) ボツワナ政府がBoseto鉱山に対し権益取得のオプションを行使しないこと。

e) DMLが当事者となる資金調達もしくはその他重要契約に関連してchange of control(資本拘束)条項が発動されない(no change of control provision being triggered)こと。

    f) 重大な訴訟がないこと。

 Bidder’s Statementには、DML株主がこのOfferを受け入れなければならない理由として以下のように述べられている。

① 提示額の一株当り1.70 A$は、DML株の最近の取引レベルに対して十分なプレミアムが設けてある。例えば、2012年10月30日前30日間のDML平均株価の51%プレミアム。

② DMLには鉱山操業、開発及び資金調達に関して重大なリスクが存在する。

③ DMLは2012年8月8日に一株当り1.20 A$で50,000万A$の新株募集を行った。今回のCFIの提示額はそのDMLの提示額に対して42%のプレミアムとなる。

④ 提示額は、アナリストの平均評価価値の40%プレミアム額となっている。

⑤ これまでDMLに対し同様の買収提案はない。



4 Discovery Metals Limited, 4 October 2012, Indicative, non-binding proposal for all DML’s shares

5 Discovery Metals Limited, 23 November 2012, Targets Statement - Board Recommends S/holders Reject Offer

6 Discovery Metals Limited, 11 October 2012, Update on indicative, non-binding proposal

7 The Australian, 12 October, Discovery Metals spurns $830m China bid

8 Discovery Metals Limited, 23 October 2012, Receipt of notice of intention to make a takeover offer

9 King & Wood Mallesons, 23 October 2012, Discovery Metals Limited (ASX: DML): Off-Market Takeover Offer

10 The Australian Financial Review, 24 October 2012, CFC turns hostile on Discovery

11 Cathay Fortune Investment, 8 November 2012, Cathay Fortune Investment Limited - Takeover bid for Discovery Metals Limited (“Offer”) - Dispatch of Bidder’s Statement

2.DMLの拒否とCFIの反応、Offerの失効

(1) 2012年11月23日:DML、CFIの提案に応じないよう株主に対し提言12
 2012年11月23日DMLは、CFIの提示額はDML株価を適切に評価していないとして株主に対し提案に応じないよう提言し、「Reject Offer」と題する220ページに及ぶ声明(Target’s Statement)を発表した。声明の中でDMLは、独立した専門家(KPMG)によりDML株価は一株当り1.74 A$から2.11 A$と見積られたと述べている。また、DMLは2015年までにBoseto鉱山の年間銅生産量を5万tまで低コストで拡張する計画を持つこと、ポテンシャルの高いKalahari Copperbeltに鉱区を所有し既に幾つかの鉱床を把握していること、さらにKalahari Copperbeltにおける最初の銅生産者として極めて重大な価値を持つことから、CFIはDMLの価値を適切に評価していないとした。


(2) 2012年11月29日:CFI、Bidder’s Statement補足1を発表
 2012年11月29日CFIは、11月23日付DMLの声明に対し反論、DML株主に対し提示額を受け入れるよう訴えた。

 [メディア報道]
 2012年11月30日付The Australian Financial Review:Cathay Fortuneは、DMLの買収提案拒否は多くの非現実的な前提に基づいていると非難した。KPMGが行った一株当り1.74 A$から2.11 A$というDML株価の評価はマクロ経済、及びBoseto鉱山の操業におけるより高い給鉱品位、石炭火力発電所建設での安価な電力供給、予測資源量から供される多量の採掘等非現実的な前提に基づいていると述べている。またCathay Fortuneは、DMLは2012年6月からBoseto鉱山を操業しているにも係わらず、実際のもしくは予測の操業コスト等重要な情報を提供していないとしたうえで、1.70 A$という提示額は公正で魅力的なOfferだと述べた13

(3) 2012年12月5日:CFI、Bidder’s Statement補足2を発表
 2012年11月30日にDMLが報告したBoseto鉱山Zeta鉱床の露天採掘における一部ピット崩壊に起因するボツワナ鉱物エネルギー水資源省からのピット深部化の停止措置を受けてのピット設計の調整に対して、2012年12月5日CFIはOffer条件にある重大懸念事項に違反するおそれがあるとして、DMLに対し詳細を報告するべきとした。

(4) 2012年12月12日:DML、Target’s Statement補足1を発表
 2012年12月12日DMLはTarget’s Statement補足1を発表し、Boseto Commissioning November Updateの中で11月末に発生したBoseto鉱山Zeta鉱床露天採掘エリアの一部ピット崩壊について現況を報告、崩落した土砂は24時間以内に除去され採掘に影響はないとした14

(5) 2013年1月9日:CFI、Bidder’s Statement補足4を発表
 2013年1月9日CFIは、2012年12月にDMLから発表されたBoseto Commissioning November Updateに関して、採掘品位が2010年に発表されたBFSと比較して著しく低い等として、DMLに対し実際の鉱石埋蔵量等のデータを株主に対して提供すべきとした。

(6) 2013年1月23日:DML、Target’s Statement補足2を発表15
 2013年1月23日DMLは、Target’s Statement補足2としてBoseto鉱山の採掘実績、操業コスト等について発表した。2012年12月31日までの実績に基づく計算では、当初の鉱石埋蔵量モデルはZeta鉱床の露天採掘対象の鉱体について硫化鉱の量を過大評価し、酸化鉱の量を過小評価していた。また、採掘された硫化鉱の品位は鉱石埋蔵量モデルと比較すると採掘時のズリの混入により15%低かったと報告した。キャッシュコスト(C1 Cash Cost)は2012年12月31日までの半年間の平均で4.28 A$/lbとなっており、これには低品位、高電力費用、トレーニング費用等コミッショニングステージに関係する様々な要因が影響していると報告している。また、鉱石埋蔵量に関しては2012年12月31日までの採掘量を踏まえ更新中であり完了後すぐに報告するとした。

 [メディア報道]
 2013年1月24日付The Australian Financial Review:DMLの株価は、DMLのTarget’s Statement補足2発表後11 ¢下落して1.41 A$となった。投資家は、Boseto鉱山の12月31日までの半年間のキャッシュコストが4.28 A$/lbであったという事実を聞いた中国企業の撤退の可能性が高まったと考え、動揺しているのだろう。このキャッシュコストは現在の銅価を超えており赤字経営を意味する。しかしながらDMLは、2013年H2にはキャッシュコストは1.92 A$/lbまで下がると予想している。投資家の反応を他所にCFIは決定を下す前に情報の吟味に十分時間をかけている16

(7) 2013年2月1日:DML、Target’s Statement補足3を発表17
 2013年2月1日DMLは、CFIの要請に答える形でTarget’s Statement補足3を発表、CFIの指摘する重大懸念事項違反(Zeta鉱床の露天採掘対象となる鉱石埋蔵量の過大評価、同エリアの酸化鉱/トランジショナル鉱/硫化鉱の構成割合、及び同エリアの鉱石低品位化の原因)は正当性のないものとした。また、DMLは株主からの要望に答えCFIに対してBoseto鉱山の操業に関する情報等を提供してきたと補足した。さらに2013年1月30日にBidder’s Statement補足5でCFIから要請された適切なdue diligenceの実施の必要性については敵対的買収提案の当初のOffer条件になかったものであり、さらに2013年1月31日のCFIからの重大懸念事項違反の発表には具体的な違反対象が明記されていないことから、due diligence の実施はOfferの不確実性を増加させると判断され、DMLはCFIに対してdue diligenceの実施を許可しないとした。しかしDMLは技術的な問題に関してはCFIに対してさらに説明する用意があると述べている。

 Change of Control条項については、DMLは2012年11月23日発表のTarget’s StatementからBosetoプロジェクトの資金調達には同条項が含まれている旨開示し、CFIに対して関連する条件の放棄について以前から申し入れている。しかしCFIは依然としてOffer条件から放棄しておらず、その結果一方的にOfferを失効できる状態にあるため、DMLはCFIに対してchange of controlに関連するOffer条件について正式に放棄するよう申し入れると述べた。

(8) 2013年2月1日:CFI、DMLのOffer条件違反による買収提案の失効を発表
 2013年2月1日CFIはBidder’s Statement補足6を発表、DMLのOffer条件違反により買収提案は2013年2月15日の提案期間終了日に自動的に失効するだろうと述べた。CFIは、DMLのTarget’s Statement補足2等で示された情報がOffer条件のchange of control及び重大懸念事項(no material adverse effect)に違反するためOfferは条件を満たさないと説明した。

 [メディア報道]
 2013年2月2日付The Australian Financial Review:Cathay FortuneはDMLのdue diligence拒否の後、8億3,000万A$の買収提案から撤退した。2013年2月1日に発表されたBidder’s Statement補足6でCathay FortuneはDMLから提出されたBoseto鉱山の情報に問題が認められ、DMLのdue diligence拒否により問題に対処出来なかったとしている。その結果、提案条件は満たされず2月15日には買収提案は失効することになる。DML株価は2月1日には3.5 ¢下がり1.04 A$となった。翌週にはさらに下落することが予想される18


12 Discovery Metals Limited, 23 November 2012, DML Board recommends Shareholders REJECT Takeover Offer

13 The Australian Financial Review, 30 November 2012, Thwarted suitors blast Discovery’s logic

14 Discovery Metals Limited, 11 December 2012, First Supplementary Targets’s Statement

15 Discovery Metals Limited, 23 January 2013, Second Supplementary Targets’s Statement

16 The Australian Financial Review, 24 January 2013, Discovery Metals dips on raised costs

17 Discovery Metals Limited, 1 February 2013, Third Supplementary Targets’s Statement

18 The Australian Financial Review, 2 February 2013, Cathay Fortune drops bid for miner

3.DML株価の下落、及びその後

 表1に、DMLやCFIの発表等とDML株価の変化をまとめた。図1にDML株価と銅価の推移を、図2にDML株価及びASX資源関連銘柄(S&P/ASX 300 Metals & Mining)について2012年4月2日を100%とした経時変化を示す。

 DMLの株価は2012年6月のBoseto鉱山生産開始前から一株当り1.3~1.4 A$で推移し、2012年8月上旬から9月上旬にかけて主要株主のM&G Investmentによる3,720万株売却等により一時0.88 A$まで値を下げるが、9月7日の開山式を機に上昇に転じCFCから受けた拘束力のない買収提案が発表された10月4日以降は1.60 A$台で推移、最高で1.75 A$(10月24日)に達した。しかし、2012年12月まで1.60 A$前後で推移していた株価は、2013年1月9日には1.50 A$台となり、1月23日のBoseto鉱山の採掘品位及びコスト情報を含むDMLのTarget’s Statement補足2発表後には1.30 A$となる。さらに1月30日のCFIのBidder’s Statement補足5発表、 1月31日のDML2012年Q4報告書発表、及び2月1日のCFI撤退表明と下げ続け1.00 A$台となり、週明けの2月4日にはついに一株当り1.00 A$を切るに至った。その後2月15日の提案終了日後の週明け2月18日には前取引日比15%下げ0.79 A$となる。さらに2月20日には0.65 A$となり3月はそのまま0.60 A$台が続いた。4月に入っても株価の下落は止まらず4月4日には0.50 A$台に、4月5日には0.40 A$台に、そして取引停止前日の4月18日には0.34 A$となった。一株当り0.34 A$という株価は世界金融危機の影響で値を下げた2008年から2009年にかけて以来となる。

 銅価は2013年2月中旬以降下落傾向を示しASX資源銘柄にも影響しているが、その下落傾向に入った時期がCFIからの提案終了時期と重なったこともありDML株価に対しては非常に大きな打撃を与える結果となった。

 2013年3月26日DMLは、新たな資金調達のために新株を発行する計画を発表した19。4月19日からは資金調達準備等のために株取引停止に入ったが未だ新株発行の発表は行われていない。

 [メディア報道]
 2013年4月25日付The Australian:2012年DMLに対して8億7,000万A$の買収提案を行い2013年2月に撤回したCathay Fortuneは、4月24日DMLの新株発行計画に対する反対キャンペーンを強化した。Cathay Fortune会長のYu Young氏は、新株発行により約7,500万A$の資金調達を行うのは「重大な誤り」と批判、DMLが計画を実行すれば管財人の管理下に入ることを余儀なくされるだろうと警告した。取引停止時のDML株価は0.34 A$でCathayの提案額1.70 A$から大きく下落してしまい、時価総額は1億6,500万A$となっている。CathayはDMLに対して既存株主の株価の価値を希薄化するような資金調達は中止しbidding processを始めるよう要請した。また、現在計画されている資金調達プログラムは会社の価値をなくすものでありCFCは参加しない。またもし実行されたらCFCはDMLに対して二度と買収提案はしないと付け加えた20

表1 DML発表等と株価の変化

  DML announcement他 DML株価(終値、A$)
前取引日 各種発表当日 翌取引日
2012/06/28 DML:Boseto鉱山からの最初の精鉱生産を発表 1.34 1.34 1.40
2012/09/07 DML:Boseto鉱山開山式 0.92 1.00 1.11
2012/10/04 CFC:DMLへの買収提案を通知
DML:CFCからの拘束力のない買収提案を発表
1.46 1.66
2012/10/11 DML:買収提案の謝絶を発表 1.66 1.64 1.66
2012/10/23 CFI:ASXに対しDMLの買収を表明
DML:CFC及びCADFからの買収通知を発表
1.65 1.73 1.75
2012/10/25 CFI:Bidder’s Statement(BS)発表 1.75 1.73 1.72
2012/11/05 DML:BSに対するコメント発表 1.70 1.70 1.70
2012/11/08 CFI:DML株主へのBSの発送 1.70 1.70 1.70
DML:買収に対する反応のアップデート
2012/11/16 DML:株主総会 1.69 1.69 1.68
2012/11/23 DML:株主へ、謝絶するよう提言(Targets Statement:TS) 1.70 1.69 1.68
2012/11/29 CFI:補足資料1(TSを非難) 1.68 1.67 1.66
2012/11/30 DML:生産障害の可能性につき報告 1.67 1.66 1.60
2012/12/05 CFI:BS補足2 1.57 1.61 1.62
2012/12/12 DML:TS補足1 1.60 1.62 1.64
2012/12/24 CFI:BS補足3(ボツワナ大臣承認) 1.58 1.60 1.62
2013/01/09 CFI:BS補足4 1.63 1.58 1.56
2013/01/23 DML:TS補足2(Boseto鉱山採掘品位、コスト等) 1.52 1.41 1.30
2013/01/30 CFI:BS補足5(due diligence要求及び2月15日までの期間延長) 1.30 1.13 1.08
2013/01/31 DML:2012Q4レポート 1.13 1.08 1.04
CFI:Offer条件に関する進捗状況について報告
2013/02/01 DML:TS補足3 1.08 1.04 0.96
CFI:BS補足6(失効の表明)
2013/02/05 DML:株主へ(買収提案の取下げ見込み) 0.96 0.96 0.94
2013/02/15 買収提案期間の終了 0.94 0.93 0.79
2013/02/19 DML:2012H2レポート 0.79 0.74 0.65
2013/03/14 DML:Bosetoコミッショニングアップデート 0.64 0.63 0.64
2013/03/26 DML:資金調達再編成に関する取締役会承認の発表 0.62 0.63 0.64
図1 DML株価と銅価の推移
図1 DML株価と銅価の推移
図2 DML株価及びASX資源銘柄(S&P/ASX 300 Metals & Mining)の推移
図2 DML株価及びASX資源銘柄(S&P/ASX 300 Metals & Mining)の推移
(2012年4月2日を100%として表示)

19  Discovery Metals Limited, 26 March 2013, Approval of Project Financing Restructure

20 The Australian, 25 April 2013, Cathay revives bid for Discovery Metals

おわりに

 DML会長のGordon Galt氏(当時、2013年5月20日辞職)は2013年2月5日株主及びASIC(豪州証券投資委員会)に対して、CFIの買収提案失効に関する声明を発表し、その中で今回の提案はBoseto鉱山のcommissioning期間という操業の不安定な時期を狙ってなされ、さらに資金調達の際に一般に付されるchange of control条項に関しての条件をCFIが放棄しなかったのは、いつでも一方的に提案を失効できる状態を維持するためではないかと指摘した21。これに対しCFCのYoung氏はASICへの訴えを一笑に付しCFCは買収プロセスを通じて多大な労力、時間及び金融資産を費やし誠実に提案を行ったと反論した。DMLが提供した情報は一貫していなかったために株主に対してBoseto鉱山等の資産価値を証明できなかったとし、豪州当局等は開示条項をもっと厳格にするよう方針を改善すべきと述べている22

 その後2013年5月21日、DMLは会社売却の手続きを開始したと発表した23。発表の中でDMLは、2013年4月22日の週に資金調達を行う予定だったが、CFCは新株の購入を拒否し、他の株主に対して資金調達に協力しないように呼びかけ、さらにDMLは競売にかけられるべきとするレターを送付したとし、また同じ時期に他の関係者から様々な打診を受けたことから、CFCを含めた関係者に対して入札による会社買収の正式な手続きを行うことを決定した、としている。DMLは既に関係者に対して入札への参加を呼びかけ、いくつかの会社とは守秘義務契約を締結し、そのうちいくつかの会社はdue diligenceを開始している。Due diligence等全体の評価には約4週間必要と思われ、DMLは提案締め切り日を2013年6月10日としている。一方でDMLは、CFCは先のレターを発送した後にDMLに対して新しい買収提案を行っていたことを明らかにした。提案はdue diligenceの結果に基づく素案としながらDML株価一株当り0.35~0.40 A$を提示額としていた。DMLは既にCFCと守秘義務契約を締結、CFCはdue diligenceを行っている。またDMLは、豪州の会社法により先の買収提案期間の終了日である2013年2月15日以降4ヵ月、もしくはASICによる承認がなければ、CFCは当初の提示額を下回る提案を行うことはできない旨指摘している。

 何れにせよ2012年6月にDMLが操業を開始したボツワナ共和国北西部にあるBoseto銅・銀鉱山はKalahari Copperbelt最初の鉱山であり、現在操業している唯一の鉱山である。今後commissioning期間が終了し生産量が安定してくればキャッシュコストが減少することは十分考えられる。Kalahari Copperbeltにおける堆積性銅鉱床のポテンシャルを見出し9年に及ぶ探査・建設からようやく鉱山開発に至ったDMLの今後の動向を引き続き注視していきたい。



21 Discovery Metals Limited, 5February 2013, Letter to Shareholders

22 The Australian Financial Review, 18 February 2013, Billionaire hits back at Discovery

23 Discovery Metals Limited, 21 May 2013, Potential change of control process; Corporate updates



おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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