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  平成26年 9月25日 2014年40号
ホンジュラス鉱業に関する最近の動き


< メキシコ事務所 縄田俊之 報告 >

 ホンジュラスでは、2013年11月に大統領選挙が行われ、本年1月に新たにJuan Orlando Hernández大統領が就任した。新大統領は、前Porfirio Lobo Sosa大統領と同じ与党国民党に所属し、前政権時代にはホンジュラス議会議長として鉱業法改正の審議を取り仕切った実績を有する。このため、前政権時代に行われていた改正鉱業法に基づく鉱業施策を引き継ぎつつ、ポテンシャルがあると言われている鉱物資源の開発を積極的に促進する政策を実行することにより、主要産業を農業に依存する同国経済において鉱業を新たな推進力とする狙いが見受けられる。

 こうした中、改正鉱業法に基づき、鉱業関係当局の組織再編の実行や、従前停止していた鉱業コンセッションの付与(許可)を再開する一方、鉱業ロイヤルティを導入し、その歳入(税収)を鉱業活動が行われている地方政府に分配することによって、地域社会の発展を目指す等鉱業に関する積極的な政策を実行している。

 今般同国鉱業の最近の動向について、関係者から関連情報を得ることができたため、鉱業を取り巻く状況とともにこれら情報を報告する。

1. ホンジュラス鉱業を取り巻く状況

(1) 政治

 ホンジュラスではJosé Manuel Zelaya Rosales大統領時代の2009年6月にクーデターがあり、同年11月の大統領選挙を経て翌2010年1月に国民党のPorfirio Lobo Sosa氏が大統領に就任、2013年11月の大統領選挙で同じく与党国民党のJuan Orlando Hernández氏が当選し、2014年1月に史上最年少で大統領に就任した。

 Hernández大統領政権における重要課題は治安対策と投資誘致であり、また、大統領就任後には新たに7名の部門大臣を配置し、それぞれ複数の省庁を統括し政策に当たっている。こうした状況を踏まえ、現政権は比較的安定した政権運営を行っているとの見方がされている一方、与党国民党が議会の過半数を獲得できていないことから、必ずしも政権基盤が盤石とは言い切れない状況でもある。


(2) 経済

 2013年における人口は約810万人(世銀発表)、主要産業はコーヒーやバナナ等を中心とした農業である。マクロ経済は、2013年における国内総生産(GDP)が185.5億US$で世界第110位(世銀発表)、経常収支が対GDP比-8.8%(IMF発表)、物価上昇率4.9%(IMF発表)である。

 また、財政収支が非常に悪く、財政赤字の多くは効率が悪い電力部門によるところが多いと言われている。このため、独占状態となっている電力公社(NA)の事業を発電、送電及び配電の3つに分離し民間への委託を可能とすることや、民間企業が独自に行う発電に伴う余剰電力のNAによる買取り価格の改善等を盛り込んだ電力改革を行うため、本年1月に電力改革法案を議会にて可決し、6月に官報告示、7月に施行した。これにより、財政収支の改善が見込まれるほか、電力価格の低減が期待されるため、電力を多く消費する鉱業にとってもコスト削減が期待される。

 なお、経済自体は、従前から米国との結びつきが強いものの、近年は中国企業の進出が目立っている。


(3) 治安

 ホンジュラスは地理的要因により、南米最大の麻薬生産国であるコロンビアから米国への麻薬輸送の中継点とされているため、治安に対する懸念が非常に大きく、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2014年に発表した「Global Study on Homicide 2013」によると、ホンジュラスの2012年における殺人率は10万人当たり90.4人で、全世界第1位の殺人率であった。このため前述のとおり、現政権にとって治安対策が最大の課題となっている。

 現在ホンジュラスに進出している日系企業はODA関係の1社となっているが、鉱業を含め将来当国に進出を検討する日系企業にとって治安状況の推移が最大の焦点と言っても過言ではないと思われる。

2. ホンジュラス鉱業の現状

 ホンジュラスでは、主に金、銀、鉛、亜鉛、鉄等の生産が行われているが、具体的な鉱業生産量等の統計に関しては、天然資源・環境省において2004~2012年の間、民間(個人)にデータ集計等を委託していたところ、2013年及び2014年初頭は当該委託を停止したため、この間のデータが存在しない。しかしながら、最近新たにデータ集計を開始しており、今後は継続的にデータ集計を行う予定である。なお、本稿では、World Metal Statistics Yearbook 2014のデータを参考までに掲載する(図1.)。

 一方、2014年4月にホンジュラス中央銀行が本年第1四半期の鉱業生産額、鉱業輸出額及び外国直接投資額に関しいずれも前年同期を下回るとのコメントを発表したが、鉱業界としては生産量、輸出量ともに減少してはおらず、金額の減少は為替の影響によるものとの見解を示している。

 また、天然資源・環境省は、今後の生産見通しとして従来の生産状況を維持するとの見解を示している。

図1. ホンジュラスの主な鉱物生産量の推移
図1. ホンジュラスの主な鉱物生産量の推移
  04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年
金(t) 5.2 4.6 4.1 3.0 1.8 1.9 2.2 1.9 1.8 2.0
銀(t) 48.2 53.6 55.0 53.9 58.9 57.7 58.2 48.4 50.6 50.9
鉛(千t) 8.9 10.5 11.8 10.2 12.5 14.5 17.0 4.9 12.4 11.6
亜鉛(千t) 41.4 42.7 37.6 29.2 28.5 36.4 33.8 10.0 26.0 25.0

出典:World Metal Statistics Yearbook 2014

3. 鉱業法の改正

(1) 経緯

 ホンジュラスでは、その昔、所謂「鉱業法」と称される法律が存在せず、他の法律において鉱業に関する規制を行っていたが、1998年に同国で初めての鉱業法を制定し、同法に基づき鉱業コンセッション(鉱業権)の付与(許可)等を含む鉱業規制を実施するようになった。その後、2004年に同法改正の審議が開始されたが、永らく同国議会での審議が進展しなかったところ、2013年4月23日に漸く同国議会で改正法案が可決、成立し同年9月に施行された。


(2) 主なポイント

 鉱業法改正における最大のポイントは、鉱業関係当局の再構築と鉱業ロイヤルティの導入である。また、鉱業コンセッションに関する透明性を高め、国内外に対し法律に基づき各種鉱業施策が実行されていることを示す工夫を行っている。

 なお、今般同法を改正するに際し、チリやカナダの鉱業法を参考に法案を策定したとされている。


① 鉱業関係当局の再構築

 従前天然資源・環境省内において、鉱業に関しては金属と非金属とを同じ部局で対応していたが、本改正に伴い金属と非金属とを分離した。

 また、従前天然資源・環境省傘下で鉱業コンセッション(鉱業権)の付与(許可)等鉱業に関する行政手続き等を執行していた「鉱業振興執行局(DEFOMIN)」を新たに「ホンジュラス地質鉱山研究所(INHGEOMIN)」へ改組するとともに、権限を強化した。

 ただし、鉱業行政を執行する上で必要となる専門的知識を有する職員が少ないため、鉱業企業からの情報をそのまま活用(採用)せざるを得ないケースが見受けられることから、鉱業界としては必ずしも独立した組織になったとは感じていない。なお、専門的知識を有する職員が少ない理由としては、当該職員に対する給与が低いため、優秀な専門家を確保することができないとされている。


② 鉱業ロイヤルティの導入

 鉱業ロイヤルティに関しては鉱業法改正以前も存在していたが、料率が0%に近かったため、その存在は殆ど考慮に値しないと考えられていた(注1)。そのため、一部有識者や国会議員から、0%に近い鉱業ロイヤルティであれば存在する価値が無いため廃止するか、存在させるのであれば然るべき料率にすべしとの意見が出され、結果として改正鉱業法に然るべき料率を規定することとなった。

 新たに導入された鉱業ロイヤルティは、改正鉱業法第76条にてFOB(Free on Board:本船甲板渡し条件)に対し6%(注1)と規定された。なお、鉱業ロイヤルティによる歳入(税収)は、鉱業活動が行われている自治体(地方政府)、INHGEOMIN及びホンジュラス政府(大統領府)にそれぞれ配分されることとなる。

 (注1) これまで一部報道情報では鉱業ロイヤルティは4.5%と報道されていたが、誤報である。


(3) 改正鉱業法に対する評価

 法案審議においては、大凡全てのステークホルダーが議論に参加しており、また、そもそも鉱業活動には環境や安全等のリスクを伴うものであるが、改正鉱業法ではこの点に関する規定が盛り込まれており、リスク低減が期待できるとの観点から、鉱業界も改正鉱業法の内容については好意的に受け止めている。特に、従来、金及び銀の小規模鉱山ではシアン等有害物質を使用し採鉱を実施する際、その取扱いが杜撰であったため、近隣地域での環境破壊、鉱山周辺住民や鉱山労働者への健康被害等が発生していたが、改正鉱業法により有害物質の取扱いを規制したため、今後は近隣の自然環境、鉱山周辺住民や鉱山労働者に対する保護が期待できる。

 ただし、鉱業界としては、利益が出にくい一因となっている電力、燃料、火薬等に係るコストを引き下げるような方策として、当該コストに対する免税措置等の規定を鉱業法で求めていることから、今後は政府に対しこの点に関する要望を提出し、行く行くは当該規定を盛り込むべく鉱業法の更なる改正に繋げたい意向を示している。

 一方、諸外国でも見られるとおり、同国においても環境保護団体等による鉱業反対の立場は変わらないことから、これら団体等は改正鉱業法の内容に不満を有している。

 なお、一部で報道されたような改正鉱業法の更なる改正に関する動きは、現時点においては一切ないとのことである。

4. 鉱業コンセッション(鉱業権)

(1) 鉱業コンセッションの付与(許可)の再開

 José Manuel Zelaya Rosales大統領時代の2006年に、当時の鉱業法がホンジュラス憲法に違反している旨の裁定が裁判所で下されたため、同年以降2009年までの間、鉱業コンセッションの付与(許可)が停止した。その後2010年にPorfirio Lobo Sosa前大統領時代に付与(許可)が再開されたものの、依然として鉱業法が改正されていないため、従来の規定による付与(許可)が行われた。

 こうした中、2013年の鉱業法改正により新たな規定による付与(許可)が開始され現在に至っており、政府当局、鉱業界共に付与(許可)自体は現状執行されているとの認識を示す一方、鉱業界からは以下のとおり一部不正行為が残っているとする指摘もなされている。


(2) 鉱業コンセッションの付与(許可)に関する申請等手続き問題

 ホンジュラスでは、鉱業コンセッションの付与(許可)に関する申請等手続きにおいて、鉱業当局が申請者に対し不当な申請料を要求したり、仮に申請者が当該要求を拒否した場合には鉱業コンセッションの付与(許可)を不当に遅延したりする等の問題が発生していた。このため鉱業企業各社やホンジュラス鉱業協会(ANAMIMH)は、2014年1月にJuan Orlando Hernández大統領が新たに大統領に就任し新政権が樹立されたのを契機に、当該問題を是正すべく政府に対し改善を要求した。これを受け4月に同大統領が鉱業当局である天然資源・環境省に対し、改善要求の実態を究明するよう指示を行った。なお、一部関係者の間では、実際に不正行為等汚職の温床となっているのは、天然資源・環境省や財務省等許認可権限を多数有する機関であるとの指摘もされている。

 本件に関しては、同大統領の指示による実態究明により、これまでに不当な申請料を要求し着服したとされる複数の職員に対し懲戒免職等の処分が科せられた。また、鉱業法改正により、鉱業コンセッションの付与(許可)等に係る行政手続きに関する標準事務手続き期間(注2)も定めたほか、各種申請手続きに関しコンピュータを導入する等手続きの簡素化に努める等、政府としても然るべき対応を実施していることが伺える。

 これに対し、鉱業界からは一定の評価がなされている一方、鉱業法改正に伴う組織変更(DEFOMINからINHGEOMINへ)を行った後でも一部不正行為が行われているほか、そもそも同国ではコネや不正行為等腐敗や汚職が文化的な問題になっているとの指摘もされている。

 (注2) 探査に関する申請手続きに要する期間は45日、探鉱に関する申請手続きに要する期間は90日と規定。


(3) 鉱業コンセッションの取消し

 2014年8月に天然資源・環境省は、開発が行われていない236件の鉱業コンセッションを取り消す旨の発表を行った。実態としては、鉱業コンセッションの付与(許可)を受けたものの、資金不足等のため開発が全く行われず放置された案件が多数見受けられたため、同省としては、開発が行われていない等条件が満たされていない鉱業コンセッションを取り消し、当該案件を新たな企業(個人)に対し開発を委ねることを目的とした。

 鉱業界としては、今回の取消しにより、新たな企業に対し当該案件の鉱業コンセッションが付与(許可)されることとなり、鉱業の活性化に繋がるとして好意的に受け止めている。特にカナダや米国等の鉱業企業は、ホンジュラスでの鉱業コンセッションに興味を示していることから、今回の措置により鉱業コンセッションを獲得する機会が増えることを歓迎している。また、鉱業関係者の中には、鉱業企業が付与(許可)を取得してから6か月~1年の間に開発に着手しない場合には、即座に取消しの措置をすべきとの考えを示す者もいる。

 一方、同省としては、当該取消し案件について早い時期に内容を精査し公表する意向を示している。また、当該取消し案件については、特に公開入札を予定しておらず、希望順(先着順)で付与(許可)することを検討している。

 なお、現在鉱業コンセッションに関する申請手続きから付与(許可)後の管理・監督までの全てをINHGEOMINが行っているが、今後、付与(許可)後において当該付与(許可)を取得した企業が実際に期限内に開発を開始するか否かを監視する業務に関しては中央銀行に委ねることを計画している。

5. 鉱業プロジェクトの現状と今後の見通し

(1) 現状

 鉱業プロジェクトにおいてコンセッションの付与(許可)を受けているものは、全体で260件程度と少ない。そのうち約160件は非金属であり、金属は残りの100件程度である。この100件程度の約半数が大企業によるもので、かつ、随分古い時期にコンセッションを付与(許可)したものである。また、これら大企業は、主にカナダ、米国、スイス、中国や一部JVで参加しているスペインであり、これら以外の中小企業は地元ホンジュラスである。


(2) 今後の見通し

 現在、特にカナダの鉱業関係者が頻繁にホンジュラスにてポテンシャル調査を行い、その結果を本国へ送付しているとのことであり、ドイツも同様な動きを見せているようであるため、今後カナダやドイツによる投資が進展する可能性が伺える。なお、これらは大規模プロジェクトに関する動きであるが、鉱業関係者においては、鉱業法改正により小規模プロジェクトに対する海外からの支援も期待できるとのことである。

 鉱種に関しては、歴史的に金や銀を中心に採鉱されてきたが、多くの開発が進められてきたわけではないため、今後は金及び銀の探鉱、開発への投資が期待されるとのことである。なお、賦存状況に関しては、地質学的見地から十分な精査がなされていないのが現状である。

おわりに

 ホンジュラス鉱業に関しては、政府当局によるウェブサイト等で公表している統計資料等が乏しく、また、鉱業に関する報道情報も信憑性に疑問がある上、同国が抱える治安問題を考慮すると現地での情報収集にも限界があること等から、正確な情報を把握することが困難な状況にある。

 しかしながら、鉱業ポテンシャルに関しては、カナダや欧州企業が中心となり積極的に活動を行っていることや、過去からの鉱業実績等を踏まえると、それなりの可能性を秘めていると想定される。また、2013年の鉱業法改正や、本年1月に就任した新大統領の下、多少なりとも政治的な安定が見受けられる等、鉱業投資を行う上で必要となる条件が少しずつではあるが整いつつあるように見られる。

 こうしたことから、依然として治安と言う非常に重大な課題が残されてはいるものの、時期は明言できないが、将来我が国が投資を検討するとした際に参考となる情報は必要であると思われるため、同国鉱業に関する情報収集は引き続き継続していくことが求められる。



おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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