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  平成26年11月 6日 2014年43号
銅需給、2015年は5年ぶりの供給過剰に転じる
-2014年秋季国際銅研究会(ICSG)需給予測-


< ロンドン事務所 キャロル涼子 報告 >

 2014 年10月13日と14 日の2日間にわたって、リスボンにて国際銅研究会(ICSG)*の秋季定期会合が開催された。参加者は、ICSG加盟国や産業団体、企業、専門家等の約50名。14日に開催された統計委員会では、2013年から2016年までの銅需給バランスに関して、加盟国から提出された数値や中国の保税在庫の変動調整をベースに、専門家及び各国参加者により検証が行われた。本稿では主に2014年以降の銅需給見通しについて報告する。

1. 需給バランス―2014年7月以降余剰傾向、2015年は39万3千tの供給過剰―

 ICSGによると、2014年7月単月の需給バランスは、前6ヶ月間の供給不足傾向から回復して7万7千tの供給過剰となった(中国保税在庫量は未調整)。一方、2014年の年間需給バランスは30万7千tの供給不足が予測されている。さらに2015年から16年については、中国や米国・欧州・日本・インドで銅地金生産が増加する予定のほか、ザンビア・メキシコ・DRコンゴ・米国・カザフスタン・ペルーでSX-EW生産が増加する見込みで、39万3千tの供給過剰が予測されている。また、イランで2016年から稼働予定の新製錬所も増産要因である。

表1:世界の銅需給バランス

(単位:千t)

区分 2013年
見込み
2014年
1月~12月
2015年
予測
2015年
成長率
2016年
予測
銅鉱石生産 18,101 18,579 19,816 6.7% 21,289
銅地金生産(供給) 21,058 22,136 23,086 4.3% 23,958
銅地金消費(需要) 21,331 22,443 22,692 1.1% 23,377
需給バランス ▲ 272 ▲ 307 393   5 81

(出典:ICSG会議資料より作成)


 2015年から2016年にかけて見込まれている供給過剰予測には、銅精鉱生産の増加分としてザンビアで2015年から生産予定のSentinel鉱山の拡張(15万t/年→30万t/年)やメキシコBuenavista鉱山の拡張(12.5万t/年→31.3万t/年)が加味されているが、プロジェクトの遅延やザンビアの税制の動向等によっては変動の可能性がある。

2. 銅鉱石生産量―主要生産国で概ね増産傾向、2014年は対前年比2.6%の伸び―

表 2:2014 年の主要国銅鉱石生産動向予測(2013 年比)

主要生産国 増減量
(千t)
増減率 世界
シェア
減産国
インドネシア -111 -22% 2%
ザンビア -54 -7% 4%
豪州 -28 -3% 5%
増産国
米国 170 13% 8%
DRコンゴ 80 10% 5%
中国 78 5% 9%
エリトリア 63 287% 0%
モンゴル 58 29% 1%
チリ 57 1% 31%
カナダ 50 8% 4%
メキシコ 46 10% 3%
ブラジル 44 16% 2%
ペルー 36 3% 8%
世界合計 527 2.9%  
調整後の世界合計 2.6%  
2013年の世界の成長率 8.4%
2008年から2012年の平均成長率 1.5%

 世界の銅鉱石生産量について、2013年は対前年比8.5%増の1,810.1万tとなった。2014年7月までの7か月間には、前年同期比3%の生産量の増加があったものと推定されている。このうち銅精鉱生産が4%増加したのに対し、SX-EW生産が1%の伸びにとどまっている。

 また2014年7月までの7ヶ月で、銅精鉱の輸出禁止が影響したインドネシアで10%、Lumwana銅鉱山の操業支障やほかの銅鉱山の減産が相次いだザンビアで13%、さらに2鉱山が1時操業停止となった豪州で4%の減産が報告されている以外は、概ね生産増加の傾向にある。

 2014年の年間予測生産量(調整後)は1,857.9万t(表3参照)で成長率は2.6%である。また主要生産国の増減予測を表2にまとめた。このうち米国での増産は、比較した2013年上半期の数値が、Bingham  Canyonの土砂崩れによる生産停止で減産した際の数値であるため、その復旧による増産値であることに留意する必要がある。

 なお、2014年7月までの世界の銅鉱山稼働率は、83%であった。

(調整後の世界合計は供給障害も考慮。出所:ICSG 統計委員会資料より和訳

3. 銅地金生産量―中国の増産が牽引し2014年は対前年比5.1%増―

 世界の銅地金生産量については、2013年は対前年比4.5%増の2,105.8万t、2014 年は同5.1%増の2,213.6万tとなる予測。2014 年の7か月間は、前年同期比でそれぞれ一次地金生産が7%、二次地金生産が8%の伸びを示している。このうち主な増産国は中国で、61万5千tを増産し17%の増加。続いてインド、DRコンゴ、米国、日本も増産でこれら4か国合計では33万t(対前年比16%)の増産が報告されている。一方、世界第2位の銅地金生産国であるチリでは、SX-EW生産が7.5%減産した影響で、銅地金生産量が3%減の見込みである。その他の国々も含めた生産・消費量については、表3と図1にまとめる。なお、2014年7月までの世界の製錬所の平均稼働率は、2013年同期の79%から80%へと僅かながら上昇している。

4. 銅地金消費量―本年内は中国需要依然堅調、2014年は対前年比5.2%増―

 世界の銅地金消費量については、2013年は対前年比4.5%増の2,133.1万t、2014 年は同5.2%増の2,244.3万tと、中国が世界需要を引き続き牽引すると予測した。この中国の消費量については、2013年上半期に低調だった銅地金の輸入量が2014年の7ヶ月間に34%増加したことに基づき見かけ需要(中国保税在庫量は考慮しない需要量)が21%伸びると予測したものである。中国を除く世界需要では、欧州で11%、日本で10%の需要増が見込まれることから全体で対前年比5%の需要増との予測となっているが、比較値となっている2013年の欧州・日本の需要値が2012年比で3%落ち込んだ数値だったことを考慮する必要がある。またこれまで2年連続で5%程度の成長を続けた銅地金需要も、2015年には中国経済の減速により同国の見かけ需要が1.8%の成長にとどまる見通しであることから、世界需要の伸びも1%程度にとどまると見込まれている。

表 3:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2013~2016年)

(単位:千t)

区分 鉱山生産量 地金生産量 地金消費量
2013 2014 2015 2016 2013 2014 2015 2016 2013 2014 2015 2016
アフリカ 1,841 1,941 2,273 2,504 1,275 1,383 1,566 1,724 247 253 263 270
北米 2,393 2,660 2,892 3,082 1,717 1,838 1,965 2,040 2,321 2,400 2,472 2,527
中南米 7,556 7,691 8,294 8,604 3,405 3,331 3,346 3,348 626 649 668 689
ASEAN-10 794 693 1,114 1,443 491 505 620 623 916 901 945 980
中国 1,561 1,639 1,730 1,825 6,640 7,256 7,780 8,290 9,634 10,269 10,405 10,900
その他アジア 519 586 713 803 2,910 3,129 3,184 3,282 3,312 3,533 3,633 3,638
CIS 582 573 606 673 436 353 368 378 101 102 103 103
EU 855 851 850 863 2,658 2,769 2,799 2,803 3,022 3,247 3,285 3,330
その他欧州 897 924 937 948 1,046 1,060 1,091 1,121 1,153 1,089 920 940
オセアニア 1,104 1,070 1,095 1,150 481 522 505 470 消費量はASEAN-10へ編入
世界計 18,101 18,628 20,503 21,894 21,058 22,146 23,223 24,078 21,331 22,443 22,692 23,377
生産世界計(調整後) - 18,579 19,816 21,289 - 22,136 23,086 23,958 - - - -
変化率   2.6% 6.7% 7.4%   5.1% 4.3% 3.8% 4.5% 5.2% 1.1% 3.0%
消費量世界計(中国除く) 11,697 12,174 12,242 12,477
消費量の変化率(中国除く) 1.2% 4.1% 0.6% 1.9%
需給バランス -272 -307 393 581

(出典:ICSG会議資料より作成)

図 1:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2013~2016年)

(出典:ICSG会議資料より作成)

図 1:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2013~2016年)

おわりに

 ICSGでは、前回の会合から生産量・消費量の統計において、中国の数値は世界的なコンサルタント会社3社の数値から平均値を採用し、より実態に近づけるとともに、公平性・透明性の確保に努めている。今回の会合では、今年の7月に発覚した青島港の二重担保問題を受けて、特に中国の保税在庫量について慎重に配慮しなければならないという姿勢がうかがわれた。なお、ICSGの公表によると、中国の保税在庫は本年夏にかけて増加したが、前年に比べると減少している。また、主要金属取引所(LME,COMEX,SHFE)の銅在庫量も同様に夏にかけて減少し、9月以降増加傾向にある。これについては、7月以降に中国の精錬会社の採算改善による増産があったことや、8月以降にインドネシアからの鉱石輸出が再開されたことなどが影響していると考えられる。しかし、中国の需要減退に対する不安感から銅価格の下落が続く現在、在庫増によるさらなる価格の低下を警戒する市場関係者の声も聞かれることから、今後の市場動向を注視していきたい。


(注記)
 国際銅研究会(ICSG)

 国際銅研究会は、国際非鉄3研究会の中では最も新しい研究会で、国連の招請・勧告によって1992年に発足した国際機関である。世界の銅経済に関する情報の提供、政府間協議の場の提供及び銅に関する諸問題について国際協議・協力を推進することが目的で、世界の主要銅鉱石生産国、地金生産国及び消費国の23カ国及びEUが加盟している。事務局は、2006 年からポルトガル・リスボンに設置されている。

 同研究会は、主に銅市場の需給予測に関する統計分析を始め、国際的な貿易取引に係る環境・経済面の課題について研究しており、統計等の刊行資料は、世界的に一定の評価を得ている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。



おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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