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  平成27年10月29日 No.15-44
エクアドル:鉱業省設置と新しい鉱業投資誘致策

< リマ事務所 迫田昌敏 報告 >

 2015年2月、エクアドル政府は、鉱業省(Ministerio de Minería)を設立した。これまで鉱業部門を管轄してきた非再生天然資源省(Ministerio de Recursos Naturales No Renovables)から分離・独立した形となり、同省は炭化水素省(Ministerio de Hidrocarburos)と名称変更された。

 鉱業省の初代大臣には、Javier Córdova Unda前非再生天然資源省鉱業副大臣が就任した。同大臣は、日本企業をエクアドルの鉱業開発に誘致することに意欲を示し、2015年3月12日、小瀧駐エクアドル日本国大使が表敬した際、チリやペルーにおける日本企業との意見交換や、日本訪問の可能性に積極的な発言をした。

 2015年9月1日、Córdova鉱業大臣は、ペルーのリマを訪問し、在ペルー日本大使館において、在ペルーの鉱山開発関連日本企業数社を前に、同国の鉱業投資誘致策を説明した。JOGMECリマ事務所は、この説明会の直前、同国の鉱業開発政策上の問題点について、直接質す機会を得た。

 このなかで、同大臣は、鉱業省設立の理由について、これまで同国の鉱業政策を管理する部署は、非再生天然資源省内の鉱業次官室として、石油セクターに劣後する位置づけであったため、鉱業セクターの促進には、同省からの独立が必要だと判断されたと語った。また、新しい鉱業省が注力する分野として、①小規模及び零細規模鉱業に対する合法化・技術力向上のための助言・環境汚染対策、②中~大規模鉱業の開発促進、③未探鉱エリアの地質情報収集の促進、の3点を挙げた。

 同国の鉱業投資上の大きなネックとなっている超過利益税については、基本価格の設定方法を明確化するとともに、事業のキャッシュフローが黒字化してから課税するよう、運用面の改善を行ったと説明した。また、同様に懸念材料とされている鉱業契約制度については、交渉で決定する事項の大幅な縮小に取り組んでいる旨説明し、理解を求めた。

 具体的な一問一答を、下記に示すとともに、若干の補足説明を加える。大臣の発言内容は、なるべく発言の真意に近くなるように和訳したため、やや読みにくいぎこちない日本語表記表現になっていることをご容赦願いたい。

写真2点「左:Cordova鉱業大臣と筆者の写真」と「右:エクアドル日本国大使を交えたインタビューの様子の写真」
問: 2015年2月、非再生天然資源省(Ministerio de Recursos Naturales No Renovables)を、炭化水素省(Ministerio de Hidrocarburos)と鉱業省(Ministerio de Minería)に分離されましたが、その背景と理由をお聞かせいただけないか?

Córdova大臣 回答:

 私はJOGMECが日本で重要な役割を果たしているのを知っています。このたびお会いできて光栄です。

 Correa大統領は、今年2月、非再生天然資源省を分離する決断を下しました。この省には、石油・ガスと鉱業の二つの部門がありました。決断の理由は鉱業の促進を図るためでした。エクアドルは、この40年以上、石油開発に注力してきたため、鉱業分野で(そのポテンシャルに)相応しい発展が妨げられたのかもしれません。

 チリは世界一の銅生産国になり、ペルーも銅、銀、金を大量に生産する鉱業国になりました。一方、地質的に同様なポテンシャルを有する我が国(エクアドル)は、鉱業を発展させる能力に欠けていたようです。

 ひとりの大臣が両方の分野(石油・ガスと鉱業)を管理してきました。石油は40年間生産を続けており、我が国最大の輸出製品であったことから、偏った注目をされてきました。このことから、2つの部署を分離することに決まったのです。(今後)鉱業は独立した形で管理されます。鉱業省はまだ新しく、組織図は最終版が承認中の段階なので、後日伝えたいと思います。

 今年7月、鉱業省は大統領に対し、次の3項目について説明しました。

 1. 既存の小規模鉱山や零細採掘は、適切な形で操業し続けられるよう、規制と合法化プロセスを進めてゆく。また、彼らの技術力が向上するよう(助言する)。さらに、小規模鉱山では環境汚染が発生している(ため、その対策)。

 2. 大規模プロジェクトの発展は重要課題です。エクアドルには地質的に大きなポテンシャルがあり、生産段階には至っていませんが、開発中の大規模鉱業プロジェクトがいくつかあります。例えば、推定金量7百万ozのFruta del Norteプロジェクトは、未開発のなかで世界第一級のプロジェクトです。また、銅量5,000百万lbのMiradorプロジェクト、中規模ですが金量60万ozのRio Blancoプロジェクト、ENAMI EP社(エクアドルの国営鉱山企業)とチリのCODELCO社が協定して進める銅開発プロジェクトなど、現在探鉱中のものがあり、これらを発展させることが第2の課題です。最も進んでいるプロジェクト(筆者注:Miradorのことと思われる)は2018年生産開始を見込んでいます。

 3. 地質情報の収集。エクアドルには地質的に大きなポテンシャルがあるにもかかわらず、全国土の5 %しか探鉱されていません。未探鉱エリアの調査に注力したいと思っています。金属資源価格の低下は明らかですが、有望地域の把握に全力を尽くしたいと考えています。鉱山会社の探鉱を許可し、又はその活動を促進し、政府として地質情報の充実に努めたいと思います。

 以上をまとめると、探鉱促進と地質情報の収集により、将来的なプロジェクトを育てること、現在開発中の中~大規模プロジェクト(を進展させること)、そして既存の小規模鉱業の合法化と技術能力の向上(を図ることの3点となります)。

<筆者注>

 エクアドル政府は、2010年12月に、新鉱業法第41条に基づき、大規模及び中規模鉱山の操業に関して鉱山会社と政府との間で取り交わされる鉱業契約のモデルを作成し、また、探鉱ステージの進んだ政府指定の大規模戦略プロジェクト5件について、その後契約交渉を進めると発表した。

この5件とは、

 ① Fruta del Norte金・銀プロジェクト

 ② Loma Larga(旧Quimsacocha)金・銀プロジェクト

 ③ Rio Blanco金・銀プロジェクト

 ④ Mirador銅・金・銀プロジェクト

 ⑤ Panantza-San Carlos銅・モリブデン・金・銀プロジェクトで、2010年当時はすべてカナダまたは米国資本の企業の探鉱プロジェクトであったが、現在、③、④及び⑤のプロジェクトは中国企業の所有となっている。

問: Fruta del Norteプロジェクトについて差支えない範囲でお伺いしたい。カナダのKinross Gold社が撤退後、同じカナダのLundin Gold社が開発を手掛けることになった。Kinross Gold社の撤退の大きな原因は70 %の超過利益税だと聞いている。Lundin Gold社による開発においても、この超過利益税が大きなポイントになるとみているが、鉱業契約交渉を含めて、今後の見通しについて伺わせていただけないか?

Córdova大臣 回答:

 2013年に撤退したKinross Gold社は、その理由に、政府との超過利益税を巡る交渉を挙げていましたが、同社にはアフリカでのプロジェクト費用の調達などの複数の要因があったようです。現在、Lundin Gold社と交渉を再開しています。今年12月には事前協約が出来ると思います。

 今回の交渉に際し、政府はふたつの譲歩の決定をしました。

 超過利益税は、基本価格から決めます。市場価格が基本価格以下であれば課税対象にはなりません。例えば、金について、基本価格を1,500 US$/ozとしておいて、市場価格が1,180 US$/ozならば課税対象外です。これが市場価格1,600 US$/ozになれば、超過分の100 US$/ozについて、国:企業=7:3で分けます。

 Kinross Gold社のときは、この基本価格を両者の交渉で決めていました。1年前、大統領の決定により、基本価格の算定方法について、Wood Mackenzie社に依頼して作成しました。この式は10年間の平均価格に標準偏差を加算したものとなっています(下図参照)。民間企業も安心できると思います。

図1. 基本価格の算出方法

図1. 基本価格の算出方法

 さらに、超過利益税の運用面において、大統領は法律に新たな項目を加えることを承認しました。それは、キャッシュフローがポジティブ(黒字)になってから、超過利益税を運用するというものです。例えば、事業の開始点から鉱山開発の全投資額が未回収の期間(キャッシュフローがネガティブ)は、超過利益税は賦課されません。

 つまり、キャッシュフローがポジティブになってから初めて超過利益税の対象となり、基本価格の算定式に従って計算されるのです。従前の方式は民間企業に不利だと考え、今回対策を打ちました。これにより、例えばFruta del Norteのようなプロジェクトでは、キャッシュフローがネガティブの期間が15年と予想されますが、この間に更なる投資をすれば、その期間はさらに先に延びます。だから、超過利益税とは、大規模プロジェクトの場合、開発開始後10~15年後になって初めて対象となる税金であるということです。Wood Mackenzie社の推計では、市場価格が基本価格を超える確率は17 %です。つまり、83 %の確率で超過利益税は発生しないと言えます。

 この制度はもともとKinross Gold社の希望でもありました。2014年11月に大統領の承認を受け、法整備されました。この制度により、民間企業は投資の回収が出来る安心感を持てるでしょう。このことは、Fruta del Norteプロジェクトを進めるLundin Gold社も賛成していると思います。他の民間鉱山企業も同様です。

<筆者注>

 上記に加え、超過利益税(Impuesto a Las Ganancias Extraordinarias)を含む同国固有の税体系として、Ajuste Sobrerano(AS、仮に「主権調整税」と訳しておく)がある。これは、同国憲法第408条の規定「天然資源で得た収益につき、国家は開発企業が得る収益の半分以上を得る」に基づき、国家の利益が企業の利益を下回らないように調整するためのものであり、これまでの算定式では、当期純利益をもとに算定されていた(図2の上のグラフ)が、新しい算定式ではフリーキャッシュフローをもとに算定され(図2の下のグラフ)、ASの発生が先延ばしされるとの説明も9月1日の説明会においてなされた(Beneficio Estado=国家利益が、Beneficio empresa=企業利益を下回った時にASが徴収される)。

図2. 主権調整税算定方法の変更1
図2. 主権調整税算定方法の変更2

図2. 主権調整税算定方法の変更

問: 1990年代に、エクアドル政府と我が国のJICA/MMAJによる資源開発協力基礎調査では、Junin地域と称した調査を実施し、3億t余りの予想鉱量を見込んだ。その後、Ascendant Copper社によるF/Sでは推定鉱量10億t弱と見込まれている。このプロジェクトは、現在プロジェクト名がLurimaguaに変更され、ENAMI EPが権益を持ち、チリのCODELCOと組んで開発事業を進めている。当時から環境対策が必要だとされていたが、環境対策を含め、このプロジェクトの開発見通しをお聞かせいただけないか?

Córdova大臣 回答:

 このプロジェクトに関して環境問題が発生したとは聞いていません。ただ、社会問題は確かにあったようです。Ascendant Copper社が探鉱していた頃は、住民との紛争が多発し、開発作業ができなかったと聞いています。CODELCOと協定後、ENAMI EP社が住民側と積極的に交流し、問題は解決されていると考えています。今年5月からボーリング調査も開始することができ、現在まで4千メートル実施、年末までに15千メートルに達すると予想しています。来年は20千メートルのボーリング調査を計画しています。政府としても、このプロジェクトを高く評価しており、ボーリング調査の結果を期待しています。

<筆者注>

 1990年代、JOGMECの前身であるMMAJ(金属鉱業事業団)は、資源開発基礎調査Junin地域で、3億t余りの予想鉱量を見込む銅鉱床を発見した。しかし、この鉱床賦存エリアは熱帯雲霧林にあたり、開発にあたっては、生物多様性等を勘案した環境保護や、住民移転などの問題が立ちはだかり、住民の反対運動もあって、我が国によるその後の調査活動は行われていない。

 その後、カナダのAscendant Copper社の探鉱活動が行われたものの、2008年に撤退。2012年、エクアドル鉱業公社ENAMIとチリのCODELCOが協定を締結し、探鉱活動を再開した。

 2014年4月、開発計画の中心地域Junin村の村長が逮捕されるなど、住民による反対活動が無くなったわけではないであろうが、以前活発であった国際NGOを中心とする鉱業への反対活動は、2011年7月のNGO管理法改正に伴い、永住ビザを持たない外国人の政治活動等が禁止されたことにより下火になった。

 現在、このエリアで鉱業開発に組織的に反対しているのは地元組織DECOINのみとなっている。大臣の発言にある住民側との交流はSocializaciónと呼ばれ、現地説明会という形で積極的に開催されている模様である。

問: エクアドルの鉱業権の付与プロセスについてお伺いしたい。現行では、探鉱やF/S段階から採掘段階に進むためにはF/S期間中に企業が政府と鉱業契約を締結するよう義務付けている。しかし、採掘は数億US$の開発投資を行った後のことであり、企業にとって投資後の鉱業契約締結交渉は不利となる。鉱業権が入札で付与され、この条件が閉山まで維持されるのでなければ、投資家にとって魅力的なものとは言えない。鉱業権の付与が、早いステージから保証されることが、投資家の信用を得るうえで重要であると考えるが、いかがお考えか?

Córdova大臣 回答:

 本件の重要性については我々もはっきりと認識しています。鉱業権は探鉱から開発・選鉱までを許可するものであり25年間有効である一方、途上段階である経済評価終了時に鉱業契約の交渉が行われます。即ち、初期段階にリスクのある投資を行い、経済的にも採掘可能と判断される鉱床を発見し、経済評価においても適切な条件がそろった上で、契約交渉を行わなければなりません。

 そこで合意に至らなかった場合、これまでの投資が全て無に帰してしまうリスクがあるということは投資家にとって全く魅力的ではない。我々もこのことは良く理解しています。そこで、我々がまず第一に取り組んだのは、「交渉」すべき事項の抹消です。以前の例を挙げますと、Kinross Gold社との契約交渉では超過利益税の基本価格を巡る交渉が行われましたが、現在、基本価格は一定の計算方法に基づいて算出されるので、個別に交渉することはありません。

 また、開発段階への移行時に初めて契約内容を交渉するのではなく、投資の初期段階から、投資家が契約内容をあらかじめ把握できるようにし、契約書締結時には、疑問点の解消やロイヤルティの金額についての交渉のみが残るよう調整をしています。さらにロイヤルティに関しても、交渉によって取り決めるのではなく、事前に条件を定める方向で調整を行っています。

 例えばチリでは、ロイヤルティは固定されておらず、生産量、品位、金属価格に基づいて算出されます。同様に我々もロイヤルティの算出方法をあらかじめ定め、投資家がプロジェクトを開始する第1日目から諸条件を把握できるべく作業を行っています。我々は、契約交渉を行うことが、(投資家サイドの)懸念を招いていることを重々理解していますが、今説明申し上げたとおり、交渉すべき事項の多くは既に取り除かれており、唯一残っているロイヤルティの件に関しても算出モデルを策定中となっています。(投資家サイドの)懸念はよく理解しています。

<筆者所感>

 このたびの面談を通じ、印象的だったのは、Córdova鉱業大臣の積極的な姿勢である。エクアドルは、原油価格の低迷を受け、2015年8月、8億US$の予算削減を発表した。今年1月に発表された14億2千万US$の削減と合わせると、2015年予算は22億2千万US$削減されたことになる(当初予算歳出総額328億6850万US$の6.8 %)。

 また、2015年の予算案における石油収入の設定価格が79.7 US$/bblだったのに対し、2016年予算の同価格は40 US$/bblを超えない参考価格を用いて編成中であるという。8月26日付けAP通信によれば、Correa大統領は、エクアドル産原油の販売価格30 US$/bblが生産コストの39 US$/bblを大きく下まわり、予算削減か増税が必要になるとの認識を示したと伝えている。

 同国経済は、石油収入をもとにした公共投資に大きく依存する体質であり、この予算削減は経済成長に大きなブレーキとなることが予想される。このような難局を打開するためにも、鉱業セクターに寄せられる期待は大きいものと想像できる。

 なお、この面談の実現に関しては、小瀧在エクアドル日本国大使の御尽力大なるところ、紙面を借りて感謝申し上げる。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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