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  平成28年9月9日 No.16-34
鉱山跡地の修復活動に関する国際学会CLRA参加報告

<金属環境事業部 林健太郎/金属資源技術研究所 佐藤佑樹 報告>

はじめに

2016年6月26〜29日、リクラメーション(Reclamation:鉱山跡地の修復活動)技術に関する国際学会CLRA(Canadian Land Reclamation Association)がカナダ・ON州ティミンズで開催された。JOGMEC金属環境事業部及び金属資源技術研究所は、今回初めてこれに参加し、自然力活用型坑廃水処理(パッシブトリートメント)技術の他、リクラメーション技術として覆土植栽や露天掘り跡の整形、環境影響調査・評価、鉱害防止分野における微生物解析等に関する海外の研究事例や技術動向について情報収集を行った。本報では、情報収集の結果として自然力活用型坑廃水処理技術に関連するいくつかの講演を報告する。

1. CLRA概要

CLRAは1975年に発足したカナダ国内におけるリクラメーションを主とした学会であり、近年は毎年当学会の年会が開催されている。今般参加した大会は、41回目の年会(41st CLRA’s National Annual General Meeting and Conference)にあたる。

当大会には、開催国のカナダ国内からほとんどの参加者が集まる中、海外からの参加はJOGMECからの2名のほか、英国など若干名であった。所属機関としては鉱山会社、環境系コンサルタント企業、大学関係者等であり、約160人が参加した。

取り扱われたテーマには、閉山処理や環境修復といったものの他、休廃止鉱山の有効活用や人工湿地等による自然力活用型坑廃水処理、微生物解析や環境影響評価等があり、2日間で約50件の講演が行われた。

Opening Ceremonyの様子

Opening Ceremonyの様子

2. 人工湿地方式による自然力活用型坑廃水処理のケーススタディ
Constructed wetland design and optimization for metal and metalloid treatment at the Minto Mine, in the Yukon, Canada

講演者:PhD. Monique Haakensen氏(Contango Strategy社代表)

自然力活用型坑廃水処理技術に関する微生物解析やラボ試験等を行うContango Strategy社の研究グループから、人工湿地方式による自然力活用型坑廃水処理の実導入に関するケーススタディの講演があった。

当ケーススタディは、YT準州にあるMinto銅鉱山の坑廃水(Cuを0.15mg/ℓ、Seを0.01mg/ℓ含む)の処理のために、人工湿地方式の自然力活用型坑廃水処理のFull Scale規模の導入を目指すもので、これまでに行われたデモンストレーション規模の現地試験までの結果が報告された。

同氏らのグループにおける実導入までの流れは、現地の情報収集→基礎試験→パイロットスケール(off-site)→デモンストレーションスケール(on-site)→フルスケールのステップから成り、各ステップで収集すべき情報や評価・検討すべき項目は下表のようにまとめられている。例えば、基礎試験では自然力活用型坑廃水処理の処理方式、pHやORPの設定値、水の流し方といった概念設計を行う。その後、パイロット・デモンストレーション試験に進むにつれ、植栽する植物種の選別や、滞留時間の設定、有効処理面積の確認等、より詳細な設計を行うものとなっている。

表:各ステップで評価・検討すべき項目(Monique氏の講演資料より)

Opening Ceremonyの様子

海外において、人工湿地方式は歴史が長く実導入事例が幾つか存在する処理プロセスである。しかし実導入にあたっては、現場ごとに坑廃水の水質や現地の環境、共存する微生物等が異なること、またパイロット試験やデモンストレーション試験でしか得られない知見が多くあるため、人工湿地方式であっても段階を踏んで実導入を目指していることが伺える。そのため、実導入にあたっては着実なスケールアップ試験が重要であることが示された講演であった。

3. プロセスに寄与する微生物の菌叢解析とプロセスの最適化事例
How to assess the Bio in Bioprocesses? Contributions of microbial community profiling to mine permitting, operations, and reclamation activities from the past 5 years

講演者:Vanessa Friesen氏等(Contango Strategy社研究グループ)

当講演は、鉱山分野のプロセスに関係する微生物の菌叢解析と解析結果によるプロセスの評価に関する内容であり、これまでその系の複雑さから十分に解析されずブラックボックス化されてきたプロセス中の微生物解析について、ここ数年での遺伝子学や微生物解析技術の進歩を受け、微生物菌叢として解析することでプロセスの最適化に活用する、といった趣旨のものである。

下図に示す通り、微生物の作用は鉱山分野においても様々なプロセス(例えばリーチングやレメディエーション)で重要なファクターであるとしており、講演ではケーススタディとして、金属イオンを含む坑廃水や発破火薬由来の窒素分を含む廃水の自然力活用型坑廃水処理プロセスの微生物解析、配管のつまりに影響する微生物を解析により特定しそれを防止する事例が紹介された。特に自然力活用型坑廃水処理プロセスの微生物解析事例では、解析結果を非計量多次元尺度構成法(nMDS、統計分析)により処理し評価することで、環境変化に対する菌叢の安定性を示し、プロセスとしても安定であることを示していた。

図:各プロセスにおける微生物の関与(Vanessa氏の講演資料より)

図:各プロセスにおける微生物の関与(Vanessa氏の講演資料より)

また同氏は、“微生物は単体ではなく菌叢としてプロセスに作用しており、かつ構築される菌叢はラボ試験では再現できない”とコメントし、現地実証試験(パイロット、デモンストレーション規模)での微生物解析の重要性を示唆した他、“現地の環境により菌叢が異なるため、現地の微生物をプロセスに活用し、また装置の設計も現地環境に近づけるようすべき”とのコメントをし、プロセスの最適化における微生物解析の重要性を説いていた。

4. バイオレメディエーションにおける微生物解析
Molecular identification and culture of fungi native to heavy metal contaminated Kam Kotia mine

講演者:Dr. Sharon Regan氏(クイーンズ大学)

当講演は、ヒ素等を含む汚染土壌のバイオレメディエーション(植物により土壌中の有害元素を吸収する技術)に利用するポプラなどのパイオニア植と共生し、植物の金属吸着能を向上させる菌根菌(植物の根の表面又は内部に着生したもの、キノコなど)の探索と培養に関するものである。

Kam Kotia銅・亜鉛鉱山(ON州の休廃止鉱山)における汚染土壌の微生物解析を行った結果、未知の菌根菌の存在が示唆されたことから、プランテンやトウモロコシとの共培養系を構築し、菌根菌の単離を行った。今後は単離された菌根菌を調査し、金属除去能力の検証などが行われる予定である。

バイオレメディエーションによる土壌汚染からの金属除去については、微生物の関与が推測されながらも、具体的に微生物に着目してプロセスを評価する研究はこれまでなされてこなかった。しかし本研究は、単一の植物による吸着能の比較評価から微生物を利用した吸収能の強化へとステップアップしつつあり、複雑なバイオシステムを利用した環境浄化への取り組みとして興味深く、今後の成果に期待が持たれるものであった。

5. 嫌気反応槽方式の低温環境への適用性調査
Mine closure strategy in the north: the use of semi-passive biological treatment for removal of As, Sb and Se from mine impacted water

講演者:Dr. Amelie Janin氏(ユーコン大学)

本講演は低温環境下における硫酸還元菌を用いた嫌気反応槽方式の処理性能に関するもので、同講演によるとカナダ・YT準州にある鉱山の閉山計画・処理において、近年では日常的なケアが必要ない処理方法として自然力活用型坑廃水処理の導入に注目が集まっているとのことである。そこで当研究では、同準州の現地環境(緯度が高い為に冬季は非常に低温になる)への適用性評価として、人工湿地方式より低温環境に耐性があると考えられる嫌気反応槽方式の、低温や凍結に対する処理性能評価が行われた。

実験ではEagle金鉱山(YT準州中部に位置)浸透水の模擬廃水(As:4.9mg/ℓ、Sb:0.14mg/ℓ、Se:0.47mg/ℓ)を処理原水とし、嫌気反応槽の構成物としてマツ科の木材チップを充填し、1%メタノールを有機物源として添加する条件で300日以上の連続通水試験を実施した(大きさ、滞留時間共に記載無し)。この連続通水試験においては、ユーコン準州における低温環境を模すため、室温を6℃に設定した条件や、一度反応槽を凍結させ、それを解凍して再度通水を開始するという方法で低温への耐性を評価した。試験の結果では、凍結解凍後もメタノールの添加をしていた間はAs、Sb、Seともに100日以上処理(除去率90%以上)されたが、メタノールの添加を停止したところSbとSeの処理は継続されたが、Asは処理されなくなったとの報告があった。

本講演はメタノールの添加を施すという、やや“バイオアクティブ”のコンセプトに近い基礎試験であったが、反応槽が凍結した場合でも解凍後に微生物が使える有機物が充分量供給されれば処理が継続されること、また低温環境といった微生物にとって過酷な条件への適用のために、微生物への“使いやすい”有機物の供給がキーとなることが示されていた。

おわりに

この度参加した41st CLRAは鉱山跡地の修復活動を中心とする学会であり、環境修復・自然回帰といった方向性の講演が非常に多かった。その中で、恒常的に人員や薬剤・電力を要するアクティブな坑廃水処理ではなく、より自然に近い形で処理を行う自然力活用型坑廃水処理技術を利用する事例が多く取り扱われていた印象を受ける。

また、カナダの様に広大な面積が用意できる国々においても、処理対象とする元素への対応・低温環境への適用という面から、人工湿地方式だけでなく硫酸還元菌を用いた嫌気反応槽方式にも注目が集められていたことは特筆される。さらにその処理プロセスをより効率的で、かつハンドリング性の良いものにするため、世界的にも微生物解析による最適化への取組みが多くなされていることを知る大変良い機会であった。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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