スペース
 
カレント・トピックス
 
 
 
 
 

  平成28年10月28日 No.16-37
COM(Conference of Metallurgist)2016の参加報告

<金属資源技術部 特命調査役 阿部 幸紀/金属資源技術部 生産技術課 滝口 浩之 報告>

はじめに

COM(Conference of Metallurgist)は、CIM(Canadian Institute of Mining, Metallurgy and Petroleum)の組織であるMetSoc(Metallurgy and Materials Society)が開催している国際的な製錬に関する学会で、1898年から毎年カナダで開催されている。JOGMEC金属資源技術部生産技術課では近年、製錬分野における技術開発業務に携わっていることから、世界の製錬技術の動向について情報収集を行った。

本会議は湿式製錬(Fe-Hydrometallugy)、電解精錬(Electrometallugy)、軽金属(Lightweight Metals)、レアアース(Rare earths)の4分野から構成される。今回はその中でも電解精錬を中心に情報収集を行い、本報告では次の項目を重点的にまとめた。

  • Short Course(Electrometallugy)
  • Technical Sessions(Electrometallugy)
  • Technical Sessions(Pyrometallugy)

電解精錬の分野は電解精製に比べて電解採取に関する発表が多い点が、国内の学会との違いであった。この背景としては世界ではリーチングやリサイクル原料に特化した炉を中心に製錬技術は進んでおり、その後工程として電解採取を用いていることがあると考える。参加者はカナダ、米国が大勢を占めていたが、欧州やアフリカ、アジアからの参加も一部あった。

会場の様子

会場の様子

(1)Short Course(Electrometallugy)

電解精錬の基本について、公式や理論について講義を受けた後、修了証が授与された。具体的な内容は電解精製、電解採取、溶融塩電解、電気化学的な排水処理などがあった。

はじめに電解精錬の導入について、Arizona UniversityのJ.Brent氏から発表があった。表1のとおり1895年の銅電解精製による生産量は米国や欧州が上位を占めていた。しかし、2013年の電解精製による銅生産(国別)では、図1のとおり中国が占める割合が最も大きくなっている。さらに表2で示す2013年の銅電解精製の生産量も、中国の製錬所がランキング上位を占めており、現在の電解精製による銅生産の中心は中国であることが分かる。

表1 1895年の銅電解精製による生産量(単位:t)

(J.Brent氏/ Arizona Universityの資料より抜粋)

表1 1895年の銅電解精製による生産量(単位:t)
図1 2013年の電解精製による銅生産(国別)(単位:t)

図1 2013年の電解精製による銅生産(国別)(単位:t)

(J.Brent氏/ Arizona Universityの資料より抜粋)

表2 2013年の銅電解精製の生産量(単位:千t)

(J.Brent氏/ Arizona Universityの資料より抜粋)

表2 2013年の銅電解精製の生産量(単位:千t)

次にMissouri UniversityのM.Moats氏による電解精製の講義では、アノードや電解液中の不純物の動向について報告があった。

はじめに電解精製に詳しくない方のために、筆者から電解精製の概略を説明する。銅精鉱は製錬所において乾式工程で処理された後、粗銅として銅品位99%程度まで高められる。粗銅は鋳造機で電解精製用のアノード(陽極版)に鋳造する。アノードの写真は図2のとおり。アノードは電解工程において硫酸銅溶液を張った電気分解槽にステンレス板のカソード(陰極板)と交互に入れて電流を流す。アノード中の銅分が硫酸銅溶液中に溶出し、カソードに電着させた後、カソードを引きあげて剥ぎ取りを行い、銅品位99.99%以上(4N)の電気銅として製品となる。

図2 アノード写真(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

図2 アノード写真(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

電解精製におけるアノード中の不純物の影響の報告があり、不純物の分類について表3のとおり報告があった。回収のターゲットとなる元素としてCu、Ag、Au、不純物のうちCuと化合物を形成する元素としてO、S、Se、Te、不純物のうち主に化合物を形成する元素としてAs、Sb、Bi、不純物のうち溶液に溶け出すもしくは化合物を形成する元素としてNi、Zn、Fe、Pbに分類される。不純物の挙動において近年特に注目を集めているのはAs、Sb、Biであり、それぞれ単独の形態で存在する他に、AsはAs2O3、Cu3As、SbはSb2O3、BiはBi2O3といった化合物を形成する。またCuと化合物を形成する元素のO、S、Se、Teは、Cuの価数が変化する等してCu2O、CuO、Cu2S、CuS、Cu2Se、Cu2Teといった化合物を形成する。さらに不純物のうち溶液に溶け出すもしくは化合物を形成する元素のうち、PbはPb-(As、Sb、Bi)-oxidesを形成することもあると報告があり、前述したAs、Sb、Biの挙動を考える際に参考となる知見である。

表3 電解精製に関する元素の分類(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

>表3 電解精製に関する元素の分類(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

さらに電解精製における元素の挙動について、表4のとおり報告があった。Cuは99.8%以上が電解液中に溶け出す。一方、Auは100%、Agは99%以上がスライムとなる。またSe、Te、Pbも98%はスライムとなるが、2%は電解液中に溶け出す。Bi、Sb、Asはアノードの組成によってスライムになる場合と電解液中に溶け出す場合がある。Niもアノードの品位や形成される相によって挙動が変わってくる。

表4 電解精製における元素の挙動(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

表4 電解精製における元素の挙動(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

また電解精製におけるアノード中の不純物の動向について図3のとおり報告があった。1990〜2010年において、アノード中のAsやPbが約300〜400ppm増加傾向にあり、Biも約100ppm増加傾向にある。これらの元素は電解精製において電流効率の低下など悪影響を及ぼす可能性があるが、これらの不純物はアノードに含有されるため、銅の回収率を下げることなく除去することは難しいという知見がある。したがって今後も電解精製におけるAs、Pb、Biの影響を調査することは重要である。

図3 アノード中の不純物の動向(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

図3 アノード中の不純物の動向(M.Moats氏/Missouri Universityの資料より抜粋)

(2)Technical Sessions(Electrometallugy)

銅の電解精製において悪影響を与える不純物はAs、Sb、Biであるとの報告が多く、この点は日本国内の学会と同じ傾向であった。Short Course に引き続きMissouri UniversityのM.Moats氏から報告があり、電解精製では特にSb(X)、Sb(Total)、As(V)が電流効率の低下などの悪影響を及ぼすとのことであった。AsやSbは鉱石由来で混入していると考えられ、鉱石中の銅品位の低下が背景としてある。またAsやSbといった不純物は、アノード中の銅品位を下げることなく除去することは難しい。したがってM.Moats氏は今後も引き続きアノード中のAs、Sb、Biについて、As/(Sb+Bi)のモル比を取り、電解精製に及ぼす影響について調査を行っていくとのことであった。

(3)Technical Sessions(Pyrometallugy)

近年の鉱石中のAs濃度の増加に伴う、精鉱の焙焼処理についてOutotec社より報告があった。チリのCalama市のMinistro Hales鉱山(MMH)ではAsを多く含む精鉱を670〜680℃で焙焼することで、Asを除去した後、calcine(焙焼鉱)として回収することに成功している。焙焼前と後の組成の変化は図4のとおり。精鉱中のAs濃度は3%であるが、焙焼後calcine中のAs濃度は0.25%まで減少している。また精鉱中のCu品位は34%であるが、焙焼後calcineのCu品位は40%まで増加している。

図4 精鉱の組成とcalcineの組成(Outotec社の資料より抜粋)

図4 精鉱の組成とcalcineの組成(Outotec社の資料より抜粋)

またcalcine中のAs濃度と焙焼温度の関係について図5のとおり報告があった。焙焼温度が高いほど、calcine中のAs濃度は低くなる傾向にある。したがってMinistro Hales鉱山の精鉱を670〜680℃で焙焼処理する操業は適切であると言える。しかしながら、この際calcine中のSb濃度が相対的に高くなることがあるため注意が必要である。また焙焼温度が高いときはAsが三価として揮発しやすいことが、calcine中のAs濃度を低く抑えられる要因であると考えられる。

図5 calcine中のAs濃度と焙焼温度の関係(Outotec社の資料より抜粋)

図5 calcine中のAs濃度と焙焼温度の関係(Outotec社の資料より抜粋)

まとめ

COM2016では電解精製と乾式製錬の分野を中心に世界の銅製錬の動向について情報収集を行った。

電解精製の分野では不純物の影響に関する報告があり、発表内容は日本国内の学会の動向と大きな違いは無かったが、各国からの報告では不純物の挙動に関して様々な考え方があった。また乾式製錬においては、近年の鉱石中のAs濃度増加を背景とした報告があり、対応策として精鉱の焙焼処理に関して操業現場から報告があった。

以上の報告は、日本の非鉄金属業界にとっても重要な情報であり、今後も各年開催されるCOMにおける報告には引き続き注目していきたい。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



 ページトップへ
スペース