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  平成28年11月28日 No.16-38
2016年秋季国際非鉄研究会(ICSG、INSG、ILZSG)参加報告

<ロンドン事務所 報告>

はじめに

2016年10月24〜28日、ポルトガル・リスボンにおいて*国際銅研究会(ICSG)*国際ニッケル研究会(INSG)*国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)の秋季定期会合が開催され、加盟国や産業団体、企業、専門家等の約100名が参加した。ICSG、INSG及びILZSGは、2016年及び2017年の銅、ニッケル、鉛、亜鉛に係る世界の鉱石生産、地金生産及び地金消費予測値について、加盟国から提出された数値をベースに検証を行い、その結果について発表を行った。本稿ではICSG、INSG、ILZSGによる2016年及び2017年の銅、ニッケル、鉛及び亜鉛の需給見通しについて報告する。

1. 銅

1) 銅の需給バランス

ICSGが発表した世界の銅需給バランスは表1のとおりであり、2016年は需給はほぼバランス(-8千t)、2017年はわずかに供給が需要を上回る(+163千t)との予測を示した。本年3月の春季会合では、これらの予測値は2016年が-56千t、2017年が+20千tであったが、春季時点の予想よりも地金生産が堅調に推移したことなどが要因となり、両年ともに上方修正された。

表1:世界の銅需給バランス(2015〜2017年)

表1:世界の銅需給バランス(2015〜2017年)

(出典:ICSG会議資料より作成)

2) 銅需給動向

2015年から2017年の世界の銅鉱石の生産、銅地金の生産及び消費について、地域別の数値を表2及び図1にまとめた。

表2:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2015〜2017年)

表2:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ICSG会議資料より作成)

図1:世界の銅鉱石生産、銅地金生産及び消費(2015〜2017年)

図1:世界の銅鉱石生産、銅地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ICSG会議資料より作成)

@銅鉱石生産量

銅鉱石生産については、チリ(エスコンディーダ鉱山等)減産幅が大きいものの、ペルー、インドネシア、メキシコ等の鉱山拡張、生産性向上等により生産量が大幅に増大した結果、2016年は前年比4.0%増の見込みとなった。

A銅地金生産量

銅地金生産については、DRコンゴやザンビアの一時的減産等の影響があるものの、中国の地金生産能力が2015年比で6%増加するなどの影響により、2016年は前年比2.2%の増加見込となった。

B銅地金消費量

銅地金消費については、2016年の中国の「実需要」の伸びは4%であるとする意見もあったが、同国の「見かけ需要」の統計値が1.5%増に留まったため、世界全体でも前年比1.5%増の2,339万t、2017年は前年比1.0%増の2,363万tとなった。なお、この中国の実需用/見かけ需要の数値の開きに関しては、従来同様に活発な議論が行われたが、抜本的な解決策が見い出されるには至っていない。

2. ニッケル

1) 需給バランス

INSGは、一次ニッケル生産量と一次ニッケル消費量との差分である需給バランスについて、表3の通り2016年は66.6千tの供給不足、2017年は65.6千tの供給不足と予測した。

2016年は一次ニッケル生産の減少と消費の拡大により2015年の供給過剰から供給不足に転じるとともに、2017年は生産・消費がともに伸びると予想され、供給不足の状態が続くとされた。世界のニッケル需給は2016年に供給不足の状態に転じたが、この背景はフィリピンの鉱石生産量の大幅な減少が一次ニッケルの生産者である中国等へ大きく影響し、一次ニッケル生産量が減少したことが挙げられる。この減産幅は、一次ニッケルのインドネシアの大幅な増産、ニューカレドニアやフィンランド等の増産を上回ることとなった。

また、ニッケル価格の長引く低迷が生産者を圧迫しており、ロシアなどは鉱石生産量・一次ニッケル生産量ともに大幅に減少している。2017年にはインドネシアが一次ニッケル生産量を大きく伸ばすものの、他生産者の減産と中国等の需要の伸びを超えるには至らず、供給不足の状態が継続すると見られている。

表3:世界のニッケル需給バランス(2015〜2017年)

表3:世界のニッケル需給バランス(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)

2) ニッケル需給動向

2015年から2017年にかけての地域別の数値を表4に、当該数値を図2にグラフ化して需給バランスを赤字で示す。

表4:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

表4:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)

図2:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

図2:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)

@ニッケル鉱石生産量

世界のニッケル鉱石生産量について、世界最大の鉱石生産国であったインドネシアが2014年1月に鉱石禁輸に踏み切って以降、世界全体の鉱石生産量はニッケル価格低迷も影響して未だ2013年の水準から20%近く減産した状態が続いている。2016年はフィリピン政府が環境問題を理由に鉱山に対し規制強化に踏み切ったことによりフィリピンの鉱石生産量は大きく減少。インドネシアの生産回復分を上回る減少幅となっている。2017年にはフィリピンの生産量は回復に転じるとみられており、インドネシアの回復分と合わせて、生産量全体では増産に向かう見通し。

A一次ニッケル生産量

世界の一次ニッケル生産量については、2015年は前年比0.7%減、2016年は前年比2.0%減と2年連続して減産の方向であったが、2017年には前年比5.9%増と増産に転じる見込み。世界生産の約3割を占める中国は、継続するニッケル価格の低迷とインドネシアの鉱石禁輸による影響、フィリピンからの鉱石調達不足により減産の傾向は継続するものの、インドネシア政府が生産者への支援策を講じ、今後はインドネシアの生産が増加すると予想されるため、2017年には全体で増産に転じると見られている。インドネシアの生産量は今後も伸びが見込まれるものの、生産者の資金的な制約により、伸び率についてはそこまで急激なものにならないとの意見も聞かれた。

B一次ニッケル消費量

世界の一次ニッケル消費量については、2016年の前年比6.4%の増加に引き続き、2017年は前年比5.6%の増加が見込まれると予測した。その理由として、中国の景気予測が堅調であること、また住宅需要の伸びが予想されることから、ステンレス鋼に対する需要が増加すると見込まれている。中国の消費量は、2016年は前年比8.5%増、2017年は3.5%増が予想されているが、このままの伸び率を維持できるかどうかについては不透明との意見も聞かれた。またステンレス鋼以外では航空機産業向け及びバッテリー部門で需要が堅調に伸びることを挙げている。バッテリー部門は現時点では全体の使用量の3%程度にすぎないが、今後の中期的な伸び率については期待感があるところ、引き続き注目すべきとの意見も聞かれた。

3. 鉛

1) 鉛の需給バランス

表5に鉛地金生産量と鉛地金消費量との差分である需給バランスを示す。ILZSGによれば、2016年は、需給ともに前年比3%程度の成長が期待され、2015年の44千tの供給不足から42千tの供給過剰に転じる見通しである。2017年は、ベルギー、中国、メキシコでの増産、米国ではAqua Metals社による新規精錬所が生産開始であることから、生産はさらに増える見込みであるが、世界の鉛地金消費量については、中国の自動車生産、販売の増加等により2016年は前年比2.8%増の11,187千t、2017年は更に1.3%増の11,336千tとなることから、供給過剰幅は23千tと減少すると予測している。

表5:世界の鉛需給バランス(2015〜2017年)

表5:世界の鉛需給バランス(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

2) 鉛の需給動向

2015年から2017年にかけて地域別の生産及び消費を表6に掲げ、当該数値をグラフ化したものを図3に示す。2016年及び2017年の鉛鉱石生産量、鉛地金生産量及び消費量の見通しについて、詳細を以下に述べる。

表6:世界の鉛鉱石生産・鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

表6:世界の鉛鉱石生産・鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図3:世界の鉛鉱石生産、鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

図3:世界の鉛鉱石生産、鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

@鉛鉱石生産量

世界鉛鉱石生産量は、2016年は前年比0.3%減の4,751千t、2017年は前年比3.3%増の4,909千tとなる見通しである。大型亜鉛鉱山の閉山が、副産物として産出される鉛鉱石の減産に影響しており、特に2015年下期の豪Century鉱山閉山等による豪州の鉱石生産量減が影響している。豪州に加えてインド、メキシコ、米国の減産と中国の増産がバランスするとしており、中国外での鉱石生産量は2016年に9.7%減少する見込みである。2016年の生産見通しは上位国から、中国2,390千t、豪州473千t、米国335千t、ペルー325千t、メキシコ227千t、ロシア193千tと予想した。

A鉛地金生産量

世界の鉛地金生産量については、2016年は前年比3.6%増の11,229千t、2017年は前年比1.2%増の11,359千tと予測した。増産理由としては、Korea Zinc社が韓国Ulsanに鉛製錬所を完工し、130千tの生産能力を拡張したこと、またNyrstar社の豪Port Pirie製錬所でAusmelt技術を利用した金属回収設備が新規導入され、生産能力が年間250千tへ拡大することが挙げられる。さらに、2016年11月1日よりAqua Metals社が米Nevada州の新規精錬所での生産を開始したことも寄与している。また、メキシコではPenoles精錬所の増産、ベルギー、中国の増産により2017年は継続して生産増加の見通しとなっている。2016年の生産見通しは、上位から中国4,850千t、米国1,070千t、韓国820千t、インド506千t、ドイツ345千t、メキシコ338千t、英国310千tである。

B鉛地金消費量

世界の鉛地金消費量については、2016年は前年比2.8%増の11,187千t、2017年は1.3%増の11,336千tになると予測した。中国では、自動車生産、販売が著しく増加していることから、2013年でピークを打ったE-bike向け鉛バッテリーの需要減少とバランスしている。中国での鉛地金需要は、2016年は前年比2.5%増、2017年は1.1%増になると見られている。他方、欧州では自動車販売の増加が牽引し2016年は5.3%増となるが、2017年の需要は横ばいになると見られている。2016年の消費見通しについて、上位から中国4,830千t、米国1,570千t、韓国590千t、インド562千t、ドイツ353千t、日本272千tと予測した。

4. 亜鉛

1) 亜鉛の需給バランス

表7のとおり、亜鉛の需給バランスについて、2016年は需要が前年比0.6%増と伸びなかったが、亜鉛鉱石生産量は鉱山の閉山、相次ぐ減産計画により5.6%減となり、需給バランスは349千tの供給不足に転じ、2017年も不足幅は減少するが、248千tの供給不足が継続する見通しである。

表7:世界の亜鉛需給バランス(2015〜2017年)

表7:世界の亜鉛需給バランス(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

2) 亜鉛の需給動向

2015年から2017年にかけての地域別の数値を表8に示し、当該数値をグラフ化したものを図4に示した。2016年及び2017年の亜鉛鉱石生産量、亜鉛地金生産量及び消費量の見通しについて、詳細を以下に述べる。

表8:世界の亜鉛鉱石生産・亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

表8:世界の亜鉛鉱石生産・亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図4:世界の亜鉛鉱石生産、亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

図4:世界の亜鉛鉱石生産、亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

@亜鉛鉱石生産量

世界の亜鉛鉱石生産量について、2016年は豪州、インドによる著しい減少とGlencoreの減産が大きく影響し、前年比5.6%減の12,467千tとなる見通しである。具体的には、豪Century鉱山及びアイルランドLisheen鉱山の閉山に加えて、インドRampura Agucha鉱山が露天掘りから坑内掘りへと採掘方法を変更したことによる減産、ペルーAntamina鉱山、Iscaycruz鉱山による減産が響いた。2017年は、豪州、インド、ペルー、中国、カザフスタン、メキシコ、ロシアからの生産増加が見込まれることに加えて、エリトリアのNevsun Resources社のBisha鉱山が2016年第2四半期から生産を開始をすることから前年比5.9%増の13,201千tになる見通しである。国別の2016年の生産見通しは、上位国から中国4,930千t、ペルー1,300万t、豪州964千t、米国780千t、メキシコ690千tとした。

A亜鉛地金生産量

2016年の世界の亜鉛地金生産量は、前年比3.2%減の13,219千tで、中国では1%減、中国外では4.8%減と予想した。米国・Horsehead Holdings社の新規リサイクルプラントの立ち上げが未だ進展しないことや、アルゼンチン、豪州、ベルギー、インド、メキシコでの減産が影響している。しかし、2017年は、前年比2.9%増の13,599千tとなり、中国3.4%増、中国外では2.4%増になると予想した。特に豪州、中国、メキシコ、インドでの生産増が期待されており、メキシコPenoles社製錬所における年間100万tの生産拡張、インドHindustan Zinc社の生産回復等が牽引すると見られている。国別の2016年の生産見通しは、上位国から中国5,800千t、韓国1,014千t、カナダ680千t、インド603千t、日本556千tとした。

B亜鉛地金消費量

世界の亜鉛地金消費量については、2016年は前年比0.6%増の13,568千t、2017年は前年比2.1%増の13,847千tと予測した。2016年の中国の亜鉛需要は1.8%増、2017年は1.3%増とみられており、自動車生産、販売における需要の増加が、溶融亜鉛メッキ鋼板の輸出減少と一部均衡している。一方、欧州は過去4年間亜鉛需要が横ばいの状態が続いており、2016、2017年もそれぞれ前年同期比0.7%増、0.5%増とこの傾向は続くと予想されている。米国は、2016年は前年比8.7%減だが、2017年は需要が回復し11.8%増になると見られている。国別の2016年の消費見通しは、上位から中国6,300千t、米国850千t、インド720千t、韓国599千t、ドイツ478千tと予測した。

*国際銅研究会(ICSG)

国際銅研究会は、国際非鉄3研究会の中では最も新しい研究会で、国連の招請・勧告によって1992年に発足した国際機関である。世界の銅経済に関する情報の提供、政府間協議の場の提供及び銅に関する諸問題について国際協議・協力を推進することが目的で、世界の主要銅鉱石生産国、地金生産国及び消費国の23カ国及びEUが加盟している。事務局は、ポルトガル・リスボンに設置されており、2006年から国際非鉄3研究会の共同事務所となっている。
同研究会は、主に銅市場の需給予測に関する統計分析を始め、国際的な貿易取引に係る環境・経済面の課題について研究しており、統計等の刊行資料は、世界的に一定の評価を得ている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

*国際ニッケル研究会(INSG)

国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2番目に古い歴史を持ち、世界のニッケル市場の透明性の強化を目的に1991年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、ニッケル生産国、消費国及び貿易国からなる14カ国及びEUが加盟している。事務局は、設立当初はオランダ・ハーグに、2006年からポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

*国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)

国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では最も古い歴史を持ち、1959年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関で、国際銅研究会及び国際ニッケル研究会のロールモデルとなっている。現在、鉛・亜鉛生産国、消費国及び貿易国からなる29カ国及びEUが加盟しており、生産及び消費に占める加盟国の割合は85%にも及ぶ。同研究会は、鉛・亜鉛市場の需給予測分析を始め、国際的な貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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