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  平成28年12月13日 No.16-41
中国における亜鉛市場の動向と見通し
―19th International Lead and Zinc Conference参加報告―


<調査部金属資源調査課 畝井杏菜 報告>

はじめに

2016年11月15〜17日に、中国・成都にて19th International Lead and Zinc Conferenceが開催された。中国有色金属工業協会(CNIA)主催の本カンファレンスには、中国企業の参加者を主として、国内外の鉱業・製錬企業、トレーダー、専門家等約1,000名が参加した。

2016年、亜鉛価格は鉱石の供給不足を背景に上昇を続け、5年ぶりの高値をつけた。しかし、亜鉛鉱石の調達が減少しているにも係らず、中国の亜鉛製錬所は地金生産を増産させ、輸入を含め供給過剰となっている。中国の亜鉛生産者の間では、こうした市場の動きを懸念する声が高まっており、今回のカンファレンスでもいかに安定した市場を提供し、業界全体の利益を高められるかについて議論された。本稿では、まずカンファレンス全体の論点について概観した上で、国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)のPaul White氏による講演“Global Lead and Zinc Supply and Demand for 2016-2017”、安泰科のLiu Mengluan氏による講演“Domestic and Overseas Zinc Concentrates Supply and Demand Analysis”、安泰科のMs. Xia Cong氏による講演“China Zinc Market Review and Outlook”等から、亜鉛市場の動きについて見通しをまとめ、報告する。

1. 総論

2015年は世界で亜鉛鉱山の操業停止・閉山が相次ぎ、2016〜2017年にかけて大幅な供給不足が懸念されているところ、今後の生産見通しが注目された。2016年は亜鉛鉱石生産不足の状況が続いており、足元の亜鉛価格は2016年初と比較して60〜65%上昇した。2017年までは新規亜鉛鉱山も少なく、需給のタイト感は続くと見込む意見が多かった一方で、価格上昇局面が継続していることから、既存鉱山における増産や開発促進、操業停止鉱山の生産再開への期待が表された。

図1 中国の亜鉛鉱石生産量推移(対前年同期比、%) (ILZSG)  

一方、中国国内については、鉱石の調達に苦慮しながらも、増産する中国の製錬所の動向を問題視する意見が出た。海外からの鉱石調達のみならず、中国国内鉱山も環境対策厳格化の影響等により2015年頃から閉山・操業停止が相次いだ。図1にILZSG資料より中国の鉱石生産量推移(対前年同期比)を示すが、これによると2015年7月以降亜鉛鉱石生産は減少していたが、2016年は中国国内における亜鉛鉱石供給は増加傾向にある。また図2、図3の通り、国内鉱石の供給が減少していた期間は、亜鉛鉱石輸入量が増加している。また2016年以降は、豪州・ペルーからの輸入が大幅に減少した。一方、モンゴルや北朝鮮など周辺国からの輸入が増加傾向にある。


図2 中国の亜鉛鉱石輸入推移(Gloabal Trade Atras) 図3 中国の亜鉛鉱石国別輸入推移(Gloabal Trade Atras)
図4 中国の亜鉛地金生産量推移(対前年同期比、%) (ILZSG)

図4に、中国の亜鉛地金生産推移を示すが、2016年も概ね2015年の生産ペースを維持している。鉱石を入手しづらい状況下にも係わらず、製錬所は生産調整を行っていない現状が明らかとなった。2015年末には、大手製錬所12社が生産調整に協調すると発表したが、亜鉛価格上昇により各社が利益を優先した結果、実現しなかったと思われる。中国企業及び同国政府も、供給過剰及び市場の不安定さについて危機感を抱いており、業界関係者はみな口を揃えて「業界のグレードアップ」として適正な生産能力へ抑える必要性、ひいては価格のボラティリティを抑え利益を安定化させる必要性を訴えた。国家信息中心のZhu Baoliang氏や中国環境保護省のJia Jielin氏等、政府関係者による発表でも、供給過剰解消や環境保護等の様々な規制を強く進めていく方針が示された。

2. 世界の亜鉛市場について

亜鉛鉱山生産見通しについては、White氏によると、2016年後半にエリトリア・Bisha鉱山が新規生産開始したものの、Glencoreの減産、豪州・Century鉱山やアイルランド・Lisheen鉱山の閉山が影響し、2016年は前年比5.6%減の12.5千tとなる。2017年には、豪州、インド、ペルー、中国、カザフスタン、メキシコ、ロシア等が増産し、前年比5.9%増の13.2千tなる(表1)。Liu氏は、2016年の新規鉱山生産能力は、Bisha鉱山や中国国内鉱山等を合わせて16.6万t/yとなると見込んでいる。2017年は豪州・Lady Loretta鉱山及びメキシコ・Naica鉱山で生産再開見込みにより8.2万t/yが増産される。GlencoreやNyrsterの操業停止鉱山が操業再開へ動けば、さらに55万t増産されると思われる。Liu氏は、Glencoreの生産再開は2017年Q2にアナウンスがあるだろうと予測、まずは32万t分が生産されると述べた。但し、Glencoreが操業再開へ動いたとしても、全体の供給バランスは不足であるため、供給タイト感は変わらない。2018年には、南ア・Gamsberg鉱山、豪州・Dugald River鉱山、ペルー・Hilarion鉱山、等の大型鉱山の生産開始が予定されており、70.4万t増産となり、これに加え中国で2018年までに亜鉛合計47.1万t分の新規鉱山の操業開始が予定されていることから、需給は緩和するだろうと予測した(図5)。

表1.亜鉛需給バランス見通し(千t)

2015 年実績 2016 年予測
(2016 年秋季)
2017 年予測
鉱石生産量 13,202 12,467 13,201
地金生産量(a) 13,650 13,219 13,599
地金消費量(b) 13,484 13,568 13,847
需給バランス(a-b) + 166 ▲ 349 ▲ 248

(ILZSG 資料をもとにJOGMEC 作成)

図5 2016年以降に生産開始・増産が期待される主な鉱山

一方地金需給については、White氏は、2016年は鉱石不足による減産に加え、米国・Horesehead社のMoorseboro製錬所の操業停止が響き、生産は3.2%減となり13,219千t、消費は前年比0.6%増と漸増し13,568千tとなる。2017年には中国やインドの製錬所で生産増加することに加え、メキシコ・Penoles社のTorreon製錬所にて生産能力が10万t/y増加することが期待されることから前年比2.9%増の13,599千tとなる見通しである。消費は自動車や家電製品等の需要増により前年比2.1%増加し13,847千tに達すると報告した。Liu氏は、2017年はHorsehead社のRutherford(Moorseboro)製錬所操業再開で14万t/y、ノルウェー・Boliden社のOdda製錬所拡張プロジェクトで16万t/yの生産能力が増加すると述べ、Torreon製錬所拡張完了は2018年になると述べた。なお、Moorseboro製錬所については、Horsehead社が経営再建手続にあることから、明確な再開時期については決まっていない。

3. 中国の亜鉛市場について

中国の亜鉛市場は、鉱石需給がタイト化していることから、製錬所は鉱石調達に苦戦を強いられている。Liu氏によれば、輸入鉱石は国内鉱石より割高なため敬遠されており、2016年は鉱石輸入量が落ち込んでいるが、中国国内でも地域によって鉱石の需給タイト感にばらつきがあると指摘した。甘粛省や陜西省、内モンゴルは鉱山が多いため、製錬所への供給も余裕がある一方、河南省、湖南省、広西省の製錬所へは鉱石が入りづらくなっており、供給不足が顕著である。

Cong氏は、中国で亜鉛めっき需要が増加傾向にあり、亜鉛価格上昇も下支えして、大手製錬所を中心に昨年を上回る生産ペースを維持していると明らかにした。また海外からの地金輸入も引き続いており、表2に示すとおり2016年の中国市場における需給バランスは13万tの供給過剰の見込みであると述べた。また、CNIAのTao Peng氏によると、中国の亜鉛消費は、今後年平均1.7%で増加し、2020年には730万tまで拡大すると予測した。

Cong氏によると今後は、中国の自動車生産・販売の伸びやインフラ投資の促進でさらなる需要が見込まれるため、中国における亜鉛消費は2017年以降も拡大する見通しであるとし、亜鉛価格は今後も高値圏で推移すると予測した。具体的には、2016年はSHFEで平均16,200元/t(前年比3.2%増)、LMEで平均2,100US$/t(前年比7.4%増)、2017年はSHFEで平均18,300元/t(前年比12.3%増)、LMEで平均2,350US$/t(前年比11.9%増)となるだろうと述べた。

表2.中国国内における地金需給バランス(万t)

生産 輸入 消費 バランス 在庫
2013年 528 75 600 3 -19.8
2014年 581 55 630 6 -10.7
2015年 616 51 640 27 4.8
2016年 620 48 655 13 -5

(安泰科資料をもとにJOGMEC 作成)

おわりに

2016 年は、亜鉛供給不足が懸念される中、亜鉛価格は堅調に推移してきた。本カンファレンスでは、概ね2017 年も供給不足が続くとの見解が示された。しかし、中国国内市場においては亜鉛 鉱石・地金ともに供給過剰の状態であり、また環境規制への対応も年々厳格化されていることから、供給サイドは混乱している状況にある。供給過剰に対する行動、また環境規制に則った設備 投資等が供給側へ求められており、政府や業界関係者による締め付けが強まっている様子である。さらに、今回政府・業界関係者は、今後業界の生産能力解消・統合を進め供給過剰を回避し、環 境整備を図ることにより適切な生産体制を築き、産業の透明化と国際競争力強化を図る方針を示した。中国が「New Normal」の時流の中で、今後第13 次五カ年計画を本格化させ、いかに産業を 安定化させ、非鉄需要を引き伸ばすことができるか、2017 年の注目点である。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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