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  平成29年1月6日 No.17-01
2016年 金属鉱物資源をめぐる動向

<調査部 金属資源調査課 報告>

はじめに

世界の金属鉱業界全般にとって2016年は、長らく続いた金属資源価格の下落傾向も年初に底値を打ち、その後は好調な米国経済、中国景気刺激策や秋以降は米国トランプ次期大統領によるインフラ再建等表明により景気回復期待感も高まり、価格低迷期から漸く抜け出した年となった。JOGMEC調査部では、2016年の金属鉱物資源分野における主な出来事を時系列に振り返り、その動向を以下のとおり取りまとめた。

♦ 資源価格は底値を打ち、上昇傾向辿る

資源価格は、2011年以降、下落傾向が続いていたところ、2016年1〜2月、銅・鉛・亜鉛は2009年以来、ニッケルは2003年以来の記録的安値を付けた。その後は、米国経済が好調なことや中国の景気刺激策への期待感から緩やかに上昇し、非鉄市況は上向いた。11月には、米国大統領選でトランプ候補が過半数の選挙人を獲得し、事実上次期大統領に選出されたことを受け、景気回復期待感が高まり、ベースメタルは軒並み年初来高値をつけた。特に亜鉛については、大型鉱山閉山や複数鉱山における操業停止の影響により需給が逼迫、価格は右肩上がりで上昇を辿り、11月末には1月の最安値の2倍となる2,907US$/tの高値となった。また、ニッケルは夏以降、フィリピン政府による鉱山監査が実施されたことに伴う鉱山操業停止懸念が、価格を押し上げた。価格回復を受けて一部鉱山で価格低迷を受けた減産体制を解除する動きもあり、各企業のキャッシュフロー改善から今後は探査や開発促進に対する機運上昇を期待できる。一方、貴金属市場においては、2016年前半はその他の資源価格と同じく価格は回復基調を辿ったものの、後半に入り米国の利上げ観測から安全資産としての金・プラチナへの投資が縮小し、価格も下落傾向に転じた。

表1:2016年ベースメタルLME(セツルメント)価格概要(US$/t)

  年初価格 12月21日時点価格 最高値 最安値
4,645.0 5,498.5 5,935.5
(11月28日)
4,310.5
(1月15日)
1,762.0 2,168.0 2,466.0
(11月28日)
1,597.0
(1月12日)
亜鉛 1,600.0 2,604.5 2,907.0
(11月28日)
1,453.5
(1月12日)
ニッケル 8,515.0 10,885.0 11,735.0
(11月28日)
7,710.0
(2月11日)
図1:2016年ベースメタルLME月平均価格推移(2016年1月=1.00)

図1:2016年ベースメタルLME月平均価格推移(2016年1月=1.00)

♦ 資源安を好機に日本の資源各社は権益強化及び保有資産の見直しを実施

2016年2月15日、住友金属鉱山は、Freeport-McMoRan(米国)より米国・Morenci銅鉱山の権益13%を総額10億US$にて追加取得することを発表した。これにより同社の権益比率は25%となる。同社は1986年から30年間にわたり同鉱山に経営参画しており、北米最大でコスト競争力にも優れた同鉱山の権益を追加取得することとしたもの。同鉱山の、2015年銅生産量は約480千tと世界有数の銅鉱山である。

4月、三菱商事と大平洋金属はインドネシア・Weda Bayニッケル鉱山の全権益30%を売却、7月には住友商事、住友金属鉱山、三菱マテリアル、古河機械金属の4社がインドネシア・Batu Hijau銅鉱山の全権益24.5%を売却すると発表した(同鉱山の2015年銅生産量は約22万t)。

資源価格低迷下において、我が国資源各社は保有資産の見直しを実施し、収益率の低い権益等を手放した一方で、資源安を好機として優良鉱山の権益を追加取得する動きも見受けられた。日本への資源安定供給の観点より、権益取得機会を逃さず冷静な判断が進められたと言う点は重要であり、企業は足元の価格に左右されず、長期的な視点で適切なポートフォリオを組み立てることが求められる。

♦ 資源メジャーは事業ポートフォリオの見直しを継続

2016年の資源メジャーは、2015年の苦境を受けて引き続き事業ポートフォリオの見直しを進めた年となった。従って、特に大きな動きはなかったものの、今後のメジャーが進む方向性をうらなう意味では注目すべき1年であった。Glencoreは3月に、豪州Cobar銅鉱山やチリLomas Bayas銅鉱山を含む40〜50億US$の資産売却目標を示し、また翌4月には農業ビジネスの40%の株式を売却すると発表。Anglo Americanは4月にニオブ及びリン酸塩事業をChina Molybdenum社に売却し、Rio Tintoは8月にイギリスのアルミ二ウムビジネスを売却するなど、各社は負債削減のため事業ポートフォリオの見直しを着実に進めていたといえる。そのような中、市況の底入れ感もあってか、BHP Billitonは2017年度探鉱費を増加させることを発表、Glencoreは石油大手・ロスネフチ株式の一部を買収するなど、前向きな発表も出始めた。2017年の各社事業運営方針がどのようなものになるかを、市況と併せて今後も注視していく必要がある。

♦ フィリピン、全鉱山で操業監査を実施

フィリピン政府は、Lopez環境天然資源省大臣の命により、7月より既存鉱山の操業が適切に行われているかを確認する監査を実施し、同時に新規鉱山プロジェクトのモラトリアムを実施した。5月に就任したDuterte大統領に任命されたLopez大臣は、環境活動家としても知られる。本監査は、各鉱山が鉱業法及び関連規則を遵守しているかどうかを審査する目的のものであり、「責任ある鉱業(Responsible Mining)」を行っている鉱山については問題なく操業が継続できるとされた。

報道によれば、9月時点でフィリピンの大手ニッケル企業BenguetCorp Nickel Mines社(BNMI)の鉱山を含む10鉱山が操業の停止を命じられ、BNMIは操業停止命令の差し止めを裁判所に申し立てるなどの対応をとった。本邦企業が権益を有するRio Tubaニッケル鉱山及びTaganitoニッケル鉱山は、9月末時点で既に審査を通過したと発表されている。12月現在、審査を通過した企業は11社、既に操業を停止させられている企業は10社、審査継続中の企業は20社といわれ、全体の監査結果発表は2017年1月になる見込みである。

フィリピンは2014年のインドネシア鉱石禁輸以来ニッケル鉱石生産量世界第1位であり、中国にとって最大のニッケル鉱石輸入国である。また、日本のニッケル鉱石輸入量の約6割が同国産のものであることから、日本にとっても最大のニッケル鉱石原料供給国である。Duterte大統領政権下の鉱業政策がこれからも注目される。

♦ JOGMEC、第6回アフリカ開発会議(TICADY)を通じて主要国との協力を深化

8月27〜28日、ケニア共和国・ナイロビで第6回アフリカ開発会議(TICADY)が開催され、JOGMECはこれに参加し、ケニア政府との間で石油天然ガス・金属分野において、また、モザンビーク政府との間で石油天然ガス分野について、人材育成の協力に関する覚書を締結した。また、ケニア鉱業省に対してはリモートセンシング技術の移転を図ることを目的としたワークショップ実施を含む覚書に署名した。ケニア鉱業省は全土で資源地図作成を進めており、日本からの技術支援に期待が示された。日本・アフリカビジネスカンファレンスにおいては、JOGMECのアフリカでの取組みに関するプレゼンテーションを実施、展示会「ジャパンフェア」ではJOGMECの世界及びアフリカでの活動につき展示物を通して紹介した。TICADYで採択された「ナイロビ宣言」における人材育成について、JOGMECは資源分野の人材育成の実施主体として今後3年間で1,000名の人材を育成することとしており、前述の石油天然ガス・金属分野に加え石炭分野における人材育成についても覚書を締結し(11月)、その着実な実施に取り組んでいる。

JOGMECは2008年7月に開設したボツワナ・地質リモートセンシングセンターを通じ、南部アフリカ開発共同体(SADC)に加盟する13か国と覚書(MOU)を締結し、衛星画像解析技術の指導や共同解析、現地調査を行い、SADC諸国の地質専門家に対する技術移転を実施し人材育成に貢献してきている。TICADYへの参加を通じ、JOGMECはこれまでのアフリカ諸国での活動に続き、主要国との協力を深化させ、今後ともアフリカ諸国の持続可能な成長と経済多角化・産業化に不可欠な資源分野の人材育成と資源開発に貢献していく。

♦ JOGMEC、南ア白金族プロジェクトでプレFSを発表、ポジティブな評価を得る

JOGMECが南アフリカ共和国ブッシュフェルド地域北部でプラチナム・グループ・メタルズ社(加・PTM社)と共同で実施するウォーターバーグ白金族JVプロジェクトにおいて、プレFSが発表されポジティブな評価を得た。

JOGMECは2011年に白金族鉱床を発見し、2012年9月に初めて予測鉱物資源量として合計約205tの含有金属量(2PGE+Au)を報告し、その後実施したボーリング調査の結果を加え、年々資源量を増加させてきた。最新のデータから、より精度の高い再評価を行った結果、白金族金属量の合計で1,110t(3PGE+Au)を把握した。本結果を用いて実施されたプレFSにおいて、ポジティブな評価を得ており、特に1オンス当たりの生産コスト481US$は、現在南ア・ブッシュフェルド地域で生産されている白金族鉱山と比較し、最も安価な生産コストと見られている。

自動車業界においては、環境対応車普及が取り沙汰されているものの、当面はコンベンションカーの生産・販売がまだ伸びるもの見られており、排ガス触媒に使用されるPGM需要は堅調な伸びが見込まれている。今後のPGM需要拡大に対応する意味で、本件は重要なプロジェクトと位置付けられる。本プロジェクトについては今後入札を実施し、日本企業への権益引き継ぎを目指す。

♦ Copper2016、日本初開催

資源・金属企業や政府・学会関係者が集まり、学術・技術交流を促進する世界最大規模の銅国際会議「Copper2016」が11月14〜16日、神戸で開催された(主催:資源素材学会、共催:日本鉱業協会)。同会議は3年毎に開催され、今回で9回目であるが、アジアでは初の開催となった。初日は、西山佳宏大会組織委員長(パンパシフィック・カッパー社長)の開会挨拶に続き、辻本圭助経済産業省鉱物資源課長や大井滋JX金属株式会社長、並びにJOGMEC理事長黒木啓介などが基調講演を行った。

基調講演において辻本課長は、ここ1〜2年の銅価低迷で市場心理が冷え込み、資源投資が減退する中、安定した需要によって上流の資源開発、製錬、材料開発が支えられるようサプライチェーン全体を守っていくことが重要と語った。大井社長は、世界の銅需給について、自動車産業はじめ需要拡大の余地があり、生産を上げていく必要があるとし、人材の確保・育成や環境に優しい社会を目指すための努力を継続しつつ、銅産業を通じた社会貢献に努めていきたいと話した。またJOGMEC黒木理事長は、直近10年間の中国等新興国による需要拡大に触れつつ、JOGMECが世界各地で行っている探査や技術開発などの事業を紹介し、持続可能かつ均整の取れた社会発展に向けて継続的な努力/取組みの重要性を強調した。

初日午後からの分野別の一般講演では、世界30か国以上から集まった産官学の技術者・研究者らが、製錬、リサイクル、探査技術等についての約300件の発表を行い、最新の技術動向に関し研究成果が披露された。

折しも開催の前週に米国大統領選でトランプ候補が勝利したことを受け、銅価が急伸する中での開催となり、市況に関しても潮目の変化を感じた参加者は少なくなかった。次回は2019年にカナダ採鉱・冶金・石油学会の主催によりカナダで開催される予定。

♦ 自動車業界の電気自動車シフトにより金属素材市場にも影響

世界的に広がった環境規制の波は自動車業界にも大きな影響を与えているが、2016年は予てよりテスラモータース(米国)の台頭により市場が少しずつ拡大していた「電気自動車」がにわかに大きな脚光をあびた年となった。

その背景としては前述の通り、世界各国で年々厳しさを増している環境規制があげられるが、そこに長年ディーゼルエンジンを前面に業界をリードしてきたフォルクスワーゲン(独)による排ガス不正問題が発覚、業界に大きな衝撃を与えることになった。この不正問題を機に、排ガスや燃費のテスト方法の見直しが行われ、より厳格なテストが課されることとなり、自動車メーカー各社の対応がさらに困難となった。これにより、フォルクスワーゲンのみならず全世界レベルで電気自動車へのシフトが始まったと言えるだろう。11月には、これまでエコカー戦略の中核としてハイブリッド車(HV)と燃料電池車(FCV)を位置付けてきたトヨタ自動車が、2020年までに電気自動車(EV)の量産体制を整え、EV市場に本格参入することを発表、これは大きな潮流の変化を感じさせる動きとなった。

自動車業界のこれら動向は、金属資源市場にも大きな影響を与えている。EV化進展による動力系ワイヤーハーネス需要増に伴う銅線需要の増加や二次電池関連素材(リチウム、コバルト等)、軽量化素材(アルミニウム、マグネシウム、CFRP等)需要の高まりが既に期待されはじめており、また一部の金属素材では価格の上昇が顕著となってきている。一方で、将来的に需要が減るのではと懸念される素材も出てきており、今後の金属資源の需給・価格動向を見る上で、自動車産業におけるこれらの動きから、今後も目が離せない。

♦ ペルー銅生産、中国資本鉱山本格稼働に伴い世界第2位に

2015〜16年にかけ、銅鉱石生産においてペルーの伸長が目覚ましい。大型銅鉱山の生産開始や拡張によって、2016年のペルーの鉱山生産量は2,285千tとなる見込みであり(ICSGによる見込み)、3位の中国(1,751千t)を大きく引き離した(図2参照)。これは、中国資本のLas BambasとToromocho両銅鉱山の生産量拡大によるところが大きい(各鉱山の概要は表2参照)。

世界の銅需要の約半分を占める中国においては、銅地金生産能力の拡大が続いており、原料となる銅鉱石の手当てが課題である。中国資本のペルーの両鉱山は、中国銅地金生産の原料として大きな位置を占め、その操業動向は世界の銅需給にも大きなインパクトを与える。ペルーにおける反鉱業運動の動向も含め、これら鉱山の操業状況を今後とも注視して行く必要がある。

図2:銅鉱石生産量(ICSGによる2016年見込み)

図2:銅鉱石生産量 (ICSGによる2016年見込み)

表2:Las Bambas鉱山とToromocho鉱山の概要

  Las Bambas鉱山 Toromocho鉱山
所有者 MMG(中国五鉱有限公司の子会社)62.5%
国信国際投資公司22.5%
CITIC Metal 15%
Chinalco 100%
生産開始 2015年 2015年
銅生産量 420千t(2016年見込み) 182千t(2015年)
資源量 銅12,803千t
モリブデン353千t
銅9,598千t
モリブデン362千t
マインライフ 20年 36年
摘要
  • 2014年、五鉱有限公司率いるコンソーシアムがGlencoreより58.5億US$で権益取得。その後、コンソーシアムは生産開始に向け更なる投資を行い、これまでの投資総額は100億US$に上る。
  • 2016年3月に出荷第1船が南京港に到着。2016年7月には商業生産開始が発表された。
  • 当初想定された年間銅生産量は250千tであるが、採鉱・選鉱段階での回収率低迷等により生産量拡大が予定どおりには進捗していない(2016年H1銅生産量:74千t)。
  • 2016年9月Chinalcoは生産拡大を確実に進めるべく更に1,300百万US$の追加投資を決定。
  • 生産される銅精鉱は高ヒ素含有精鉱として知られる。

おわりに

長く続いた価格低迷期から漸く抜け出した感のある金属資源業界ではあるが、資源関連各社は引き続き難しい経営判断を求められている。一方、長期的な周期で変動を繰り返す資源業界において、中長期的視点に立った対応は金属資源の安定供給上、不可欠である。このような状況下、継続的な資源確保への取り組みが必要であり、JOGMECとしても様々な支援を進めて行く必要があるとともに、調査部においては、2017年も安定供給確保に資する情報提供に引き続き努めて参りたい。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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