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  平成29年5月25日 No.17-10
-2017年春季国際非鉄研究会(ICSG、INSG、ILZSG)参加報告-

<ロンドン事務所 粕谷直樹・吉益英孝・ザボロフスキ真幸 報告>

はじめに

2017 年4月24〜28日、ポルトガル・リスボンにおいて国際銅研究会(ICSG)、国際ニッケル研究会(INSG)、国際鉛亜鉛研究会 (ILZSG) の春季定期会合が開催され、加盟国や産業団体、企業、専門家等の約100名が参加した。ICSG、INSG及びILZSGは、2016年及び2017年の銅、ニッケル、鉛、亜鉛に係る世界の鉱石生産、地金生産及び地金消費予測値について、加盟国から提出された数値をベースに検証を行い、その結果について発表を行った。本稿ではICSG、INSG、ILZSGによる2016年及び2017年の銅、ニッケル、鉛及び亜鉛の需給見通しについて報告する。

1. 銅

銅需給バランス―2017年は147千t、2018年は169千tの供給不足―
ICSGが発表した世界の銅需給バランスは表1のとおりであり、2017年及び2018年は供給不足幅が漸増していく予想となった。

昨年10月の秋季会合では2017年は163千tの供給過剰と予想していたが、今年に入ってから各種世界経済見通しが好転し、それが地金の需要予測を押し上げたことなどから需給バランスの見通しが修正された。

表1.世界の銅需給バランス

>表1.世界の銅需給バランス

(出典:ICSG会議資料より作成)

1) 銅需給動向

2016年から2018年の世界の銅鉱石の生産、銅地金の生産及び消費について、地域別の数値を表2及び図1にまとめた。

表2.世界の銅鉱石生産、銅地金生産及び消費(2016〜2018年)

表2.世界の銅鉱石生産、銅地金生産及び消費(2016〜2018年)

(出典:ICSG会議資料より作成)


図1.銅鉱石、地金生産及び消費量

(出典:ICSG会議資料より作成)

図1.銅鉱石、地金生産及び消費量


銅鉱石生産については、2016年はメキシコ、ペルー等の新規拡張案件により対前年比5.7%の伸びを示したが、2017年はそのような案件に乏しく、またEscondida(チリ)、Grasberg(インドネシア)等の大規模鉱山での生産量減少等により、一転して対前年比0.9%減、2018年も2017年とほぼ同様の0.1%減となった。

また、銅地金生産については、2017年は一次地金生産、スクラップからの二次地金生産ともに増加したが、チリや米国等でSxEw生産が減少し、対前年比1.9%増となった。中国においては2017年、2018年いずれも5%強の増加が予想されており、引き続き世界の銅地金生産を牽引していく形となっている。

銅地金消費については、2017年に入ってからの各種世界経済見通しの好転を念頭に、まず世界の需要の約5割を占め堅調な経済成長を示す中国において、その“見かけ需要”は2017年、    2018年それぞれ2.6%増、2.0%増と予想された(他方で、“実需用”の試算については、複数の調査会社の平均で3.3%、2.3%の見通しが示された)。また、中国を除く世界需要については、インドの電力/インフラ市場や米国の産業/インフラ市場、またEUの2018年頃からのワイヤー・ケーブル市場での需要増等の見通しがあった。これらの結果、全体として、2017年は対前年比2.0%、2018年は1.8%の需要増となった。

2.ニッケル

1) 需給バランス

INSGは、一次ニッケル生産量と一次ニッケル消費量との差分である需給バランスについて、表3の通り2016年は38.3千tの供給不足、2017年は46.7千tの供給不足と予測した。

2016年は一次ニッケル生産の減少と消費の拡大により2015年の供給過剰から供給不足に転じたが、2017年は生産・消費がともに伸びると予想され、最終的には供給不足の状態が続くとされた。不足幅については、2016年10月の予測よりも狭まるとした。世界のニッケル需給は2016年に供給不足の状態に転じたが、この背景としては2016年のステンレス生産の伸びが45.8百万tに達し、前年比10.2%増の成長を見せたことによってニッケル需要が大きく伸びたことが第一に挙げられる。2017年も2016年の成長には及ばないものの引き続きステンレス生産の伸びが期待され、またステンレス以外の用途でもニッケル需要の伸びが見込まれていることから、引き続き供給不足が続くと見られる。

2016年の中国のNPI生産量は、フィリピンの悪天候や価格の低迷、環境規制強化による生産量の低下が影響し、中国向けの鉱石が不足したことによって減少している。一方で2017年にはインドネシアの鉱石輸出の緩和により、中国のNPI生産向けの鉱石に余裕が生じることになると見られる。またインドネシアのNPI生産は、新規プロジェクトの稼働によって前年に引き続き大きく増加する見込み。

表3.世界のニッケル需給バランス(2015〜2017年)

表3.世界のニッケル需給バランス(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)

2) ニッケル需給動向

2015年から2017年にかけての地域別の数値を表4に、当該数値を図2にグラフ化して需給バランスを示す。

表4.世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

表4.世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)


図2.世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:INSG会議資料より作成)

図2.世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2015〜2017年)

① ニッケル鉱石生産量


世界のニッケル鉱石生産量について、インドネシアの2014年1月の鉱石禁輸以降、価格低迷も伴い生産量は減少していた。さらに2016年にはフィリピン政府が環境問題を理由に鉱山に対し規制強化に踏み切ったことによりフィリピンの鉱石生産量も大きく減少し、全体の生産量減に拍車をかけた。しかし、2017年にはインドネシアの生産量が198.9千tから前年比79%増の356.0千tと大きく伸びること、フィリピンの生産量の減少は前年比3.2%減の332.0千tと歯止めがかかることにより、世界全体では前年比8.0%増の2,167.0千tの生産量となると見られる。


② 一次ニッケル生産量


世界の一次ニッケル生産量については、2015年は前年比0.6%減、2016年は前年比0.7%増と増産の方向に転じたが、2016年価格回復も手伝い2017年は前年比3.9%増と増産傾向が継続する見込み。世界生産の約3割を占める中国はインドネシア、フィリピンからの鉱石調達不足により減産の傾向は継続するものの前年比1.3%減と減少幅は縮小し、インドネシアの生産が新規プロジェクトの稼働によって前年比85.8%増の216.1千tと大幅に増加すると予想される。なお、中国のNPI生産については、2017年以降も減少が見込まれている。


③ 一次ニッケル消費量


世界の一次ニッケル消費量については、2016年の前年比7.7%の増加に引き続き、2017年は前年比4.3%の増加が見込まれると予測した。その理由として、前述の通り、最大の用途であるステンレス生産の伸びが2016年には45.8百万tに達し、前年比10.2%増の成長を見せたことがある。一部の欧州を除き需要が堅調だったことに加え、中国は前年比15.7%増と大きく伸びた。ステンレス生産に対する需要は2017年には鈍化するものの引き続き増加すると見込まれている。またステンレス用途以外では各種の合金、航空機産業向け及びバッテリー部門で需要が堅調に伸びるとしている。バッテリー部門は現時点では全体に占める割合は少ないが、今後は主要な電池材料の一つとして注目されており、バッテリー部門の伸びは大きくなると期待が寄せられるとした。

3.鉛

1) 鉛の需給バランス

表5に鉛地金生産量と鉛地金消費量との差分である需給バランスを示す。ILZSGによれば、2016年は27千tの供給過剰となり、2017年は需給がほぼ拮抗し、2千tの供給不足になると予測した。2017年は鉛鉱石生産量が中国、カナダ、ギリシャ、カザフスタン、メキシコ、インドでの増産により前年比4.3%増、鉛地金生産量が中国及びインドの増産、米国でのAqua Metals社による新規鉛蓄電池リサイクル工場の稼働により前年比2.2%増と予測され、鉛地金消費量が欧州、日本、韓国では横ばい、米国及びインドが1.5%増と緩やかな伸びを見せる中、中国の需要は4.3%増に成長していることが影響し、2千tの供給不足になるとされた。

表5.世界の鉛需給バランス(2015〜2017年)

表5.世界の鉛需給バランス(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

2) 鉛の需給動向

2015年から2017年にかけて地域別の生産及び消費を表6に掲げ、当該数値をグラフ化したものを図3に示す。2016年及び2017年の鉛鉱石生産量、鉛地金生産量及び鉛地金消費量の見通しについて、詳細を以下に述べる。

表6.世界の鉛鉱石生産・鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

表6.世界の鉛鉱石生産・鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図3.世界の鉛鉱石生産、鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図3.世界の鉛鉱石生産、鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

① 鉛鉱石生産量


世界鉛鉱石生産量は、2016年は前年比1.2%減の4,716千tとなり2017年は前年比4.3%増の4,921千tと予測した。2017年、中国における鉛鉱石生産量は前年比5.1%増、カナダ、ギリシャ、カザフスタン、メキシコ、インドといった中国外の生産量は前年比3.6%増となる見込みである。2017年の生産見通しは上位国から、中国2,460千t、豪州435千t、米国330千t、ペルー314千t、メキシコ260千t、ロシア202千tと予測した。


② 鉛地金生産量


世界の鉛地金生産量については、2016年は前年比2.8%増の11,145千t、2017年は前年比2.2%増の11,391千tと予測した。中国及びインドでの増産に加えてベルギー及び米国での緩やかな増産が影響している。また、米国ではAqua Metals社が米Nevada州で新規鉛蓄電池リサイクル工場を稼働させたことにより、年30千tの鉛地金生産を予定している。Nyrstar社の豪Port Pirie製錬所は、2017年2月にプロジェクトの包括的な見直しが実施されたことにより設備の修正が必要となり、Ausmelt技術を利用した金属回収設備の新規導入を2017年9月に遅らせることとなった。2017年の生産見通しは、上位から中国4,850千t、米国1,136千t、韓国820千t、インド567千t、メキシコ344千t、ドイツ338千t、英国318千tである。


③ 鉛地金消費量


世界の鉛地金消費量については、2016年は前年比2.3%増の11,118千tとなり、2017年は2.5%増の11,393千tになると予測した。2017年は中国の需要が4.3%の増加見込みとなっていることが影響している。中国では、2013年でピークを打ち、飽和状態であると見られているE-bike向け鉛バッテリー需要が、National Bureau of Statisticsによると2016年は4.4%増と伸びており、これは3輪のE-trikesの需要増によるものと考えられている。E-trikesは中国の富裕、中流都市で運搬車として移動に便利という点で人気が高くなってきている。また、2016年は欧州で自動車販売の増加による需要増が見られたが、2017年は日本、韓国とともに欧州での需要は横ばいになると予測され、米国及びインドの伸びも1.5%増に留まると予測した。自動車産業においては、電気自動車(EV)の伸びが注目されているが、現時点では政府のインセンティブによるところが大きく、EV販売数は自動車販売数全体の3〜4%増に留まるため、短中期的には鉛需要に影響は及ぼさないと予測した。2017年の消費見通しについて、上位から中国4,840千t、米国1,615千t、韓国606千t、インド590千t、ドイツ370千t、日本268千tと予測した。

4.亜鉛

1) 亜鉛の需給バランス

表7のとおり、亜鉛の需給バランスについて、2016年は217千tの供給不足、2017年は226千tの供給不足になると予測した。2017年は、亜鉛鉱石生産量がインド、ペルー、フィンランド、中国、豪州での増産により前年比6.7%増、亜鉛地金生産量が中国及びインドの増産により前年比2.6%増と見込まれ、亜鉛消費量も中国、インド、米国での需要増から2.6%増と予測した。

表7.世界の亜鉛需給バランス(2014〜2017年)

表7.世界の亜鉛需給バランス(2014〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

2) 亜鉛の需給動向

2015年から2017年にかけての地域別の数値を表8に示し、当該数値をグラフ化したものを図4に示した。2016年及び2017年の亜鉛鉱石生産量、亜鉛地金生産量及び消費量の見通しについて、詳細を以下に述べる。

表8.世界の亜鉛鉱石生産・亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

表8.世界の亜鉛鉱石生産・亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)


図4.世界の亜鉛鉱石生産、亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図4.世界の亜鉛鉱石生産、亜鉛地金生産及び消費(2015〜2017年)

① 亜鉛鉱石生産量


世界の亜鉛鉱石生産量について、2016年は前年比5.4%減の12,840千tとなり、2017年は前年比6.7%増の13,697千tと予測した。2016年は世界最大の亜鉛鉱山であるインドRampura Agucha鉱山での廃棄物処理の影響による著しい減産が起因した。2017年は、Rampura Agucha鉱山の作業が完了し生産が回復する見込みであると同時にペルーAntamina鉱山、フィンランドTerrafameのSotkamo鉱山による増産、中国及び豪州の生産増加に加えて、エリトリアのNevsun Resources社のBisha鉱山が2017年に初の通年生産を終えることから全体鉱石生産量の増加が見込まれている。国別の2017年の生産見通しは、上位国から中国5,380千t、ペルー1,450万t、豪州1,078千t、インド850千t、米国785千t、メキシコ720千tと予測した。


② 亜鉛地金生産量


2016年の世界の亜鉛地金生産量は、2016年は前年比0.5%増の13,718千tとなり、2017年は前年比2.6%増の14,076千tと予測した。2017年は、中国及びインドからの更なる生産増が牽引するとされたが、カナダValleyfield製錬所ストライキの継続、ペルーで起きた洪水によるVotorantim社のCajamarquillaプラントの被害、韓国Korea Zincの減産、タイPadaeng社のTak製錬所が2017年に閉鎖予定であることが生産性にネガティブな影響を及ぼす可能性が指摘された。国別の2017年の生産見通しは、上位国から中国6,500千t、韓国964千t、インド815千t、カナダ620千t、日本547千t、スペイン508千tと予測した。


② 亜鉛地金消費量


世界の亜鉛地金消費量については、2016年は前年比3.5%増の13,935千t、2017年は前年比2.6%増の14,302千tと予測した。2017年の中国指標によると、不動産販売、家庭用電気器具販売が好調なことに加えて、2017年は官民パートナーシップによるインフラ投資の増加が見込まれており、中国における亜鉛需要は前年比2.3%増と予測した。また、インドでの需要増、米国の需要回復が予測された一方、欧州、日本、韓国の需要は横ばいとなり、タイでは需要が減少すると見られている。国別の2017年の消費見通しは、上位から中国6,880千t、米国950千t、インド734千t、韓国620千t、ドイツ485千tと予測した。

*国際銅研究会(ICSG)

国際銅研究会は、国際非鉄3研究会の中では最も新しい研究会で、国連の招請・勧告によって1992年に発足した国際機関である。世界の銅経済に関する情報の提供、政府間協議の場の提供及び銅に関する諸問題について国際協議・協力を推進することが目的で、世界の主要銅鉱石生産国、地金生産国及び消費国の23カ国及びEUが加盟している。事務局は、ポルトガル・リスボンに設置されており、2006年から国際非鉄3研究会の共同事務所となっている。

同研究会は、主に銅市場の需給予測に関する統計分析を始め、国際的な貿易取引に係る環境・経済面の課題について研究しており、統計等の刊行資料は、世界的に一定の評価を得ている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

*国際ニッケル研究会(INSG)

国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2 番目に古い歴史を持ち、世界のニッケル市場の透明性の強化を目的に1991 年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、ニッケル生産国、消費国及び貿易国からなる14カ国及びEUが加盟している。事務局は、設立当初はオランダ・ハーグに、2006 年からポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

*国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)

国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では最も古い歴史を持ち、1959 年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関で、国際銅研究会及び国際ニッケル研究会のロールモデルとなっている。現在、鉛・亜鉛生産国、消費国及び貿易国からなる29カ国及びEUが加盟しており、生産及び消費に占める加盟国の割合は85%にも及ぶ。同研究会は、鉛・亜鉛市場の需給予測分析を始め、国際的な貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。



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