98-09

平成10年3月2日                                            98年09号

発展が期待されるチュニジアの鉱業

(西川パリ事務所長の報告)


チュニジア共和国はアラブ・イスラム諸国の中で最も穏健な国として政治的にも安定し、また1995年には他の北アフリカ諸国に先駆けてヨーロッパ連合(EU)との自由貿易協定に調印するなど、特にヨーロッパと密接な関係にあるが、近年我が国とも経済協力を中心とした活発な動きが目立ってきている。ローマ時代にまでさかのぼる歴史を持つこの国の鉱業は、リン鉱石を除いては僅かに鉄、鉛、亜鉛などの採掘・生産が断続的に行われているに過ぎなかった。しかしながら、最近の新しい探査知見により新たな高品位の鉛・亜鉛鉱床が発見されるなど、鉱業国として見直されつつ状況にある。本レポートは西川パリ事務所長が同国に出張した際に同国工業省鉱山局及び鉱山公社より同国の鉱業事情について情報収集を行った結果をとりまとめたものである。

1.政治・経済
 1987年に就任したベン・アリ大統領は多数政党制を認めるなど国の民主化を進め、現在も与党RCD党を軸とした安定政権を維持している。外交的にはマグレブ諸国連合の推進のほか中東和平問題にも積極的に参画し、また欧米諸国との関係強化にも意欲を見せている。
 経済面では、1987年に世銀、IMFの指導のもと構造調整計画を開始し、1995年7月に北アフリカ諸国に先駆けて調印したEUとの自由貿易協定は、以後12年間にわたって段階的に実施していくことになっている。
 我が国のチュニジアに対する援助はアフリカ諸国の中でエジプト、ケニア、ガーナに次いで多く、また、チュニジア側も伝統に基づきつつ近代化を進めたいとする国の方針から、『日本をモデルに』という気運が高まっており、最近特に日本との関係を重視した動きがみられる。

2.鉱物資源の概要
 チュニジアの地質は主として堆積岩からなり古生代二畳紀層から第四紀層までが層序的に連続する。火成岩類は北部にわずかに露出するに過ぎない。
 チュニジアの鉱物資源は国土の北~中央部に集中しており、かつてはリン鉱石、鉄鉱石および岩塩が主なものであったが、最近では鉛・亜鉛、銅、金、銀などの鉱床・鉱徴が多く発見されている。このうち約50の鉱床がかつて採掘された実績を持つ。
(1)探鉱状況
 チュニジアにおける注目すべき金属鉱物資源の胚胎ゾーンとしては、同国北端部に分布する新第三紀の火山活動を特徴とする南西から北東方向に伸びる範囲で、火山性の堆積岩およびこれに伴う断層などに関連した鉛・亜鉛、銅、金、銀などの多金属の鉱化作用が認められるゾーンと、その南側に隣接する同方向(SW-NE)に伸びるダイアピル構造に関連する鉛・亜鉛などの鉱化ゾーンである。
 現在、チュニジア国内における資源探査は、主に鉱山公社(Office National des Mines:ONM)によって行われている。同公社の主要業務とされる『地質図幅の作成』および『探鉱』のうち、前者は1978~86年の間、フランスBRGMの協力のもと、ほぼ終了したといえるが、後者はチュニジア北部および中央部の鉱床分布図、地化探異常分布図及び重力分布図が作成されているにとどまり、稼働中の鉱山周辺を除いては精密探鉱が行われた地域は極く限られている。また、海外企業による目立った活動としては、1996年、BHP社がチュニジア中部で試掘権(2,300 km²)を取得し探鉱を実施している。
(2)開発状況
 チュニジアにおける現在開発中(近く開発予定の鉱山も含む)の鉱山としては、鉛・亜鉛を主体とするベースメタル鉱山が3鉱山、リン鉱山が10鉱山、鉄鉱山が1鉱山存在する。以下に3つのベースメタル鉱山の概要を記す。
1)Dar N'Hal鉛・亜鉛鉱山
 首都チュニスの南西約120km(車で約2時間)に位置するこの鉱山は、国営会社Societe Djebel Djerissa(SDD)によって開発されている。古くより断続的に採掘が行われてきたが、いずれも酸化帯を含む地表部に近い鉱体を対象としてきた。現在は見かけ上三畳紀下部で、白亜紀層とのコンタクト部に胚胎する潜頭性の新鉱体を斜坑を通じサブレベル・ストーピングにより採掘中である。可採鉱量130万トン、平均品位は鉛+亜鉛12~13%(Cut Off品位6%)で生産量(粗鉱)は年間6万トンである。山元から25km離れた選鉱場で処理された後、精鉱はヨーロッパに輸出される。
2)Bougrine鉛・亜鉛鉱山
 前記Dar N'Hal鉱山よりさらに西40kmに位置する。1989年より1995年までMetall Gesellshaft社(独)とチュニジア政府が共同で探鉱を実施し、F/S段階まで進めたが、市況の悪化、MG社の社内事情もあって同社はプロジェクトから撤退した。その後国際入札によりカナダの民間会社(カナダ・ブレークウォーター・リソーシズ社)が100%権益を取得して、現在再開に向けて準備中で、1998年初頭に生産が開始される予定である。鉱床は三畳紀と白亜紀の境界部に胚胎する鉛・亜鉛鉱床で、現在把握している鉱量は800万トン、品位はPb+Zn12~13%(Zn 2/3、Pb 1/3)と言われている。
3)Boujaberバライト、鉛・亜鉛鉱山
 国営会社Societe Djebel Djerissa(SDD)によって開発されている。前記両鉱山の更に西方、アルジェリア国境近くに位置する。バライトを主とし、少量の鉛・亜鉛を随伴する。鉛+亜鉛品位は4%程度である。

3.鉱業法の概要
 鉱業法は現在改訂中で、1998年中には改訂版が出る予定である。権益などの取得にあたっては、現在の鉱業法に基づき、さらに詳細を規定した鉱業協定書(Cnvention Miniere)をチュニジア政府との間で個別に締結することになる。政府は外資導入に極めて積極的であり、次のように投資に対して多くの優遇処置が講じられている。
・投資形態は探査・採掘段階ともに、外資100%またはチュニジア側との共同いずれの選択も可能。
・通関税および消費税の免除。利益に対する税の軽減措置
・鉱山使用料(Redevance Miniere)は利益の35%、ただし、最初の5年間は免除。
 なお、鉱業権には次の二つがある
・試掘権(Permis de Recherche):初回3年間とし同期間で2度更新可能である。
・採掘権(Concession Miniere):鉱床発見後、試掘鉱区から採掘鉱区への転願は容易である。

4.おわりに
 以上のようにチュニジアは最近世界クラスの高品位の鉛・亜鉛鉱山が発見され、さらに、未探鉱の地域がかなり残されているなど、新たな有望なベースメタル鉱床が発見される期待が高い。一方、この国の優れた立地条件や安定かつ将来の発展が期待される政治・経済状況またアフリカ一良好と言える治安状況などアフリカ諸国の中では最も投資環境が整備されている国の一つと言えよう。従って、今後我が国としても中長期的なベースメタル資源確保の観点から注視すべき国の一つであろうと判断される。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも金属鉱業事業団としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、金属鉱業事業団及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。