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報告書&レポート

2004年1月27日 北京海外調査員 納 篤
2004年03号

中国輸出増値税の還付率の調整(低減) 第1部 還付率調整の背景と非鉄分野への波及(前編)

 2003年10月、中国財政部、国家税務総局はこれまで輸出振興を目的としてきた輸出増値税の還付に関し、2004年1月よりその還付率を現行の17%~15%から13%~0%に引き下げると発表した。中国の輸出企業のみならず本邦企業も、この還付を大きなメリットとしてコスト競争力アップの恩恵を受けてきた。今後、還付税率引き下げの影響を受ける企業、影響を受けない企業が鮮明化され、取り扱う商品によっては業種間に対応の差が出ることが予想される。
 前編では輸出増値税及び2004年1月より施行されるその還付低減率について紹介し、後編では実際に2004年1月から還付率の調整(低減)が施行され、中国銅市場にどのような影響を与えるのか検討を紹介する。

  1. 輸出増値税の還付とは

  2.  増値税は、中国政府が歳入不足を補完するために1994年1月に導入した付加価値税の一種で、国内販売品及び輸出品の各流通段階に税率17%を一様に課税している。輸出品に関しては、当初、輸出促進のため徴収額の全額を還付していたが、不正な還付請求が相次いだことから、段階的に還付率が低減されてきた。ただ、増値税導入当時は税収を増やす意味合いが大きかった様であるが、ある時期から輸出促進の優遇策である輸出増値税還付制度との兼ね合いが難しくなった。

  3. 還付率調整の背景

  4.  国家発展改革委員会、有色金属工業信息中心等関係者によると、国務院は、輸出に関わる増値税還付についての見直しに関し、関係部署、すなわち国家発展改革委員会、財政部、商務部及び国家税務総局等に対して問題点の洗い出しと対応策を出すよう指示を出してきた。これは還付財源確保、還付手法等の諸処の問題により、還付が1年以上も遅れることが珍しくない状況となっていたため、昨年8月頃から検討されてきたとしている。関係部門の統計によると2003年末までに国が支払いを繰り延べしている還付額は3,000億元に達し、輸出企業の一部では業務に支障を来たし、重大な経営状況に追い込まれているケースもある。
     この状況を関係当局者が強く認識した結果、2003年10月13日、中国財政部、国家税務総局より、「輸出貨物還付税率調整に関する通知」が発表され、内容は2004年1月より輸出品に摘要されている還付税率を現行の17%~15%から13%~0%に引き下げることに至った。

  5. 還付率の調整内容と影響(非鉄金属に特化)

  6.  公表された「輸出貨物還付税率調整に関する通知」に示された商品の中で、非鉄原料部門、すなわち鉱石、精鉱、合金、スクラップ等、非鉄鉱産資源に関する輸出増値税還付調整は第1表~第3表に示す通りである。
     これらの表に示す商品の他、現行還付率が17%と15%の貨物に関しては、その還付率を一律13%に引き下げており(電気製品、衣類、鋼材、玩具、化学繊維)、また、現行増値税率と還付率がいずれも13%である貨物については、その還付率を一律11%に引き下げている。
     今回の調整方針では、経済効率性の高い商品、環境への影響負荷の小さい商品、資源消費が少ない(高付加価値の)商品に対し、還付率を維持または低減率を小さくし、一方、中国国内でタイト化している商品、輸出制限をしている商品、国際市場で競争力のある商品については還付率を引き下げるか、或いは撤廃している。ちなみに船舶、自動車、鉄道、工事用重機、医療機器など、経済効率性の高い商品については還付率を維持(17%)し、継続して輸出奨励を実施しているが、石油、潤滑油、航空機燃料及び大部分の非鉄精鉱、スクラップ等の商品は還付率が撤廃された。
     非鉄商品に注目すると、銅、アルミ等の非鉄鉱石、精鉱、スクラップと言った非鉄原料部門(モリブデン鉱石、精鉱を除く)の商品に関しては、国内需要を賄っていない商品であることから、そもそも輸出余力のないものであり、還付が撤廃されても大きな問題はない。またウラン精鉱、タングステン精鉱、アンチモン精鉱、錫精鉱、レアアース精鉱、モリブデン精鉱等のような輸出制限のあるもの、或いは国際競争力のある商品等は、輸出増値税還付率を撤廃の影響を生産者側は直接受けることとなる。しかしながら、世界市場における主導権を持つこれら生産者は、一時的に輸出コストを上げて状況をみる時間的余裕が有ると考えられ、現状では既に還付率低減によるマイナスを上乗せしたコストになっている。
     一方、非鉄地金ではアルミが現行の15%から8%に引き下げられ、銅、レアアースは5%に引き下げられた。アルミ、銅、レアアース生産企業は輸出に伴う還付金の減少で、これら地金生産企業の輸出コストは上昇し、大きな影響を与える可能性がある。ただ、銅地金はアルミ地金に比べて輸出量が少なく、アルミ地金ほどの影響はないと思われる(2002年のアルミ地金及び銅地金の輸出量はそれぞれ621,000t及び76,000t)。また、レアアース製品は近年価格が低下してきており、既に還付率低減によるマイナスを上乗せしたコストになっている。レアアース生産企業は日本を中心とする輸入サイドとの値決めの際の“価格談判“において、若干有利な環境になりつつある。すなわち中国国内のレアアース生産企業は付加価値商品の生産技術と設備が整備されつつあり、国内向けの需要が増えてきている。このような状況から、輸出還付のリスクを負うより、国内需要家への供給を重視した方が、価格的にもリスク回避という意味でも得策であるという企業の意見が多くなってきている。こうした場合、日本側輸入サイドは多少の価格の上乗せを受け入れざるを得ない状況になるかもしれない。
     いずれにしてもレアアースにかかわらず、輸出税還付が滞りなく直ちに実施されることにリスクがある以上、内需か輸出増値税の還付をメリットとするか選択を迫られることとなろう。

     輸出増値税の還付率の調整は、全体として還付率を低減して輸出製品のコストを増加させることとなり、生産企業の競争力にマイナスに働くこととなる。ではなぜ中国政府は還付率を引き下げたかという理由は幾つか挙げられる。
     一つ目に、還付財源不足問題が挙げられる。中国全体の輸出の伸びはここ数年間では平均で20%以上の伸びを示しており、中国政府が見込んでいた数字よりも大きく上回っていると思われ、還付する財源は大きい問題となっている(発展改革委員会)。未還付金の額は3,000億元~3,500億元(3兆9千億円~4兆5千億円)に達するとの報道もあり、深刻な財源不足に陥っているようである。
     もう一つは米ドルとの為替問題が挙げられる。ある非鉄金属を中心に取り扱う輸出入企業の幹部によると、この調整はアメリカからの人民元切り上げ圧力を軽減する政治的意図が強いという。確かに米ドルと人民元とは固定されており、米国の貿易赤字は甚大で温家宝首相がワシントンへ説明に行ったことを考えると、米国の圧力は相当と言えそうである。 米国の圧力をかわす狙いがあったかどうかは別にして、還付財源問題は目先の大きな問題である。現行制度では中央政府がその大半を負担しており、厳しい財政事情をどう改善していくのか。商務部経済研究院の専門家の言によると、地方政府に一部を負担(全体の25%)させる案を検討しているという。

    第1表 輸出税還付撤廃商品(13%→0%)
    税関番号 現行還付税率 商品名
    2601-2612
    2614-2622
    13 マンガン、銅、ニッケル、コバルト、アルミ、亜鉛、錫、クロム、タングステン、ウラン、チタン、ニオブ、タンタルの鉱石、精鉱、スラブ、灰、バナジウムの鉱石と精鉱貴金属とその鉱石と精鉱
    7401 13 沈殿銅
    7402 17 アノード、陽極板
    7404 13 銅スクラップ
    7110 13 白金粉、板、シート、パラジウム
    25309020 13 レアアース鉱石
    76020000 15 アルミスクラップ
    81019700 13 タングステンスクラップ
    81102000 13 アンチモンスクラップ
     
    第2表 輸出税還付率8%に調整
    税関番号 商品名 調整後の税率
    2613 モリブデンの鉱石及び精鉱 8%
    28047010
    28047090
    黄燐及びその他の燐 8%
    7502 ニッケル塊 8%
    72021100
    72021900
    フェロマンガン 8%
    72022100
    72022900
    フェロシリコン 8%
    72023000 フェロシリコンマンガン 8%
    72024100
    72024900
    フェロクロム 8%
    7601 アルミ塊 8%
     
    第3表 輸出税還付率5%に調整
    税関番号 商品名 調整後の税率
    7403 銅地金及び銅合金 5%
    2846 レアアース、イットリウム、スカンジウム及びその混合物、化合物 5%

     この表以外では亜鉛地金還付率が17%から11%に低減されている。

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