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報告書&レポート

2004年4月12日 デンバー事務所 目次英哉
2004年12号

米国のマンガン合金鉄不足深刻化で関係者の思惑が交錯

 米国では製鋼用マンガン合金鉄の品不足が深刻化し、価格の高騰が続いている。これは鉄鋼生産の回復で需要が急速に伸びている一方、国内唯一のマンガン合金鉄生産者であるオハイオ州のEramet Marietta社が装置故障や電力不足のためシリコマンガンの減産を強いられ、またフェロマンガンの主要供給源であった仏・Eramet社が昨年工場を閉鎖、中国は電力不足で生産が低迷し、他国もドル安のため米国への輸出インセンティブを失って、米国への供給が低迷しているためである。1月後半からシリコマンガンが値上りし始め、これを避けるための需要転換が進んだフェロマンガンも2月以降急速に品不足となった。最近の価格はシリコマンガンが2月のピークからやや下げて¢80/lb前後、フェロマンガンは一本調子の上げでUS$2,000/tに迫る勢いで、いずれも正月前後の相場の3倍近くになっている。

 こうした状況を受け、米国防省の戦略国家備蓄制度を運営する国防備蓄センターは、フェロマンガン国家備蓄物資の売却を急遽前倒しし、異例の月二回の売却公示で計2.5万stを売却した。その落札単価は前回昨年12月売却時の3倍に達し、また公示後数日という異例の速さで全量落札先が決まるなど、品不足の深刻さを物語っていた。この前倒し売却により国家備蓄センターは2003~04会計年度内に認められた売却枠5万stを全量売却し、2004年10月に新年度が始まるまで更なる備蓄物資売却は出来ない。しかし、その後も米国のマンガン不足は解消しないため、米鉄鋼業界は、まだ70万stも残っているフェロマンガン備蓄物資の更なる市場放出を認めるよう議会に働きかけを始めたと、3月22日付けMetals Week誌は報じた。

 また、ウクライナの最大手合金鉄メーカーNikopol社が、フェロマンガンの米国向け出荷準備を始めているとの報道もある。3月22日付けPlatts社ウェブサイトは、同社は従来は主にロシア、ヨーロッパ、トルコ、カザフスタンにフェロマンガンを供給して来たが、輸出部門幹部は「製品を高値で現金化できる米国市場は魅力的であり、4月に第一陣を出荷した後、徐々に輸出量を拡大したい」と述べたと報じている。ウクライナの2003年のフェロマンガン生産量は162万tで、うちNikopol社だけで90万t弱を生産した。同国の2003年の総輸出量は19万tであった。因みにNikopol社製シリコマンガンは米国の反ダンピング関税の対象で、未だに米国市場から締め出されている。

 一方、シリコマンガンについては、米商務省が3月24日、反ダンピング法により輸入規制していたブラジル・CVRD社製シリコマンガンの関税率を88%から13.02%に引き下げる決定を下した。この時期にこの判断を下した背景には、外国製品の輸入を促し、国内の品不足を解消する狙いがあるものと思われる。しかし、Metals Week誌はCVRD社関係者の話として、今年生産予定の製品は全て地元鉄鋼メーカーに供給予定で、関税撤廃後対米輸出を即座に再開する事は出来ないだろうとみるなど、米国市場の品不足を直ちに解消する可能性は低い。

 また、シリコマンガン減産中と伝えられる米国唯一の生産者Eramet Marietta社は、「6月までの注文を全て満たすことが出来ない」と発表しただけで、実際に通常の生産量に対してどの程度の減産を行っているのかを明らかにしていない。一説によると実は生産障害は特に発生しておらず、注文の増加に生産が追い付かないだけではないかとの憶測もある。その真相は定かではないが、いずれにせよ最近の米国でのシリコマンガン不足は、米国鉄鋼業界の生産回復に伴う需要増が主要因であることは間違いなく、需要・価格低迷時に米政府が国内生産者保護のために採った政策が、状況の反転により逆に足かせとなって事態を悪化させた面が否定出来ない。

 シリコマンガンについては、かつて主要輸出国であった中国が電力不足と内需拡大で輸出余力が低下しため、アジアでも供給不足となっている。他市場からの供給増が当分見込めない現状では、米市場の需給緩和は当面望めず、品薄と高値が続くと見られている。しかし、市場では夏の鉄鋼需要停滞期を迎える頃には状況が改善し、需給が緩むとの見方が一般的である。先物相場も7月以降はバックワーデーションが顕著となっており、シリコマンガン価格は夏場に一気に現在の半値以下まで下落するとの予測もある。

 一方、米国フェロマンガン需給の見通しについては、今後の政府備蓄当局とウクライナの動向が鍵として注目されている。3月29日付けMetals Week誌はNikopol社関係者の話として、2004年半ばに米国に到着するフェロマンガン第一陣の量は「ごく僅かな量」になると伝えており、その後輸入が拡大するかどうかは不明である。また3月30日に国防備蓄センターが発表した今後の余剰備蓄物資売却スケジュールでは、フェロマンガンの年度内追加売却の予定はなく、次年度の売却予定枠は今年度と同じ5万stに据え置かれたままである。同センターは、余剰備蓄物資の売却計画変更手続きには3ヶ月はかかるとしている。ウクライナ製品の輸入や備蓄物資放出が米国需給を供給サイドから改善するかどうかは、まだ予断を許さない状況である。

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