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報告書&レポート

2004年5月24日 ロンドン事務所 嘉村 潤
2004年18号

国際鉛亜鉛研究会定期会合(2004年春)の概要報告

 2004年4月26~27日、国際鉛亜鉛研究会の定期会合(第7回経済環境委員会、第31回産業アドバイザリーパネル、第98回常任委員会)が例年通り英国ロンドンにおいて開催され、メンバー国等から約30人の鉛・亜鉛の政府・民間関係者が参加した。
 今回の特徴としては、例年の鉛亜鉛需給予測、鉛亜鉛産業に影響を与える環境規制等のレビューに加えて、2003年のローマ会議に引き続き国際金属研究会の合理化問題について活発な議論がなされた点があげられる。

  1. 常任委員会

  2.  鉛・亜鉛需給の2004年の現状と展望について事務局から以下のような報告があった。

    (1)

    鉛需給の2004年現状と展望

     2004年の世界の鉛地金消費は1.6%増の690万トンを予測。これは、中国の需要の6.2%増加が主要因であり、欧米は2003年同様のレベルと予測。2004年の世界の鉛鉱山供給は0.8%増の320万トン。アイルランド、スウェーデン、モロッコ、ペルーの増産と豪州、米国の減少がほぼバランス。2004年の世界の鉛地金供給は0.4%増の700万トンと予測。中国、カザフスタン、サウジアラビアの増加によりアジアの地金供給が5.8%増加、豪州、欧州、米国の減少でバランスすると予測。中国の西側への地金純輸出は40万トンを超えることが予測されている。2004年の西側世界の鉛地金需給バランスは13万トンの不足と見ている。

    (2)

    亜鉛需給の2004年現状と展望

     2004年の世界の亜鉛地金消費は3.5%増の1,010万トンを予測。アジアの地金消費は更なる中国の成長と日本、インド、インドネシア、韓国、台湾、ベトナムの増加により3.4%増加、欧州は2.5%増加、米国は回復し7.2%増を見込む。2004年の世界の亜鉛鉱山供給は0.8%増の970万トンを予測。豪州とペルーで大きく減少する一方、それを上回る中国、アイルランド、カザフスタン、メキシコ、ナミビア、スウェーデンの増加を見込む。2004年の亜鉛地金供給は1.7%増の1,000万トンと予測。欧州では主にイタリアの減少により3.1%減、豪州、日本も減少、しかしカナダ、カザフスタン、韓国、メキシコ、ナミビア、米国では増加を予想。中国の西側への亜鉛地金純輸出は、中国国内需要の急拡大から25%減少と予測。2004年の西側世界の亜鉛地金需給バランスは7万トンの不足と見ている。

      世界の鉛亜鉛需給予測 (単位:千トン)
      亜鉛
    2003 2004前半 2004 2003 2004前半 2004
    西側鉱山供給 2,034 1,033 2,066 6,083 3,361 6,787
    西側地金供給 4,743 2,301 4,593 6,632 3,290 6,664
    西側地金消費 5,294 2,676 5,323 7,134 3,674 7,359
    旧東側からの純輸入 466 270 546 650 296 600
    米国備蓄放出 60 25 55 7 10 25
    西側需給バランス -25 -80 -129 155 -78 -70
    世界鉱山供給 3,149 1,540 3,173 9,637 4,683 9,710
    世界地金供給 6,722 3,252 6,695 9,832 4,814 10,004
    世界地金消費 6,809 3,399 6,920 9,733 4,925 10,073
    出典:国際鉛亜鉛研究会

    (3)

    金属研究会の合理化問題

     2003年10月の会合で3金属研究会(国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会、国際ニッケル研究会)の事務局統合の提案があり、今回、国際銅研究会メンバーとの調整、事務局統一案の作成・提出、統一事務局の場所選定や事務局長選出等のための選出委員会を設立し、3研究会加盟国で選出委員会による事務局の統一及びその場所の選定提案を本年7月に採決すること、秋に3研究会合同会議を開催し、事務局長の選定投票を行うことなどが議論された。以上は、特に合理化を進めたいEU、米国、豪州、仏などを中心に議論、他の研究会の加盟国との十分な調整が必要なため、スケジュール等は流動的。

  3. 経済環境委員会

  4.  事務局より、鉛亜鉛産業に影響を与える規制等として、以下の現状が報告された。

      (1)

      世銀採掘産業レビュー:途上国の石油・天然ガス・鉱業セクターに対して、これまで世銀は、貧困解消のため振興してきたが、NGOからの批判に応じて、貧困解消に具体的につながるアセスメントや環境のみならず自然保護・人権保護といった社会経済的影響に配慮した支援基準等を設けるといった見直しを行う作業を実施しており、本年1月、最終報告書は完成したが、本年3月、世銀総裁は公式な対応決定を先送りした。

      (2)

      英国の採掘産業トランスペアレンシー・イニシアティブ:世界の採掘産業とそのホスト国政府の双方に望ましいガバナンスとアカウンタビリティの原則を、このイニシアティブに自主的に参加するという協定を締結することで、関係者にこの原則を浸透させるイニシアティブで、推進役を英国以外の国に広げることが課題となっている。

      (3)

      EU新化学政策:化学物質の登録、評価、アセスメントのための新システム(REACH new system for the Registration, Evaluation and Assessments of Chemicals)を導入するとの政策であり、本システムが法律で規制されると、企業は膨大な化学物質リスク評価作業と登録申請業務が発生すると言われている。2003年10月、欧州委員会は法案を正式採択したことから、今後は、欧州議会および各国政府の対応が注目されている。

      (4)

      UNECE(国連欧州経済委員会)の重金属プロトコル:カドミウム、鉛、水銀等重金属の排出管理議定書、欧州における重金属の製造過程での排出制限や含まれる製品の管理を規定したもので、2003年12月に発効。この議定書の実施状況が注目されている。

      (5)

      EUバッテリー指令:全てのバッテリーの収集とリサイクルを義務付ける指令、収集・リサイクル費用の全てを製造者負担とする指令で、2003年11月に新しい指令案が提出されたが、産業界の懸念は大きく、最終指令になるまでには紆余曲折が予想される。

     また、ICMM代表者から、非鉄金属産業で進行中のマテリアル・スチュアードシップ(材料の流れやその人体・環境に与える影響の責任ある管理)に関する取り組み状況の講演があった他、EUの亜鉛リスク・アセスメントの現状(健康部門と環境部門の2つのアセスメントからなり、健康部門は2003年5月に完成、環境部門については実施国のオランダに対し、産業界はリスク評価が厳しすぎると修正を要求中)、産業界の自主的な鉛リスク・アセスメントの現状(科学的リスク評価がされないまま用途規制される状況にある鉛について、国際鉛開発協会が実施中、一次ドラフトは2003年完成、現在、論評国であるオランダがチェック中)、リサイクル促進のためのリサイクルの経済環境評価(新しいリサイクル評価指標の開発とその算出のためのデータ収集活動の実施状況)等の報告が行われた。

  5. 産業アドバイザリーパネル

  6. (1)

    亜鉛精錬における2次原料使用の傾向(Sudamin Rohstoff GmbHのDirk Heinrich講演)

     単体用途が少ない亜鉛のリサイクルは現状難しいが、近年、亜鉛メッキ鋼の使用増加で電気炉排煙ダスト中の亜鉛含有増大という状況変化で、亜鉛リサイクルが可能となってきた。2次原料の使用についてのポイントである定常的な原料の確保のため、廃棄物の埋め立て規制といった措置も必要。先進国では既にこうした方向で進んでおり、持続的発展のためにも亜鉛産業もこうした動きに対応していくべき。

    (2)

    鉛鉱山供給の展望(事務局)

     世界の鉛鉱山供給は、リサイクル増加、環境規制強化等により1970年代初めより減少、2003年は1966年と同じレベルとなった。現在、鉛中心の鉱山操業は10か所しかない。1980年以降、鉛精鉱生産者としての中国が台頭、欧州・CISは減少。2003年の3大生産国(豪州、中国、米国)のシェアは62%となっている。今後5年間の新規生産は限定的で、大きな生産追加としては、豪州Cannington鉱山の年産4.5万トンの拡張とInvernia Westの新規鉱山で年産7万トンの生産開始がある。小さいプロジェクトは、中国、モロッコ、カザフスタン等で進行、2006年末までに10万トン追加予定。近年、中国の地金生産が急成長し、鉛精鉱の純輸入が上昇、2003年輸入量は37.4万トンとなった。今後も中国の精鉱輸入量は上昇の見込みで、鉛精鉱の長期の供給不足が懸念される。

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