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報告書&レポート

2004年6月22日 アルマティ事務所 酒田 剛
2004年23号

MOSCOW METALS SUMMIT報告

 6月1・2日、モスクワで「Moscow Metals Summit-Meeting the Challenge of Globalization」が開催された。ロンドンのMetal Bulletinとモスクワの雑誌社Eurasian Metalsが共催したもので、2003年のSteel Summitに続く2回目。サミットには、最近のロシア・ビジネスに対する諸外国の関心の高さを示す36か国約400名の参加があり、ロシア・CIS地域のMetals Sectorの現状に関して活発な情報交換が行われた。本稿では、サミットの特徴及び注目されたスポンサー企業2社(EvrazHolding社、UGMK社)と他2社(SUAL社、Kazakhmys社)のプレゼンテーションの概要について簡単に報告する。

  1. サミットは(1)ロシア・CISのビジネス環境、(2)国際展開での直面する課題、(3)世界市場での成功戦略、(4)融資の国際展開、(5)ロシア冶金産業の展望、(6)原材料市場の展望、(7)金属市場への投資、(8)法制環境の8セッションから構成、45のプレゼンテーションがあった。

     発表内容は、事前にプログラムとして配布されていたが、題名が未定など、発表内容が明示されないものが多く見受けられたり、事前に登録された内容と当日発表されたプレゼンテーションが異なるなど、全体の傾向を把握するに困難を要した会合であった。また、発表にあたっては、特に、旧CIS系の発表者は資料の配布、Powerpointの活用等が無いケースが散見され、発表内容の把握もきわめて困難であった。主催者側に、これらの点の改善を求めたい。

     講演の一例は次の通り。

    (1) Severstal社(ロシア第2の鉄鋼メーカー)やMMK社(Mgnitogorsk Metallurgy Combine:ロシア最大のSteel Mill)による大規模な中期資金調達の仕組み(Mocsow Narodny Bank Ltd.:英)
    (2) ロシアのアルミ業界の生産競争力(CRU Strategies Ltd.:英)
    (3) ロシアMetal Companiesのレーティング(Standard & Poor’s:米)
    (4) ロシアのWTO加盟が新たな投資の波へ与える影響(EBRD:英)
    (5) ロシアのフェロクロムの市場競争力(Serovsky Ferro-Alloy Plant社:露)
    (6) OECDやWTOの観点から論ずるロシアの貿易ルール(U.S. Department of Commerce:米)

  2. 主な参加国(参加者)

     サミットの登録者リストによれば、参加者の約半数はロシア、次いでイギリス31、ウクライナ23、カザフスタン15などとなっている。
     この他、先頃、中国の上海宝鋼グループと石炭・コークスの合弁生産を発表したブラジルCVRD(リオ・ドセ)社や、北米鉄鋼協会が市場の不安定要因になるとして能力増強を警戒しているインド(National Aluminium Co Ltd.、Tata Steel)や中国などからの参加者が関心を引いた。なお、Norilsk Nickel社の参加者は確認できたが、アルミ最大手Russian Aluminium社からの参加は確認できなかった。
     ウクライナとカザフスタンの現況を次に概要する。
     ウクライナはCIS域内第2の大国。5月の東欧・バルト諸国のEU加盟で、伝統的な貿易相手地域にEUの保護措置や環境規制等が導入され、「新たな鉄のカーテン」が引かれたとして、将来的にもEUとロシアの緩衝地帯になる懸念が出ている。ロシアは、同国に対して2012年までの輸入関税撤廃や、石油・天然ガスの付加価値税除外などを提案、自由貿易圏構想で自陣営への取り込みを目指している。
     カザフスタンはロシアと同様、石油・天然ガス生産が好調な経済を支え、IMFは金融セクターなど構造改革を高く評価。2002年9月、ムーディーズが同国にCIS初の投資適格を与えたのに続き、本年5月、S&Pも格付けを投資適格級に引き上げた。ロシアが提唱する統一経済圏構想に、ウクライナ、ベラルーシと共に含まれる。

  3. プレゼンテーションの概要

    3-1.

    EvrazHolding社(Alexander Abramov社長)

    (1) ロシア最大の鉄鋼メーカー
    (2) West Siberian、Nizhny Tagil、Novokuznetskの各Steel Millを所有
    (3) 2003年の鉄鋼生産量:13.83百万t
     
    • 現在、キャッシュ・コスト120US$/tで鉄鋼生産が可能なのは、世界中でロシアとブラジルの2国のみであり、ロシアでは特に原料・電力・人件費が安く、売上高利益率が高い。
    • 欧米で買収攻勢に出ているロシア鉄鋼企業のM&Aは、対ロ輸入制限の回避を狙ったものであり、世界的な鉄鋼市場のトレンドに強く影響を受けている。
    • ロシアのMetallurgical Companyは、ごく少数のオーナーが所有し管理されている点が他国と大きく違う特徴であり、M&Aの動向にもこのような注視が必要である。
    3-2.

    UGMK社(Andrei Kozitsyn部長)

    (1) Norilsk Nickel社に次ぐロシア第2の銅生産者
    (2) 電気銅を生産するUralelektromed社や粗銅生産3社などのホールディング会社
    (3) 2003年の電気銅生産量:300千t(対前年比9%減)
     
    • 最近、原料鉱石の自給体制を増強するため、バシコルトスタン共和国の3社の権益を取得することに、同共和国政府と合意した。

        Buribayevsky GOK(64.66%):
         銅-硫化鉄鉱石の採掘・選鉱コンビナート
        Bashkir Copper-Sulfur Combine(79.78%):
         銅鉱石の採掘・選鉱コンビナート、亜鉛選鉱場(処理能力100千t/年)の建設を計画中
        Khaibullinskaya Mining Company(100%):
         銅-硫化鉄鉱石の採掘会社、ロシア最大級のYubileinoye-Podolskoye鉱床の開発ライセンスを所有しており、採鉱・選鉱コンビナートの建設を計画中
    • 開発権取得を目指しているUdokan銅鉱床(チタ州)のテンダーは、6月末にも条件が提示されるのではないかと期待している。
    3-3.

    SUAL社(William Shor副社長)

    (1) ロシア第2のアルミニウムメーカー
    (2) ロシア国内の生産シェアは、ボーキサイト:90%、アルミナ:60%、アルミニウム:25%
     
    • 国の支援を受けて実施しているKomi Aluminaプロジェクト(開発総額20億US$)は、バンカブルF/Sを実施中であり、2005年第3四半期にも建設を開始する予定である。
    • 2001年に開始した同プロジェクトは、コミ共和国でのSredne-Timanボーキサイト鉱山(確定鉱量250百万t)の開発(6百万t/年)、アルミナ製錬所の建設(1.4百万t/年)、アルミニウム電解工場の建設(0.5百万t/年)からなっており、これまでに150百万US$を投資した。
    • このプロジェクトによって、ロシアのアルミナ生産量を50%増やすことが可能となり、2007年12月完了を目指している。
    3-4.

    Kazakhmys社(Vladimir Kim社長)

    (1) カザフスタン最大の銅生産者
    (2) 2003年の生産量:銅精鉱419.6千t、亜鉛精鉱78.1千t、電気銅417.4千t
     
    • Udokan銅鉱床の開発権については、自社の鉱量獲得(2004年1月現在、埋蔵鉱量2,848.9百万t、銅30.5百万t、亜鉛4.9百万t、銀18.8千t)が順調に増えていることから、去年より関心は低くなっている。
    • 2005年前半にもロンドン市場でのIPO(新規株式公開)を検討しており、CITIgroupやHSBCが取り扱うことになるだろう。
    • 2004年の投資額は前年比63.5%増の210百万US$を、税引前利益は800百万US$(対前年比108%増)をそれぞれ予定している。
    • 生産量の約8割は中国向け輸出であり、中国経済スローダウンの影響はあると思うが、大きな問題にはならないと考える。
    • 2004年の生産量として、銅精鉱432.3千t、亜鉛精鉱80千t、電気銅425千t及び電気亜鉛70千tをそれぞれ予定している。
    • 現在進めている主な新規鉱山開発プロジェクト(2003年生産開始を含む)は、以下のとおり。(この他、2004年に露天採掘生産を目指している小規模3鉱山あり)

    鉱山名 採掘方法 銅量
    (千t)
    計画採掘量
    (百万t/年)
    開発費
    (百万US$)
    建設期間
    Zhaman-Aibat 坑内 2,700 4.0 38.40 2000~2006
    Mine67/70 坑内 1,000 2.5 20.16 2001~2004
    Nurkazgan 露天 600 4.0 49.28 2002~2003
    Mine73/75 坑内 400 2.0 22.00 1999~2003

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