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報告書&レポート

2004年7月23日 北京事務所 納 篤
2004年27号

中国のレア・アース政策動向と2003年需給動向

 中国のレア・アース産業は1990年代に入って着実な成長を遂げてきたが、いくつかの問題点や課題も残されてきている顕在化されてきている。それは無計画・無秩序な資源開発による、環境問題、精錬分離生産規模の急速かつ過剰な拡張、異常な価格変動、最終需要部門への参画問題等である。中国政府は、これらの問題を改善するために、2001年よりレア・アース業界のミクロ一辺倒の政策からマクロへの政策変換を果たそうとしている。現在、中国政府は200社以上あるとされる中国レア・アース関連企業を南北2つの集団に集約する政策を推進している。本稿は、その集団化を含む中国のレア・アース政策動向を紹介しつつ、併せて2003年の中国レア・アース産業の需給動向を紹介する。

  1. 政策動向と今後のレア・アース産業の動向

    (1) 南北2大レア・アース集団へ
       中国政府は2001年よりレア・アース業界へのミクロからマクロへの政策変換を図ってきた。現在中国政府は、17省(市、自治区)にある約170社のレア・アース関連企業の再編成を断行中である。レア・アース関連企業による無計画・無秩序な資源開発は、乱掘による環境問題の顕在化、生産施設の拡張や建設等による過剰設備の顕在化、無法な輸出業者の出没の顕在化などをもたらしてきた。中国レア・アース産業の抱える諸問題が健在しつつも、国家として抜本的な具体策が講じられてこなかったことが原因とも言える。これらの問題を改善するために、レア・アース業界へのミクロ面での不必要な干渉を減らし、主に資源開発計画、産業政策の制定、及び製品基準化の体系化などのマクロ政策によって業界の健康的かつ秩序ある成長を促そうとしている。レア・アース関連企業を南と北の2大レア・アース集団化への誘導を強力に推し進めている。北方レア・アース集団は、内モンゴル、甘粛、四川及び山東などにある主要レア・アース企業から組織され、包頭鉄鋼集団公司がそのリーダシップを取り、主として軽希土類の生産を行う。南方レア・アース集団は、上海、江蘇、湖南及び広東にあるレア・アース企業から組織され、主として重希土の生産を行う。中国アルミ業株式有限公司と中国五金鉱産輸入出総公司は、株式取得により南方レア・アース集団の主導的役割を果たすようである。
     レア・アース関連企業は他にも数十社あるが、この集団化には後ろ向きであるとも伝えられ、集団化を難しくしている。南、北2大レア・アース集団の設立が正式に認可された後は、集団化に組みしない企業によるレア・アースの採掘及び輸出については営業許可が得られないこととなる。
       
    (2) レア・アース産業への外資参画
       中国政府は2002年8月、レア・アース業界への外資参画を可能にするため、外国企業の投資を規範化した「外国企業投資レア・アース業管理暫定規定」を制定し、レア・アース鉱山、精錬分離、高度加工及び応用の各分野での外資との合弁・合作事業を許可した。これは、これまで通り中国国内での外国企業の鉱山企業設立の禁止、外国企業のみの投資によるレア・アース精錬、分離の禁止といった措置を継続する一方で、外国企業のレア・アース高度加工分野、レア・アース新素材と応用製品開発分野への投資を奨励し、同時にプロジェクト審査認可権限、株式譲渡等の関連事項等について規定している。
       
    (3) 我が国レア・アース業界への影響
       中国政府は、高度加工、新技術、新素材、新製品の開発に重点を置いた、応用分野の開拓、技術の向上を目指すものと思われ、益々日本のレア・アース産業界と競合する分野が拡大することは避けられないと思われる。また、中国政府は南北2つの集団化や「外国企業投資レア・アース業管理暫定規定」等の政策を通じ、国内のレア・アース生産量をコントロールしつつ、中国レア・アース産業界をより下流側の高付加価値製品分野のフィールドへ誘導しており、中国のレア・アース市場への影響力はさらに増す形となっていくことが懸念される。

    (参考)
    (1) 2003年のレア・アース需給
       急速に成長する経済発展にともなって、前年同様2003年の中国レア・アース産業は全体的に安定的な発展を持続させている。レア・アース鉱産物と精製分離製品の生産量は、共に増加を継続している。レア・アース鉱産物の生産量は、9.2万トン(REO換算)となり、2002年の8.84万トンに対し4%増となった。そのうち、包頭鉱は5.4万トン、四川鉱1.5万トン、イオン型レア・アース鉱が2.3万トンとなった。レア・アース精製分離製品についての生産量は7.8万トンとなり、対前年比4%の増加となった。
     2003年の中国国内での消費量は3.0万トンで、2002年に比べ約25%増加となった。2003年末のレア・アース市場は、非常に活況を呈し、価格は2003年と異なり上昇し続けた。中国レア・アース業界関係者によると、レア・アース製品の品質または数量から言えば、中国レア・アースについて際立った優位性が認められ、2004年以降の市況についても楽観視している。
       
     
    (2) レア・アースの輸出入状況
       中国は、世界最大のレア・アース輸出国である。2003年の中国のレア・アース精製分離製品及びレア・アース磁性体の輸出総量は5.49万トンとなり、輸出による外貨獲得額は4.02億ドル、対前年比62.1%の増加となった。レア・アース精製分離製品の輸出量は、5.21万トン、輸出による外貨獲得額は2.41億ドルとなり、それぞれ対前年比33.2%、54.5%の増加となった。レア・アース磁性体に対する輸出精鉱量は5,617トン(REO換算で2,800トン)となり、外貨獲得額は1.61億ドル、対前年比75%の大幅増加となった。

    表1. 2003年のレア・アース輸出状況
    (ドル)
    名称 数量(kg) 金額
    酸化セリウム 10,183,808 18,454,313
    水酸化セリウム 2,027,343 5,470,771
    炭酸セリウム 10,978,226 14,486,850
    その他セリウム化合物 3,907,105 10,169,179
    酸化イットリウム 1,624,586 11,321,620
    未列名酸化レア・アース 6,632,659 63,269,578
    その他塩化レア・アース 6,759,204 4,890,998
    弗化希土 1,532,839 3,209,714
    ミッシュ炭酸希土 157,600 141,543
    その他炭酸希土 7,780,526 8,883,319
    その他稀土金属、イットリウム、スカンジウム及びその混合物の化合物 4,347,582 13,664,623
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