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報告書&レポート

2004年8月16日 ロンドン事務所 霜鳥 洋
2004年30号

外国資本による中国ベースメタル探鉱の現状と課題

  1. はじめに

  2.  金融の街ロンドンでは鉱業投資セミナーが頻繁に開催される。近年の話題の中心は中国であり、中国に触れないセミナーはないとすら言える。しかし関心は中国の金属需要の伸びに集中しており、探鉱対象としての中国は影が薄い。すでに多くのジュニア探鉱企業が中国で金探鉱活動を行っており、大手鉱山会社も続々と参入しているものの、極度の官僚主義に起因する鉱業権取得の困難さ、既存情報入手の困難さ等の理由により、中国におけるベースメタル探鉱への投資的関心は地質的有望性に比して低い。
     今般、ロンドンでAMA(鉱業アナリスト協会)主催の中国セミナーが開催され、中国でベースメタルの探鉱開発を行っているRio Tinto Exploration社(英)、Griffin Mining社(英)、Minco Mining & Metals社(加)による講演等があった。中国固有の問題をこれら3社はどのように評価し、対処しているのであろうか。3社の活動内容を中心に外国資本による中国でのベースメタル探鉱の現状と課題を報告する。

  3. Rio Tinto 社:鉱業権者とのJVよりも鉱業権直接取得を選択

  4.  Rio Tinto Mining and Exploration社のNeil McLaurin探鉱部長は中国における鉱物資源探査事業の課題について次のように述べた。
     中国における鉱業分野への外国資本直接投資が有する問題には、既存データへのアクセスに制限があること、鉱業権の取得に時間を要すること、不明確な税制(個別協議となるが妥当な取引かどうかの判断が困難)、制定が予定されている新鉱業法に起因する不確定要素、が挙げられる。
     最大の問題点は技術データを共有できないことである。地質図を地方地質局と協定を締結して入手し、空中物理探査データを北京のAGRSから購入して探鉱ターゲットを選定し、現地調査を行ったところ中国有色金属工業総公司がすでにボーリング実施済みであったことを初めて知る、といった状況にしばしば陥る。探鉱データベースの欠如は探鉱者にとって不都合である。
     鉱業権取得に期日を要することも問題である。当社の甘粛ニッケルプロジェクトを例にとると、2000年1~3月に既存資料解析を行い、2001年1月に甘粛秦祁鉱業公司とJV契約を締結、2002年4月にJV変更契約を締結、2002年6月にMOFTECの承認を得、2002年7月にRio Tinto社は外国企業として始めて事業許可を取得、そうして2003年2月にようやく探鉱許可がJVに移転された。既存資料解析開始から探鉱許可移転まで実に3年を要した。なお2003年11月には周辺地域の探鉱許可がJV2社連名で付与されている。
     中国への鉱業投資のプラス要因を挙げると、所得税率33%(うち3%は地方政府に分配)、超過利益税はないこと、売上収入に基づくロイヤルテイ(銅は2%、金4%)で源泉徴収税はないこと、新首相の温家宝氏は地質技師で元地質局局長であること、である。
     一方マイナス要因には、探鉱許可権者は採掘許可を取得する特権的優先権があるとされるものの特権的優先権の定義がないこと、採掘された鉱石量に基づく資源税があって非鉄金属の場合最大$3.60/tであること、鉱床発見に寄与したあらゆる先行探鉱活動費用を政府に返済する可能性があること、金は中央銀行の設定価格で中央銀行に売却しなければならないこと、最近政府により設立された探鉱許可と鉱業許可の競売会社がどのように機能するか不明であること、情報を国家機密とする基準が不明確であること、が挙げられる。中国政府は2003年に鉱物資源政策白書を発表して投資環境の整備を表明しているが、改革の進行は遅々としている。
     これまでに中国で探鉱を行った外国企業には、当社の他、BHP-Billiton(英豪)、Anglo American(英)、WMC Resources(豪)、Placer Dome(加)、Inco(加)、Goldfields(南ア)、Barrick(加)といった大手鉱山会社がある。中小規模探鉱・鉱山会社にはIvanhoe(加)、Jinshan Gold(加)、Minco(Teck-Cominco)(加)、Mundoro(加)、Kumba(南ア)、Griffin Mining(英)、Lynas Corporation(豪)、Sino Gold(豪)、Southwestern Resources(加)、ApacMinerals(加)、Alliance Pacific Resources(加)、Redox Gold/Diamond(豪)、First Dynasty Minerals(加)、Caledon Resources(英)がある。開発に関する外国直接投資例としては、Alcoa(米)-Chalco社の220百万US$のアルミ鉱石処理部門への投資があり、これはボーキサイト採掘も含んでいる。採掘部門ではAsian American Coal社のコークス用炭(63百万$)、Engelhard社(米)のカオリン(12.1百万$)、Sino Gold-Jinfeng社(推定65百万$)、Griffin Miningの亜鉛(15.7百万$)がある。
     中国の鉱業投資環境について総括すると、商業条件は一般に許容範囲内にあるものの、データへのアクセスに問題があり、政府の管理・許認可制度の改革が必要である。

    【質疑応答】
      問: 中国での鉱業ビジネスは大手鉱山会社の方が中小規模会社よりも有利か?
      答: 金を扱うジュニア企業が活発に活動しており、メジャーが有利というわけではない。
      問: 中国の優良鉱床と探鉱の質についてどう考えるか。
      答: 良い質問である。中国は地質的ポテンシアルに比べ発見されている優良鉱床が少ない。これまでに中国政府が多数擁する地質技師により地表踏査は行われているものの、新技術の適用により新鉱床を発見する余地がある。当社は中国でEscondida鉱床を探している。
      問: 中国への参入の仕方として、鉱業権を有する中国企業とJVを形成する方法が一般的であるが、Rio Tinto社は現地子会社が鉱業権を直接取得する方法を選んだ。なぜか。
      答: JVは締結までに時間と弁護士を要し、従って費用を要する。鉱業権を直接取得する方がよい。

  5. Minco社:中国人社長によりJV推進

  6.  Minco Mining & Metals社のMicael Legg副会長は同社の中国事業について以下のように述べた。
     Ken Z. Cai社長が講演する予定であったが、彼は年の3分の2を中国で過ごす程多忙であり、私が代理で講演する。Cai社長は中国国籍でカナダ留学者であり、中国側との交渉に適任である。
     当社はメジャー企業が狙っている規模の鉱床よりも小さい規模の鉱床をターゲットとしている。当社のベースメタル案件には甘粛省のWhite Silver Mountain(JVシェア率61%)があり、金案件には広東省、甘粛省、内蒙古自治区に6件ある。金案件のJVシェア率ないしシェア可能率は40%から71%である。今後もさらにJV案件の形成に努めたい。
     White Silver Mountainプロジェクトは甘粛省の白銀地区にあるVMS型多金属鉱床プロジェクトである。同プロジェクトは白銀有色金属公司(BNMC)が操業中の小鉄山鉱山の立坑最下底レベル(8レベル、地表下約450m)以深の開発に関するJVプロジェクトであり、Minco社は権益61%を取得済みである。BNMC社による8レベル以浅の推定資源量は10百万t、銅1.1%、鉛3.3%、亜鉛5.1%、金2.1g/t、銀100g/tである。これまでの調査により資源量300万tを得ているが、追加探鉱により最低500万t、できれば1,000万tとし、1~2年内にFSを実施したい。

  7. Griffin Mining社:中国側パートナーの粘り強い交渉で採掘許可取得

  8.  Griffin Mining社のRoger Goodwin取締役は同社の中国事業について以下のように述べた。
     当社の主要プロジェクトであるCaijiaying亜鉛・金プロジェクトは北京の北西300kmに位置する。鉱床は1960年代に中国人により発見され、95,000mのボーリングが実施された。中国の鉱業分野に最初に参入したのは豪州であり、1970年代に豪州企業が蔡家営の権益を得た。西側資本により支配される会社の活動が中国で認められるようになった1994年に河北華澳鉱業開発有限公司(以下「JV社」という。)がChina Zinc Pty. Ltd.(豪)と中国側(国土資源部、張家口市政府、第三地質隊)により設立された。比率はChina Zinc60%、中国側40%である。JV社は1994年に25年の事業許可を得た。1997~98年にGriffin社がChina Zinc社を取得し、JV社の経営権を得た。その後Griffin社は5百万US$にてボーリング掘削10,000m、坑道掘削300m、鉱床モデル作成、鉱石処理試験、エンジニアリング・電力・輸送・環境に関する調査を行って経済性評価を2003年9月に完成させた。
     JV社は1998年10月に探鉱許可を取得したが、1998年制定の新鉱業法下で外資に支配される会社への初めての付与であった。2000年には周辺102km2の探鉱許可も取得した。2001年には中国側の経済性評価と地質報告書と環境影響評価が鉱業権申請の一環として完成し、2002年3月には採掘許可を取得した。2003年9月に当初生産量粗鉱20万t/年の坑内掘亜鉛金鉱山としての経済性評価が完了し、ただちに鉱山開発が開始された。開発費用は新株発行により調達済みであり、2005年3月の生産開始に向けて開発工事中である。工事は順調に進んでいる。
     蔡家営プロジェクトの有するリスクには、中国のカントリー・リスクと亜鉛価格がある。カントリー・リスクについては、中国は2002年に世界貿易機構に加盟したこと、2003年の外国直接投資受け入れ額が5,300億US$と米国を抜いて最大になったこと、上海金市場が設立されて金価格の透明性が得られたことから、問題ないと考える。亜鉛価格については、中国の亜鉛生産は減少傾向にあって亜鉛精鉱の輸入が増えていることから、これも問題ないと考える。
     中国では探鉱許可を持っていても採掘許可取得の優先権はない。正直言って採掘許可取得まで時間がかかった。理由は政府担当官自身が手続きを良く知らなかったためである。中国は州毎に規制が異なり、また中央政府は頻繁に法律を制定するので、鉱業規制は透明性に欠ける。その他にも課題がいろいろあった。たとえば本プロジェクトのカットオフ品位は亜鉛7%であるが、中国では資源の有効利用の観点から亜鉛採掘のカットオフ品位を1.5%とする法律があり、厳密には法律違反で、対応が必要であった。また地表権取得には実に6レベルの政府組織と交渉する必要があった。今年5月に選鉱場用地の整地を行ったが、必要なのは設備でも技術でもなく、中国側との調整を行うマネージメント能力であった。当社はこれまでに中国に20百万US$投資したが、その経験から言うと、中国で事業を行うには忍耐が必要である。

    【質疑応答】
      問: 多くの外資系企業が採掘許可取得に苦労している。アドバイスを。
      答: どうやって採掘許可を取得したのか、とよく聞かれる。皆、官僚主義に苦労している。中国側パートナーがとても重要である。

  9. おわりに

  10.  中国で探鉱開発を行っている西側企業は中国独特の事情に苦労している。某大手鉱山会社は亜鉛プロジェクトに関するJVを締結して中国に参入したものの、数年後にJVを解散して撤退した。同社は理由を明らかにしていないが、過剰な官僚主義から適切な事業環境にないと判断したという説と、中国側パートナーとJV運営をめぐってトラブルがあったという説があるが、いずれにしても中国プロジェクトの困難さを示すものと噂されている。
     今回紹介した3社はいずれも中国である程度の達成を見ている。Rio Tinto社は鉱業権所有者とのJVを避けて探鉱許可を直接取得した。Minco社は中国人社長の活躍でJVを盛んに形成している。Griffin社は中国側パートナーの粘り強い交渉により採掘許可を取得し開発を順調に進めている。
     地質的有望性とこれまでの鉱床発見の少なさから判断すると、新技術の適用により優良鉱床が中国で新たに発見される可能性は高い。過剰な官僚主義のために事業実施に困難が伴うにしろ、中国のベースメタル探鉱開発への外国資本の参入は今後も続くものと思われる。

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