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報告書&レポート

2004年10月14日 アルマティ事務所 酒田 剛 e-mail: jogmec@nursat.kz
2004年42号

ロシア地下資源をめぐる最新の動向-天然資源省の改組と地下資源法の改正-

 対テロに向け安全確保のために国の権限強化へと体制確立を目指すロシア。89の連邦構成主体の首長(共和国大統領や州知事など)を事実上の任命制にするなど、中央集権化による連邦制度の再構築に取り組む一方で、エネルギー資源など戦略産業に対する国の動き1も加速している。経営破たんの危機にある石油大手ユーコス社に関しては、税の未納を理由に国が同社の開発ライセンスを取り上げる懸念を指摘する報道2もあるが、ライセンス剥奪が招く石油の生産停止の事態を誰も望まないというのが一般的な見方で、プーチン大統領も同社の国有化を否定3する。ライセンスを管轄する天然資源省は、現在、地下資源法の抜本的な見直し(既報参照:2004年04号(平成16年2月26日)、2004年35号(平成16年9月2日))を進めており、本稿では、現地での聞き取り調査に基づく最新の動向を報告する。

  1. 天然資源省の改組

  2.  2004年8月、天然資源省の改組が行われた。同省幹部によれば、改組の主な内容は、(1)天然資源省の政策実施機能を3つの独立エージェンシー(連邦庁)に分割する、(2)各連邦庁は、地方部局と連携して所管分野の業務を実施する、(3)連邦管理局は、天然資源省の傘下で、天然資源及び環境保護に関する国家管理と、各連邦庁の業務の監督を行う、の3点。 地下資源使用連邦庁は、地下資源法の策定を所管し、地下資源利用ライセンスの審査や交付等に関する業務を担当する。地方部局を除く同連邦庁の人員は約130名。

  3. 地下資源法の改正

  4. 2-1.

    従来法の改正


      新しい地下資源法の策定を目指しているものの、成立までにはなお時間を要すると見られるため、政府は新法制定までの過渡的な措置として、ひとまず従来の地下資源法に対する条項の修正を行った。8月末までに必要な手続きが終了し、すでに発効している改正の主なポイントは以下のとおり。

    (1) 地下資源利用ライセンスの交付権限を、従来の連邦政府と地方政府(連邦構成主体)の二体制原則(“two-keys”principle)から、連邦政府に一元化する(地方政府の関与を排除し、連邦政府に特化)
    (2) ライセンス交付のための審査期間を6か月から45日間に大幅に短縮する
    (3) 地質調査によって鉱床を発見した場合、地質調査ライセンスから探鉱・開発ライセンスへの優先的な移行を認める(ただし、当該鉱区で国による調査が行われた場合には、その分の費用を国に納付するのが条件)

    2-2.

    新法の制定


      天然資源省が経済発展貿易省と連携して新法の草案作りを急いでおり、専門家からなる作業グループでも審議がなされている。Trutnev天然資源相は、10月末までに新地下資源法案を内閣に提出するとしているが、未だ最終的な内容は固まっておらず、今後の曲折も予想される。現時点でのポイント(概要)は、以下に示すとおり。

    (1) 地下資源利用ライセンスの第三者への譲渡を認める(ただし、国家機関の許可(合意)取得を条件とする)
    (2) ライセンスの付与に関する入札の方法について、コンクール(公募)とオークション(競売)の二つのうち、コンクールを廃止し、オークションのみとする (3) オークションへの参加は、ロシア法人として登記されていることを条件とする(外国企業もロシア法人の資格を取得する必要がある) (4) 大鉱床の場合にはオークションを必要とせず、契約によってライセンスを与えることを可能とする(定量的指標や、どのような契約を指すのかは現状では不明) (5) ライセンスを付与された地下資源利用者は、政府との間で契約を締結する(大鉱床:連邦政府と、中小規模鉱床:地方政府と) (6) 地下資源利用者が地質調査に要した費用は、税金の控除対象経費として認める (7) 鉱床のタイプや規模によって税額を差別化し、地方の辺鄙なところは税額が少ない体系とする

  5. 法改正に対する評価と今後の見通し

  6.  天然資源省の幹部は、新しい地下資源法は、鉱業セクターに対して外国企業の投資を呼び込むことを目的としており、地下資源の利用に関する具体的な手続きをより明確な条項として示すことで、国と地下資源利用者の双方にメリットをもたらすと明言する。実際、地質調査ライセンスから探鉱・開発ライセンスへの移行優先権や、ライセンスの第三者への譲渡が認められることは地下資源利用者にとっては朗報である。同省傘下の研究所幹部は、M&Aによって鉱量を獲得するケースが多い大企業よりも、特に、地道な探鉱活動で鉱床発見を目指すジュニア企業の方が今回の法改正に伴う恩恵を享受できると評価する。
     天然資源省では、新法案は、Trutnev天然資源相のイニシャチブの下、年内にも内閣で承認され、2005年初めにDuma(下院)を、その後連邦議会(上院)を通過し、プーチン大統領の署名を経て来年中にも発効との道筋を描く。ただ、専門家は、例えば入札方法に関して、オークションを支持する経済発展貿易省に対し、天然資源省はコンクールの方がより好ましいとの立場を取っているとして、両者が歩み寄ることができるかが大きな課題だと指摘する。事実、Udokan銅鉱床(チタ州、銅埋蔵量約20百万t、Cu品位1.5%)やSukhoi Log金鉱床(イルクーツク州、金埋蔵量1,029t、Au品位2.7g/t)の開発権に関する入札は、連邦政府の関係省庁と地方政府との間で、入札方法と参加者の条件(ロシア企業に限定するか否か)を巡って何年にも亘って紆余曲折が続いており、未だに実施されていないのが現状である。しかし、これら鉱床は、いわゆる大鉱床のカテゴリーに入ると見られることから、オークションによらずに契約によってライセンスが与えられる可能性があり、もし、そうなれば、新法のシステムは鉱業セクターに新たな汚職と不透明さをもたらすことになりかねない。
     なお、今回のモスクワ滞在中に、ロシア政府が地球温暖化防止に係る京都議定書の批准法案を閣議決定するというエポック・メーキングがあった。この過程で、主要6省庁の先陣を切って批准案を承認したのは天然資源省であった。やはり、過去数年に亘って曲折を続けてきたロシアの批准作業は、いよいよ議会での審議・承認という最終局面に入った。


    1 9/14、プーチン大統領は、国営天然ガス企業ガスプロム社による国営石油会社ロスネフチ社の100%子会社化を承認。メジャーに対抗可能な国策企業を創設すると同時に、ガスプロム社株式の売買を自由化して外国投資を呼び込むとしている。今回の措置で、政府の持ち株比率が51%に高まり、株取引の自由化に踏み切ることが可能となるためで、これまで外国投資家は同社の米預託証券(ADR)しか購入できなかった。(9/15付日経新聞)
     9/29、ロシア政府は、ユーコス社と並ぶ国内最大級の石油会社ルークオイル社の政府保有株(発行済み株式の7.59%)を公開入札で売却。米国第3位のコノコフィリップス社が19億8,800万USドルで落札し、ロシア最大の民営化案件となった。両社はロシア国内の油田開発のほか、イラクの油田共同開発も視野に入れるとされる。(9/30付各紙)

    2 9月初め、ユーコス社の納税停止を受けて出された連邦税務局からの苦情申し立てに対し、天然資源省は、税の滞納は同社(主要生産子会社のユガンスクネフチェガス社)のライセンス剥奪の根拠となり得ると発表(9/10)し、期限内に納税しないことは協定に反し、ライセンス剥奪の十分な根拠になることを認めた。(9/13付露ヴレーミャ・ノヴォスチェイ紙)
     ロシア政府が、ユーコス社にユガンスクネフチェガス社を完全売却させる唯一の手段は、天然資源省に同社が保有する石油鉱区の開発ライセンスを剥奪させ、その企業評価を著しく低下させることであり、同省はユガンスクネフチェガス社のライセンス協定に関する問題を10月半ばまでに検討する予定とされる。(9/23付け露ヴェードモスチ紙)

    3 9/24、プーチン大統領は、世界通信社会議の席上、「ユーコス社を国有化する計画は今も将来もない。国有のOPEC諸国とは異なり、ロシアの燃料エネルギー企業は大半が民間企業となっており、今後も市場経済のシナリオを維持するだろう。」と言明。ただ、「ユーコスが資産を売却することになれば、政府系を含むすべての企業が入札に参加できる。」と述べ、国有企業が資産を取得する可能性に含みを持たせた。(9/25付日経新聞、9/27付露ヴェードモスチ紙)
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