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報告書&レポート

2004年12月9日 北京事務所 納 篤 e-mail: osame@jogmec.cn
2004年55号

中国の銅消費、その勢いの方向は? ―旧上海精錬所現地調査報告―

 2004年11月に上海シン*冶銅製錬所(旧上海精錬所)を訪問し、製錬所の生い立ち、最近の生産動向、中国政府が実施している金融政策等のマクロコントロールの影響等について聞き取り調査を行った(JOGMEC金属企画グループリーダー:國友宏俊同行)。国際銅研究会(本部リスボン、略称ICSG)が自らの会議で7月の中国の銅需給を発表し、その中で中国の銅消費量に急ブレーキが掛かったとの内容に、世界が反応してLME価格が低下し、日本では非鉄金属企業の株式が下落するなどの混乱が起こったことは耳に新しい。しかし、JOGMEC北京事務所が中国有色工業協会や関係中国企業に問い合わせても、中国国内の消費が衰えたという実感は全くないという意見が大勢だ。アノード及び銅スクラップを原料とする同製錬所の銭竹平総経理に中国国内の需給を中心に伺った。

  • 上海シン冶銅製錬所


  •  上海シン冶銅製錬所は2001年に上海中心地に近い場所で操業を行ってきたが、大気、騒音等の鉱害問題で上海市により計画的に倒産させ、上海南方の金山区(上海市南南西約80km)に2003年8月に移設を完了した。移設前は、カソード生産量は10万トン/年であったが、移設後は設備を全て新設し6万トン/年で操業している。溶錬工場(処理量100トン/日、2基)は電解工場より先の2002年5月より稼働しており、2004年内には貴金属回収工場を完成させる予定としている。現状での製錬所の生産能力増設については、考えていない。稼働率は95%を維持し、年間生産計画を達成できる見込み。

  • 原料


  •  原料はアノードと銅スクラップで、国内から35%、海外から65%の比率となっている。国内原料は全量アノードであり、スクラップはない。海外原料はアノード95%、残りの5%がスクラップである。スクラップについては大部分が日本とアメリカからの輸入で、スクラップの価格をみながら比率を変えるが、環境問題を考慮するとスクラップ比率は上げられないと言う。

  • 金融政策等のマクロコントロールの影響


  •  銭竹平総経理によると、2004年4月から過熱気味の経済を抑えるために中国政府の金融政策を中心とするマクロ政策は一定の効果が出ているとしながらも、銅の消費に関しては、需給緩和的な傾向は肌で感じられないとしている。それは、銅製錬所の倉庫の状況から言えることだとしている。すなわち今年当初から現在に至るまで出来上がったカソードを倉庫に保管する前に、ユーザーが手配したトラックに積む状況が続いており、加工部門の生産意欲は依然活発であるという。
     国際銅研究会が公表した中国の7月の消費量にブレーキが掛かったとの報道については、ここ上海では消費が減退すると言った様子は全く見受けられないと述べた。ただ、中国全体で言えることであるが、電力事情が非常に悪い。特に上海は深刻な電力不足による電力の供給障害が顕在化し、生産ラインをストップさせざるを得ないメーカーも出たとしている。これは上海に特徴的なことではなく、生産工場を持つ沿海部地域では同様に深刻であったと言う。
     一方、中国政府の金融引き締め等のマクロ政策の影響は、大きなインフラ建設に直撃を与えている。上海では、地下鉄工事、架橋工事、トンネル工事等の各インフラ工事は概ね中断状態にあり、経済の加速度が徐々に緩まるとの観測をしている。いずれ非鉄産業にも影響があるかも知れないが、影響が出るのは早くて2005年以降と楽観的な見解だ。また、銭総経理が自ら直接影響を受けた事例として、銀行でのLC開設が難しくなってきたとしている。すなわち、 LC開設にこれまでの倍の担保を積む必要があり、さらには審査に長い時間がかかると言った影響が出てきたとしている。

    2004年の月別銅地金消費量
    (単位:千トン)
      3月 4月 5月 6月 7月
    銅地金消費 290.7 295.9 209.8 242.7 224.4

  • まとめと見解


  •  上海シン冶銅製錬所は年間6万トンの能力を持ち、銅精鉱を原料としない二次銅製錬所であるため、驚くほどクリーンな製錬所でISO9001も取得している。従業員700人の大所帯は上海有色金属系製錬所という国営企業の名残であるが、銭総経理の回答は歯切れがよい。95%の生産稼働率はこれまでの政府に頼る体質では到底達成出来ない数字である。7月の中国の銅消費減速報道で、LMEや日本国内の株価に影響したが、ここ中国での体感はやはり依然活発であり、減速感はない。中国有色金属統計によると、温家宝首相が宣言した経済引き締めの公表直後の5月には、確かに大きく減少している。ただ、中国の銅消費の減速は7月ではなく5月であり6月には大きく増加に転じている。7月は少し減少してはいるが、8月以降は銭総経理には大きな需要の停滞は感じられないとしていることから、大きな変化なく推移しているのではないかと見る。経済への影響については、徐々に金融引き締め効果が浸透していくとみる意見が大勢を占めているが、銅消費についても単純に景気減速で銅消費も減速すると見るべきであろうか。国際銅研究会での銅需給は70万1千トンの供給不足から2005年度は22万トンに縮小すると予測しているが、中国の消費の伸びによっては需給がバランスすると楽観視するのは時期尚早と見るべきである。なぜならば、中国の加工部門の生産意欲は相当なもので、先の銭総経理の話しにもあったとおり、カソードが倉庫に移送することなく直接トラックで加工工場に直行する現状をみれば、納得の行くわかりやすい説明になるとも言える。また、上海では加工工場の生産能力を増加し、加工製品の高付加価値化への工場の設備投資が進みつつあり、これが上海以外での銅加工工場の戦略のベクトルであれば、銅地金消費のさらなる需要の進展を予想させる理由となると考える。

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