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報告書&レポート

2004年12月16日 サンティアゴ事務所 中山 健 e-mail: nakayama-ken@entelchile.net
2004年57号

大規模銅鉱山開発の新たな展開 ―チリ Chuquicamata鉱山露天採掘から坑内採掘への移行―

 最近求められる大規模鉱山開発は遠町深鋪の宿命にある。限られた資源を効率的に回収する方法は技術革新との戦いでもある。露天採掘技術、選鉱技術、湿式冶金技術等の優れた新技術によって低品位大規模鉱床の開発(Mass Mining)が可能となって久しい。最近、露天採掘の限界に近づいた大規模鉱床の更に深部を坑内採掘に移行して採掘する新たな挑戦が始まろうとしている。去る8月にサンティアゴで開催された“Massive Mining Fair 2004”において、CODELCOは、世界最大級の露天採掘鉱山であるチリChuquicamata鉱山の露天採掘から坑内採掘へ移行する計画を発表した。今般同鉱山を訪れる機会があったのでその概要と今後の展望についてレポートする。

  1. “Mass Mining”とその現状

  2.  ポーフィリー銅(金)鉱床や鉱染型金鉱床は、鉱脈鉱床や塊状硫化物鉱床とは異なり、低品位ながら全体を採掘することから、“Bulk Mine”と称されてきた。近年その規模が更に拡大し、“Bulk Mine”のなかでも採掘の規模を規定する用語として“Mass Mine”という用語が使用されるようになった。Brown(2004)によると、“Mass Mine”とは坑内採掘の場合10,000t/日以上の生産能力を有するもの、露天採掘の場合30,000t/日以上の生産能力を有するものと規定している。第1図に示すように、時代とともに様々なジオテクニカルな課題を解決しつつ、次第に開発の大型化が進展しており、今や世界の主要なベースメタル鉱床および金鉱床の多くが“Mass Mine”によって採掘されている。

  3. CODELCO Norte Chuquicamata鉱山の概要

  4.  Chuquicamata鉱山は、1915年から採掘が開始され、以来90年にわたって採掘が続けられている世界最大級のポーフィリー銅鉱床である。これまでに採掘された鉱石量は24.7億t(銅品位1.54%)に達する。現在のピットサイズは、南北4.5km、東西2.7km、深さ850m、採掘量は鉱石88百万t/年(186,000t/日)、ズリ115百万t/年で“Mass Mine”のなかでも最大級である。2013年には深さ1,100mに達し、露天採掘による深部採掘では採算性が著しく低下することになり、坑内採掘に移行することとなった。坑内採掘対象鉱量は15億t、銅品位0.65%、モリブデン品位0.03%である。鉱床は、第2図に示すように直立する板状の形態を示し、更に深部に連続しており下底はまだ確認されてない。

    拡大図
    第1図 幾つかの露天採掘鉱山の規模とその展開

  5. 露天採掘から坑内採掘への移行と坑内採掘設計

  6.  Chuquicamata鉱山は、このままの露天採掘を継続すれば、2013年には最下底が地表下1,100mに到達する。更に採掘を継続すれば、スロープエンジニアリング、鉱石・ズリ運搬、ヒューマンコントロール等様々な負の要因を抱え、採算性が著しく低下することになる。CODELCOは1997年から露天採掘から坑内採掘への移行の本格的検討を開始しており、このほど移行を決定し、CODELCO Norteの長期計画の中に組み込まれた(CODELCO Norte, 2004)。
     坑内採掘設計の概要は以下のとおりである(第2図参照)。

    • 採掘方法:パネルケービング
    • ブロックの高さ:400m
    • 崩落:最初5年間は3か所で4,000m2ずつ
    • 平行(露天・坑内)採掘期間:2~3年
    • 移行経費:500百万USドル
    • UCL深度:地表下1,500m
    • 生産量:125,000 t/日
    • アンダーカット速度:3,000m2/月
    • 初期破壊サイズ:35~50% > 2m3
    • 操業コスト:3.4 USドル/t

     特に、露天採掘から坑内採掘への移行期に従前の露天採掘と同じレベルの生産性(量と低コスト)を維持することが出来るかが鍵である。CODELCO Norteでは、この時期に合わせて周辺のRadomiro Tomicの深部硫化鉱床(現在は浅部の酸化鉱を採掘中)およびMansa Mina鉱床の開発を加速化して生産量の低下を補填する計画である。またChuquicamata鉱床の下底が未だ確認されてないこともあり、今後の探査によっては、更に深部の開発があり得る。

  7. ジオテクニカル上の課題

  8.  露天採掘下部での坑内採掘移行期および本格的坑内採掘際しては、様々なジオテクニカルな問題をクリアしていかねばならない。
     露天採掘と坑内採掘(パネルケイビング)が同時に行われることになる。通常の坑内採掘とは異なり、その上部に深い露天採掘場が存在することになり、次のようなジオテクニカルな課題が残されている。

    • 大規模、深部オープンピットの存在は、オープンピット下底で応力集中ゾーンが形成され、ケイビングの進行を急激に加速化する可能性がある。
    • 応力集中による地震の発生と、地震に起因するロックバーストの恐れがある。
    • 初期の坑内採掘は、堅固かつ塊状岩体の中で行われることになり、ケイブのスタートと進展が難しい。
    • 露天採掘・坑内採掘同時進行中のクラウンピラー安定性維持。
    • 大規模な西部断層とせん断帯が存在する。
    • オープンピットとケイブが連結した場合、現在のピット外部からの斜面崩壊の恐れがある。
    • 地表水および泥の坑内への流入(mud rush)によるケイブあるいは坑内設備の破壊の恐れがある。

     これらの中には、オープンピット中央部を南北に伸長する西部断層のようにChuqicamata鉱山特異の現象もあるが、多くが他の露天採掘ケースに共通の現象である。

    拡大図
    第2図 Chuquicamata鉱山断面とジオテクニカル課題
    (Arancibia, E. and Flores, G. 2004に加筆)

  9. Chuquicamata鉱山における露天採掘から坑内採掘への移行の意義

  10.  将来も鉱床の発見を目指して探査活動は継続されるが、発見される鉱床は、一層遠隔地化・深部化していくことは明らかである。また現在採掘されている鉱床でも、更に深部に連続する鉱床をそのまま放棄するのではなく、効率的、経済的に採掘する方法検討されることになる。今こうした深部鉱床開発の技術イノベーション求められている。その深部開発のジオテクニカルの新たな挑戦の1つである「露天採掘から坑内採掘への移行」が世界最大級のCODELCO Norte Chuquicamata鉱山で始まる。特にCODELCOは多くの露天採掘、坑内採掘の“Mass Mine”を有しており、“Mass Mine”の世界のリーディング会社の1つである。
     これまで、露天採掘から坑内採掘への移行は、Palabora(南ア)、Northparkes(オーストラリア)、Kidd Creek(カナダ)で既に行われており、今後、Chuquicamataのほか、Bingham Canyon(USA)、Radomiro Tomic、Mansa Mina(Chile)、Grasberg(Indonesia)、Venetia(South Africa)、Argyle、Mount Keith、Telfer(Australia)等で露天採掘から坑内採掘に切り替を計画中または進行中である。Palabora鉱山では技術的問題で計画よりも2年も遅延して移行が軌道に乗ったと言われており、移行の技術的難しさを示唆している。
     鉱山開発は開発規模、品位、深度、コストへの挑戦で今日に至っている。低品位大規模鉱床の開発に露天掘り採掘が適応されて長い時間が経過するが、数多あるポーフィリー鉱床開発でも、鉱床が深部まで連続していなかったのか技術的問題で採掘を諦めたのか定かではないが、露天採掘から坑内採掘への移行は上記以外の例はない。特に大規模ポーフィリー鉱床は垂直方向の広がりが大きく、露天採掘のみでは深度の限界があり、深部の鉱床が取り残されることになる。こうした鉱床の効率的採取にはチリのみならず、他の露天採掘中の大規模ポーフィリー銅鉱床の多くがいずれ同じ課題に直面することになる。
     Chuquicamata鉱山の坑内採掘移行の成功は、今後、類似の大規模露天採掘鉱床開発のモデルとなり、資源の効率的採取に貢献できることになる。また露天採掘から坑内採掘への移行もさることながら、今後、次第に遠町深鋪化行くことになる大規模鉱床の深部開発に対する坑内採掘“Mass Mine”技術は、例えば、モンゴルOyu Tolgoi鉱床のような大規模深部鉱床の開発にも曙光をもたらすことになり、Chuquicamata鉱山の露天採掘から坑内採掘への移行が世界から注目されている。
     “Mass Mine”の世界的動向、特にその技術的課題については、金属資源情報センター保管の「Massmin 2004」予稿集を参考にされたい。


    【参考文献】

    Arancibia, Ernesto(2004) Design for underground mining at Chuquicamata orebody.
     Scoping enginerring stage. Proceedings of Massmin 2004, 603-609.
    Brown, E. T.(2004) Geomechanics:the critaical engineering dicipline for mass mining.
     Proceedings of Massmin 2004, 21-36.
    CODELCO Norte(2004) “PND 2004” Gerencia de Planificacion Minero Metalugica.

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