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報告書&レポート

2005年2月17日 メキシコ事務所 権藤 浩 e-mail: jogmec@prodigy.net.mx
2005年09号

メキシコ合衆国ソノラ州のSX-EW3銅鉱山の現地調査報告 -カナネア鉱山、マルキタ鉱山、ミルピージャス鉱山-

 はじめに

     メキシコは、世界第11位の産銅国であり、年間約40万tの銅地金を生産し、2005年1月末に訪問したソノラ州では、この大部分を占める85%を産出している。
     ソノラ州は、メキシコの北西部に位置し、北は米国と国境を接し、東はチワワ州、南はシナロア州、西はカリフォルニア湾を挟んでバハ・カリフォルニア州に囲まれており、面積は約19万km2(日本の約半分)である。
     今回訪問した3鉱山は、ソノラ州北部に位置するカナネア町から50km圏内にあり、米国国境まで約40km、いずれも銅鉱石を採掘した後、SX-EWを用いて銅地金を生産中や生産予定の銅鉱山である。
     このため、同じ条件下で生産規模、銅品位等の比較が可能であったこと、さらに、最近の金属価格の高騰による各鉱山への影響を現場で体験できたことから、その概要について報告したい。なお、今回訪問した鉱山は、以下の3鉱山である。

      1) カナネア(Cananea)鉱山<Grupo Mexico社>
        世界第4位の産銅量を誇るグループ・メヒコ社が所有する、メキシコ最大の銅地金を生産し、カリダ(La Calidad)鉱山と並ぶメキシコ最大級の銅の露天掘鉱山。
      2) マルキタ(Marquita)鉱山<Frisco社>
        稼動鉱山数は3鉱山と少ないが、工業、商業・サービス等と幅広い総合企業であるフリスコ社が所有する、比較的中規模な銅の露天掘鉱山。
      3) ミルピージャス(Milpillas)鉱山<Industrial Penoles社>
        稼動鉱山8鉱山を所有し、銀地金、ビスマスの生産量は世界屈指であり、化学工業等も行うペニョーレス社が所有する、比較的大規模な銅の坑内掘鉱山。

    ○カナネア鉱山

  1. カナネア(Cananea)鉱山<Grupo Mexico社>

  2. (1) 経緯
     1868年に坑内掘鉱山として生産を開始し、1990年にグルーポ・メヒコ社(1994年設立)の前身会社が同鉱山を傘下に治め、1943年に露天掘へ移行、1979年よりSX-EW第1次プラント(30t/日)稼動、1989年よりSX-EW第2次プラント(120t/日)稼動。

    (2) 鉱山の概要
     鉱山規模は、現在1.5km×1.0km×深さ400mのすり鉢型のベンチ採掘であり、10年後には5.0km×2.5km×深さ700m、最終的には深さ1,000mまで採掘予定。
     埋蔵量は、深さ1,000mまで探鉱済であり、確認埋蔵量として70年分の鉱量を確保。探鉱費用は、毎年200万ドルを充当。
     生産量は、銅鉱石はSX-EW 27百万t(2003年)、浮遊選鉱21百万t(2003年)。銅地金は、SX-EWで2003年5.0万tから2004年5.4万tに、浮遊選鉱で同9.4万tから同12.0万tに、計同14.4万tから同17.4万tへと大幅に増産。
     SX-EWと浮遊選鉱の区別は、銅鉱石の品位により区分し、0.15%~0.35%(平均0.26%)をSX-EW、0.35%以上(平均0.6%)を浮遊選鉱。今後、深部になるほど品位が高くなるため、浮遊選鉱のウエイトが大きくなる。
     SX-EWは、30m嵩まで鉱石を積上げ、原石は5年間、粉砕した鉱石は3年間薬品をかけ、20g/?で回収し、45g/?で電気分解を行い、99.99%(4ナイン)の銅地金を生産。

    (3) 操業状況
     労働者は1,500名(直轄1,250名、請負250名)で、24時間3交替で操業中。
     鉱山機械は、大型ダンプカー46台(270~360t積載)、ドリリング機械8台、大型ショベル8台など。これらの機械は、効率的な作業管理のために監視台の集中制御室で管理。

    (4) 課題と今後の見通し
     中国の経済発展と米国の堅調な経済に支えられ、今後とも銅の需要は旺盛で、供給タイトで推移し、引き続き銅価格は高止まりで推移するとの見通し。さらに、カナネア鉱山は歴史的に毎年ストライキを行う鉱山として有名だが、グループ・メヒコ社は、昨年来の銅価格高騰による利益により、2005年1月に労働組合が保有する権益を購入し100%自社株保有鉱山になった。
     このため、今後、カナネア鉱山は、銅価格高騰による利潤、ストライキの減少により、安定的な生産活動が可能との見通し。2006年生産量は前年比2割アップが目標。

  3. マルキタ(Marquita)鉱山<Frisco社>

  4. (1) 経緯
     1968年にぺニョーレス社が探鉱を開始、更に1977年にカナダ・コミンコ社が探鉱を行い、1994年にフリスコ社が購入、1998年に生産設備の建設開始し、2001年に生産開始。

    (2) 鉱山の概要
     鉱山規模は1.7km×0.5km×深さ100m。生産施設等への投資額は約70百万ドル。
     確認埋蔵量は5,800万tで、残寿命は10年弱。探鉱費用は年間100万ドルを充当。
     生産量は、銅鉱石は年600万t。銅地金は全量SX-EWにより年3万tを生産し、純度は99.999%(5ナイン)。
     鉱脈は、輝銅鉱が1.7km×50m×厚さ60~70mで地表から70mから260mまで傾斜。平均品位は銅0.38%。
     SX-EWは、6m嵩に鉱石を積上げ、180日間薬品を散布。

    (3) 操業状況
     労働者は560名(殆ど直轄)で、24時間3交替で操業中。
     鉱山機械は、大型ダンプカー11台(平均120t積載)、大型ショベル3台など。

    (4) 課題と今後の見通し
     鉱量の確保が課題。260m以深にぺニョーレス社ミルピージャス鉱山と同様の平均品位2%超の銅の鉱脈を期待。

  5. ミルピージャス(Milpillas)鉱山<Industrial Penoles社>

  6. (1) 経緯
     1999年にぺニョーレス社が米国サイプラス社から権益を取得し、現在操業に向け準備中。今後、2005年10月に試験操業、2006年1月から生産開始予定。

    (2) 鉱山の概要
     鉱山規模は、鉱区730haを有し、250m以深の厚さ8mと15mの鉱脈を採掘する坑内掘鉱山で、700mの立坑から鉱石、3,000m超の斜坑から労働者と資機材の搬出入を行う計画。生産設備等への投資額は、現在205百万ドルで最終的には230百万ドルを計画。
     確認埋蔵量は3,500百万t、マインライフ13年を計画。探鉱費用はこれまで10百万ドルを充当。
     生産量は、銅鉱石は2006年(初年度)160万t、最終的には280万tを計画。銅地金は全量SX-EWにより、2006年3.4万t、最終的には6万tを計画。平均品位は銅2.3%。
     SX-EWは、60m嵩の鉱石に薬品散布、10年間の処理容量を確保。

    (3) 準備状況
     立坑は本年4月に完成予定。電源は鉱山内に23万Vの変電所の準備済。労働者は今後カナネア町等の周辺町村から480名程度を採用予定。

    (4) 課題と今後の見通し
     投資額が高額(230百万ドル)であり、最近の銅価格高騰が継続している間に、一刻も早く生産活動を開始することが課題。
     今後の見通しは、銅価格が現状での高止まりで推移するかどうか不透明。また、鉱山の銅の確定埋蔵量は稼動年数13年だが、更に有望鉱床の目途がある模様。

 最後に

     当該地域には、今回訪問した3鉱山が50km圏内に鉱山が位置し、さらに直線で約100kmにはカナネア鉱山と同様に最大級の銅鉱山であるグルーポ・メヒコ社カリダ(La Caridad)鉱山があり、今後とも多くの銅を産出する産銅地域と見込まれる。
     各鉱山とも、最近の銅価格の高騰を受け、一刻も早く増産や早期生産開始を行い、利益の確保を期待している。

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