閉じる

報告書&レポート

2005年3月10日 アルマティ事務所 酒田 剛 e-mail: jogmec@nursat.kz
2005年14号

ロシア鉱業における外資の活動状況 ―CIS Mining Summit報告と外資規制をめぐる最新の動向―

 2月15日、モスクワで「CIS Mining Summit」が開催された。これは、17日までの日程で行われたCIS METALS SUMMIT(主催:Adam Smith Conferences)の一部として構成・企画されたもので、25か国から約300名が参加した。本稿では、当日行われたプレゼンテーションの主要議題でもあったロシア金鉱業に投資する外資企業の活動状況を概括的に紹介するとともに、昨今、ロシアの地下資源開発に対して外資が規制される動きが見られることから、地下資源法の改正の動きと併せてロシア側関係者から聴取した最新の動向を報告する。

  1. 金鉱業に投資する外資企業

  2. 1-1. 現状(活動状況)
     カナダや南アフリカなど資源国で大手金鉱山会社による買収の動きが活発化し、ロシア金鉱業でも頂点に君臨するNorilsk Nickel社による再編が繰り広げられる中、現在、同国の金鉱業で活動する西側鉱山企業9社のうち3社は、非鉄メジャーとの資本関係やJ/V事業で連携している(下表の「備考」欄を参照)。

    1-2. 投資開発動向
     近年になって、ロシアの金生産量は旧ソ連時代の水準を回復し、2004年には180.5t(世界第5位)にまで増えた。この原動力の一つとして、西側鉱山企業に代表される外資企業の活動が評価されているが、金鉱業全体の投資額に占める外国投資比率では6~7%と決して高くはない。一方で、金に対する5%の輸出関税が2003年に廃止されたことが投資環境改善に一定の役割を果たしたと見られている。
     天然資源省の中央地質調査研究所(TsNIGRI)によれば、金生産量の70%は上位6社によるもので、M & Aで金生産者を吸収してきたNorilsk Nickel社(子会社Polyusの生産分を含む)は単独でも40%を占める。今のところ、同社の金鉱業を重視した経営戦略に変化の兆しは見られず、後述するSukhoi Log金鉱床の入札にも早くから参加の意向を表明している。
     また、鉱業界ではAIMに上場している企業が先導的役割を果たし、国際会計基準に準拠した埋蔵量評価の手法(豪州JORC標準化規定など)を取り入れる動きも見られる。この他、主に他産業で活動するAlrosa(ダイヤモンド)、Bazovy Element(RusAl:アルミニウム)やRenova(Sual:アルミニウム)などが金鉱業・市場に関心を示す動きが報告されている。

  3. 地下資源開発に対する外資規制の動き

  4. 2-1. 現状(天然資源省の見解)
     Trutnev天然資源相は、最近、「国益のため、戦略的鉱床はロシア側がコントロールすべきであり、外国人も49%までは出資できる。投資誘致の点でも正常だと考えている。」との発言を行った。これは、外国人が支配株を持てないのはあくまで戦略的鉱床だけであり、ロシア政府に外資を排除する考えはないとの見解を示したものと受け止められている。
     天然資源省の『主要7鉱区(大鉱床)の開発権に対するオークション(競売)には、ロシア企業が出資比率の過半数を占める合弁企業が応札を認められる。』という公式見解は、今のところ経済発展貿易省の支持を得ておらず、専門家の間にも戸惑いがあると言われている。一様にコメントを差し控えている外国企業の中で、Sukhoi Log金鉱床の競売への参加を表明しているHighland Gold Mining社(英)は、「競売の参加者を分別するのは合理的だと思わない。」とコメントしたと伝えられている。

    2-2. 競売で外資規制が予定される鉱区

  5. 地下資源法の改正(新地下資源法)の動き

  6.  天然資源省の連邦地下資源使用庁幹部によれば、最終的な草案は閣議を経て3月中にも下院(Duma)に上程される予定、との日程が順調に進むかは微妙。現在、他省庁との間で調整が難航しているためで、最大の論点となっているのは、既述した大鉱床の資源開発における外資規制問題。現行の地下資源法では競売参加者に外資の制限を設けていないため、投資促進の観点から外資参加に積極的な経済発展貿易省との調整が鍵となっている。現時点での新地下資源法(草案)の主なポイントは、以下に示すとおり((5)は流動的な点に注意)。

      (1) 地下資源利用権に関する鉱区の入札は、コンクール(公募)を廃止し、競売のみとする。
      (2) 事業者(地下資源利用者)は、国と契約を交わす「契約方式」によって地下資源利用権を行使する。
      (3) 地下資源利用権の権利譲渡を拡大し、第三者への直接的な譲渡を認める。
      (4) 探鉱で鉱床を発見した事業者に対しては、自動的に(競売なしで)開発権を付与する。
      (5) 戦略的に重要な大鉱床の場合、地下資源利用権に関する鉱区の競売は、非公開入札(ロシア企業が出資比率の過半数を占める合弁企業に限り応札を認める)によって行う。

  7. まとめ

  8.  ロシア政府が戦略産業に対する国家管理をどこまで突き進めるつもりなのか(外資の参入をどこまで許容するのか)という問題は、大規模鉱床の資源開発をめぐる地下資源法の改正に収斂しつつある。未だ政府内では、関係省庁間(天然資源省と経済発展貿易省との間には投資促進や資源保護・国家管理の観点などから、姿勢・戦略の大きな違いが指摘されている)で政策に関する足並みが一致しておらず、法案審議が予定どおり進むかどうか判断は難しいものの、これまでに鉱区入札の方法(公募か競売か)や条件(ロシア企業に限定するか否か)などをめぐって、連邦政府と地方政府、関係省庁間で意見の調整がつかなかった紆余曲折の歴史を考えると、今回の法改正によって一応の決着が図られることは間違いない。
     非公開入札の対象となる『戦略的に重要な大鉱床』という分類がどのように規定されるのか不明な点はあるが、Udokan銅鉱床開発事業への参入に関心を示す日本企業の担当者は、天然資源省の見解を「当該事業にとっては、大きな障害にはならないのではないか。」と冷静に受け止め、「事業の円滑な実施には、ロシア側パートナーの存在は不可欠で、適切なパートナーと手を組むことが事業成功の鍵。」と明言している。

ページトップへ