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報告書&レポート

2005年3月17日 シドニー事務所 久保田博志 e-mail: kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2005年17号

WMC社買収の経緯詳報

 2005年3月9日、BHP社が92億豪ドル(7.85豪ドル/株)でWMC社を買収すると正式に発表した。これに対してWMC社はこの買収に応じることを、また、先に84億豪ドル(7.0豪ドル/株ドル)にて買収を仕掛けていたXstrata社(スイス資本Glencor社の子会社)は同社が提示した買収価格の提示しないことをそれぞれ発表したことからBHPによるWMC社の買収が濃厚となった(図-1)。
 今回の買収は、「外国資本」であるXstrata社が「豪州最後の国産非鉄会社」であるWMC社に買収を仕掛けたことから、国内では様々な意見が出された。本報告ではBHP社による買収が濃厚となるまでの経緯を現地報道をもとに辿ることにする。

図-1 WMC社の買収と株価
 
表-1 BHP社とWMCの財務状況

  1. 豪州国内非鉄会社の買収の動き

  2.  豪州非鉄会社といえばかつては、Broken Hill亜鉛・鉛鉱山(ニューサウスウェルズ州)を発祥の地とするBHP社、North社、Pasminco社やMt. Isa銅鉱山(クィーンズランド州)のMIM社、国内産金大手のNormandy社、Western Metals社などが名を連ねていたが、2001年のBHP社のBilliton社(英)との合併、2002年のNormandy社等の産金企業の北米産金大手(Newmont社、Placer Dome社、Barrick Gold社等)による買収、近年では2003年のMIM社がXtrata社(スイス資本)に買収されるなど「豪州企業」の国内資源生産に占めるシェアは銅41%、亜鉛66%、金28%にまで低下している(詳細は、金属資源レポート2004.09 Vol.34 No.3、p22~23)。
     今回、買収のターゲットとされたWMC社は豪州資本の大手非鉄会社としては「豪州最後の国産非鉄会社」的な存在であった。

  3. Xstrata社買収を取りまく環境

  4.  Xstrata社による買収提案が明らかにされてから、国内では、外国資本である同社がMIM社買収に続いて再び国内大手非鉄会社の買収を狙うものとして、関係者の間で以下が懸念された。(1)政府当局の外資規制上の問題をクリアできるか(Royal Duch Shell社による豪州石油企業Woodside社の買収は国益を損ねるとの理由から認められていない。今回の買収では、Olympic Dam鉱山の探鉱・開発の継続、ニッケル部門の本社機能や資産を豪州国内に残すことなどの条件が挙げられている)、(2)MIM買収後にMIM社の探査部門を切り離したことから同社が探査、すなわち将来の資源(埋蔵量)獲得に関心が薄く短期的な利益を目的とした買収を行い、結果として豪州国内の非鉄資源を疲弊させるのではないか、(3)また、ニッケル鉱山など多くのWMC社の多くの鉱山を抱える西オーストラリア州では(図-2)、Windimurra鉱山(バナジウム)を閉鎖したように資産の整理と雇用喪失が懸念される。

    図-2 WMC社の豪州国内資産等

  5. 買収の経緯

  6.  以下にWMC社買収にかかわる関係者の動きを現地報道等をもとにまとめた。

    2004. 10. 28 Xstrata社がWMC社に対して74億豪ドル(6.35豪ドル/株)による買収を提示。WMC社はただちに安すぎると提案を断る。
    11~12月 WMC社は、Xstrata社の今回の買収が市場の期待感と現状の株価の基になされた条件の高い不確かなものであることを、Xstrata社は、WMC社の経営のまずさとOlympic Dam鉱山への投資リスクがあることを互いに批判しあう。
    11. 24 WMC社、Olympic Dam鉱山の30%増強に40億豪ドルを投資すると発表。
    12. 4 西豪州の政治家、「Xstrata社は冷酷な会社乗取り屋」と批判。
    12. 7 WMC社、Mt.Keith鉱山、Yakabindieプロジェクトに6.5億豪ドルを投資すると発表。
    12. 9 Xstrata社、外国投資規制委員会(FRIB:Foreign Investment Review Board)に接触するが正式な手続きには入らず。同社CEOのMick Davisは既にHowerd首相を訪ね、Costello財務相にも1月中に会うこと表明。WMC社は収益を3.5億豪ドルと上方修正、2.5億豪ドルの自社株買戻し、2004年の10億豪ドルの配当を表明するも、投資家の反応は鈍い。
    12. 11 Xstrata社、WMC社の10億豪ドルの配当は人目を欺くもので、そのようなことがあれば買収から手を引くと発表。
    12. 13 WMC社、第三者に資産評価を依頼。
    12. 15 中国政府系企業MimMetals社の幹部がJVの可能性を交渉にOlympic Dam鉱山を訪問。
    2005. 1. 5 WMC社、第三者に依頼した評価がXstrata社の示した6.35豪ドル/株よりも高い7.12~8.24豪ドル/株であったことをうけ、買収額は22億豪ドル少ないとしてXstrata社の提案を拒否。
    1. 7 豪州民主党党首がCostello財務相を訪問、Xstrata社によるWMC社の買収は国益を損ねるので拒否すべきと主張。
    1. 8 Mitsui & Co.がJVの可能性の観点からOlympic Dam鉱山を訪れたとの発表あり。
    1. 19 Xstrata社は、Perthでの批判を和らげるために、買収に成功すればPerthに世界的なニッケル・ビジネスの場を確立すると発表。
    1. 20 Xstrata社は、WMC社買収期限を1か月延長すると発表。
    1. 21 野党広報によると、野党党首はXstrata社の今回の買収は、同社のWindmurra鉱山閉鎖の決定に関する西豪州議会の調査結果に従うことに重大な関心を寄せていると発表。
    1. 22 Xstrata社の以前の相手方企業がいて、Xstrata社はならず者と呼んだとの報道。
    1. 25 Xstrata社最高経営者Mick Davisは、「豪州人は高潔で恥を知っているが外国人がそうでないというのは滑稽」と批判的な勢力に対して発言。WMC社経営に対しても皮肉をこめて批判する。
    2. 1 Howard首相、Xstrata社による買収に対する国益キャンペーンは重視しないとの報道。
    2. 3 WMC社の株価上昇にRio Tinto社が買収に興味ありとの噂。
    2. 8 西豪州議員が、Costello財務相にXstrata社によるWMC社の買収を拒否するよう迫るが、同相は買収への干渉は慎重であるべきと警告。西豪州上院議員、Xstrata社は略奪者と再度、非難する。
    2. 9 Howard首相、Xstarata社による買収に反対の立場を取る自由党党首に対し、「政府は豪州は外資にとって魅力的であるとの評価を危ういものにしたくない」と警告。
    2. 10 Howard首相は、当初Xstrata社によるWMC社の買収は国益を損ねると報道関係者に漏らしていたVeil貿易相を非難。
    2. 25 Areva社(仏原子力発電会社)が、Xstrata社以来、初めて正式にWMC社の買収に興味があることを表明。
    3. 2 Xstrata社は7.0豪ドル/株、無条件での買収によりWMC社や対抗する投資家に迫るが、この日までに0.1%の株を取得したにとどまり、多くの株主は新たな買収者による株価の値上がりを期待。
    3. 7 BHP社は、Deuch銀行を通じて数社の機関投資家やヘッジファンドからWMC社株を10%の取得を試みているとの報道。
    3. 8 BHP社は7.85豪ドル/株でWMC社を買収すると発表。

    図-3 BHP社とWMC社の市場シェア

  7. 買収の効果~ウランとニッケル~

  8.  BHP社は、この買収で、現在、拡張工事が進められているOlympic Dam銅・ウラン鉱山等のウラン鉱山(投資額:50豪億ドル、銅生産量:22万t/年→50万t/年、ウラン:4,500t/年→15,000t/年、2010年完成予定)を手に入れることになり、これまでほとんど手がけていなかったウラン資源開発で、Cameco社(加)、Cogema社(仏)、Rio Tinto社に次ぐ世界第4位のウラン生産シェアを獲得することになる。また、西豪州においては同社が保有するRavensthorpe鉱山(45,000/年)にWMC社のニッケル鉱山がニッケル関連資産として加わることになり、同州においてGlencore社が保有するMurrin Murrin鉱山を除いてほぼ独占することになる。
     ウラン価格は今後、高値で推移するとの予測もされており(20~30 USドル/ポンド(U3O8))(図-4)、BHP社は、鉄鉱石、石炭、石油、非鉄鉱石に加えウラン鉱石を加えて「資源メジャー」(図-5)の地位を更に固めることになると見られる。

    図-4 ウラン鉱石の価格予想
     
    図-5  BHP社の買収前後の売上割合

  9. おわりに

  10.  3月8日のBHP社の7.85豪ドル/株でのWMC社買収の正式発表後、WMC社の株価は8.00豪ドル/株近くまで上昇、市場は「新たな買収者が現れてもよい状態にあり、その候補としては、Rio Tinto社、仏のエネルギー会社Areva社や中国企業の可能性があると考えている。」と報じている。

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