閉じる

報告書&レポート

2005年4月7日 金属資源開発調査企画グループ 本庄鉄弥 e-mail:honjo-tetsuya@jogmec.go.jp
2005年21号

アフリカにおける投資環境の現状 ―INDABA2005(アフリカ鉱山投資会議)報告―

 2月8日から10日までの3日間、南アフリカ共和国ケープタウンで「アフリカ鉱業投資会議(INDABA2005)」が開催され、地元鉱山企業、世界の鉱業・金融機関、アフリカ政府関係者など約900名が参加した。INDABAは、アフリカ最大の鉱業関係会議であり、南アフリカ共和国の民主化10周年を迎える今年で10回目を数える。
 会議冒頭では、この10年間にアフリカの鉱業界を取り巻く大きな変化として二つのことが紹介された。一つは休眠鉱山の再開発や既存鉱山の周辺地域への探鉱活動が、治安状況の回復に伴いガーナ、マリ、タンザニアのみならず中央アフリカにも広がっていること。二つ目は、南アフリカ共和国において黒人社会へ鉱山活動への経済権限付与を求める動きに対し、鉱業界との合意がある程度なされ、権限付与へのベストプラクティス指針が具体的に取りまとめられるようになったことである。Raw Materials Groupによると、2004年の世界の探鉱投資額1040億ドル(進捗プロジェクト分)のうち、対アフリカ向け投資は15%と中南米(36%)、オセアニア(21%)に続く第3位となっており、さらにその48%が南アフリカ共和国一国向けであり、国別投資額としては豪州、チリ、ペルーに次ぐものである。
 本稿では、会議で紹介された投資額の伸びに比例した各国の鉱業政策および民間企業の活発な探鉱活動概要とBEE投資促進の現状を報告する。

  1. INDABA2005会議報告

  2.  今回のセッションは、アフリカ各国の鉱業大臣等による投資促進のための鉱業政策紹介、アフリカを舞台とするメタル企業の探鉱活動状況、アフリカの投資環境に係る法整備や鉱山経営におけるリスクマネージメントに関する報告などが主であった。3日間のうち、前半はメジャー企業、PGM関連企業、金融機関等、投資・進出側が多く講演し、新進ジュニア企業、アフリカ鉱業国及びBEEの紹介等はプログラムの後半に行われた。主な参加機関は以下のとおり。

    メジャー企業等 Anglo American、Barrick Gold、BHP Billiton、CVRD、DeBeers、First Quantum、Gold Fields、Newmont Mining、Placer Dome、Randgold Resources、Rio Tinto
    PGM関連企業 IMPLATS、Southern Platinum、African Rainbow Minerals
    主なジュニア企業 Adastra Minerals(Cu-Co:コンゴ民主共和国)
    Anvil Mining(Cu、Au、Ag:コンゴ民主共和国、ザンビア)、
    Axmin(Au:中央~西アフリカ)
    Equinox Minerals(Cu、Au、Ag:ザンビア)
    Galley Gold(Au:ボツワナ)
    Pan African Mining(Au:マダガスカル)
    Red Back Mining(Au:ガーナ)
    Tiomin resources(Ti:ケニア)
    政府機関 南アフリカ、モーリタニア、タンザニア、ザンビア、ニジェール、ウガンダ、マラウィ、ナイジェリア、エジプト、アンゴラ、(コンゴ民主共和国、マダガスカル、アルジェリア、ギニア、リベリア、モザンビーク、シェラレオネ、以上ブース展示のみ)
    探査会社 ARKeX、BRGM、British Geological Survey、Geosoft Africa
    金融機関 The World Bank-MIGA、Barclays Capital、CIBC World Markets、Deutsche Bank、IDC of SA、NEDBANK
    リスク管理会社 Control Risks Group、AON、Bell,Dewar & Hall、Werksmans Attorneys

    (1) 各国政府関係者による基調講演又は鉱業事情紹介
       探鉱投資額の多い南アフリカ共和国、モーリタニア、コンゴ民主共和国では鉱業政策及びプロジェクト事例について具体的な紹介があったものの、治安や政情不安、法整備の遅れ見られる国々は、講演内容に具体性が薄く同じような改善目標項目の紹介があるのみで、国毎の投資事情の濃淡が伺われるものであった。

     
    1) 南アフリカ
       Phumzile Mlambo-Ngcuka鉱山・エネルギー大臣は、金属価格の上昇により特に中国からの需要に引っ張られ、外資参入が堅調であること。鉱業分野では、銅、ニッケル、PGM、ダイヤモンドへの探鉱投資が盛んであり、開発に伴いインフラも整備され、国際競争力も高まってくるであろうとの期待を込めた挨拶を行った。また、NEPAD(アフリカの開発のための新たなパートナーシップ)加盟国など他のアフリカ諸国との産業、技術、人材育成分野等でのパートナーシップを今後更に進め、アフリカ全体の経済基盤づくりをリードしていく決意を表明した。
     対照的に、Nkosazana Dlamini-Zuma外務大臣は、産品が中国へ流れていくだけで、アフリカは相変わらず取り残されているようで将来に危機感を感じている。必要なのは直近の貿易収入ではなく、長期投資と技術移転であり、中国のような経済成長である。地域社会に対する持続的且つ建設的な効果を期待するとの支援を求める挨拶を行った。

    2) マラウィ
       Davis Katsonga鉱山天然資源・環境大臣は、土地所有権の保証など世銀プログラムに沿った新たな鉱山資源政策を2005年半ばに策定予定と紹介した。地質データとしては、100万分の1の地質図のみで、しかも不正確で未整備である。また、既知鉱徴は近隣諸国との国境沿いに限定される。その上で、以下の探鉱事例を紹介した。

    • Albidon社とWMCが南マラウィで銅、ニッケル、PGMを対象に空中物理探査を実施。
    • Lisungwi Minerals Resources(英)が、中央南部のKuk山脈地域で金、PGM、ベースメタルの探査を実施。
    3) ザンビア
       Kaunda Lembalemba鉱山・資源開発大臣は、資源図の整備状況について、10万分の一スケール地質図が55%までカバーし(113枚まで登録・公開中)、他に20万分の一スケールの鉱徴地図(熱水性金鉱徴など)、地化学探査、物理探査、衛星データが存在しており、必要な地域は積極的に作成するとしている。データ整備の進捗に関しては、資金調達が目下の問題であるとのこと。

    4) ウガンダ
       Cos Kamanda Bataringaya国家資源大臣は、世銀の支援により2004年8月から鉱業基盤整備5か年計画を実施中と述べた。この計画では、インフラ整備、環境整備、法整備、地質データ整理、投資促進策の策定、地域医療状況の改善、さらに人的資源開発を謳っており、特に人材育成に重点を置きたいとのことであった。

    5) ニジェール
       Davis Katsonga鉱山天然資源環境大臣は、目下のところインフラ及び地質・物理探査図の整備が課題で、ウランの事例紹介が行われた。その他の賦存ポテンシャルの紹介は以下のとおり。

    • 西部:白金、ニッケル、リチウム、銅、亜鉛、鉛、クロム、チタン、バナジウム
    • 北部:鉛、亜鉛
    • 南部:金、銀、鉛、亜鉛、銅

    (2) 鉱山企業による経営方針及び探鉱・開発状況の紹介
       既にアフリカで事業を営んでいるメジャー企業の講演では、探鉱・開発状況の話題よりもむしろ、財務体質の健全さ、CSRマネージメント、労働安全衛生への取り組み、地域社会への貢献、BEE方針、さらにリスクマネージメントといった経営方針を強調していた。一方ジュニア企業は、既知鉱体の周辺での探鉱開発活動の紹介が主であり、投資家向けという点では対照的であった。

     
    1) Barrick Gold社
       タンザニアのTulawaka金山プロジェクト(埋蔵量368千oz)は予定どおり2005年3月に操業開始予定。同じグリーンストン帯のBuzwagi地区で地化学探査(土壌)を実施中。

    2) African Rainbow Minerals社
       Anglovaalの鉱山部門AvminとHarmony Gold社が設立したPGM探査開発企業。ブッシュヘルド岩体周辺を主な活動舞台としており、生産鉱山は、PGMではModikwa(生産中)、FS終了案件としてTwo Rivers(2006年第1四半期:PGM 230千oz/年)、また一部生産しているNkomatiのJVフェーズ案件(2007年第2四半期:Ni 5千t/年)がある。マンガンではNchwaning(2005年第2四半期)、クロムではDwarsrivier(2005年第3四半期)が生産開始を予定。

    3) Anvil Mining社
       コンゴ民主共和国南東部で銅鉱山開発を実施。Dikulushi鉱山(2002年9月生産開始、Cu 7.18%、Ag 6.7oz/t)を操業しており、2004年の生産量は、Cu 13.6千t、Ag 1.21百万oz。また、Mutoshi鉱山の廃さい(Cu 4%以上)を採掘対象としたプロジェクトとして2005年より1千t/年規模のHMSプラントを稼動予定。First Quantum社が13.9%出資の筆頭株主。

    4) Adastra Minerals社
       コンゴで尾鉱プロジェクト(Cu-Co)を開発中。2007年第4四半期に生産開始予定で、尾鉱処理量2.15百万t/年、生産量Cu 30千t/年、Co 5.5千t/年を計画。生産コストは、Cu 54c/lb、Co 2.10ドル/lbで、オペレーティングコストは30.7ドル/tの見込み。ただし、港まで2,000kmの陸送路が課題で、積出し港は4か所の候補から選定中。

    (3) 投資環境に係るリスクの現状の紹介
       アフリカで鉱業活動を行う企業へのコンサルタント経験が豊富なリスク管理会社より、アフリカにおける事業及び投資リスクの現状が報告された。

     
    1) AON
       経済上のリスクを専門とするAON社のGwilym J.Howesジェラルマネージャーは、最新の企業リスク管理では、既存の保険による損失補填ではなく、会社が自社の資本投資に最適な管理を行っているか否かに焦点を当て、純損益改善の達成を図る方法にシフトしつつあるとの傾向を紹介した。管理項目としては、会社の評判や社名の損傷、悪質な取引、情報システムの欠陥、天候不順、テロ活動、配送および生産スケジュール調整、不透明な見通しなどが挙げられる。
     同社の格付けでは、世界的にみるとコンゴ民主共和国、ザンビアを含めた中央アフリカの経済リスクは5段階評価で最もリスクが高い国々のひとつとされ、内戦やテロ以外の要因として、国家債務不履行、法的規制の脆弱さ及び政治的妨害を挙げている。

    2) CRG
       独立性の高い情報を有するControl Risks Group社のコンサルタントBen Cattanero氏は、国ごとに独自の問題が認められるものの、総じてアフリカでの政治的リスクの最たるものは統治の問題であり、汚職腐敗、社会不安、人権侵害を引き起こしているのみならず、貧困やテロ対策も不十分である。しかし、そのような環境下であるからこそ、健全で倫理性が高い投資および産業活動は有効であると述べた。その背景には、本社を英米加などの先進国に置く外国投資企業が、途上国での汚職に加担しているという情報に基づき、本国で訴訟を起こされる件数がここ数年で急増しており、訴訟リスクを回避する意味でも企業自らが汚職などの回避を目指す手段を講じるからとのことであった。

  3. 南アフリカ共和国によるBEE投資促進

  4.  BEE(黒人への経済権限付与)は、南アフリカ共和国経済界の目標として掲げられ、産業界毎に目標などが制定されている。最初にターゲットとなったのは鉱業界であり、いくつかの数値目標が憲章として既に合意され、発効から5年以内に全ての稼行プロジェクトについてBEEパートナーへ15%のシェア、10年以内に27%のシェアを義務づけるとしている。BEEの促進は鉱業界の次に金融界、そして農業が続いているが、金融界では鉱業憲章のように得点表による法的規制はないものの、黒人の人材開発、黒人企業からの各種調達の推進、黒人企業支援、黒人低所得者に対する金融サービスへのアクセス確保、株主構成の黒人・黒人企業への分散化といった課題に対してベストプラクティスが求められるというものである。
     南アフリカ共和国が関与する投資会社であるInternational Development Corporation(IDC)は、外資のBEEパートナーとして最も実績を有する企業の一つである。同社最高執行責任者のGert Gouws氏は、歴史的に不利な状況に置かれた南アフリカ人(HDSAs)というのは、過去に限定した狭義のものであり一部の黒人を指すものではなく、現状において経済的に不利な状況に置かれているとされる全ての黒人を対象とする広義の概念であると説明。既に鉱業憲章では、5年以内に全ての稼行鉱山にBEEパートナーへ15%(10年以内に27%)の経営参加を義務づけるよう目標値が設定されている。IDCの鉱業セクターへの投資は、この10年間で417百万USドル、全産業への投資のうち25.5%に相当するとのこと。
     さらに、IDCでは鉱業セクターへのBEE投資に際し、鉱種別に参画戦略を策定しており、以下のとおり、現状ではメジャー企業が既に権益を確保済みの分野への参画を狙っている。

    • プラチナ:既存鉱山や新規プロジェクトについて株式購入による事業への参画
    • 石炭:鉱山設備の新設や拡張への投資
    • 鉄鉱石:既存所有権の拡大
    • フェロクロム・フェロアロイ:既存鉱山や新規プロジェクトへの株式購入への参画
    • ダイヤモンド:鉱業憲章の要求する事象が起こった場合
    • 銅-コバルト:新規プロジェクトへの参入

  5. おわりに

  6.  アフリカは資源埋蔵ポテンシャルが高いと言われる一方で偏在性が指摘されており、且つ政治及び安全保障環境の未整備から、一部の地域を除いては探鉱投資があまりなされていなかった。最近になり、治安状況の回復、銅、ニッケル、PGMの需要増、金属価格の上昇による探鉱投資の増加などから、多くの海外探査関連企業が投資機会をうかがっている状況が見て取れる。一方、受け入れ側の各国政府の鉱業投資環境の整備状況には大きく開きがあり、投資センターの開設、法規制の改善など、域内での投資を促す経済的誘因を具体的に整備している国と、そのプランのみに留まっている国との差が明確に分かれ、その差は会議場の聴衆数にも反映されていた。
     また、探鉱開発企業、金融機関関係者によれば、BEEは南アへの鉱業投資における企業の社会的責任として当然負担すべきコストとして前向きに捉える向きが示され、同時に政府機関に対し倫理的な統治責任を求めたいとの見解も聞かれた。ジュニア探鉱会社の講演の中で、10年前のようにアフリカを一括りに捉えるのではなく、国毎に独自の機会とリスクを併せ持つことに留意しつつ投資活動を行っていきたいとのコメントが印象的であった。

ページトップへ