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報告書&レポート

2005年6月30日 サンティアゴ事務所 中山 健 e-mail:nakayama-ken@entelchile.net
2005年44号

CODELCO銅増産計画とその資金調達を巡る最近の動き―特に民間資本導入議論と中国Minmetals社との協定―

はじめに CODELCOは Business and Development Plan 2005のなかで、今後中国を中心とした世界の銅需要に対応していくべく増産計画を策定した。しかしながらCODELCOは国営企業のため独自に利益の再投資が出来ないことから、将来の増産のための資金調達方法が大きな課題となっている。Villarzu総裁は4月中旬に資金調達の方法として、民間資本導入を提案したがCODELCO内部、政府のみならず国民のコンセンサスが得られず断念した。5月末には、中国Minmetals社と銅供給と資金提供に関する協定が締結され、最大20億ドルにのぼる資金調達の確約を得た。しかし更に残る資金調達を如何にするかCODELCOの苦悩は消えない。CODELCOの現状と増産計画およびその資金調達方法を巡る最近の動きについてレポートする。

1. CODELCOの資産と増産計画

 CODELCOは、現在チリでは、Chuquicamata, Rodomiro Tomic (いずれもCODELCO Norte)、Salvador、Andina およびEl Teniente鉱山を操業しており、開発決定待ちの案件としてGaby鉱床およびMansa Mina鉱床(CODELCO Norte)を有している。これらの鉱山・鉱床で確認されている銅金属量は、125百万tに達する。年産1.8百万とすると約70年分の鉱量を有していることになる(表1)。更にToki Claster鉱床やEl Mocha鉱床といった現在探鉱中の鉱床やバイオリーチングによる低品位硫化鉱石からの銅の回収が現実のものとなりつつあり、鉱量は更に増大することは確実である。

表1 CODELCO ディビジョン別銅埋蔵量
ディビジョン
鉱量(百万t) 品位(%) 銅量(百万t)
CODELCO Norte 6,053 0.66 40
Salvador 243 0.58 1
Andina 5,728 0.77 38
Ell Teniente 4,256 0.89 38
Gaby 545 0.44 2
合計 16,825   125

(出典:第4回世界銅コンファレンスでのCODELCO Villarzu総裁発表スライから作成)

CODELCOは、世界の銅需要が年平均4%(中国10%)で伸びた場合2010年には126万tの供給不足、3.5%(中国8%)で伸びた場合72万tの不足になるとの分析しており(CODELCO内部資料)、こうした需要予測に基づきBusiness and Developing Plan 2005で将来の生産計画を立案している。それによると、2012年には260万tの銅を生産する計画(表2)で2005年から2012年の8年間で130億ドルの投資計画が既に承認されている。CODELCOは更に300万tに増産する計画を持っており、その場合には2005年から2015年間に170億ドルを投資しなければならない。300万t体制になった場合、銅価を1$/lbとすると更に22~25億ドルの増収になると試算されている。前者のシナリオの場合、借入金のピークは2010年の55億ドル、2012年の70億ドルになると予想されている。 ちなみに300万t体制に持っていくために、GabyおよびMansa Mina鉱床の開発のほか、Andina鉱山の拡張、El Teniente鉱山の露天採掘の開始、Chuquicamata鉱山の坑内採掘の開始が計画されている。

表2 CODELCOディビジョン別銅生産計画 (単位:千t)
ディビジョン 2004年(実績) 2005年 2008年 2012年 2020年
CODELCO Norte 983 1,011 1,238 1,283 1,066
Salvador 75 75 97 79 22
Andina 240 239 263 608 707
El Teniente 436 424 449 474 563
Gaby     150 150 79
合計 1,734 1,749 2,199 2,594 2,440

(出典:第4回世界銅コンファレンスでのCODELCO Villarzu総裁発表スライドに2004年実績を加筆)

2.CODELCO

 CODELCOは1976年にCODELCO法に基づき設立された国営会社で、利益(所得税、銅機密法による軍への拠出金、純利益)を全額国庫に納めなければならない制度になっている。ちなみに2004年は、銅およびモリブデン価格の高騰により前年比5.5倍の33億ドルを国庫に納入した。この額は2004年チリ国庫歳入の実に14%に達する。これらは社会資本投資および国内外の債務返済に充当されることになっている。一方CODELCOの年間予算は、財務省と鉱業省の認可を受ける仕組みになっており、CODELCO独自では利益の再投資をすることが出来ない。このため、これまで新規鉱床開発や大型の拡張計画への予算投入が認められておらず、CODELCOとしては、社債発行と銀行融資により必要資金を調達しなければならない現状にある。負債額は、2004年9月の26億ドルから、2005年末には28億ドルに達する見込み。またその返済資金は、償却費と税金の繰延べのみで賄わなければならない。上記増産計画の場合、返済のピーク時に償却費と税金の繰延べ額は14億ドルになるが、年間投資計画額には及ばず投資を借入金で賄った場合返済が不可能となる。最近Standard &Poor’sはCODELCOの積極的拡張計画と多額の利益の国庫納付により、この先2、3年でCODELCO財政面の一層悪化が懸念されるとして、格付けをAランクの安定的からマイナスに引き下げている。
 このように国営企業としての束縛のなかで、増産計画のための資金調達方法が大きな課題となっており、CODELCO Villarzu総裁は、CODELCOの一部民営化の提案を行い(その後断念したが)、中国Minmetals社からの資金提供確約を取り付けた。
 なお銅機密法は1958年に制定された「Ley Reservada del Cobre」と称されるもので、当初は、大鉱山の利益に課税する目的で制定されたが1976年CODELCOの発足とともに銅および副産物の輸出額の10%を軍に納めることになっている。その使途は武器購入資金とすることが同法で定められているが、国家機密に関する法律でその内容はベールに包まれている。

3.民営化議

 Villarzu総裁は、4月中旬、将来の開発資金の調達方法として、20%を限度として民間資金導入の考えがあることを明らかにした。これに対してDulanto鉱業大臣は、直ちに、政府としては現政権中には民間資金を導入する考えの無いことを表明した。また4月に政府が行った世論調査でも市民の86%が民営化に反対していることが明らかとなり、5月20日Villarzu総裁は民間資本導入を断念した。
 2005年1月現在のCODELCOの資産価値は、250億ドル近くあり、CODELCO を資本金250億ドルの株式会社とし、政府が株主となり株式を発行。その後50億ドルの増資で民間資本を受入れ、資本金を300億ドルとするシナリオで、Villarzu総裁は、民間資本とはチリ国内のペンションファンド(年金基金)を念頭においていた模様。
 CODELCOに民間資本を導入するためには憲法の改正が必要となる。また銅機密法では銅および副産物の輸出額の10%が軍の武器購入に当てられることになっおり、民営化の足かせになっている。
 過去に国有化した大型鉱山(Chuquicamata、AndinaおよびEl Teniente鉱山)以外の案件については、1990年に改正されたCODELCO法により、民間資本と共同事業が実施できるようになり、その第1号がPhelps Dodge社とのEl Abra鉱山の共同開発・操業(CODELCO:49%,Phelps Dodge:51%)で、現在そのほか、バイオリーチング関連事業Alliance Copper(CODELCO:50%,BHPBilliton:50%)およびBioSigma(CODLECO:67%、日鉱金属:33%)、メキシコでの探鉱事業Pecobre(CODELCO:49%, Penoles:51%)、がある。こうした民間資本の導入方法は後述するようにGaby鉱床開発でも採用されることになった。

4.中国Minmetals社との契約

 去る5月31日北京でMinmetals社と銅供給と資金提供に関する協定が締結された。そのおおよその内容は以下のとおり。今後15年間に亘ってMinmetals社に年間57,000tの銅を引渡し、その対価としてCODELCOは2005年9月までに5.5億ドルを受け取る。最終的には投資規模は20億ドルに達する見通し。銅価に換算すれば、53~55¢/lb(銅価を2006年110-128¢/lb、2007年100-118¢/lb、2008年以降97¢/lbとし、ディスカウントレートを8.37-8.7%とする)となり、更にMinmetals社は毎年他に銅1ポンド当たり50セントを支払うことになっており、先物売り銅価格は103~105¢/lbとなる。またこの契約にはインフレや価格変動の際の調整条項が含まれている。
 この方法は世論の反対するCODELCOへの民間資本導入ではなく、また社債発行や借款より高くつくものの債権ではない新たな資金調達方法(「Minmeatals方式」と称す)として注目される。
 またGaby鉱床開発資金調達に関して、CODELCOはGaby鉱床の建設工事が終了した時点で権益の24%を入札に付すが、Minmetal社は、入札価格同等若しくはそれ以上の価格で25%の権益を取得する優先権を持っている。

5.CODELCO資金調達の見通し

 CODELCOの資金調達方法として、民間資本導入、国債、債務(銀行借り入れ、社債)およびMinmetals方式があげられている。民間資本導入は、憲法により禁止されており、少なくとも現政権下では改正に必要な政治的コンセンサスも得られていない。国債は、直近のものは2004年1月に発行された(現行金利4.13%)がEyzaguirre財務大臣は現政権でのこの選択肢を否定している。銀行借り入れおよび社債も限界に近づいておりCODELCOの格付けも低下している。Minmetals方式は8.37~8.7%の金利負担となる。
 周囲を驚嘆させたMinmetals方式に対して、チリ国内では国会議員やチリ鉱業協会(SONAMI)では契約に至るプロセスと内容の不透明さに批判が相次いだが、基本的にこの方法を否定した訳ではない。この方法の海外の評価は定かではないが、Villarzu総裁によると、Minmetals社との契約締結の後多くの海外企業がMinmetals社方式に関心を示していると言われている。他の方法は既述のように様々な課題が残されているなか、今後この方式がCODELCOの資金調達の一つの方法として注目される。CODELCOは、Villarzu総裁の積極的経営方針とは裏腹に資金調達の課題を抱えていることには違いなく、2006年3月にLagos現大統領の任期が終了し、新政権が誕生することになるが、新政権下でチリの優良国営企業CODELCOの運営が注目されるところである。

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