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報告書&レポート

2005年10月6日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年64号

GFMS社ベースメタル・セミナー2005参加報告

 GFMS社(英)主催のセミナーが、2005年9月14日にロンドンで開催され、メタル関係業界等から約50人が参加した。セミナーは例年の通り、貴金属の部とベースメタルの部から構成されていたが、今回はそのベースメタルの部に当事務所から参加した。以下にその概要を報告する。

(1) 変化するベースメタル・サイクルの性質-生産者の見方(David Humphreys, Norilsk Nickel社Chief Economist)

 この1年は生産者にとって好ましい価格状況であり、この状況は2007年頃まで続く見通しである。価格変動は短期的には投機の影響が強いものの、長期的に見た場合、需給、特に需要よりも供給サイドの問題が影響してくる。
 金属市場における中国の存在は、かなり大きくなってきており、2005年前期の中国の鉄鋼生産、銅消費(1~5月)、ニッケル消費は、それぞれ対前年同期比28.3%増、9.0%増、30.0%増、世界全体と中国を除いた世界全体の変化を比較すると中国を除いた場合の落ち込みは大きい。中国はGDPに占める固定資本投資の割合が過去のアジア諸国の成長過程との比較で高く、他国でも見られたその割合の今後の落ち込みがどうなるかが問題。中国では、GDP成長率に対する総固定資本形成の成長率も1994年以降上昇傾向にあるが2004年に減少、中国国内の鉱産物価格、金属価格が一般消費財価格に比べて大幅に上昇している。中国は他国と比べてGDPユニット当たりの金属消費が多く、鉄では米国の約20倍、日本の約10倍、銅では米国の約10倍、日本の約8倍等となっているが、中国の対内直接投資が最近減少、輸出や産業生産の成長率は非常に高いもののその伸びは頭打ちとなりつつある。
 世界の供給増加は、銅では2005年8%弱、2006年9%弱、2007年約6%、ニッケルでは2005年3%弱、2006年5%強、2007年約6%と見込まれる。一方、世界の銅消費は1980年以降平均2.4%増であるが、1998年以降は平均3.3%増に上昇、ニッケル消費も1980年以降平均2.7%増であるが、1998年以降は平均4.7%増に上昇している。この結果、消費増加がこの傾向だとすると、ニッケルの需給は今後もタイトになる可能性がある。中国は、ニッケルの消費増加に伴い、PNG、フィリピン、キューバなどの海外でもニッケルプロジェクトに投資、ニッケルの生産コストが急上昇しており、これへの対応が課題。Inco社のデータでは、ニッケル生産のキャッシュコストは、2001年の約1c/lbから2005年は3c/lbとなっている。銅については、今後、鉱山生産規模、為替相場(現地通貨の対ドルレート)等がその供給見通しに影響してくる。ベースメタル供給については、鉱種により異なるものの、資源そのものの制約より、コスト増加にどう対応できるかが課題となる。

(2) 銅:サイクルとスーパー・サイクル(Peter Hollands, Bloomsbury Minerals Economics社 Managing Director)

 直近の銅価格は、在庫の動きに反して動いており、8月に価格上昇する等通常の季節要因も無視した動きとなっている。2004年はドル安が価格を牽引し、直近では63か月先物価格でさえ、2,400ドル/tを超えている。価格、LME在庫、工業生産(IP)の3つの指標に基づく相関関係から分類される現在の銅の価格帯は、他の材料への代替へと向かう価格帯となっている。2005年1~5月の世界の工業生産(IP)が4.5%成長したにもかかわらず、銅消費は僅か1%しか増加していない。これは、銅管や銅ワイヤーロッドの在庫が20万t減少、7.5~10万tがプラスチックやアルミに代替するという二重の価格抵抗効果があったため。一方、供給側としては、2004年後半以降、銅鉱山生産が大きく減少している。その背景としては、価格のピークと考えられた2004年に採掘された高品位部分の採掘が終了、低銅品位・高モリブデン品位・高金品位鉱石へのシフト、高価格により誘発された高賃金への期待が導いたストライキ、大型トラックのタイヤ不足、事故などが挙げられる。
 2006年末までの見通しとしては、今後の工業生産(IP)成長率の伸びは、期待したほどではなく、市場は2005年第4四半期にほぼバランスするものの、在庫は危機的な状況であることに変わりなく、強気と弱気の両方のシナリオがあり得る。当社のベース・ケースの見通しでは、2006年前期までは供給不足が継続するが、2006年後期は供給超過となる。価格は、現在の水準をピークに軟化、キャッシュ・プライスで2,750~3,500ドルの間で推移。当社価格モデルでは、LME在庫が9万t超で、価格は3,000ドルを超える動きにはなりにくい。
 銅では、LME在庫レベルの長期の周期性、米ドルの長期の周期性が長期の銅価格の傾向を見る上で相関性がある。最近の63か月先物価格を見ると、為替レートの影響を超える何か(スーパー・サイクルの始まり?)が見られる。中国の銅需要は、他の金属と異なりその需要増の多くは他の地域の需要からのシフトで、世界成長への影響は大きくない。一方投資需要として一次産品インデックス・ファンドの取引額が、2003年200億ドル、2004年400億ドル、現在800億ドルと、工業金属取引の10%を占める存在に成長。この需要はリサイクルがなく、スーパー・サイクルの牽引者と言えるかもしれない。全ての銅部門の生産者は在庫を減らすための生産減という対応になっている。以前2002年のカソード超過を品位低下で終わらせたように、今回2005年の精鉱余剰を品位低下で対応しつつある。実際、地すべり事故のあったGrasberg鉱山以外生産が伸びていない。スーパー・サイクルは2004年後半から2005年初めにドル安でもたらされたと誤解されている印象があるが、実際には、鉱山生産の削減がはっきりした2005年4~5月から始まったと言える。
 現在、在庫と為替レートの2つの価格上昇要因の中にあり、先物需要というスーパー・サイクルの可能性を有する要素もある。鉱山生産者の在庫への過剰反応(減産)という要素もスーパー・サイクルとなり得る。中国需要は、銅については需要の移転で追加需要ではない。以上のことから、現在はスーパー・サイクルかと聞かれれば、確かに今はそうであるが、高価格がもたらすより大きな長期の影響として、銅から代替物へのシフトという危険な要因がある。今後の当社の2010年末までの長期価格予想としては、キャッシュ・プライスで2,000ドルレベルまで低下していくと見ている。

(3) 鉛と亜鉛:Is China the Only Story in Town?(Huw Roberts, CHR Metals社)

 2005年の世界の鉛市場は、高価格が需要の伸びを抑制、僅かな生産超過となる見込み。亜鉛は2004年~2007年まで生産不足が続き、大規模な需要増に対応する供給がなされるまで、LME在庫は大幅に削減される見込みである。LME鉛価格は、供給タイトを反映してまだ高いが、2006年~2007年に下落。亜鉛価格は、在庫減や2006年~2007年の需給逼迫により下支えされるものの、他の金属が弱含むことで価格上昇が抑制される見込みである。
 中国は、鉛市場では大きなインパクトを持ち続ける一方、亜鉛では、いくつかの重要な要因の一つという位置づけである。
 鉛市場において、中国は2003年に米国を抜いて最大の鉛地金生産国となり、2005年にはついに消費でも米国を抜き最大の鉛地金消費国となる見込み。2005年の中国の世界市場に占めるシェアは、生産で30%、消費でほぼ25%となる見込み。2004年の世界の鉛消費増加の75%は中国分、2005年にはそれが80%の見込み。2005年の中国を除く世界の鉛消費量は、まだ2000年のそれに達していない。一次鉛地金生産で、中国のシェアは2005年に43%に達し、世界の一次鉛地金生産は、中国の増加で2000年以来始めて増加する見込み。中国国内で自動車生産が急増し、バッテリー需要が増大、通信インフラ、バックアップ電源システム、電動自転車等の需要も増加。中国のバッテリー産業は輸出向けで、当初、欧米や日本市場をターゲットに伸びたが、現在では世界中に輸出。SLIバッテリーの輸出は頭打ちだが、産業用バッテリー輸出が伸びている。バッテリー輸出は中国の鉛需要を増大させているが、一方で輸出先の鉛需要を削減するという影響も出ている。
 世界の鉛需給両面で、中国は相対的にも絶対的にも大きな影響を与え続けている。鉛製錬能力の新設や拡張の動きは未だ減速しておらず、中国は今後も鉛精鉱の輸出先、鉛地金の輸入先として重要な地位を占め続ける。中国SLIバッテリー生産者は、輸出市場で厳しい競争にさらされ、一方産業用バッテリーでは新たな市場を開拓。将来、中国の規制当局や地域住民が公害問題に厳しい対応をとれば、世界の鉛産業構造は再び変化するであろう。
 亜鉛地金生産は、世界的な精鉱不足の制約を受け、亜鉛需要を下回る状況。LME在庫は、2005年初めの60万t超から減少したが、まだ50万t以上と十分な量がある。2005年前半の北米・欧州・日本等の成熟市場の需要は弱く、生産者在庫の引き出しで伸び悩んだが、今後2006年に向け回復する見込み。中国の亜鉛需要の伸びは大きく、中国国内の亜鉛地金生産も増加しているが、世界的な亜鉛精鉱不足により制約を受けている。中国はかつて主要な亜鉛地金輸出国であったが、2005年は純輸入国となって2年目となる。
 2002年以降、世界の亜鉛鉱山生産は、精鉱需要を満たすことが出来ていない。2002年と2004年には、鉱山生産を超えた地金生産の伸びにより精鉱在庫が減少、現在、精鉱在庫はなくなり、鉱山生産に応じた地金生産しかできない状況。中国を中心に大きな製錬能力余剰が発生しており、一部は廃止されている。亜鉛鉱山生産は今後増加するものの、2005~2007年は需要の伸びに追いつかない見込み、2007年初めまでは、大規模プロジェクトは僅かで、小規模プロジェクトや能力拡張、再開等が進行する見込み。2007年には亜鉛地金在庫が使い果たされ、市場がバランスするのは2008年に入ってからと予想される。
 鉛と異なり、2000年以降、中国以外でも亜鉛需要の純増が見られた。2000年~2004年に亜鉛需要は、中国で100万t超、その他で45万t弱増加。中国以外の需要の伸びは、中国の亜鉛めっき鋼板や亜鉛合金の輸入によって説明されるものもあり、これらの一部は、中国の亜鉛めっき鋼板の輸出開始により、その需要がなくなる見込み。中国は2003年までは、世界で亜鉛地金の主要な輸出国であったが、現在は純輸入国。これは急速な国内需要の伸びだけでなく、精鉱不足による地金生産の制約が大きく影響。中国はまた、年間20万tの亜鉛合金輸入者であり、かつ、亜鉛めっき鋼板の輸入者であるが、最近亜鉛めっき鋼板の輸出を開始し、他国の亜鉛需要にマイナス効果を与える見込み。中国の国内消費は、亜鉛めっきを中心にインフラ、機械、家庭用機器、タイヤやゴム製品(酸化亜鉛)等があるが、輸出製品に使用するための大規模なダイカスト生産により、家電やPC、携帯電話等の分野では、海外から中国への需要移転をもたらす可能性がある。ただ、一般めっきにおける亜鉛使用という面では、需要移転のリスクはより小さいと思われる。
 現在稼動中の鉱山は大きな利益を上げているが、数年間にわたる低価格の影響で、進行中のプロジェクトからの新たな生産は遅れている。中国の亜鉛需要は、世界の亜鉛需要の伸びを大きくし、他国の需要の伸びにも貢献。中国の強い需要は、工業生産の鈍化にもかかわらず、まだ続きそうで、亜鉛半製品製造(亜鉛めっき鋼板製造)分野では輸出者となりつつある。中国亜鉛製錬業は、世界の亜鉛精鉱の輸入を増加させ地金輸入を減少させる、やがては、中国は再び純地金輸出国となる可能性がある。

(4) アルミナとアルミニウム市場における構造変化の影響(James King、James King & Assosiates社)

 過去20年間でアルミニウムの生産は、1985年の20.1百万t(うち鋳物4.1百万t、ロール製品9.8百万t、押し出し成型品5.2百万t等)から2005年の45.7百万t(うち鋳物11.4百万t、ロール製品17.4百万t、押し出し成型品11.5百万t等)となっている。また、アルミニウム生産のうち1次由来のものが1985年の16.6百万tから2005年31.9百万t、2次由来のものが1985年の5.3百万tから2005年12.8百万tと増加。アルミナ生産では、1985年の35.0百万t(うち冶金によるもの31.9百万t、非冶金によるもの3.1百万t)から2005年67.5百万t(うち冶金によるもの61.8百万t、非冶金によるもの5.6百万t)となっている。今後もアルミニウム生産は将来も順調に伸びていく。こうした中、主要西側グループによりコントロールされている生産能力として、そのシェアは、アルミナで1990年67%から2005年70%と増加したものの、ボーキサイトで1990年68%から2005年64%、一次アルミで1990年54%から2005年51%となる等、シェアは低下している。例えばロール製品でも一次アルミでも主要生産者の全体に占める割合は、中国やCIS諸国の生産者が成長し、上位10社シェアは数%低下しただけとは言え、その顔ぶれは変化し続け、第三勢力の生産者と言える企業が出てきている。また、アルミナの生産能力では、上位10社シェアは1985年の70.8%から2005年77.7%に上昇してきている。利益部門への集中と不採算部門の売却で、コストや技術で優位性をもつ西側企業の専門化が進行し、ロシアや中国の生産者では、西側スタイルの集中生産への動きが強まると考えられる。

(5) ニッケル:A Brave New World?(Neil Buxton, GFMS Metal Consulting社)

 高レベルのステンレス生産と高レベルのニッケル価格というユートピアが現出し、ニッケル生産者はこれをコントロールできる立場にあるかのようであるが、高い材料価格と格闘しているステンレス生産者のように、全ての関係者が等しく幸せにはなれない。ニッケル価格は本当に崩壊しないのだろうか。
 2001年以降、在庫が減少傾向でニッケル価格は上昇しているが、ニッケル需要は価格上昇に見合う程伸びてはいない。2000年~2005年の需要成長率は3.8%で、過去5年単位の伸び率としては大きなものとなっているが、その殆どは中国の需要の伸びである。2005年1~9月のステンレス生産は、欧州で微減、日米で微増、中国では45%増と大幅に増加しており、ステンレス生産の世界的シフトが進行中。中国のステンレス生産能力拡張計画は、2005年の50万tから2006年130万t、2007年150万tと大幅に増加する計画となっている。こうした中、中国のニッケル輸入も拡大する見込み。しかしながら、ニッケル高価格のため、ステンレス生産の伸びとニッケル消費が連動しなくなってきており、またステンレス鋼の価格低下で、その生産が最近抑えられている傾向が出てきている。
 短期のニッケル需要見通しに影響がある動きとしては、韓国POSCOがステンレス生産2万tカット、Yieh Unitedがその生産の30%カットを9月まで延長、国際ニッケル研究会は2005年前期の需給が1万tの生産超過と推計、2005年前期のニッケル生産は3%増等があり、2005年は若干の供給不足となるものの、2006年、2007年は供給超過となる見込み。
 今後の供給見通しとしては、Voisey’s Bay生産開始までは、拡張や高い稼働率で対応、豪州(Minara、Mincor、LionOre)、SLN、Antam、Coral Bay、Jinchuan、CIS生産者により高いレベルの生産がなされ、2008年には、年産5万t以上の新規プロジェクトが立ち上がり、大幅な供給増の可能性がある、プロジェクトはジュニアではなくメジャーによって実施される見込み。
 現在のニッケル価格は長期サイクルの平均価格9,350ドル/t(4.25ドル/lb)の2倍近くとなっていること、将来ファンドが価格についてゼロサム・インパクトを持つことになるかどうか、ニッケル価格が15,000ドル/t(6.80ドル/lb)でファンダメンタルズが変化する、在庫の少しの変化が価格を大きく下落させる、ということに留意する必要があり、ニッケルは果たしてA Brave New Worldなのだろうか。

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