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報告書&レポート

2005年10月6日 バンクーバー事務所 中塚 正紀 e-mail:nakatsuka@jogmec.ca
2005年65号

ベネズエラ政府の鉱業政策転換に関する北米関係者の反応

 メタルエコノミックスグループの速報では、2005年の世界の探鉱予算は前年から38%上昇し、51億USドルと発表されるなど、ここ2年にわたる金属市況の高騰により、探鉱開発投資は順調に拡大しており、世界の鉱山会社は当面考えられる供給不足に対応するため、開発プロジェクトや探鉱プロジェクトを積極的に推進している。こうした中、ベネズエラのチャべス大統領が鉱業政策を転換するとの発言したことから、ベネズエラで金の開発プロジェクト(Las Cristinasプロジェクト)を進めているCrystallex社他関係会社の株が9月20日に急落し、各社はその対応に追われた。本報告では、チャべス大統領発言により具体化した政策転換に対する北米関係者の反応を紹介する。

1. チャべス大統領発言の内容

 9月20日のダウジョーンズ報道によれば、チャべス大統領は「Las Cristinasプロジェクトは国家資産であり、国営鉱山会社を設立する」とし、「今後、外資企業への(いくつかの)採掘権を廃止し、新しい採掘権は出さない。また、国営企業を立ち上げベネズエラ独自の資源開発を行っていく」と発言。また、この発言に関連し同大統領は、「鉱山会社は採掘権を得るため、開発を行うと契約しているにも関わらず、契約事項であるプロジェクトの開発を行わず、ベネズエラ政府を裏切っている。ベネズエラは、現在の金価格の高騰にのり、早急に開発を進めることを希望している。」と述べた。

 参考:本報道によりベネズエラで開発を行っている各企業の株価が急落(9月20日)
Crystallex社 48%下落、Gold Reserve社 24%下落、BolivarGold社 16%下落

2. Crystallex International社等の対応

 トロントのCrystallex International社は主要金プロジェクトとしてLas Cristinasプロジェクトの開発を進めており、このプロジェクトにすでに90百万ドルを投資、エンジニアリング関連の作業は97%終了、最終的な生産許可を取得する段階まで進んでいたもの。同社は今回の発表に関して、9月21日、以下内容の社長談話を発表。
 同プロジェクトは、ベネズエラ政府との契約で鉱床は政府が所有すること、同社は開発権を所有し、採掘権は持たないことなどの内容に同意しており、ベネズエラ政府の政策転換がどのようなものかわからないものの、これまでと同社の立場はまったく変わらないと強調。チャべス大統領の発言は同社には影響を及ぼさないと考える。チャべス大統領の発言は採掘権を持ちながら、開発を行おうとしない企業に当てているもので、現在Las Cristinasの開発は前進しており、政策の変更による影響はない。

* 9月26日、同社はLas Cristinasプロジェクトの開発計画を発表
 Crystallex社は今後の工事計画を発表。2.93億USドルをかけた第一フェイズ工事が終了した6か月後に第二フェイズのエンジニアリングデザインを開始する予定で、1.53US億ドルの追加コストで、生産量は2/3増量する見込み。予定では、生産は2007年初旬開始で年間金生産量30万oz、第二フェイズでは50万ozに増量する見込み。SNC-Lavalinエンジニアリング社がすでに、第二フェイズの計画の作成を終了しており、1日2万tの鉱石採掘量を4万tまで増やすことができると見ている。拡張後の生産開始は、第一フェイズ設備工事終了の2年後に予定している。

* その他企業の反応
 同様にベネズエラで先月から金生産を開始したBolivar Gold社は16%、同国に開発プロジェクトを持つ米国スポーカンのGold Reserve社も24%とそれぞれ株価が下落したが、政策転換がそれぞれのプロジェクトにはまったく影響はないとの声明文を出すなど早急な対応で、株価は回復。

3. 世界的な金生産会社等の評価

 Newmont Mining社、Placer Dome社、Goldcorp社等の大手企業はベネズエラの鉱業政策の転換で、ベネズエラへの投資が今後難しくなることを示唆した。

Newmont社:

これまでも同国での権益取得は容易ではなかったため、同国での開発には意図的に距離をおいていたが、この政策の変更で、この国の将来的な発展は難しくなったと考える。(社長 談話)

PlacerDome社:

ベネズエラから手を引いたのは(もとCrystallex社のLas Cristinasプロジェクトのオーナーであった)、同国が居心地の良い国ではないという理由からである。(CEO 談話)

Goldcorp社:

地質的ポテンシャルの高い国であるが、現在の段階では政治が不安定であると考える。(CEO 談話)

BarrickGold社:

チリは鉱業に好意的、アルゼンチンは開放的、しかしベネズエラはチャべス大統領と彼の政策から、我々の開発対象国のリストから外している。(CEO 談話)

Eurasia Group アナリストDundee Precious Metals:

ベネズエラでの鉱業分野の大規模な国営化はそれほどないと考える。採掘権が運営契約に移行し、政府の支配力が高まるが、政府がTakeoverするのは開発を行っていない小さな企業だと考える。チャべス大統領の発言には大きな打撃を受けた。(CEO 談話)

4. まとめ

 今回のベネズエラのチャべス大統領発言は、市場の高騰を背景に探鉱開発投資に拍車をかける鉱山会社にとってカントリーリスクを目の当たりに見る事例として、各社に与えたショックは非常に大きなものであったと考えられる。本件の今後の展開を見守りたい。

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