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報告書&レポート

2005年11月4日 シドニー事務所 永井正博、久保田博志 e-mail:(永井) masahiro-nagai@jogmec.go.jp  (久保田)kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2005年73号

「21世紀のオーストラリアの鉱床探査の方向性」― 「AMEC National Mining Congress & Investor Show 2005」におけるGeoscience Australiaのプレゼンテーションより ―

 7月26、27日の両日、パース市内で連邦政府及び各州政府の鉱業関係者・地質調査所、鉱山会社、探鉱ジュニア企業、投資機関等が参加して探鉱・投資セミナー「AMEC National Mining Congress & Investor Show 2005」が開催された。
 本稿では、このセミナーにおけるオーストラリア地球科学機構所長(Geoscience Australia, CEO, Dr. Neil Williams氏の講演「Australian Mineral Exploration in the 21st Century」及び同副所長 Dr. Chris Pigrim氏の講演「The Future of Mineral Exploration Australian Hot Spots」をもとに、オーストラリアの鉱床探査の新たな方向性について紹介する。

1. はじめに

 探鉱費の増大、広範にわたる新しい科学技術、地球への様々な角度からのアプローチにも関わらず、オーストラリアにおける「世界的な大規模鉱床(world-class deposits)」の発見は過去20年間で大きく減少している。
 露頭地域は既に探査されてしまい探査余地がなくなり、未だ発見されていない「世界的な大規模鉱床」が存在するのであれば、それは不毛な土壌や岩石に覆われていると考えられている。

2. オーストラリアの鉱床探査の構造

 オーストラリアにおける鉱床探査の担い手は、鉱山会社や探鉱ジュニアなどの探査企業、連邦政府(Geoscience Australia)や州政府の地質調査機関、大学、探査技術・解析技術を提供する鉱山・探査サービス企業であり、これらの連携のもとに探査活動は行われている。

3. 「浅所探査から深部探査へ」

(1) 「浅所」探査モデル
 浅所探査は、地質・鉱床の特徴の類似性を重視し、その類似性から鋭い洞察力と帰納法的飛躍によって問題解決(探査戦略)を導く方法論をとっている。
 しかし、類似性を重視した結果、方法論が誤った方向へ導かれ、十分な解決問題に至らない(有効な探査戦略となり得ていない)ことがある。類似性を重視して立案された探査戦略は、最善のものであっても、結果として作業仮説を構築したに過ぎない。
(2) 「深部」探査モデル
 深部探査は、個々の地質・地球物理学的現象の解析にとどまらず、各分野にまたがって地球システム全体を考える探査モデルを導く方法論をとる。
 そして、従来の帰納法的アプローチから仮説志向的アプローチへとシフトする必要がある。その結果、誤った仮説に基づく探査はただちに排除されることになる。定性的で(根拠の)弱い探査仮説は無数に存在するが、定量的で(根拠の)しっかりした仮説は極めて少ない。
表1 「浅所探査」 vs 「深部探査」

浅所探査
深部探査
(鉱山/探査会社)
実施主体の形態 様々な企業規模 大企業/コンソーシアム(企業連合)
プロジェクト管理 保守的な管理型 リスク管理型
ターゲット 様々な品位・規模鉱床=広範な鉱床タイプ 高品位・大規模鉱床=限られた鉱床タイプ
ボーリング 多数のボーリング 少ないボーリングとボーリング孔を用いた探査
鉱床モデル 記載型探査モデル=鉱体重視 予想型探査モデル=鉱化システム重視
(探査サービス会社)
探査技術 特定の探査技術が強調される 各種探査技術の融合が強調される
解析技術 2次元・3次元解析によって視覚化される技術 3次元以上の解析によって視覚化される技術
ボーリング技術 ボーリング技術への関心は高くない 新しいボーリング技術が求められる
探査ツール 分析ツールとフィールドでの探査ツールを重視する リモートセンシングとボーリング孔を利用した探査ツールを重視する
(大   学)
学問的バックアップ 地質と地球物理とは別個の探査プログラム 地球科学の各分野が融合した探査プログラム
課題へのアプローチ 記載が重視される活動 結果の統合と結果を予測を重視した活動
地質学的アプローチ 岩石の種類を重視 岩石の特性を重視
地球システムへの 地球科学的現象への個別的なアプローチ 地球システム全体に対する包括的アプローチ
アプローチ
科学的アプローチ アナログ(類似性)重視の科学論に基づく 命題(推論)を重視した科学論に基づく
(地質調査所)
マッピング 地表地質(フィールドでのマッピング) 地表下の地質(遠隔からのマッピング)
成果のアウトプット 2次元・3次元解析結果 3次元に時間軸を加えた解析結果
重点地域 系統的なマッピングを重視 地表下・未開地域(フロンティア)に焦点
重点対象 岩石の分布を重視 鉱物系の分布を重視
科学的アプローチ アナログ(類似性)重視の科学論に基づく 命題(推論)を重視した科学論に基づく

出典:Dr. Neil Williams氏プレゼンテーション資料に加筆

4. おわりに

 オーストラリアの鉱床探査は、「成熟している」(mature)と言われることが多い。すなわち、大陸内陸部は土壌や風化岩石が多く、いわゆる露頭地域は海岸沿いなどの限られた地域であり、それらの地域の多くは少なからず過去に探査が行われており、潜頭鉱床以外に新たな鉱床発見の可能性は少ないと考えられている。全世界の探査費に占めるオーストラリアのシェアの長期的な減少や世界的大規模鉱床の発見頻度の低下はそのことを示している。
 これに対して、連邦・州政府や地質調査所は、地質図の整備に加え、空中磁気データから空中重力、更には地震探査による地下深部のデータ取得、過去の探査データのデータベース化など「探査情報インフラ」の整備を積極的に進め、探鉱投資を呼込もうとしている。
 そして、深部探査を成功させるには、今回のオーストラリア地球科学機構の両氏のプレゼンテーションで示されたように「これまでとは異なる『新たな探査方法論』が必要である」との認識が広がっている。

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