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報告書&レポート

2005年11月4日 バンクーバー事務所 中塚 正紀 e-mail:nakatsuka@jogmec.ca
2005年75号

Barrick Gold社、Placer Dome社に買収提案

 10月11日に発表されたInco社のFalconbridge社買収の発表に続き、10月31日、トロントに本社を持ち、金生産世界第3位のBarrick Gold社(以下Barrick社)が、バンクーバーに本社を持ち、同じ金生産世界第5位のPlacer Dome社(以下Placer社)に対し92億USドルの買収入札を申し入れると発表。関係各社のプレスリリースの概要とカナダの各紙が報道した買収案の今後について報告する。

1. Barrick社(プレスリリース)

 10月31日、Barrick社は金生産業界における競争力を更に強化するため、92億USドルでPlacer社の全ての社外株式を買収する申し入れを行うと発表。この入札とは別に、Goldcorp社との話し合いが開始され、Barrick社がPlacer社の買収に成功した場合、Placer社が所有するオンタリオのCampbell金鉱山、Porcupine金鉱山、Musselwhite金鉱山の権益、チリのLaCoipa銀鉱山及び同社が開発中の優良鉱区であるドミニカ共和国PuebloViejo開発プロジェクトの40%の権益をGoldcorp社がBarrick社から13.5億ドルで買い上げる旨の契約の話し合いが行われている。また、Cerro Caslae金銅鉱山の開発延期問題を巡り、Placer社とBema Gold社、Arizona Star社が争っていた問題も、Bema Gold社とArizona Star社に同鉱山を売却するなどの対策案が含まれている。
 (主なポイント)

Placer社が所有する特定の物件についてはGoldcorp社と別契約。
2社の合併により、安定した基盤の運営資産と資金源を得、プロジェト開発に強力なパイプラインを所有。
Placer社の株主は、一株につき20.50USドルを得る(87%をBarrick社株と13%を現金で取得)。
入札額は、過去10日間の終値平均の27%プレミアム付。
この入札案とBarrick社、Goldcorp社契約案で、年間の相乗効果は2.4億USドルと推定。
入札により、Barrick社の純資産価値、利益、現金流動は増加する見込み。

2. Goldcorp社(プレスリリース)

 Goldcorp社は、Barrick社とPlacer社が所有するオンタリオのCampbell金鉱山、Porcupine金鉱山、Musselwhite金鉱山の権益、チリのLaCoipa銀鉱山、同社が開発中の優良鉱区、ドミニカ共和国PuebloViejo開発プロジェクトの40%権益を13.5億USドルで購入する契約の話し合いに入った。Goldcorp社は、これらの買収は現在同社が所有する資産に対し地域的な相乗効果が大きく、非常に有益であると述べた。
 (主なポイント)

2006年の金生産量は50%増量し、200万oz以上に。
金埋蔵量が83%増量し、2,300万ozに。
確定埋蔵量(Measured and indicated resources)が195%増量、1,600万ozに。
推定埋蔵量(Inferred)が86%増量、1,100万ozに。
各株あたりの利益、現金流動、埋蔵量、生産量が増加。
Campbell鉱山の取得により、Goldcorp社はカナダの主要金生産地域の統合を図ることにより、隣接したGoldcorp社所有のRed Lake鉱山との相乗効果を得る。
Goldcorp社の年間相乗効果は3,000~4,000万USドルと推定。
カナダの大規模で長期的な金開発に携わることで、Goldcorp社の成長を促す。
現在の資産所有額から、新たに株を発行する必要はない。

3. Placer社(プレスリリース)

 Placer社はBarrick社が同社買収の意図があり、同時にGoldcorp社とPlacer社所有の権益の売買に関する話し合いが行われていることを伝えられた。Placer社はこれに関し、近々役員会を開く予定だが、入札内容を受け取り、検討するまではコメントは控えたいとしている。

4. 報道関係の反応

 今回の買収申し入れについて各紙の反応を見ると、グローブアンドメール紙はBarrick社の今回の行動について「近年、同社はLagunas Norteプロジェクトを予定より早くかつ予算以下で6月に開始、アルゼンチンの開発も前倒しするなどすばらしい結果を出してきたが、Board Memberはこれに満足することなく、金市況が高騰し、株価も強く、銀行の貸付条件が整っている中、弱いライバルを見つけて吸収することによりビジネス拡大のチャンスが訪れたと判断したもの。こうした手法は、Inco社のFalconbridge社買収や2004年のAlcan社、その前年のEnCana社も同様、さまざまな産業で行われている。また、買収提案には、カナダの税制によるメリットやGoldCorp社にカナダや南米の権益を売ることにより資金の調達を行うとともに余分な資産の売却を行うなど考えられた削減効果が含まれており、こうした同社の提示条件に対し他者がこれを超える提案を行うことは非常に難しい。」と述べた。
 一方、Placer社についてバンクーバーサン紙は「今回の提案は関係する3社の株主にとっては、非常に有益なものであるとアナリストの見解を引用し、Placer社は現状の資産状況を改善するため、2003年オーストラリアのAurion Gold社を17億Cドルで買収、業績不振を払拭するきっかけとした。また最近ではPueblo Viejoプロジェクトなどの新たなプロジェクトを発表し、コスト低減を実現することによりBarrick社やNewmont社に対抗しようとしたが、現在のコストも他社に比べ高く、株式市場の反応は芳しくなかった。こうした背景には2000年10月29日から2005年10月30日までの5年間で株価値がBarrick社は141%、Newmont社は177%、Gorldcorp社は、356%という驚くべき上昇を記録したのに対し、Placer社は、41.57%の上昇にとどまっていた」と語り、また、Goldcorp 社のIan Telfer社長のインタビューを引用し、「私はBC州にとって悪いことはやりたくないが、過去数年の株式市場を見ていると、遅かれ早かれ誰かがPlacer社の買収を行うのではないかと予感していた。外国の企業であったならカナダやバンクーバーには何も残らないが、今回の買収は企業資産がカナダに残り、かつバンクーバーにも残るということで好ましい。」と今回の提案を紹介した。
 今回の入札が成功すれば、Barrick社は約8.3~8.4百万ozの金を生産する世界最大の金生産会社になるが、多くのアナリストは今回の入札案は明らかな敵対的買収であり、これによりPlacer社に入札する他の企業が出てくる可能性も高くなったと述べ、その可能性がある企業は、Newmont社、AngloGold社やGold Field社であり、中でも金生産高世界一を誇るNewmont社がもっとも可能性の高いと予測。

5. Newmont社の戦略

 Newmont社の反応は今のところ表立っていないが、多くのアナリストたちは同社が行動を起こすと予測。Newmont社は2001年にオーストラリアのNormandy Mining社及びカナダのFranco-Nevada Mining社を合併し、資本金42億ドルの世界最大の金生産会社となった。業界では同社がPlacer社に対抗入札する可能性は高いと考えられており、情報筋によると、すでに投資専門家を雇い、入札の可能性を模索していると言われる。同社がPlacer社を買収した場合、Barrick社の場合と同様に、Placer社が現在運営しているネバダとオーストラリアのプロジェクトで経費削減効果が期待される。しかし、Placer社が所有するプロジェクトのうち特にアフリカ地域には興味はない思われるため、入札はトロントのKinross Gold社やアフリカのGold Fields社などの協力を得てなされる可能性が考えられる。JP Morganのアナリスト、John Bridges氏は「Newmont社が唯一、Barrick社、Goldcorp社に対抗できる企業と見ており、対抗入札にあたり、Barrick社、Goldcorp社同様、Placer社の資産の一部を売却する目的で、Kinross Gold社、AngloGold Ashanti社、BHP Billiton社などがパートナーになる可能性が高い」としている。Dundee Security 社のアナリストもNewmont社の資金調達は問題なく、入札はおそらくBarrick社と同様、株と現金による取引になるだろうと見られると話している。しかし、一方で、入札価格が92億ドルで開始されることから、Newmont社の対抗入札で、Barrick社のケースに相応する経費削減効果がみられるのかを疑問視する声も挙がっており、これをクリアできるかどうかが今後の展開を握るカギと見られる。

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