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報告書&レポート

2005年11月10日 シドニー事務所 永井正博、久保田博志、研究スタッフ:Joy A. Albert e-mail:(永井)masahiro-nagai@jogmec.net (久保田)kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2005年76号

セミナー報告「Excellence in Exploration & Mining」

 10月17、18日の両日、シドニー市内のホテルでMining Journal、オーストラリア証券取引所(ASX)などの後援によって、探査鉱業投資セミナー「Excellence in Exploration & Mining」が展示ブース約40、講演約50件と盛大に開催された。
 JOGMECは、オーストラリアで現在、実施中のJV探査事業の概要を講演と展示ブースで紹介した。
 本稿では、このセミナーの概要を報告する。

1. オーストラリアにおける非鉄メジャーの探査戦略(Rio Tinto社の例)

オーストラリアの探査傾向: オーストラリアでの金属鉱床探査支出シェアは低下傾向にあり、10数%まで落ち込んでいる。その原因として、「(1) 露頭地域は探査が進み、残された被覆地域での成果が上がらない、(2) 土地アクセスの手続きに時間がかかる、(3) 税制と他の法律との対立、(4) 探査の国際化により、容易に探査のできる地域に企業がシフトしてしまった。」などがあげられる。

初期探鉱(Greenfield Exploration):Rio Tinto社は、1940年代半ばからオーストラリアで探査活動を行っているが、初期探鉱での顕著な成果は1979年のArgyleダイヤモンド鉱床の発見が最後である。近年は年間9百万USドル程度の探査支出に留まっている。1990年初には同社の初期探鉱支出の40%以上をオーストラリアが占めていたが、近年は10%前後まで低下している。

鉱山周辺探鉱(Brownfield Exploration):初期探鉱とは対象的にオーストラリアにおける鉱床周辺探鉱支出は堅調で、1998年には初期探鉱費を上回り、同社が大きく探査費を削減した1996年以降も支出レベルは維持され、同社の鉱山周辺探鉱支出の70%前後をオーストラリアが占めている。これは、同社が既存鉱山の拡張に力を入れていることを反映している。

今後の展望(特に初期探鉱について):初期探鉱は厳しい状況にある。連邦政府のリーダーシップが求められる。また、税制面などで探鉱意欲を促す必要もあるだろう。また、BHP BillitonのFalcon空中重力探査技術などのような革新的技術の開発や、先住権など探査地域へのアクセスの改善も不可欠だ。これらが改善されなければオーストラリアへの初期探鉱の競争力はますます失われることになるであろう。

図1 Rio Tinto社の初期探鉱費の推移
図2 Rio Tinto社の鉱山周辺探鉱費の推移

2. アジア・アフリカ地域で活動するオーストラリアのジュニア探査企業

 近年のオーストラリア探鉱・鉱山企業の成功例として、ラオスでの金・銅プロジェクトを進めるOxiana社をあげる鉱業関係者が多い。今回のセミナーでも国内各州で金・ベースメタルなどの探査を行うジュニア探査企業に加え、海外のフロンティア地域で探査活動を行っている企業の参加が注目されていた。

(1) パキスタン -銅- Tethyan Copper Limited
 Tethyan社は2003年にASX上場、パキスタン西部Reko Dig地域(Saindak銅・金鉱山の東約50km)でTanjeel銅・金プロジェクト等を実施中。  同地域の鉱床はポーフィリー銅・金型で輝銅鉱に富み、資源量(Reko Dig地域)1,213百万t・銅品位0.58%・金品位0.28g/t、埋蔵量(Tanjeel銅・金プロジェクト)128.8百万t・銅品位0.7%。
 同社はF/S調査(Bankable F/S)を2005年中に完了させたいとしているが、現在のところバクテリアリーチングを用いたSX-EWによる銅カソード生産4.5万t/年、鉱山寿命16年を計画している。なお、同社は、1993年にBalochistan政府と探査JVに合意、2002年にはBHP Billiton社と探査連携合意を結び探査活動を行った(75%権益取得、BHP Billiton社は一部権利保留)。

(2) ラオス -亜鉛・鉛・銀- Rox Resources社
 Rox Resources社は、ラオス北部(Pan Australia社のPhu Bia鉱山の北西)に位置するPha Luang地区でミシシッピー・バレー型の亜鉛・鉛鉱床を対象に探査を実施中。地表部には酸化亜鉛・鉛鉱化帯が走向方向10km、垂直方向800mにわたって確認されており(亜鉛50%以上、鉛60%以上)、2005年実施したボーリングでは鉱化部(幅17.5m・Zn 18.5%、Pb 5.3%、Ag 28ppm)を捕捉している。同社は、資源量20百万t、亜鉛・鉛品位10%以上の鉱床を発見したいとしている。

(3) タイ王国 -金- Kingsgate Consolidated Limited
 Kingsgate社は、金を中心とした探査・採掘企業で、タイで唯一の近代設備を有すると言われるChatree金鉱山を保有、年間操業している。
 2001年11月から2005年6月までの総生産量は金52万oz、銀1,500万ozを超え、平均現金コストは129USドル/oz、現在、年間金125~150千oz、銀350千ozレベルで生産継続中。
 同社は、鉱山周辺及び隣接地域で探査活動を継続中で、資源量 金3百万oz・品位1.9g/t、銀23.7百万oz・品位15g/t、埋蔵量 金1.5百万oz・品位2.0g/t、銀12.7百万oz・品位17g/tを獲得している。

(4) コンゴ共和国 -銅・金- Anvil Mining Limited
 Anvil Mining Limitedは、貴金属の探査・採掘を行う企業で、Dikulushi 銅・銀鉱山の権益90%(コンゴ共和国)のほかザンビア、ベトナム等に探査鉱区を保有。
 Dikulushi鉱山の開発第1ステージでは、2002年10月に生産を開始し、2003年2月には銅1.4万t、銀90万ozの計画能力に到達。
 第2ステージでは、露天掘、年間銅2万t、銀1.8百万oz、操業期間4年間の拡張計画が、第3ステージでは、坑内掘の計画が検討されている。
 同鉱山の精鉱は、トラックでザンビア、南アフリカのPalabora製錬所、ナミビアのOngopolo製錬所に輸出されている。

(5) メキシコ -金- Bolnisi Gold NL
 Bolnisi Gold NL社は、チワワ州(Chihuahua)でPalmarejo金・銀プロジェクトを実施中。
 同鉱床は低硫化系熱水鉱床で、資源量 金3.1百万oz・金品位1.48g/t・銀品位208g/t。計画では2007年初から年間金11万oz、銀11百万oz、現金コストは200USドル/oz以下で生産する予定。更に走向方向に深部探鉱を実施して鉱量の拡大を図る。

(6) その他
 その他にも、グルジア(Madneuli鉱山金リーチングJV(50% Quartzite Ltd.)、とBolnisi地域探査JV(50% Trans Georgian Resources Ltd.)等の金・銅プロジェクト、Bolnisi Gold NL)、フィンランド(Kylylahiti銅・コバルト鉱床、Kuhmo硫化ニッケル・銅鉱床、Vulcan Resources Limited)、フィリピン(Didipio・Dinkidiポーフィリー銅・金プロジェクト、Climax Mining社)、中国(Jinfeng金鉱床プロジェクト、Sino Gold Limited)などの探査活動が紹介されていた。

3. オーストラリア証券取引所(ASX;Australian Stock Exchange)における資源関連企業

 ASXの上場企業数は1,640社(2005年6月30日時点)、時価総額(Market Capitalization)は約9,750億豪ドル。時価総額上位10社のうち、鉱山会社は2社(BHP Billiton社とRio Tinto社)含まれている。
 ASXの時価総額に占める資源関係企業の割合は19%、第1位のファイナンス関係企業は45%であるが、上場企業数では資源関係企業が全体の32%を占め、ファイナンス関係企業の17%を大きく引き離している。
 また、資源関係企業のうち、ジュニアとメジャーとの割合は、時価総額ではメジャーが96%を占めるが、企業数ではジュニアが81%を占めている。

図3 ジュニア vs メジャー(ASX時価総額)
図4 ジュニア vs メジャー(ASX上場企業数)

4. ウラン討論会「The Uranium Debate: World Demands Grows - is Australia’s mood changing?」

 セミナーの最終日に、ウラン鉱山経営者、環境団体、ウラン探査ジュニア企業が参加して、ウラン討論会が行われた。
 論点は、「(1) ウラン資源の将来、(2) オーストラリアにとってウラン鉱業は必要か否か、(3) 核廃棄物処分のありかたとウラン輸出国オーストラリアの取るべき態度、(4) オーストラリアのウラン業界への提言」等であった。
 ウラン資源の将来について、パネリストらは、「気候変動(地球環境問題)の解決策のひとつの選択肢としてのウラン資源の可能性と一般市民の原子力エネルギーとウラン資源への態度の変化」を指摘した。
 次に、オーストラリアにとってウラン鉱業は必要か否かについては、パネリストらが、「先進国でウランの主要輸出国であるオーストラリアはウラン生産国の中でもユニークな存在」とのウラン開発推進の立場の議論が展開され、参加者からも、「気候変動が深刻な問題であるならば、全世界の40%のウラン資源を保有するオーストラリアはウラン開発推進の立場で貢献すべき」との意見が出された。
 また、核廃棄物処分のありかたとウラン輸出国オーストラリアの取るべき態度に関しては、「いかなるエネルギー資源でも廃棄物は発生するのであって、核廃棄物も一般の廃棄物と同列に考えるべき」とのパネリストの意見のほか、核廃棄物の受入れが議論されている背景もあり参加者からは「多くの国民はウランを輸入した国が処理すべきと考えていると思う」との率直な意見がだされた。
 最後にオーストラリアのウラン業界への提言として、パネリストらから、「産業界は一般市民がウラン産業に不信感を抱いていることを認識すべきであり、一般市民も議論の輪の中にいれるべきだ」とする意見や、「一般市民に対してより一層の教育啓蒙活動の実施、諸規制の透明性と一貫性の実現を図らなければならない」との意見がだされた。

5. おわりに

 数多くの鉱山とジュニア探査企業が存在する資源大国オーストラリアは、一方で、長期的に鉱床探査における国際競争力(全世界における探鉱費シェアの減少)に直面している。その原因として潜頭鉱床探査や土地アクセス、ウラン開発に見られる政策上の問題などがあると言われる。
 今回のセミナーでも、多くのジュニア探査会社が海外での探鉱を進める現状にその一端を垣間見ることが出来る。他方、州政府による鉱業支援プログラムやウラン資源開発を考える討論会など現状を打開しようとする取組みも見られた。

参考)ウラン討論会における質疑応答
(1) パネリスト
  1.Mark Chalmers -Senior Vice President, Heathgate Resources社(operator of Beverley mine, SA
  2.Paul Guilding -Ecos Corporation; former director of Greenpeace International
  3.Neil Arthur -Executive Chairman, Uranium Exploration Australia Ltd.
  4.Alistair Stevens -Managing Director, Arafura Resources (NT) 社
  5.Leon Pretorius -Executive Chairman, Deep Yellow Ltd.
(2) 討論
問:ウラン資源の将来は?

Paul Guilding(以下、PG): ウランに対して、気候変動(地球環境問題)への解決策となる経済的な力となるとの認識が一般市民の態度に変化を生じさせ始めている。ウランは、地球環境に対応するエネルギー産業界の根本的な構造変化をもたらすであろう。
Alistair Stevens(以下、AS): ウラン鉱業への圧力は、エネルギー不足に悩む国々から来るものであり、原子力発電はエネルギー・リスクを最小化し、エネルギー資源のもたらす恩恵をバランスさせる。
Leon Pretorius(以下、LP): 投資家や政治的感傷に変化が起きている(ここ何年間でウランに関わる会社は1社から70社に増加したことは特筆すべき)。ウランをめぐる議論で過去と現在で異なるのは専門家が減ってしまったことで、ウラン産業における専門家不足は高価な代償を支払うことにつながる。

問:オーストラリアにウラン鉱業は必要か?

Mark Chalmers(以下、MC): 先進国でウランの主要輸出国であるオーストラリアは、ウランの利用についてルールを決めることの出来る立場にあるウラン生産国の中でもユニークな存在。
Neil Arthur(以下、NA): 将来に対するエネルギー供給とその責任の観点から、オーストラリアでのウランをめぐる議論を整理するのに役立つ。
参加者: もし、気候変動が深刻な問題であるならば、全世界の40%のウラン資源を保有するオーストラリアの選択の余地は少ない。

問:核廃棄物反対派への最善の対処法は何か?

PG: 産業界は一般市民がウラン産業に不信感を抱いていることを認識すべき。一般市民も議論の輪の中にいれるべき。

問:核廃棄物処分の解決方法はあるか?

MC: 感情の問題。いかなるエネルギー資源でも廃棄物が発生することを認識すべきである。
核廃棄物も他の廃棄物と同列に考えるべき。

問:核廃棄物はウラン輸出先で処分すべきかオーストラリアへ戻して処分すべきか?

参加者: ウラン生産者のようにオーストラリアは核廃棄物の管理に対して責任を負うべきと考える人もいるが、参加者の多くはウランを輸入した国が処理すべきと考えていると思う。
MC: ウランに関する議論は30年以上に及ぶが、原子力エネルギーの問題は例外。チェルノブイリ事故は異常。

問:労働党の将来のウラン政策は何か?

PG: 労働党の考えは一貫していない。ビジネス界や地球環境の変化に対する一般市民の反応にも影響されている。

問:(ウラン資源)業界への提言は何かありますか?

PG: 近年、鉱業界は一般市民と疎遠になっている。もっと一体となっていくべきである。
MC: 一般市民の考えを変えるには、より一層の教育啓蒙活動の実施、諸規制の透明性と一貫性の実現を図らなければならない。

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