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報告書&レポート

2005年11月10日 メキシコ事務所 権藤 浩 e-mail:jogmec@prodigy.net.mx
2005年77号

第26回メキシコ国際鉱業大会(Expomin 2005)報告-資源機構:講演と ブース初出展で参加-

 1995年以来、隔年(2年に1回)毎に開催されている「第26回メキシコ国際鉱業大会(Expomin 2005)」が、2005年10月12日から15日の4日間、メキシコ合衆国ベラクルス市WTC(ワールド・トレード・センター)において、3,500名を超える参加者により盛大に開催された。
 当大会は、メキシコ鉱山金属地質技術者協会(AIMMGM)が主催し、メキシコ経済省ほか政府関係者、鉱山メジャー・ジュニア企業に限らず、鉱山機械メーカー、装置メーカー、学識経験者、技術者等、幅広く鉱業関係者が一同に介し、メキシコ国内を中心に南北アメリカ大陸をはじめ世界各国からの参加者により、鉱山、金属、地質、一般トピックに関する講演会やパネル、併設の181機関による展示による商談・紹介等が行われた。
 資源機構としては、JV共同探査事業制度の紹介、メキシコ鉱業事情に関する情報収集、メキシコ鉱業関係者との連携強化等を目的に、金属資源探査推進グループリーダー森脇久光氏による演題「Japan’s metal mining policy and the role of JOGMEC」の講演及び資源機構展示ブース出展を行ったので、その結果を報告する。

1. 講演会場

 10月12日は大会場での開会式、13日と14日の2日間は、大会場、小割4会場及びロビーに分かれて、基調講演、鉱山、金属、地質、一般情報に関する各種講演会、各種パネル掲示が行われた。
 12日の開会式では、大会総責任者兼メキシコ地質調査所技術統括官ゴメス氏から開会挨拶、フォックス大統領名代としてメキシコ経済省オルティス鉱業総調整官(次官級)来賓挨拶が行われた。
 13日~14日、基調講演(以下)、各種講演会(プログラムは文末掲載)、パネル掲載(プログラムは割愛)が開催された。
 本稿では、その中の主な講演内容について紹介する。
<基調講演プログラム>
・13日9:00 「進化する世界で天然資源は再生しない」
    メキシコ地質調査所エスカンドン長官
・14日9:00 「危機への備え」
    メキシコ・ペニョーレス社ハイメ・ロメリン社長
・14日9:45 「危機管理オペレーションと戦略」
    チリ・コデルコ社リカルド・トロンコーソ氏

(地図:メキシコ合衆国ベラクルス市)
(写真1:会場玄関に日本を含めた参加各国の国旗掲揚)

(1) 基調講演:危機への備え(メキシコ・ペニョーレス社ハイメ・ロメリン社長)
 世界最大の産銀企業であるペニョーレス社ロメリン社長から、今後の鉱業界全体の持続的発展のために、今後の対応すべき課題について次の3点の講演があった。
1. 金属価格の低迷時に企業経営が維持できる企業体質の強化
 近年は金属価格高騰・高水準化の影響により企業収益は上昇、今後は需要に見合った供給体制の維持に向け、取引企業間とのコンセンサス作りを強化し、コンペティターと競争できる企業体質を作ることが重要。以下のとおり、メキシコでの探鉱費も2002年を底に上昇。ペニョーレス社は、売上に対する利益を現状7%から今後14%確保できる体制を目指す。

<メキシコの探鉱費の推移> (単位:百万USドル)
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
191
159
127
112
61
41
56
94

2. 先住民問題への対処
 南米、豪州に限らず、メキシコ(特に南部)でも先住民問題への対応は重要な課題。昔と違って、地域コミュニティ・地元住民への利益享受・雇用効果等のメリットにつき十分に説明を行い、地元市町村とも協力しつつ鉱山開発への課題克服を行う「一般的ルール」の作成が重要。また、問題が発生したら、時間をかけて、根気強く問題解決に取組むことが必要。
3. 鉱山開発専門家等の人材育成強化
 世界的には、将来、約8万人の技術者不足が懸念されており、メキシコでは2000年の金属鉱山開発技術者のうち大学卒業者は12人しかいない。鉱業全体では、2000年約200名から2005年250~300名の大学卒業者の中で、地質学専門家は増加しているが、研究開発を含めて鉱山開発技術者の人数は減少しており、大きな問題。
 社会のグローバル化の中、環境問題への対応まで含めて、鉱山開発全分野で専門性や雇用機会確保が必要。我々企業においても、鉱山開発は環境破壊産業や3K産業でなく、安全で有益な事業との説明が必要。
○ 主な質疑応答
 ・人材育成に関して、会場から、国の理解・協力を得ながら、小・中学校からテキストを用意し、セキュリティ確保、イメージ払拭により、鉱業界の真の素晴らしい絵姿を示すことが必要との指摘に対して、ロメリン社長は、更に市町村レベル教育やメディアを使ったPRが必要と賛同し、鉱業のメキシコGDPに占める割合は現在1%であるが、今後2~3%を占める可能性のある重要な産業であると紹介。
 ・会場から、博士号取得者に対する企業ニーズへの質問に対して、ロメリン社長は、メキシコ大学生が世界に通じるような大学教育が必要で、企業もリクルートシステム変更、企業内研修強化を図るべきと回答。これを受け、更に会場より、企業雇用の実態にはあまり平等性が無い(メキシコは親族・縁者採用が多い)との意見も見られた。

 
(写真2:Expomin会場)
(写真3:ぺニョーレス社ハイメ・ロメリン社長)

(2) メキシコ鉱業法改正に関する講演
 2005年4月28日に法案成立した鉱業法に関して、主な法改正内容は以下のとおり。
 なお、鉱業関係法規は経済省が所掌し、鉱業の環境規制は環境省が所掌。今後、半年以内に施行規則を整備、更にその後、環境法規を環境省と調整して整備する方向。
1.経済省外局組織である鉱物資源審議庁(Consejo de Recursos Minerales:CRM又はCOREMI)をメキシコ地質調査所(Servicio Geologico Mexicano)に改称しメキシコ地質情報の提供機関としての位置づけを明確化。
2.探鉱権を削除し一括して採掘権とし、採掘権は従前同様50年以内で50年まで再延長可能。
3.インディオ共同体や先住民等の地元住民の権利を鉱業権よりも優先。
 ただし、採掘権料については別途に財政法整備が必要であり、その間は、従前の鉱業法(探鉱権と採掘権を分離)が有効との説明であった。なお、採掘権料は、所有面積の大小により多段階区分した単価を所有面積に乗じた額とする方向で検討中とのこと。

(3) 森脇久光資源機構金属資源探査推進グループリーダー講演
 「JAPAN’s metal mining policy and the role of JOGMEC」と題し、JBES(Joint Basic Exploration Scheme)を中心テーマに、資源機構としては銅、亜鉛、ニッケルのJV共同探査事業との制度紹介を行った。

 
(写真4:講演中のJOGMEC森脇GL)
(写真5:初出展のJOGMECブース)

2. 展示会場

 12日から15日まで4日間、メキシコを中心に世界各国より181機関が出展した。資源国メキシコを中心とした大会であり、鉱山機械メーカー、装置メーカー、電気メーカー、繊維メーカー等の鉱山開発に主眼を置いた出展が多くを占めたが、メキシコ経済省・州政府機関、大学、地質図販売店、広報誌販売店等の出展や、来訪者にはカナダ探査企業等も多く見られた。
 資源機構出展ブース訪問者については、JV共同探査事業等の探査段階の施策に限らず、鉱山保安対策ポスター、メキシコ・チサパ鉱山(ビデオ放映)等への質問も数多く受けた。

3. 今後の予定

 次回の「第27回メキシコ国際鉱業大会」は、2007年10月にメキシコ・モンテレー市において開催される予定。

最後に

(1) 本大会は、2年に1度、メキシコ鉱業関係者を中心に世界から関係者が一同に介し、講演会と展示会の2大企画により開催される国際鉱業大会であるが、2005年は記録的なメキシコ湾へのハリケーン襲来の影響があり、参加者数は事務局見込4,000名には及ばなかったものの、2,000名を超える参加者により盛大に開催された。
(2) 講演会については、メキシコに限らず、豪州、チリ、ペルー等から講演があり、内容的には、メキシコ国内の鉱業事情を中心に、メキシコ鉱業法改正、持続可能な鉱山開発、メキシコ国内外の主要企業の動き、メキシコ主要鉱山開発状況、メキシコ地質状況等、鉱業政策から鉱山開発・探査・地質まで幅広く鉱業全体に亘るプログラムであった。資源機構もJBIS制度紹介等の講演スピーチを実施した。
 特に、ペニョーレス社ロメリン社長の基調講演では、世界的に鉱山技術者不足の中、メキシコでの鉱山開発専門家の育成が重要と産学連携強化を標榜する説明があったが、一方で、メキシコは貧富の差が大きい社会であり、企業雇用では親族・縁者関係の雇用が優先される現状において、大学教授からは学識経験者の就職機会の平等性を確保すべきとの意見は、厳しいメキシコ就職事情の実態を如実に表した講演内容で大変興味深かった。
(3) 展示会については、資源機構金属資源関係部署としてブース初出展、アジアからの参加国は日本だけであり、日本の動きにメキシコ経済省ほか政府関係者等から好意的に受け止められた。また、展示内容は2005年1月のバンクーバー市のRoundup 2005や3月のトロント市で開催されたPDAC 2005(Prospectors and Developers Association of Canada)といったカナダの鉱業大会がメジャーやジュニア企業の探鉱・開発プロジェクトに主眼が置かれているのに比べ、今回のイベントは、資源国メキシコの特徴を反映し、機械・装置メーカー等と具体的商談を行うなど現地フィールドに主眼を置くものであった。
 資源機構ブースについては、カナダ等の探査会社の訪問者があり、JV相談も数件あった。ポスターは、生産段階での施策に限らず鉱山保安への質問も数多く受けた。
 また、展示ブースでビデオ放映したメキシコ・チサパ鉱山(同和鉱業㈱、住友商事㈱、ペニョーレス社出資によるメキシコ現地法人が操業中)は、資源機構(MMAJ後身)も探査段階で参画した日墨官民共同事業であり、従前その事業に携わった片言の日本語を話す来訪者も散見され、今回の展示により、資源機構の知名度・親近感が高まったと感じられた。
(4) 今回、資源機構は講演会と展示ブースで参加し、JV共同探査事業制度の紹介、メキシコ鉱業事情に関する情報収集、メキシコ鉱業関係者との連携強化等の所期の目的を達成し、併せて資源機構の知名度が高まったことは有意義であった。

(参考)技術講演会プログラム
【10月13日】
<Enrique会場>
10:30 「メキシコ市西方にある旧鉱山の開発方法とその結果」メキシコ市政府
11:00 「チリ坑内掘鉱山における長いドリル掘削技術、成果、応用」Atlas Copco Chilena
11:30 「Cruz Azul社の青石灰石埋蔵量の再評価」Cruz Azul社
12:00 「坑内掘、充填採掘、生産計画」ペニョーレス社
13:00 「破砕改善によるダメージ最小の精密シーケンス起爆」チリ・Orica社
13:30 「Distrito San DImas鉱区におけるインフラ工事の増進と標準化」ルイスミン社
14:00 「鉱業と持続的開発」コアウイラ州政府
14:30 「鉱業と社会の連携、持続可能な鉱山開発への協調」ペルー・エネルギー鉱山省
15:00 「2005年鉱業法改正」Sanchez Mejorada, Velasco y Ribe社 <Alicia会場>
10:30 「環境情報に対する権利」アルゼンチン・ラプラタ大学
11:00 「鉱業ビジネスの持続性」Arcadis Geotecnias11:30 「スラッグ重力選鉱によるドーレ鉱山での金回収」ペンモント鉱山会社
12:00 「鉱業廃棄物の粒状物質(Jales)のセラミック摩擦特性」国立核物質研究所(ININ)
13:00 「蛍石の浮遊選鉱、コレクター対ディプレッサー」コアウイラ大学
13:30 「硫酸プラントで生じる弱酸性泥のビスマス・リーチング」ソノラ大学
14:00 「高純度鉄含有の亜鉛鉱石のバイオリーチング」ペニョーレス社
14:30 「シアン溶液からイオン交換Aurix100による金回収」ソノラ大学
<Carmelo会場>
10:30 「ドゥランゴ州火成ゼオライトの重要サイト」メキシコ地質調査所(SGM)
11:00 「メキシコの地質構造」メキシコ地質調査所(SGM)
11:30 「還元スカルン金鉱床、ゲレロ州北モレーロスプロジェクト」テック・コミンコ社
12:00 「メキシコのポーフィリーカッパー要約」メキシコ国立自治大学
13:00 「自治体の鉱物資源目録」メキシコ地質調査所(SGM)
13:30 「メキシコの坑内可燃性ガスのロス」メキシコ経済省
14:00 「エラドゥーラ金露天掘鉱山の鉱床地質学」ペンモント鉱山会社
14:30 「メキシコ中央北部のMTV鉱床の流動鉱床形成学」メキシコ国立自治大学
 <Alfonso会場:第2回メキシコ豪州鉱山技術セミナー>
10:30 「メキシコ経済省プレゼン」メキシコ経済省オルティス鉱業総調整官
10:40 「歓迎-メキシコ豪州ビジネス関係」駐メキシコ豪州大使
10:50 「Kings Minerals-メキシコプロジェクトと優位性」グアナファトKings Minerals社
11:10 「Electrometals-電解製錬技術」Electrometals社
11:30 「Minecom-坑内掘鉱山の連携」Minecom社
11:50 「Micromine-鉱山保安技術」Micromine社
12:10 「Orica-21世紀の火薬技術」Orica社
13:00 「Bolnisi Gold-メキシコでの応用技術」Bolnisi Gold社
13:20 「Nickel Australia」Nickel Australia社
13:40 「JK Tech Pty Ltd-簡易浮遊選鉱技術」JK Tech社
14:00 「Xstrata Technology-銅電解技術と豪墨技術移転」Xstrata Technology Americas社
14:20 「Ausenco-金属成功プロセス」Ausenco Americas社
14:40 「豪州鉱山技術産業の要約」豪州貿易委員会(Austrade)

【10月14日】
 <Enrique会場>10:30 「露天掘鉱山の帯水層の管理」Rio Escondido石炭会社
11:00 「破砕における高細破砕性」Mexicana de Cananea社
11:30 「Uchucchacua坑内掘鉱山の深度化計画と分析」Buenaventura社
12:00 「都市でのボーリング・発破使用のトンネル設計」グアナファト大学
13:00 「ラ・カリダ鉱山の地質資源統計分析」Mexicana de Cobre社
13:30 「リスク、事故削減のための技術応用」ルイスミン社
14:00 「サンタクルス鉱山(ミルピージャス)の立坑建設」ペニョーレス社
14:30 「サンプリングの手法と道具」メキシコ地質調査所(SGM)
<Alicia会場>
10:30 「微細硫化鉱物から金銀回収の高度浮遊選鉱技術」サンルイスポトシ大学
11:00 「浮遊選鉱からのモリブデン精鉱の砒素汚染管理」Mexicana de Cobre社
11:30 「シアン使用前の金銀砒素精鉱バイオリーチング研究」メキシコ地質調査所(SGM)
12:00 「シアン代替でデキストリン使用による黄鉱分解」サンルイスポトシ大学
13:00 「溶解砒素排除のためのオゾン分解法」CINVESTAV大学
13:30 「銅湿式製錬プロセスでの電気効率向上」Mexicana de Cananea社
14:00 「選鉱プロセスのための金属同定の応用」サンルイスポトシ大学
14:30 「コラム浮遊選鉱プロセスの大胆シミュレーション」CINVESTAV大学
 <Carmelo会場>
10:30 「タマウリパス州ペリドリト鉱脈露出地質同定と経済性評価」SGM、ヌエボレオン大学
11:00 「コアウイラ州石炭地方におけるOlmos構造調査」コアウイラ大学
11:30 「アダカイトと銅及び金鉱物:ゲレロ州メスカラ鉱区の例」メキシコ国立自治大学
12:00 「メキシコにおける天然ゼオライトの技術と研究」Dicalite de mexico Adsorbentes社
13:00 「鉱業権者にとって有益な単独採掘権」Miranda & Estavillo社
13:30 「都会型モンテレープラントの解決策」LAFQA社
14:00 「サカテカス州北部の交替鉱床モデルと探査での応用」メキシコ地質調査所(SGM)
14:30 「潜熱性鉱床の起源」メキシコ国立自治大学
15:00 「メキシコ南方のチアパス州Ixhuatanの金銀と金銅埋蔵」Linear Gold社
<Alfonso会場>
10:30 「日本の金属鉱業政策とJOGMECの役割」日本・JOGMEC
11:00 「脱水オペレーションと露天掘の化学管理」Water managementコンサルタント社
11:30 「Alamos Gold社の金生産」Alamos Gold社
12:00 「メキシコ・ゲレロ州のポーフィリー・スカルン金鉱床」Paradex社
13:00 「Campo Moradoプロジェクト」Farallon resources社
13:30 「メキシコにおける中世から最近までの金属の歴史」テキサス大学
14:00 「露天掘採掘での安定勾配」グアナファト大学
14:30 「放射線産業の化学処理対策」コリマ大学

以上

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