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報告書&レポート

2005年11月17日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2005年81号

国際鉛亜鉛研究会第50回年次総会概要報告

 国際鉛亜鉛研究会の第50回年次総会が2005年10月26~28日に英国ロンドンにおいて開催された。同総会では、世界31か国・地域(加盟国・地域25、オブザーバー国6)、国際機関等から約100人の鉛・亜鉛関係の政府・民間関係者が参加し、鉛・亜鉛の需給の現状と展望、産業動向、環境問題等について、講演やパネルディスカッション、研究会の下に設けられた委員会からの活動報告等が行われた。例年の鉛・亜鉛需給の現状と展望に加えて、特に通常と異なる話題としては、金属関係の3つの国際研究会(国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会、国際ニッケル研究会)の合理化に伴う本部・事務局のポルトガル・リスボンへの移転、3研究会統一の事務局長の選定プロセス、スタッフ問題等について、その進展が確認された点があげられる。主な会議の成果としては、以下のとおり。

統計予測委員会

鉛の2005年・2006年展望
 バッテリー生産の更なる増加を主因として、中国の鉛地金需要が2005年19.8%増、2006年8.7%増となるなど、世界の鉛地金消費は、2005年3.9%増の745万t、2006年3%増の766万tとなる見込み。欧米の消費傾向には異なる傾向が見られ、欧州では2005年2%減、2006年0.5%減と更に減少する一方、米国では2005年2%増、2006年1.3%増と部分的な回復が見込まれる。
 世界の鉛鉱山生産は、豪州、中国、インド、ロシア、南ア、スウェーデンの増産により、2005年8.1%増の333万t、2006年は更に3.4%増の344万tとなる見込み。
 世界の鉛地金生産は、2005年7.6%増の737万t。これは、主に中国、インド、韓国の増産、欧州がフランス、ドイツの減産を上回るベルギー、ブルガリア、英国の増産で6.6%増となることによるものである。世界の鉛地金生産は、中国、インドの生産拡大、カナダ、カザフスタン、モロッコの増産により、更に2006年3.4%増の762万tとなる見込み。
 2006年末までに、米国国家備蓄の鉛地金は、全て売却される見込み。米国国家備蓄の鉛地金売却は、1993年の開始以来、年間平均4万t超であった。中国の精鉱中の鉛含有純輸入量及び鉛地金純輸出量は、2005年、2006年ともそれぞれ45万t程度に留まる見込み。
 加盟国からの最新情報を勘案した結果、研究会は、西側世界の鉛地金需給は2005年7.9万tの供給不足、2006年5.1万tの供給不足と予測する。

亜鉛の2005年・2006年展望
 2005年の亜鉛地金消費は、中国9%増、インド9.2%増、韓国6.4%増となる一方、米国10.5%減、欧州4%減でバランスされ、世界の亜鉛地金消費は、2004年と同レベルの1,052万tとなる見込み。しかしながら、2006年は全ての地域で増加し、5.7%増の1,112万tとなる見込み。中国の亜鉛地金消費は、2006年は更に9.8%増加、メッキ鋼需要の継続的急増によるもので、この中国メッキ鋼需要は1984年から2004年で、年間50万tから1,000万t超に成長したと推計されている。
 世界の亜鉛鉱山生産は、2005年3.6%増の1,005万t、2006年更に4.2%増の1,047万tとなる見込み。この増加は、主に豪州、中国、インドにおける生産拡張と新規生産によるものである。唯一大幅な減産を予想している国はカナダで、これは2004年末のBell Allard閉山、2005年初めのBouchard-HebertとLouvicourtの操業停止によるものである。
 世界の亜鉛地金生産は、欧州における減産にもかかわらず、2005年1.5%増の1,029万t、2006年3.5%増の1,065万tとなる見込み。この増加は、主に中国やインドにおける生産拡張によるものであり、特にインドは、Chanderiyaにおける年産17万tのリファイナリーが完成したこと等により2005年54%増、2006年更に29%増と大幅増加を見込んでいる。中国では、LanpingとJiyuanにおける年産10万tのプラントを含む多くの新規リファイナリーが生産開始し、2005年4.4%増、2006年4.6%増が見込まれている。
 2004年の中国亜鉛地金輸入は、1988年以来初めて亜鉛地金輸出を上回った。2005年、2006年において中国の亜鉛地金の純輸入量は増加しつづける見込みであり、最近の主な輸入先はカザフスタンとなっている。
 加盟国からの需給、貿易、米国国家備蓄からの放出を勘案した結果、研究会は、西側世界の亜鉛地金需給は2005年27.2万tの供給不足、2006年43.0万tの供給不足と予測する。
 この他、統計予測委員会においては、亜鉛生産者・消費者としてのベトナム亜鉛産業(近年、亜鉛鉱山年産4万t超、新規電気亜鉛製錬所建設が進行中)、モロッコ鉛亜鉛産業(2004年含有量ベースで、鉛精鉱生産4.6万tでアフリカ第1位、亜鉛精鉱8.7万tでアフリカ第2位)に関する講演、国際金属研究会におけるリサイクル・プロジェクトの進捗状況(全てのベースメタルやスチールに使用され得る主要リサイクル率の定義を2005年6月に最終決定、今後は現実に即したこれらリサイクル率の計算方法の開発が検討される予定)等の報告が行われた。

経済環境委員会
 経済環境委員会では、まず、元LME Directorで、元Rio Tionto社の主席エコノミストで著名なDundee大学Crowson教授によるメタル産業や市場に関する展望についての講演があった。Crowson教授によれば、現在の消費急増は、過去のサイクルと異なるスーパーサイクルと呼べるものではなく、これも周期的なものである。供給が対応していくために投資(グロスで鉛20万t、亜鉛50万tの供給能力増大)の必要性が強調され、また高価格により代替を招く危険性が指摘された。
 またCrowson教授も参加し、鉛亜鉛における東アジア(中国、香港、台湾、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の重要性の高まりに関してパネルディスカッションが開催され、研究会事務局より、僅か10年でその地域の世界シェアが、鉛消費で12%から27%、亜鉛消費で16%から30%、鉛地金生産で11%から30%、亜鉛地金生産で15%から50%、鉛鉱山生産で17%から31%、亜鉛鉱山生産で15%から24%となり、今後も新規鉛亜鉛鉱山や製錬所の計画が進行中であることが紹介され、その重要性に関する再認識が示されるとともに、日本のエムエスジンクの大川氏より東アジアの需給動向についてのプレゼンも行われた。またパネルでは、東アジアにおける需要増加によりもたらされた世界需要の高まりは、過去のサイクルと同様に周期的なものであり、アジアの鉛亜鉛需要と供給能力の間のタイムラグの存在が指摘された。
 EU環境規制と欧州鉛亜鉛産業に与える影響に関して、鉛・亜鉛のリスク・アセスメントに関する情報アップデートと議論(リスク・アセスメントは、金属の生物有用性に関する健全な科学の使用に基づくものであるべきとの意見表明とそれへの賛同等)、採掘産業廃棄物に関するEU指令に関する講演と議論が行われた。また、事務局から、これまでの汚染防止とリサイクルに関するEU廃棄物政策の全体的なレビューのための枠組みを提供するEU主題戦略(Thematic Strategy)、UNECE重金属タスクフォースの動き(水銀、鉛、カドミウムとこれを含有する製品に関する議定書を策定し、その措置をレビュー、将来、銅、亜鉛、ニッケル等も対象とする議論あり)、OECD廃棄物マネージメント・グループによる議論、新EU化学政策(REACH)の欧州議会での検討状況、REACHにおける精鉱や合金、二次材料に関する問題、2006年第1四半期にREACH規制が最終承認となる可能性等についても報告された。
 この他、BME社の非鉄金属価格モデル(在庫、工業生産成長、為替レート変動を要因としたモデル)、亜鉛メッキ市場や米国バッテリーリサイクルについての講演も行われた。

鉱山精錬プロジェクト委員会
 鉱山精錬プロジェクト委員会では、イランの鉛亜鉛産業(亜鉛地金生産が1994年の0から2003年10万t超、今後の多くの新規プロジェクトの例として、Zanjan製錬所では亜鉛地金年産10万t、Mehdiabad鉱山では亜鉛年産15万t、鉛年産7万tとなる予定)に関する講演が行われた後、同委員会で実施中の新規鉱山・製錬所プロジェクトのデータベース作成状況が報告された。この他、2005年における鉛亜鉛鉱山、精錬所の新設・閉鎖・拡張のレビューが行われた。

産業アドバイザリーパネル
 産業アドバイザリーパネルでは、パネルメンバーによる鉛亜鉛市場動向、需要成長や産業が懸念する政策等についての討議のほかに、中国の鉛亜鉛産業の最近の動き(中国は、世界最大の鉛亜鉛生産国で、最大の地金輸出国、最大の精鉱輸入国で、近年の生産と消費の伸びは著しく世界の鉛亜鉛市場に大きな影響があるものの、その鉱山やプラントは規模が小さいものが数多く存在し、その実態がよく知られていない、今回は中国非鉄産業協会CNIAからの情報に基づく研究会事務局の報告)、東欧のメッキ産業、BHP Billiton社のプロダクト・スチュワードシップについての講演等が行われた。

常任委員会
<予算及び分担金、事業計画等>
 3研究会(国際鉛亜鉛研究会、国際銅研究会、国際ニッケル研究会)の合理化プロセスの成功により、国際鉛亜鉛研究会の2006年予算は33.4%減と大幅減となることが報告された。また、分担金延滞国の延滞状況と新規加盟の見通し、事業計画について説明が行われ、予算及び事業計画については、事務局案が了承された。

<研究会の合理化問題>
 事務局の物理的な移動(1月6日頃を目処)、ITシステムの統一、ポルトガル政府との3研究会とのHeadquarters Agreementの交渉状況(最終案がまとまり11月14~15日の特別会合で決定予定)について報告があった。
 統一事務局長の選定プロセスとして、これまで1次ショートリストで10名、2次ショートリストで6名の候補者に絞られ、11月2~4日の選定委員会の面接で3名の候補者を選定、11月14~15日の特別会合で最終決定するとの予定が説明された。
 スタッフ問題としてスタッフの家賃補助等のスタッフ就業規則の議論が行われ、国際鉛亜鉛研究会の現事務局スタッフとしては主任統計官と主任経済環境担当がリスボンへの移転後もその職務に留まる予定との報告があった。

総会
 総会では、オープニング・セッションとして、ICMM事務局長のPaul Mitchell氏から「鉱業と経済開発への挑戦」、Lundin Mining社CEOのKarl-Axel Waplan氏から「亜鉛-将来性高い金属」と題する基調講演が行われた。また、研究会の最後に、各国声明、各委員会委員長による報告の後、役員の選出等が行われた。
 今後の会合予定としては、3研究会統一の事務局長選出のための第2回特別総会を11月14~15日にリスボンで開催、定例の春季会合(常任委員会、経済環境委員会、産業アドバイザリーパネル)を2006年5月15日~リスボンで、来秋の総会は2006年10月2日~リスボンで開催する予定と報告された。

以上

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