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報告書&レポート

2005年12月8日 アルマティ事務所 酒田 剛 e-mail:jogmec@nursat.kz
2005年89号

ウラン鉱山開発分野における日本-カザフスタン協力-官民合同ミッショ ン、カザフ政府関係者らとのハイレベル協議で合意-

 11月21日、日本とカザフスタンはウラン鉱山開発分野で協力することに合意した。官民合同ミッションが首都アスタナを訪問、エネルギー鉱物資源省や国営原子力企業Kazatomprom社などカザフ側関係者が出席して行われたハイレベル協議で、日・カ双方が(1) 相互補完的で戦略的な協力関係の構築、(2) 経済合理性のある具体的協力案件の実現、について意見が一致したもので、双方は具体的案件を進展させるために、今後も政府間で協議を続けることを確認した。

1. ハイレベル協議の参加者

(1) 日本側(官民合同ミッション)
 経済産業省の細野哲弘・資源エネルギー庁次長を筆頭とし、政府系機関から石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と国際協力銀行(JBIC)が、民間からは関西電力、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、双日の各代表がそれぞれ参加。協議には、伊藤哲雄・在カザフスタン大使も臨席した。

(2) カザフスタン側
 エネルギー鉱物資源省Almaz Tulebaev原子力エネルギー・対外関係局長を筆頭とし、原子力エネルギー委員会Timur Zhantikin議長、エネルギー鉱物資源省Evgeny Ryaskov技術開発局次長、Kazatomprom社Sergey Yashin副社長らが参加した。

2. 今回の協議の背景

 総合資源エネルギー調査会の原子力部会(事務局:資源エネルギー庁)は2005年10月、会合で「世界のウラン資源需給の展望と我が国の対応」を議題に取り上げ、ウラン燃料安定供給のために世界的な天然ウランの増産が不可欠な状況にある中で、我が国として積極的にウラン探鉱開発に参画して供給拡大に寄与していく姿勢や安定供給確保策となるウラン鉱山自主開発を促進させる政策支援の必要性などを審議した。部会の各委員からは、(1) 我が国と同様に資源を持たないフランスはウラン資源の確保をきちんと手当てしてきたが、日本は電気事業者の長期契約に頼っている状態。中長期、特にウラン資源の開発関連は政府の役割。政策金融などのメカニズムを使って民間のみではできない部分を支援し、資源確保がなされるようにすべき。(2) 中国がウランに対して強烈な欲望を持っているという議論があり、我が国も資源に対して強い気持ちにならねばいけない。(3) ウラン資源供給がタイトになった今、検討を深めねばならない。(4) 長期的には世界のウラン生産と供給のギャップが大きい。海外事業者との長期契約とともに探鉱開発は有効な手段の一つ。民間のプロジェクトへの参加を後押しするような支援、促進策を国に講じて欲しい。など、ウラン鉱山開発への政策的対応に期待する意見が出されていた。
 一方、これに先がけて資源エネルギー庁は、我が国企業のニーズやウラン鉱山の権益確保をめぐる世界的な動向などを分析した上でウラン資源埋蔵量が世界第2位で有望な天然ウラン開発計画を推進するカザフスタンに注目、ウラン鉱山開発への日本企業の参加を促進するべく、我が国にとってウラン資源の安定供給確保につながるような互恵的な関係構築の可能性を探っていた。

3. 日本企業の動向

(1) 融資買鉱プロジェクト
 2005年9月、伊藤忠商事はKazatomprom社から天然ウランを約10年間にわたり長期購入する契約を締結。同社のMynkuduk鉱山東鉱区の生産能力拡張プロジェクトに対してみずほコーポレート銀行が6千万USドルを融資し、日本貿易保険(NEXI)が海外事業資金貸付保険を付保するスキームが採用された。日本企業がKazatomprom社のウラン鉱山開発に融資を行い、天然ウランを長期にわたって引き取る初めての取引で、天然ウランの一部は日本にも持込まれる予定。(情報:伊藤忠商事、NEXI各ホームページ)
(2) 資本参加(J/V)プロジェクト
 Kazatomprom社のMoukhtar Dzhakishev社長は11月11日、住友商事と関西電力と合弁を設立し、ウランの採掘・処理を進める計画だと述べ、日本企業と提携することで日本市場と日本の技術にアクセスできる可能性が出てくると話した。(情報:11/15付けBloomberg他)これに対し、住友商事は話し合いに入っていることを認めているものの、関西電力は「ノーコメント」としている。(情報:11/18付けFujiSankei Business i.サイト)

4. その他の関連動向

 2005年11月、カナダのウラン生産者UrAsia Energy社がトロントベンチャー取引所に上場した。同社は、中央アジア、特にカザフスタンとキルギスに注目してウラン権益を確保しており、上場時の開示情報によれば540tU/年の生産能力を有する。同社の経営陣は、Goldcorp社(Barrick Gold社のPlacer Dome社買収が成功した場合、Placer社権益の一部を購入することでBarrick社と合意済みとされ、これにより同社の金埋蔵量・生産量が大幅に増加すると注目されている)CEOのIan Telfer氏がNon-Executive Chairmanをしており、Energy Resources Australia社(Rio Tinto社傘下)元CEOのPhillip Shirvington氏がCEOを務める。UrAsia社がKazatomprom社と進めるJ/V案件(Betpak Dala、Kyzylkum)の概要を次表に示すが、2004年に655tUを生産したAkdala鉱山以外は開発プロジェクトである。

UrAsia Energy社が所有するウラン権益と埋蔵量(自社シェア分)
Mining site
Share
%
Reserves
Resources
Price
million
US$
Indicated
Inferred
Grade %U
tU
Grade %U
tU
Grade %U
tU
Betpak Dala
Akdala
South Inkai
70 0.057
7,508
0.057
8,239
0.062
0.043
4,197
9,856
350
Kyzylkum
Kharassan
30 0.201 1,579 0.095 8,701 75
Total 0.057 7,508 0.064 9,818 0.059 22,754 425
出典:Mining Journal(November 11, 2005)
UrAsia Energy社ホームページ資料

5. 協議の意義と今後の見通し

 「ウラン鉱山開発に関する日本とカザフスタンのハイレベル協議において双方の意見が一致したことは、両国間の協力の第一歩として大変喜ばしいことであり、今後とも両国間の関係発展に向けて積極的に取り組んでまいりたい。」11月22日に行われた閣議後大臣記者会見の冒頭、二階経済産業相はこのように発言した。今回、ウラン鉱山開発に関する具体的な協力案件の実現に向けた協議を行うために、日本側が経済産業省、政府関係機関、産業界の代表者からなる官民合同ミッションを初めて派遣し、政府間の協議で今後の方向性を確認できたことは大きな成果であった。また、カザフスタン側に対して、天然ウランの購入のみでなく、参加者の全員が例外なくウラン鉱山開発に高い関心を持っていることを直接アピールすることもできた。
 現在、カザフスタンでは、ウラン生産大手のCameco社(加)やAREVA/Cogema社(仏)がすでにKazatomprom社とのJ/Vプロジェクトを進めているほか、ロシア、中国や韓国もウラン需要の増加を見込んで国を挙げて権益確保に取り組んでいる。「出遅れ」は否めないものの、Kazatomprom社にとって日本の市場と安定した原子力利用実績が一層魅力的なものに映れば、パートナーとしての日本への期待はそれだけ高まることだろう。
 総合資源エネルギー調査会の原子力部会では、2006年3月に「ウラン開発のあり方」を議題として取り上げる予定にしており、今後、事務局の資源エネルギー庁が具体的な方策を検討していくことになる。

      

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