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報告書&レポート

2005年12月15日 リマ事務所 辻本 崇史 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2005年92号

コロンビアで鉱業活発化の兆し

 1. はじめに

 コロンビアのメデジン市で、11月16~18日の間、第1回国際鉱業見本市が開催され、地元並びに近隣諸国の鉱業関係者等、約1,500人が参加した。
 今回、本見本市開催に合わせ当国を訪問し、本見本市の見学、鉱業関係政府高官及び邦人企業関係者との面談、日本大使館訪問等を行なった。
 これらをもとに、鉱業見本市の概要、コロンビア鉱業の現状、当国鉱業関係者が注目するAngostura金鉱床探鉱開発プロジェクト、そして鉱業活動にとっても重要な要素となる治安情勢について概要を述べる。
 

2. 鉱業見本市の概要

・本見本市が開催されたメデジン市はAntioquia県の県都で、本見本市はAntioquia県が主催し、エネルギー鉱山省、地質鉱業研究所(Ingeominas)、鉱業協会等が共催者となった。Antioquia県は当国を代表する鉱業県(産金量の50%以上生産)で、メデジン市は当国最大の商業都市であることが、この地での開催の背景としてある。
 
・本見本市は、国際見本市ではあったが、ほとんどの参加者はコロンビア在住者で、一部南米の近隣諸国からの参加者も散見されたが、遠方国からの参加は僅かな人数であった。日本からの参加者はなく、邦人関係者は、JETROボゴタ事務所とボゴタに支社のある商社2社からの参加があった。
 
・本見本市は、コロンビア鉱業会議、展示(関係企業・機関)、コロンビア宝石展、商談会の4部門よりなり、この内、中心的なイベントとなる鉱業会議は、3~4会場に分かれて行われた。
 
 鉱業会議では、当国非鉄鉱業の中核である金鉱業を中心とした探査・開発・生産面の技術的・広報的講演、政府関係や国際機関によるコロンビア鉱業に係るマクロ的講演が多く、著名企業や著名鉱山・プロジェクトに係る講演、政府高官の講演等には多数の聴衆が集まった。
 展示会場では、地元鉱山会社(多くは金)、コンサルタント会社、鉱山機械・ソフト販売会社、中央・地方政府関係や大学等の公的機関等により、約80のブース出展があったが、他国企業・機関からの出展は少なく、とくに国際的に著名な企業の出展は当国で探鉱を実施中のAngloGold Ashanti社のみであった。
 商談会場では、主に小規模金山会社により、自社案件(探鉱・開発)への投資を求める案件紹介講演と、これに関心を示した投資者との個別商談が行われた。
 

3. コロンビア鉱業の現状

・コロンビアの非鉄鉱産物は、主にニッケルと金で、他に僅かに銅、白金等を生産する。ニッケルは、BHP Billiton社操業のCerro Matoso鉱山から年約5万tが生産され、フェロニッケルとして欧州諸国、日本等に輸出されている。2004年の対日輸出量は、フェロニッケル9千tであった。
 金は、歴史時代から砂金鉱床が採掘され、現在も年産40t程度と南米産金国の一つだが、砂金鉱床を対象とした小規模採掘が多く、最大の金山会社の産金量でも年産2t程度と少ない。
 かつて日本企業(日鉄鉱業他)が操業を行なっていたエル・ロブレ銅山は、国内唯一の銅山として現在も地元企業により操業が続いており、年間1万t程度の銅精鉱(銅品位22~23%)を生産し、全量が日本に輸出されている。
 
・2001年の新鉱業法により、外資にとって周辺鉱業国と比較しても遜色のない鉱業法となったが、金価格の高値推移と同国の治安情勢の回復傾向の中、金探鉱が活発化する兆しにある。既にAngostura金鉱床探鉱開発プロジェクトは大きく進展し、F/S段階に近いが、最近では、世界的な産金会社が金探鉱プロジェクトの発掘に乗り出している。この中では、AngloGold Ashanti社が先行し、1年程前から同国南部等のアンデス山系の数地域で探鉱を開始しているが、その他、Newmont社、Barrick Gold社、CVRD社、Buenaventura社等、世界的に著名な産金会社が次々と探鉱案件の発掘に乗り出している。
 
・政府としては、Ingeominas(地質鉱業研究所)の基礎調査により、銅のポテンシャルも高いと考えており、政府高官によると具体的な有望地区(南部アンデス山系のMocoa(ポーフィリー型)等)も把握しているが、企業レベルの探鉱活動は未だ活発化する兆しはなく今後に期待している。
 
・コロンビアの治安情勢は顕著な回復傾向にあるが、未だ山岳地帯では反政府の過激組織が活動し、外資にとってこの問題が大きな障害になっている。これに対処するため、政府は、国家警察・軍を動員し外資の鉱業活動(探鉱・開発・操業)の安全確保に努めている。主産業の一つである石炭分野では、既にBHP Billiton社の他、Glencore社、Anglo American社、Drummond社(米)等、多くの著名外資企業が参入・操業を行なっているが、政府の安全面でのサポートにより鉱業活動が維持されている。政府は、非鉄分野でも同様のバックアップを提供し、安全が確保された状態での鉱業活動は可能としている。

・日本(JOGMEC、企業)の鉱業プロジェクトへの参入には、政府としても協力を惜しまないとの姿勢で、とくに我が国にとって関心の高い銅は、Ingeominasの基礎調査により把握している有望地区に対し、積極的な投資を期待している。

4. Angostura金鉱床探鉱開発プロジェクト

 Angostura金鉱床開発プロジェクトは、Greystar Resources社(カナダ)がコロンビア中北部のSandander地域で進める、同国初の本格的な金山開発で注目度も高く、とくに鉱業振興に力点を置く政府鉱業関係者の期待も大きい。
 上記見本市において、同社の社長は、本プロジェクトの現況と今後の見通し等を発表し多くの聴衆を集めたが、この概要は以下のとおり。
 
・本鉱床は大型の鉱脈型金鉱床で、1995年の調査開始以来、約150の主要鉱脈(脈幅5~50m、平均9m)を把握し、2005年8月時点で、金量(indicated)5.83百万oz(平均品位1.2g/t)の他、予想金量(inferred)4.47百万oz(平均品位1.1g/t)を有する。
 
・1995年の調査開始後、90年代後半に5.2万mのボーリング等を行い、大規模な金鉱床である事は把握したが、F/S調査に向けた本格的な精密探鉱を開始したのは、2003年7月である。
 
・2005年10月までの総ボーリング長は約13.5万m(坑内含む)、坑道開削約1,500m、冶金試験等を行なっているが、周辺への探鉱余地も大きく、更に2006年半ばまでに約4万mの追加ボーリング等を行い、その後、2006年下期にF/S調査(予定額約7百万ドル)を計画している。1995年の調査開始よりF/S終了までの総投資額は、約50百万ドルに達する見込み。
 
・現在、年産金量10tクラスの露天掘金山を想定し、2008年内の操業開始を目指している。別途、同社長より聴取したところ、同氏は日本企業とのビジネス経験があり日本企業への信頼度が高く、事業への資本参加、鉱山機材の導入等で日本企業とのビジネスチャンスに期待・可能性を示した。
 

5. 治安情勢

 コロンビアでは、コロンビア革命軍(FARC)、国民解放軍(ELN)といった左翼ゲリラ、右翼非合法武装集団(パラミリタリー)と政府との対立、これら組織間の抗争等により、誘拐・テロ等の凶悪犯罪を特徴とする治安の悪さが従来より指摘され、外資導入の一つの障害となっている。
 本件は、当国の鉱業活動、我が国の鉱業分野への参入にとって重要なポイントと思われるが、今回、日本大使館の治安担当、ボゴタ在住の邦人に本件に係わり聴取した他、鉱業見本市でも、国防省高官による関連の講演があり、また先に紹介したAngostura金鉱床開発プロジェクトを実施中のGreystar社の幹部からプロジェクトのサイトの治安状況の聴取等を行なった。これらの結果を、以下にまとめる。

・2002年に就任したウリベ大統領は、FARC等の非合法武装勢力に対し強硬政策を取り治安回復に努めてきたが、この成果により、治安情勢は大幅に改善している。例えば、殺人件数は2002年28,837→2005年(10月迄)14,775件、誘拐件数は同1,883→349件、テロ件数は同1,645→500件、に減少している。とくに、3大都市圏(ボゴタ、メデジン、カリ)での誘拐・テロ犯罪件数は大幅に減少し、各都市圏で1?2件/月程度の状況である。従って、大都市圏では、一般犯罪の多発地帯での行動を避ければ、ほぼ安全が確保できる。しかし、治安状況が改善したとはいうものの、大都市圏外のとくに南部の山岳地帯は、依然としてFARC等非合法武装勢力の活動圏で、これら地帯に立ち入ると何が起こってもおかしくない状況は続いている。
 
・ウリベ大統領は国民的な人気も高く、2006年4月の大統領選挙で再選される可能性もあり、この場合、今後一層の治安回復が期待できる。しかし、日本大使館によると、大統領選に伴う一時的な治安の悪化も想定されるところ、当面は大統領選とその後の新大統領による治安対策・効果状況を見極めるまでは、少なくとも現在の外務省が発出している危険情報のレベル(離島を除き、国土全土に「渡航延期勧告」or「渡航是非検討」発出)が下がる予定にはない。
 
・本邦企業等により日本から派遣されている在留邦人は、ボゴタ市内での在住にほぼ限定されるが、上記の様な状況から市内での活動には他の南米での主要都市並の安全対応により大きな支障もなく、最近は特段の邦人被害も報告されていない。しかし、在留邦人の行動範囲は、ボゴタ市内と他の2大都市(メデジン、カリ)にほぼ限定され、これら都市間の移動も含めこれら三大都市以外(国内の大部分)へは立ち入らないのが、安全確保の観点から一般化している。
 
・政府は外資導入を積極的に進める上で、治安問題がマイナス要因と認識し、これをカバーするため、外資の活動に国家警察・軍の配備サービスを積極的に提供している。当国の主要産業である、石油、石炭の開発には多くの外資が参入しているが、これら油田、鉱山の操業もこのサービスにより維持されている面が大きいと思われる。但し、監視の行き届かない石油パイプラインの破壊行為は、今なお頻発している。
 
・鉱山エネルギー省の鉱山次官は、日本からの鉱業分野への探鉱開発投資に対しても同様のサービスを提供し、これら組織(警察・軍)との連携、さらに地元との良好な関係の下に安全確保は可能であり、日本からの積極的な投資を期待すると発言した。本発言を裏付ける一つとして、Angostura金鉱床開発プロジェクトを推進するGreystar Resources社(カナダ)の幹部から、次の様な話しがあった。本プロジェクトは既に本報告でも紹介した鉱業分野の大型プロジェクトで10年来の探鉱を行なっているが、外務省が「渡航延期勧告」地域に指定する域内にあり、まさに危険地域である。しかし、この幹部によるとプロジェクトサイトは平穏で治安の問題はとくにない。この理由として、地元と良好な関係にある以外に、プロジェクトサイトに隣接して国家警察のキャンプが設けられ、サイト周辺は国家警察により常時ガードされている。

・上記を総合すると、ウリベ政権の治安対策により、都市部では概ね治安は回復している。しかし、一歩、都市部を離れると治安に今なお問題が多く、とくに鉱物資源のポテンシャルが期待される山岳地帯は、非合法武装勢力の活動拠点ともなっている。これに対し、外資導入を推進する政府は、外資が活動する地域には国家警察・軍のサービスを積極的に提供し、この地域内では安全がかなりの程度確保される様、努めている。

 
6. 所感

 コロンビアでは、治安状況の回復、世界的な鉱物資源の高値推移、政府の外資導入支援等により、金の探鉱開発は活発化し、世界的にも著名な産金会社が参入を始めている。欧米系の外資企業にとっては、安全確保面で政府の支援(警察・軍)が期待できる状況では、この面でのリスクは許容の範囲内として探鉱開発を積極化しているものと推察される。今後、ポテンシャルが期待できる銅資源についても、外資参入の可能性がある。
 一方、JOGMECを含めた我が国の探鉱開発への参入は、銅資源のポテンシャルは期待できるものの、現状の治安情勢では難しいであろう。安全面でのリスクの許容範囲が欧米系企業と我々日本サイドで異なるのは、当国に限らずグローバルなもので、いかに当国政府より安全確保面で支援が得られても、現状では山岳地帯での調査活動は難しい。
 ウリベ大統領が再選し、更に治安情勢が回復し、将来、外務省発出の危険レベルが下がる事が期待される。この際には、優良な銅の探鉱案件を発掘・実施できる可能性もあり、そのために今後も引き続き当国の鉱業動向には注視し、将来に備えることが必要と考える。

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