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報告書&レポート

2005年12月22日 バンクーバー事務所 中塚 正紀、金属資源調査開発企画 板倉 賢司 e-mail:(中塚)nakatsuka@jogmec.ca (板倉)itakura-kenji@jogmec.go.ca
2005年95号

カナダBC州マインツアー報告

 本企画は、新たな鉱山開発及び既存鉱山の操業が活性化し、探鉱活動が盛んになったBC州において稼行鉱山や開発プロジェクトのサイトを訪問し、関係者へのインタビュー等を行うことにより、鉱山における生産の現状や課題、適用技術や探鉱の状況など幅広く情報収集することにより今後のプロジェクト投資の検討に資することを目的としてBC州政府及び地質調査所の全面的な協力を得て実現したものである。本ツアーは9月19日から22日の日程で、日本の政府系機関、鉱山会社、金融機関を含めた12名とBC州政府、地質調査所関係者が参加し、実施された。本報告は、当該ツアーの概要を紹介する。

1.カナダBC州の資源開発環境

  BC州では、長期にわたった前政権時代に鉱業活動が沈滞し、稼行鉱山は6鉱山まで減少した。しかし、2001年、自由党へ政権交代が行われ、州政府はBC州の資源ポテンシャルを生かすため、鉱業への投資環境改善の取組みに着手し、2005年1月には、57項目にわたる改善項目とその目標を記載したBC州鉱業再生計画を発表し、鉱業推進政策を積極的に展開している。一方、近年の金属市況の上昇により、2004年の探鉱活動は、前年比95%増加し、州内で170プロジェクトが実施され、休止していたMount Polley銅鉱山も2005年5月に再稼動するなど、鉱業活動が活発化している。本ツアーでは、こうしたBC州の代表的なプロジェクトに焦点を充てることにした。各鉱山等の概要を以下に示す。
 

2.Eskay Creek鉱山

 Eskay Creek鉱山はVancouverの北方約1,000kmのBC州北西部に位置し、BC州中部の町SmithersからBob Quinnまで空路で約1時間(約350km商業定期便なし)、Bob Quinnから未舗装の専用道路(約60km)で約1時間を要し、電気は自家発電のみである。
 本鉱山はBarrick Gold Corp.が操業する坑内採掘の火山性塊状硫化物(VMS)型金-銀鉱床である。1995年1月の生産開始から2005年4月までの生産量は1.8百万t(金55.2g/t;金量100t、銀2,550g/t;銀量4,630t)。本鉱山の2004年1月時点の埋蔵鉱量は840,865tであり、鉱石の平均品位は金34.81g/t、銀1,604g/tでマインライフは2007年までの予定である。2004年の生産量は以下のとおりである。
 ・合計生産 金9.01t、銀489t
 ・採 鉱 269千t(735t/日)(金33.6g/t、銀1,820g/t)
 ・粗鉱出荷 139千t(金54.1g/t、銀2,803g/t)(粗鉱のまま出荷分)
 ・選鉱処理 125千t(金17.1g/t、銀958g/t)(実収率:金85.8%、銀92.2%)
 採掘は、立坑を設けないトラックレスによるドリフトアンドフィル法(drift and fill、上向き6割、下向き4割)で、坑内充填材は、鉱山から約30km離れた河原の河床礫にセメントを混ぜたものを使用している。鉱石中には製錬ペナルティーエレメントである水銀、アンチモンの含有量が高いこともあり、詳細な採掘品位管理が行われている。
 粗鉱(約14万t/年)及び精鉱(約11万t/年)は、カナダQuebec州にあるNorandaのHorne製錬所、同和鉱業㈱の小坂製錬所へ出鉱されている。
 尾鉱スライムは、水中投棄では有害成分が溶出しないと判断されており10km離れた湖沼にパイプ流送し、水中投棄処分されている。
 
 従業員は約350名(コントラクター約200名を含む)で、先住民Tahltan約100名を積極的に雇用している。ほとんどの従業員がFry in / Fry outの労働形態を取っており、通常2週間ごとに業務と休暇を繰り返している。鉱山には宿舎の他、医療設備や食堂等が備えられているが、キャンプ内では全面禁酒となっている。また、野生生物(灰色熊:Grizzly)の保護のため、キャンプで出た食品ゴミは全て焼却処分している等環境保護を徹底している。
 

3.Kemess South鉱山

 Kemess South鉱山はVancouverの北方約1,000kmのBC州北部に位置し、Smithersから鉱山専用空港まで空路約1時間を要し、商業定期便はない辺境の地にある。
 本鉱山は、Northgate Mineral Corp.(所在地:Vancouver)による斑岩型金-銅鉱床の露天採掘鉱山であり、1998年5月に操業が開始された。マインライフは2008年までの予定だが、隣接するKemess North鉱床が開発に至れば、さらに10年程度の延長が見込まれる。
 本鉱山の埋蔵鉱量は91.7百万t(2004年1月時点)、鉱石の平均品位は金0.699g/t、銅0.227%。2004年の生産量は金0.93t、銅34千t(選鉱処理18.5百万t)である。
 採掘は、ベンチカット(ベンチ高15m)で行われ、大型重機が導入され、GPSを活用する等の効率化によりコスト削減を図っている。
 選鉱場での鉱石処理量は約52,000t/日で、浮選選鉱により銅:24%、金:62g/tの精鉱が生産されHorne製錬所(Noranda、Quebec州)へ出荷している。電気料金は、BC州の発電コストが低く約0.03ドル/kwhと安価に設定されている。選鉱廃滓は、堆積場(Tailing dam)にポンプアップ(比高:約+300m)され、サイクロン分級後、堆積処分されている。堆積終了後、堤体に植栽を行うため、植栽品種の選定試験を実施中である。
 捨石からの重金属を含む酸性水による環境汚染を防止するため、酸性水の発生度別に捨石を7区分、鉱石を4区分して集積場所を管理している(The Metal Leaching and Acid Rock Drainage program)。選鉱尾鉱も堆積場(Tailing dam)の下流堤体部分には硫化鉱を除いたサイクロンサンドのみを使用し酸性水の発生する可能性のあるスライムは堤体上流部に水没するように処分している。
 Kemess North鉱床は、Kemess South鉱山の北方約5kmに位置する斑岩型金-銅鉱床で、2001年以降の探鉱により発見され、414百万t、金0.31g/t、銅0.16%の鉱量が見込まれる。既にF/S調査が終了しており、環境影響調査報告書(Environmental Impact Assessment Report、2005年10月11日付)が連邦政府及びBC州政府に提出された。この中では、酸性水対策として捨石及び選鉱スライムを天然湖沼中に投棄処分することが盛り込まれている。2007年から生産が開始される見込みである。
 コントラクターを含む従業員は約350名で、そのうち約半数はBC州北部に居住しているが、ほとんどの従業員がFry in/Fry outの労働形態を取っており、通常2週間勤務2週間休暇又は4日勤務3日休暇のシフト(12時間2交代制)を採用している。Kemess North鉱床が開発に至った場合、約80名の増員が予定されている。
 

4.Afton再開発プロジェクト

 Afton鉱床はVancouverの北東方約250km、BC州南部の町Kamloopsの近郊に位置する。高速道路に隣接し、交通の便は良い。
 本鉱床は、New Gold Inc. (所在地:Vancouver)が所有するF/S調査中のプロジェクトで、1990年代に閉山した旧Afton鉱山(Owner:Teck Cominco Ltd.、10年間で銅23万t、金15t、銀87tを生産)のOpen pitの下部で捕捉された斑岩型銅-金鉱床である。坑道調査、ボーリング調査等により推定される本鉱床の鉱量は68,700千t、平均品位銅1.08%、金0.85g/t、銀2.62g/t、パラジウム0.12g/tである。
 現在、Open pitの下部に坑口(海抜約400m)が設けられ、鉱体周辺を囲む約1,700mの探鉱坑道が設置されている。New Gold Inc.は今後14.5USドル百万を支出し、2006年第3四半期までにF/S調査を終了する予定である。採掘法は坑内採掘となるが詳細は未定である。
 Open pitの西方には、旧Afton鉱山操業当時に使用されていた捨石堆積場及びTailing damがある。このTailing damは1997年まで使用されていたが、Teck Cominco Ltd.により堤体及び上流部も植栽された結果、現在では、Tailing damの面影は残っていない。また、旧選鉱場建屋は残存しており、Teck Cominco Ltd.により管理されている。
 

5.High Land Valley鉱山
 High Land Valley鉱山はVancouverの北東方約200kmのBC州南部に位置し、Kamloopsの南西約75km、Logan Lake町の西方17kmであり、交通の便は良い。
 本鉱山はTeck Cominco Ltd.(95%)及びHighmont Mining Corp.(5%、同社の株式の50%をTeck Cominco Ltd.が保有)が共同経営する斑岩型銅-モリブデン鉱床の露天採掘鉱山であり、カナダで最大規模のベースメタル鉱山である。
 本鉱山の埋蔵鉱量は166.5百万t(2004年12月時点)、平均品位は銅0.43%、モリブデン0.007%である。2004年の生産量は銅17万t、モリブデン5千tであり、現在採掘中のピットの規模は次のとおりである。
   Lornex鉱床 2.4km×1.6km×高さ270~480m(銅 0.345%、モリブデン 0.0109%)
   Valley鉱床 2.2km×2.1km×高さ535~735m(銅 0.443%、モリブデン 0.0059%)
 採掘にあたっては、大型採掘機材の使用、各トラックのGPSコンピュータ管理等により効率化を図っている。採掘された鉱石(約13.8万t/日)はピット内で一次破砕され、ベルトコンベアにて選鉱場に運搬後、浮選選鉱される(生産量:2004年精鉱453千t(銅含有量165千t、モリブデン含有量9,500t))
 今後、Valley pitを250m程度深化させマインライフを5年間延長し、2013年まで操業する計画である。今後、Valley pitの拡張に伴う上部剥土作業のため生産量が低下し、Lornex鉱床を増産するものの、2004年の銅生産363百万lbs(165千t)が、2008年には217百万lbs(98千t)に減少する見込みである。銅精鉱のほとんどが長期契約で日本(精鉱の約40%)をはじめとした極東アジア及び北米に出荷されている。
 従業員は約950名であり、ほとんどの従業員が、KamloopsやLogan Lakeなど鉱山から約60km以内に居住しており、通常4日ごとに業務と休暇を繰り返す(12時間/日、2交代制)シフトを採用している。

おわりに

 今回のツアーで訪問した鉱山では、新たな鉱床の開発や現鉱山の延命などの手続きが進められており、また、Aftonプロジェクトについては、これから具体的な開発検討が進められるなど州政府による鉱業再生計画の具体化とともにこれらのプロジェクトも軌道に乗ることが期待され、BC州の各鉱山に活気が戻ったことを感じさせるツアーであった。また、BC州政府の全面的な協力の下、受け入れ鉱山サイドも夜間宿舎でのミーティングにも参加し、丁寧な対応を頂いたことに感謝したい。また今回のツアー参加者からは、訪問した各サイトで直接意見交換ができたことは非常に貴重であったと評価を受け、次回企画への参加希望なども寄せられたことも最後に付記する。

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