閉じる

報告書&レポート

2005年12月27日 シドニー事務所 永井正博、久保田博志、研究員Joy A. Albert他5名 e-mail:(永井)masahiro-nagai@jogmec.net (久保田)kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2005年97号

2005年オーストラリア鉱業の1年-ニュース記事で振り返るオーストラリア鉱業の1年-

 2005年、オーストラリア鉱業は、BHP Billiton社によるWMC Resources社買収、急増する中国向け鉱物資源輸出、ウラン政策見直し、技能労働者不足、鉄鉱石・石炭等輸出のボトルネック問題など、空前の資源ブームの中で大きく揺れ動いた1年であった。
 本稿では、新聞報道等のニュース記事をもとにオーストラリア鉱業の1年を振り返る。

1. はじめに

 本報告は、2005年1月から11月までの11か月間に、JOGMECキャンベラ事務所及びシドニー事務所が収集した現地ニュース記事約1,600件をデータベース化し、話題・分野、会社、国、州、鉱種などによって分類・整理し、2005年のオーストラリア鉱業の「定量的な」解析を試みたものである。
 

2. 話題・分野別ランキング

  -オーストラリア史上最大級のWMC社買収を含む「買収」の話題がトップに-
 話題・分野別では、BHP Billiton社の92億豪ドルによるWMC Resources社をはじめ買収関連ニュース(1)が最も多く全体の13.4%を占め、資産・権益等の売却(18)と合併(19)を加えると15%を超えた。次に生産動向(2)や、株価(3)、投資(4)、18年ぶりの高値を続ける金をはじめとした金属価格上昇等の価格動向(4)などの市況の話題が続いている。
 また、資源ブームを反映して旺盛な探査活動(6)やJVプロジェクト形成(13)の話題、探査対象としてのウラン(6)に関する話題が上位入りしている。一方で、好調な鉱物資源産業の足かせになるとなっているインフラ整備と技能労働者の不足の問題(7)や、石炭輸出大国であるオーストラリアにとっても重大な関心事である炭酸ガス排出問題を含む環境/保安(10)などの懸念材料や、中国ほか各国との自由貿易協定(FTA)などを中心とした貿易問題(11)、連邦政府が進めている労使関係法改正(16)もランク入りしている(図1)。
  月別の話題・分野の推移では、年間最多件数の買収が2005年前半の中心話題であったことがわかり、特に、2004年からWMC Resources社の買収計画を発表していたXstrata社(スイス資本)に対してBHP Billiton社が対抗勢力として買収計画を発表した3月がピークとなっている。その他、オーストラリア企業の多くが年度決算日としている6月末日以降の7~8月にかけて生産動向関連の話題が、フィールドシーズンの7~10月にかけて探査とその結果に関する話題が集中している(図1)。

   *1)( )内の数字は順位。以下同じ。

図1 話題分野別ランキング

図1 話題分野別ランキング

図2 分野・話題別件数の推移

図2 分野・話題別件数の推移

3. 企業別ランキング

  -BHP Billiton社の「一人勝ち」、「中堅」のOxiana社、Iluka社が検討-
 WMC Resources社買収の当事者であるBHP Billiton社とWMC Resources社、買収決定直前まで対抗馬の本命と噂されたRio Tinto社と初めに買収計画を発表したXstrata社が上位を占めた。
 BHP Billiton社とRio Tinto社は鉄鉱石をはじめニッケル・アルミナ・銅・ウランなど各鉱種に関わる生産・開発・拡張、役員人事、WMC Resources社以外の買収・権益取得など多岐にわたり話題となった。特にBHP Billiton社は「オーストラリアを代表する企業」としても話題にあることが多かった。
 Oxiana社は「中堅」企業ではあるが、ラオスでの金・銅鉱床開発と、Golden Grove金・銅鉱山の取得、Prominent Hill銅・金鉱床の開発に成功したことから上位に食い込み、次期主力鉱山のTelfer鉱山の開発が遅れているNewcrest社はWMC Resources社が買収後オーストラリア「唯一の」大手鉱山会社として次の買収ターゲットとしても注目されている。ミネラルサンド大手のIlluka社は売上げを伸ばしオーストラリア第4位の鉱山会社となった。また、倒産したPasminco社の資産の大部分を引き継いで上場を果たした亜鉛・鉛生産者のZinifex社、ウラン開発・探査企業のERA社などが上位50社に入っている。
 また、インフラ整備・技能労働者養成などの関係から州政府が、それらに加えて労使関係・ウラン政策、対外貿易交渉などに関連して連邦政府も上位に入っている。

表1 上位50社
No.
企業名
件数
種別
No.
企業名
件数
種別
1 BHP Billiton
239
総合資源 26 ニューサウスウェルズ州
13
政府
2 WMC
164
銅・金・ウラン 27 OneSteel
13
鉄鋼
3 Rio Tinto
153
総合資源 28 MacArthur Coal
12
石炭
4 Xstrata
120
総合資源 29 Sons of Gwalia
12
金・ニッケル・タンタル
5 連邦政府
60
政府 30 Woodside
12
石油
6 Fortescue
42
鉄鉱石 31 Alumina
11
アルミニウム
7 Centennial Coal
33
石炭 32 ERA
11
ウラン
8 Oxiana
30
銅・金 33 Heron
11
ニッケル
9 CVRD
29
鉄鉱石 34 Jubilee
11
非鉄
10 Austral Coal
28
石炭 35 西オーストラリア州
11
政府
11 Newcrest
28
金・銅 36 Anglo American
10
総合資源
12 BlueScope
27
鉄鋼 37 Paladin
10
ウラン
13 Gelncore
22
総合資源 38 AWAC
9
アルミニウム
14 Iluka
22
ミネラルサンド 39 HWE
9
コントラクトマイナー
15 Newmont
22
金・銅 40 NT
9
政府
16 Zinifex
21
亜鉛・鉛・銅 41 Santos
9
石油
17 Portman
18
鉄鉱石 42 Smorgon
9
鉄鋼
18 Cleveland Cliff
17
鉄鉱 43 Straits Resources
9
非鉄
19 クィーンズランド州
17
政府 44 Universal
9
銅・金
20 Alcoa
16
アルミニウム 45 Cazaly
8
鉄鉱石・非鉄
21 Hancock
16
鉄鉱石 46 CopperCo
8
銅・金
22 Lihir Gold
16
47 Excel Coal
8
石炭
23 INCO
14
ニッケル 48 Kumba
8
ミネラルサンド
24 Minara Resources
14
ミネラルサンド・鉄鉱石 49 Mitsubishi
8
総合商社
25 Consolidated Minerals
13
ミネラルサンド・鉄鉱石 50 Pan Austrlaianralian
8
銅・金


4. 鉱種ランキング

  -主要鉱物資源の鉄鉱、金、石炭、銅などに加え「ウラン」が注目された-
 鉱種別では、BHP Billiton社と中国・日本との価格交渉、Rio Tinto社のHope Downsプロジェクトの取得、Fortescue社のPilbara地域開発などを含む鉄鉱石/鉄鋼の話題がトップとなった。個々の探査・開発プロジェクトと価格動向を中心とした金、鉱山・精錬所の拡張を中心としたアルミナ/アルミニウムとニッケルの話題が続いている。また、南オーストラリア州等での高品位ジルコン鉱床が発見されたミネラルサンドなどの話題も上位を占めた。

図3 鉱種別ランキング

図3 鉱種別ランキング

5. 国別ランキング

   -「中国」に関心が集中、近隣・アジアへの投資も堅調-
 上位国には、自国オーストラリア(1)に続いて、日本(5)を抜いてオーストラリア最大の鉄鉱輸出相手国となった中国(2)、中国に続いて今後急速な経済発展と資源需要が見込まれているインド(8)、その他に米国(8)、EU(20)がランク入りしている。隣国では、資源だけでなく政治・経済面での関係のあるPNG(3)とインドネシア(4)が上位を占め、フィジー(15)とソロモン諸島(15)が続いている。
  海外鉱業投資先としては、近年Oxiana社など中堅資源会社が鉱床発見・開発に至っているラオス(5)、法整備によって外資による鉱業活動の再活性化が期待されるフィリピン(5)、タイ王国(15)などのアジア諸国に加え、オーストラリアの探査ジュニア企業が進出しているボツワナ(10)、コンゴ(13)などのアフリカ諸国(15)がランク入りしている。
  また、資源輸出国で競争相手国である、鉄鉱石のブラジル(10)、探鉱投資対象国のカナダ(10)・南アフリカ(13)・チリ(15)もそれぞれランク入りしている。
 オーストラリアとの二国・多国間関係では、政府間ではFTA交渉・ウラン輸出協定協議、民間では鉄鉱石価格鉱床などの中国(2)、資源保有国で探査ジュニアの2大国でとかく比較の対象とされるカナダ(10)、インドネシア(4)、Anglo American社、Newmont社など外国鉱山会社の母国である南アフリカ(13)、米国(8)などが上位ランク入りしている。

図4 国別ランキング

6. 州別ランキング

  -鉄鉱石・金・ニッケルの西オーストラリア州が約半数を占める-
 州別では、鉄鉱石・ニッケル・金の国内最大の産出地である西オーストラリア州が他州を大きく引き離してトップとなっている。次いで、石炭・アルミナ/アルミニウムに関連したクィーンズランド州、Olympic Dam鉱山とミネラルサンド探鉱・開発の南オーストラリア、石炭に加え、近年、金の生産が伸びオーストラリア国内第2位となったニューサウスウェルズ州、年の前半はアデレードからダーウィンを結ぶ鉄道の話題が年の半ばからは政府が直轄でウラン資源開発を実施するとした話題の多かった北部準州、金と亜鉛・鉛探査活動が再び活発かしそうなタスマニア州の順となっている。


図5 州別の割合

7. まとめ
 オーストラリア鉱業の2005年は、前半はBHP Billiton社によるWMC Resources社買収が話題の中心となり、また、インフラ整備の遅れや技能労働者不足も大きく取上げられ政府の対応を求める話題が多かった。年半ばからはウラン価格上昇もあってウラン探鉱や政府のウラン政策に関わる多方面での議論が話題となったほか、国会での労使関係法改正の動きなどが話題となったが、WMC Resources社買収ほどの際立ったものには欠けていた。
  また、中国関係では、経済発展と需要拡大とその持続性などが年間を通じて話題となり、加えて年の前半は自由貿易交渉(FTA)や鉄鉱石価格交渉、Pilbara地区への鉄鉱石鉱山開発への投資の可能性が話題となり、年の後半は、ウランの輸出交渉、2006年度の鉄鉱石価格交渉の行方などが話題となった。

ページトップへ