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報告書&レポート

2005年12月28日 金属資源開発調査企画グループ 西川信康 e-mail:nishikawa-nobuyasu@jogmec.go.jp
2005年100号

最近のLME銅相場を巡る状況

 ファンド筋の資金流入や金属取引所銅在庫の記録的な低水準にあること等の要因からLME銅価格が歴史的な高騰を続けている中、11月に入り、LMEの銅取引で、中国国家備蓄局のトレーダーが大量の売り注文を出したまま行方不明になり、中国政府に巨額の損失が生じるとの情報が世界中に流れた。中国政府は、本ショートポジションの決済期日である12月21日に向けてこの損失を補填するために、大量の備蓄銅を市場に放出して、意図的に買い戻し価格を下落させるのではないかとの憶測もあり、銅価格の動きに世界の市場関係者の注目が集まっていたが、結局、同日の銅現物価格は4,576ドル/t(前日比9.5ドル安)と大きな変化はなく平穏に経過した。ここでは、最近の銅市場を巡る一連の動きを紹介する。

1. 世界の銅需給状況

 11月16日付け、国際銅研究会の発表によると、2005年の世界の銅消費量は、2005年3月に発表した数字よりも920千t下方修正し、前年比1.4%減の16,450千tとなる見通しであることが明らかとなった。
 これは、中国では、7.7%増と高い伸びを示すものの、米国(6.0%減)、EU(7.4%減)、日本(4.1%減)等先進国の消費がIT関連の在庫調整や原油高などを背景に軒並み減少することが主要因。また、鉱山生産、地金生産もそれぞれ695千t、783千tの下方修正を行った。世界的に広がったストライキや事故等による供給障害、チリにおけるモリブデン鉱石の優先採掘等の影響も重なったことが要因。全体として需給バランスは、当初の予測であった259千tの供給不足から122千tの供給不足へ需給バランスが改善する見込みとなっている。
 
 2006年の銅需給動向については、銅消費は、中国が7.5%と引き続き大幅に拡大することに加え、先進国の消費の回復が見込まれるため、5.5%の増加、また、銅鉱山生産は、銅価格高騰を背景に、フル稼働になり、5.1%増、さらに、銅地金生産は新増設製錬所の本格稼働や高水準の買鉱条件を背景に8.1%増と消費量を大きく上回ることが予想されている。従って、需給バランスは295千tと4年ぶりの供給過剰に転じるとの見方を示している。

2005年及び2006年の世界の銅需給見通し
(単位:千トン)
2005(予測)
04/05増加率(%)
2006(予測)
05/06増加率(%)
2005年
3月 時点
2005年
11月 時点
修正分
2005年
3月 時点
2005年
11月 時点
2005年
3月 時点
2005年
11月 時点
修正分
2005年
3月 時点
2005年
11月 時点
鉱山生産量 15,678 14,983 -695
8.0
3.1
15,840 15,743 -97
1.0
5.1
地金生産量 17,111 16,328 -783
8.5
3.1
18,073 17,650 -423
5.6
8.1
消費量 17,370 16,450 -920
5.3
-1.4
18,167 17,355 -812
4.6
5.5
需給バランス -259 -122
-93 295
出典:国際銅研究会

2. 中国のショートポジション問題

 11月に入り、LMEの銅取引で、中国国家備蓄局のトレーダーが大量の売り注文(ショートポジション)を出したまま行方不明(現在は北京警察に拘留中)になっていることが発覚し、中国政府に巨額の損失が生じる可能性が高いとの情報が世界に流れた。本件に係る一連の報道は以下のとおりである。
 
(1)中国国家備蓄局のトレーダーが、7~8月にかけて、今後銅価格が下落すると見て、銅価3,300ドル/tで約13~14万tの売りポジションをとる(決済期日は12月21日)。
(2)その後の銅価格の上昇で巨額の含み損が発生し、このトレーダーは行方不明になったことが発覚。中国政府当局は、このトレーダーによる銅取引は非公認であり、損失の責任はトレーダー個人にあると主張(11月15日)
(3)一方、中国国家備蓄局当局者は、11月11日に「中国には130万の銅備蓄が存在する」と発言。さらに、上記の損失を補填するために、今後最大で20万tの銅を売却する計画であり、これが、売りポジションの受け渡しに活用されれば、銅価格が急落する可能性があると一部で報道(11月16日)。
(4)中国国家備蓄局は11月から12月にかけて4回(11/16、11/23、11/30、12/7)に分けて各2万づつ計8万tの備蓄銅放出のための競売を実施(結果は、11/16以外では売れ残り約5万tのみ売却)。同局は、本行動は、ショートポジション問題とは関係なく、国内需要を満たすためと強調。
(5)中国第1位の産銅企業である江西銅業が中国国家備蓄局に銅を売却したという一部報道に対し、同社幹部は関与を否定(12月14日)
(6)韓国の釜山LME倉庫に11月から12月にかけて2万t以上の銅の持込みあり(12月21日)。
 

3. 最近の銅相場の状況

 中国のショートポジション問題が発覚した後の銅相場の動きは、銅価格が下落するとの一部の見方に反して、堅調に推移した。これは、中国の130万tの銅在庫報道に対し市場は懐疑的な見方をしており、かつ、中国が銅在庫を実際に受け渡せるかどうか疑念が強まっていることとともに、中国が12月21日の決済日に向けて大量の銅の買い付けを余儀なくされ、銅価格がさらに上昇するとみて、投機筋が買い攻勢をかけたものと見られる。11月下旬から12月にかけて、実際の備蓄銅の放出量が5万tに留まったことやチリの北部鉄道のスト入り等の要因も加わり、上昇を続け、12月9日には4,612ドル/tの最高値を付けた。
 また、中国備蓄局(SRB)が保有しているといわれるショートポジションの決済日と噂されていた12月21日に向けて銅相場の動きが注目されたが、この日の銅現物価格は4,576ドル/t(前日比9.5ドル安)で終わり、何事もなく平穏に経過した。このため、中国のショートポジションは3か月の期間内に拡散され、それぞれのポジションは買い戻されたか、契約が履行されたか、期先に繰り延べられたか(あるいはそもそも存在しなかったのではないかとの説もある)と推測されている。一部のアナリスト筋の情報によると、SRBが当初保有していたショートポジション約14万tのうち8~9万tは契約が履行されたと推測され、韓国釜山等のLMEアジア倉庫に11~12月にかけて持ち込まれた現物はSRBがポジションを閉じたことに伴うものとの見方が広がっている。

4. 今後の銅相場の展開

 2006年の世界の銅需給について、国際銅研究会の見通しなどから4年ぶりの供給過剰となるため、市場関係者の間では、銅価格下落圧力が強まり、2006年の銅相場は軟化していくとの見方が一般的である。しかしながら、12月に入り、大手金融会社であるメリルリンチやUBS等は2006年の銅需給バランスを当初の供給過剰から供給不足との見方に変更し、2006年の銅相場予測も大幅に上方修正し、依然、高値を維持していくと予想するなど、国際銅研究会の予想に懐疑的な見方が広がっている。

今後の銅価格予想
2005年
2006年
2007年
UBS(スイス)
3,615$/t
3,967$/t(2,997$/t)
3,196$/t(2,689$/t)
メリルリンチ(米)
3,659$/t
3,637$/t(2,755$/t)
3,196$/t(2,424$/t)
マン・フィナンシャル(米)
3,641$/t
3,875$/t
3,200$/t
注)括弧内の数字は当初予想

  また、特に供給サイドの問題として、2005年、世界各地で頻発したストライキや環境問題を巡る地元住民とのトラブル等による供給障害、また、品位低下といった構造的要因、さらに、エネルギーコストや輸送コスト、人件費の高騰等の企業経営を圧迫する諸コスト増問題が顕在化しており、今後の銅価格は、このような影響を受け、不安定に推移する可能性があり、今後の銅市場を巡る動きを注意深く見守る必要がある。

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