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報告書&レポート

2006年1月5日 金属資源開発調査企画グループ 植松 和彦 e-mail:uematsu-kazuhiko@jogmec.go.jp
2006年02号

JOGMEC主催セミナー「持続可能な資源開発の展望と行動」の開催概要

 JOGMEC金属資源開発調査企画グループは、平成17年12月16日(金)14:00から東京ビッグサイトにて、標記セミナーを開催した。本セミナーは、2005年で7回目を迎える『エコプロダクツ2005』展に併せて開催され、国内の非鉄金属企業関係者、大学関係者など60名が参加した。
 昨今、我が国を含む先進諸国では、鉱業界を含め全産業界における持続可能な企業経営を目指した『企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)』に対する取組への関心が高まり、政府・経済界での取組や各企業での取組が始まっており、更にはCSRのISO化に向けた国際的な検討が始まっている。
 この様な状況下、当グループでは、国内関係者に対するこれら取組に関する基本的な理解や普及・啓発を目指し、標記セミナーを開催した。セミナーでは、持続可能な開発やCSR専門家や企業関係者から今後の持続可能な資源開発のあり方、GRIガイドラインによる情報開示のポイント、資源循環の新しいキーワード、鉱業界の先進企業による取り組み事例などを紹介された。本稿では、このセミナーの概要につき紹介する。





1. 「資源危機‐国益と地球益のジレンマとは」

国際連合大学ゼロエミッション・フォーラム理事 谷口 正次

 
 物質フローのトータルシステム上、資源素材加工部門から最終製品の利用消費までのフローにおいてはリサイクルやリユースが浸透しているが、資源素材加工部門から上流の鉱物採掘段階においては依然環境負荷の低減が重要な課題である。1850年代から2030年までの世界の鉱山開発の流れに触れ、欧州や米国での鉱山開発操業はそのピーク(欧州1870年代、米国1950年代)が過ぎ衰退、一方これに代わり、資源保有発展途上国での鉱山操業が資源供給を支えている。この状況が現在の自然破壊を含む環境問題はこれら資源保有発展途上国で顕著であることに特徴付けられる。
 非鉄金属産業は微量の金属成分を採取するために多くの土壌を採掘、採掘に伴い多量の廃棄物(ズリやテーリング)が発生し、これらの河川や海洋への投棄が環境に対し大きな負荷を与えている。世界銀行はこの様な鉱業活動に対し規制を強めている。資源確保には、環境と調和の取れた開発が望まれる。
 我が国の資源確保に関して、(1) “スイカ縦割り理論”に基づく資源戦略と外交、(2) M&A戦略と自主探鉱活動、(3) 技術開発、(4) 資源学の再構築と資源教育の復活の必要性を説き、特に技術開発分野ではバイオ・マイニング技術開発への期待が述べられた。
 


2. 「三菱マテリアルにおけるCSRへの取り組み」

三菱マテリアル 環境センター技術主幹 鹿島 亨

 
 三菱マテリアルグループの事業活動、製品、企業の変遷を紹介。同社は、従来から環境問題に取り組み、社内体制(環境担当役員[CGO]、環境経営委員会、環境センター、環境監査)が既に確立している。CSRに対する社内体制については、本来環境対応をも含むものであり統合した組織体制が考えられるが、同社としては当面環境対応の組織と並存する形でCSR対応組織(CSR担当役員、CSR委員会、CSR室)を構築した。同社の行動指針(10章)示すともに、具体的な活動として休廃止鉱山における鉱害防止活動(跡地復旧や植生調査など)、従来鉱山用坑木用などのために保有していた社有林での地球温暖化防止のための植林事業が紹介された。
 同社CSR活動における今後の取組は以下の通りである。
 (1) CSRメニューの充実(未着手分野への展開)
 (2) リスクマネジメント・コンプライアンス活動の更なる充実
 (3) PDCAによる実効性の確保
 (4) マテリアル・スチュワードシップ(ライフサイクルを通じた責任ある物質管理)への取組み強化
 (5) CSR報告書のGRIガイドライン準拠版早期発行検討
 (6) CSR報告書の第三者検証/評価の導入検討
 (7) ステークホルダーコミュニケーションの実施
 (8) 三菱マテリアルグループ全体への浸透
 

3. 「物質大循環時代の担い手としての新しい製錬所像について」

同和鉱業エコビジネス&リサイクルカンパニー 企画室 担当部長 仲 雅之

 小坂鉱山の開山から閉山、閉山から残された製錬所のカスタムスメルターへの変遷、小坂製錬所を中心としたグループ各社との各種金属のリサイクル回収システムの詳細を紹介。併せて製錬所で使用する原料として国内鉱石、海外鉱石、スクラップへの移行、リサイクル原料を写真入で判り易く紹介した。次に、物質大循環時代の到来として、その背景として以下の4点を説明した。
 (1) 中国、インド等における天然資源に対する旺盛な需要により資源開発に伴う環境インパクトが増加する。
 (2) 今後、中国が世界最大のリサイクル原料発生国となり工程スクラップの発生地が欧米から中国に移動する。
 (3) 使用済製品からの回収は世界的に急速に発展し、先進国のみならず途上国でも始まる。
 (4) 環境負荷が低く経済的で品質の高い物質循環の実現するためには、リサイクル能力の質的・量的充実が必要である。
 同社が今後備えるべき機能と進むべき方向性として、1. 環境汚染物質の除去、2. 多様なリサイクル原料への対応と地球環境問題への対応、3. 国際循環の要としての機能を果たす新しいモデルの開発の必要性が指摘されたた。
 最後に、同社は今後、発展途上国のリサイクル能力を補完した国際的に開かれた製錬所、地域ネットワークとしての位置付け地域のリサイクルニーズに対応した地域に開かれた製錬所としての 物質大循環時代に即応するリサイクル製錬所が必要であるとし、そのための多様なリサイクル能力の整備が必要であり、中核となる製錬所の一段の進化と、地球規模でのリサイクルネットワークを整備することが期待されていると締めくくった。




4.「日鉱金属におけるCSRへの取り組みについて」

 

日鉱金属 企画部 主席技師 山本 道晴

 CSR取組の背景、日鉱金属のこれまでの取組、持続可能性報告書の作成と今後について説明。
 同社は、加盟する国際金属・鉱業評議会(ICMM)の決定事項に沿うべくGRIガイドライン2002と鉱業補足文書に基づく持続可能性報告書作成取組こととなった。これまでの取組としは、2002年からの環境報告書発行と今般の持続可能性報告書作成に伴うCSR委員会の設置(2005年4月)及び下部組織の活動やCSR推進体制ではPDCAサイクルでの実施を決めたことを紹介した。
 次に持続可能性ワーキンググループ(WG)での取組を採り上げ、同社は2005年4月から取り組み開始、組織としては企画、総務、法務、技術、事業部(資源、製錬、リサイクル)、財務、営業、環境安全の管理職クラス14名の横断的な組織を設置した。WGは、準備段階としてCSR勉強会を開催、また、CSR及びGRIによる持続可能性報告に関する理解、どこまで報告するかという境界領域(報告の範囲)の設定、メンバーの役割分担(必須指標112項目)を検討した。
 各必須指標に対して、(1) 各担当で記載できるもの、(2) 各箇所、会社に問合せる必要のあるもの、(3) 直ちに記載できないものに分類分けし、併せて、各箇所、会社に対してCSR活動の周知、各箇所、会社に質問状によるデータ収集、ステークホルダー(取引先)の対話につき内容についいても検討した。同社の今後の3年間における取組は以下のとおり。
 (今後の取組予定)
 2005年度:試行期間のため、報告書作成の中で課題の抽出。委員会等の設置と組織体制を見直し
 2006年度:抽出された課題に対する対応策を検討、継続して報告できる体制の検討
 2007年度:持続可能性報告書を継続して作成できる体制整備。第三者認証
 



5.「鉱業界に対するCSR要求の高まり~鉱業に関するGRIガイドラインによる情報開示~」

創コンサルティング 代表取締役
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 非常勤講師
海野 みづえ

ナイキ事件など近年発生したグローバル企業が抱える社会的責任に係る事例を紹介し、国境を越えた取引に対しステークホルダーが監視を強化している状況。本邦鉱山企業の海外展開に伴う責任範囲に関し、従来からの国内関係ステークホルダーへの配慮に加え、海外での事業に参画している場合には、その範囲まで問われるという国内での企業の責任範囲が、海外事業への参画(鉱山開発プロジェクトへの参画)により責任範囲が海外にまで及ぶことを指摘した。
 鉱業のCSR配慮に関する特徴として以下の3点を紹介した

 (1) 鉱業は自然資源の大量採取産業であること。
 (2) 長くて複雑な生産チェーン(サプライ・チェーン)、上・下流の業者との情報連携が必要であり、自治体など、各種機関との協力関係の構築が求められること。
 (3) 鉱山付近のコミュニティとの共存が重要であり、現地固有の文化や慣行に配慮しまた地域との争議を最小化が課題であること。

 これらに共通した重要な取組の分野は2点1.生物多様性、2. コミュニティ開発)に集約され、鉱山会社が取組むべきCSR活動のポイントとして、国際NGO、現地鉱山の周辺住民、鉱山での労働者などの各レベルで、各種ステークホルダーとのパートナーシップが必要であることが指摘された。
 CSR報告書作成のポイントとしては、文章記述(エンゲージメントについての取り組み、地域への支援の姿勢、環境・社会影響の評価)と業界特有のパフォーマンス指標(生物多様性、コミュニティ開発)が重要であると述べた。
 今回の講演の最大のポイントとして、鉱山会社のCSRへの取り組み関しては、原則に沿い、自社にとって報告すべき課題を特定付け、優先順位付けし、それを指標と連動づけて報告内容をまとめることであり、採り上げた課題については全部をやる必要はなく優先的なものに取組むこと、また、報告書の記載方法に関しては、GRIの項目に沿って順に記載する必要はないと指摘した。

6. 「資源循環の新しいキーワード」

イースクエア代表取締役社長 ピーター D.ピーダーセン

 持続可能な開発に関する概念の誕生から、企業を取り巻く環境の変化(生態系の変化、資源制約の変化、グローバル経済の進展)、更には新興国でのニューコンシューマー(一家庭で年間1万ドル以上の購買力を手に入れた人々)の台頭など大きな流れを紹介。
 次に鉱業のみならず、企業が社会的責任(CSR)の実践を求められている過程において、新たな4種類のリスク要因(法的リスク、社会リスク、顧客リスク、投資家リスク)が台頭していることを認識することは非常に重要であると述べた。そしてこれらに対し戦略的方向性をもって対処すれば新成長領域に達するとした。
 新しい取組みや考え方としての事例として、ICMMなどが取組むマテリアル・スチュワードシップやサステイナブル/サプライ・チェーン・マネジメント(SSCM)、更に最先端のアイディアとして取組まれている『ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle: C2C)』の考え方やインテリジェント・マテリアルズ・プーリング(Intelligent Materials Pooling: IMP)を紹介し、関係者に新しいヒントを提供した。
 今回のセミナーに関し、会場で回収したアンケート調査によると、CSRへの取組自体が新しい取組であり、関係者としてもその取組を模索している状況で、どのように対応し、いかに報告書を作成していくかなどに関して有益な情報が得られたとのコメントも寄せられ総じて好評であった。
 セミナーでの講演資料に関しては後日JOGMECのHPにて紹介する予定である。また、JOGMECは今後も持続可能な開発とCSRへの取組に関して収集した情報や調査結果をJOGMECのホームページにて提供していく予定である。

(参考サイトアドレス)
JOGMECバーチャル金属資源情報センター:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/index.html

 ○ 平成16年度調査報告書:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/environment/index3.html

 ○ 講演会資料:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/koenkai_index/index.html

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