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報告書&レポート

2006年3月16日 リマ事務所 辻本 崇史 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2006年15号

本格銅山の誕生を待つエクアドル-エクアドル投資環境調査出張報告-


1. はじめに

 エクアドルは、鉱業国ペルーから続くアンデス山脈地帯に鉱床ポテンシャルが高く、昨今の非鉄市況の高騰が追い風となり、ジュニア企業を中心に金・銅の探鉱開発活動が活発化している。この中でも、カナダジュニアのCorriente Resources社が進めるMirador銅鉱床開発プロジェクトに対しては、「エクアドル初の本格的な銅山誕生」との関係者の期待が高まっている。
 本稿では、2月6、7日の両日、投資環境調査の一環としてエクアドルのキトを訪問し、Corriente社の現地支社長の他、鉱業次官、当国の鉱業事情に詳しい鉱業関係者数名と面談し、上記プロジェクトの現状、エクアドルの全般的な鉱業投資環境等について聴取する機会を得たので、その概要を報告する。
 

2. Mirador銅鉱床開発プロジェクトの現状

 本鉱床は、エクアドル南東部のZamora-Chinchipe地域内のCorrienteカッパーベルトと呼ばれる地帯(東西約20km×南北約60km)に位置する、ポーフィリー型の銅・金鉱床である。現在、Corriente Resources社が権益を保有しているが、2005年4月にF/S終了、同年12月にEIA(環境影響評価)報告書をエネルギー鉱山省に提出した。今回、同社のキト支社より提供された資料によると、鉱量(measured & indicated)は441百万t(銅0.61%、金0.19g/t)、これ以外に予想鉱量(inferred)として235百万t(銅0.52%、金0.17g/t)を計上している。
 鉱業次官によると、同社より提出されたEIA報告書は、現在、省内で審査中で、この一環として次官自ら2月7日(面談日の翌日)に現地サイトに視察に出向くとのことで、次官の見通しとしては、3月末までにはEIAは確実に承認されるとの由。政府として、EIA承認後の開発計画はCorriente社の問題としながらも、少しでも早期の工事着手、操業開始を期待しており、本プロジェクトを全面的にバックアップする姿勢である。
 一方、Corriente社は、EIAが近く承認されるのが確実な情勢を受け、2006年6~7月頃に鉱山工事に着手することを決定した。現在、カナダ本社では本プロジェクトに参画を希望する複数企業と交渉中であるが、本交渉の成否には関係なく工事には着手する予定で、当面の開発資金は自己資金で対応可能としている。なお、某銀行からは開発資金融資の申し出があるが、金利の問題もあり断っている模様で、この様な銀行の姿勢は、本プロジェクトが優良案件との証になり、他企業とのビジネス交渉に有利に働いている。
 現在の同社の開発計画によると、初期開発投資額は195百万$で、2008年中頃の開山を予定している。当初の操業規模は粗鉱量2.5万t/日(産銅量約6万t/年、産金量約1t/年、産銀量約12t/年)であるが、操業開始後3年を目処に粗鉱量を5万t/年に拡張する案も視野に入れている。当初の操業規模の場合、マインライフは38年である。
 F/Sの結果によると、下表の様に、銅価1.1US$/lbの場合、税引前IRRは22.6%、銅価1.0US$/lbの場合は、同15.8%であり、同社では十分な経済性があると判断している。

銅価 (US$/lb)
税引前IRR(%)
税引前NPV(百万US$)
* discount rate 8%
1.00
15.8
111
1.10
22.6
224
1.20
28.8
337
1.45
43.1
620

3. 他の注目プロジェクト

 上記のプロジェクト以外に、鉱業次官より、とくに今後の進展が期待されるプロジェクトとして下記の3プロジェクトが列挙された。
 
(1) Rio Blanco鉱床
 本鉱床地区は、エクアドル中南部のCuenca市の西方約40kmに位置する低硫化型の浅熱水性鉱脈型金・銀鉱床で、比較的金品位が高い鉱床が複数発見されている。現在、International Minerals社(米)が権益を保有し、本地区の内、現在はAlejandro Norteと呼ばれる高品位鉱床を開発ターゲットとして調査を集中し、2006年1月にF/S調査を終了した。これによると、鉱量2百万t(金8.1g/t、銀63g/t)、粗鉱量800t/日により産金量約2t/年、産銀量約12t/年、マインライフは7年。
 同社では、本F/S調査結果に基づき、2006年半ばにEIA報告書を提出し、本報告書の承認の後、2006年内の鉱山工事着手、2007年末の操業開始を計画している。また、これと並行して、Alejandro Norte鉱床に隣接するSan Luis鉱床の鉱量評価を2006年4月までに終了し、本鉱床も上記の開発計画にプラスした形でF/S調査を見直し、経済性を更に高める予定である。
 なお、同社は、2005年12月、本リオブランコ・プロジェクトの調査拡大により遅れていた、南部のMachala市の北方約50kmに位置するGaby金鉱床のF/S調査を2006年第1四半期に開始すると発表した。本鉱床は、ポーフィリー型の大規模低品位金鉱床(鉱量2億t規模、金品位0.8g/t)で、今後の進展が期待される。
 
(2) Junin鉱床
 本鉱床は、首都キトの北方約50kmに位置する、斑岩型の銅・モリブデン鉱床で、当時の金属鉱業事業団(MMAJ)とペルー政府との共同による資源開発協力基礎調査により発見された。平成9年度に終了した同調査では、予想鉱量318百万t(銅0.71%、モリブデン0.026%)を得ている。本鉱床の探鉱・開発は、環境問題を懸念する地元の反対もあり、その後、大きな進展は見られなかったが、現在、権益を有するAscendant Copper社(加)は、エネルギー鉱山省の支援をバックに、本格的なプロジェクト再開に向け地元との協議を継続している。2005年12月には、プロジェクトサイトの同社施設が鉱山開発反対派に放火される等、地元には未だ一部に根強い反対があるものの、同社、エネルギー鉱山省共に、地元との今後の協議の進展に自信を示しており、地元との合意を前提に2006年内にプレF/Sレベルの調査開始を目指している。
 同社は、独自の鉱量評価により、推定鉱量982百万t(銅0.89%、モリブデン0.04%)を計上している。
 
(3) Quimsacocha鉱床
 本鉱床は、エクアドル中南部のCuenca市近郊に位置する浅熱水性の金・銀・銅鉱床で、鉱脈型鉱床を主体とする。現在、IAMGOLD社(加)が権益を保有し、有望鉱床を発見しており、現在、集中的なボーリング調査を実施中である。
 同社は、2005年10月、既存ボーリングに基づく鉱量計算結果を発表した。これによると、鉱量(indicated)は22.5百万t(金3.9g/t、銀25g/t、銅0.16%)、この内の高品位部は鉱量8.5百万t(金6.8g/t、銀42g/t、銅0.24%)である。
 同社は、鉱床は更に周辺部に連続し鉱量の増加は確実なことから、以後も集中的なボーリング調査を継続し、2006年1月には新鉱脈の着鉱を発表し、鉱量は大幅に増加する見通しとした。2006年上期には、更に5百万US$のボーリング調査により鉱量の拡大を図ると共に、冶金試験も計画している。
 同社では、本鉱床の発見を最近の世界的金鉱床発見の一つとしており、今後、開発に向けプロジェクトを加速させる。
 

4. 投資環境評価

(1) 鉱業投資環境に係わる面談のポイント
 今回、当国での鉱業活動(主に探鉱)に長年携わってきた鉱業専門家数名(石油業界にも明るい人物を含む)と面談し、エクアドルの全般的な鉱業投資環境について聴取した。この結果は、以下の様に集約される。
 
・エクアドルは、周辺の中南米の鉱業国と比較し、鉱業投資の観点から、ほぼ全ての面で同等か勝っている。政治的には政権は変わるが、近隣国のベネズエラやボリビアの様に極端な政策を唱える政権が生まれる状況にはない。経済も、ドル化政策以降は安定的に推移し、治安もコロンビアとの国境付近を除いては一般に良好で、税制や鉱業法も周辺国に比較し少なくとも劣ることはない魅力的な制度である。インフラも比較的整っている。
 
・唯一の問題は、インフォーマルな金採掘を除き、この国には生産鉱業が未だ成立していない事である。従って、エネルギー鉱山省の大臣は石油にしか関心がなく、鉱業には知識もない。実質的な鉱業行政のトップは鉱山次官なので、政府内で鉱業問題がほとんど取り上げられない。国民も鉱業を知らないので、鉱業活動に対する理解が得にくい。また、政府は鉱業収入も期待しておらず、鉱業への課税強化等は考えていない。そのため、逆の見方をすれば、鉱業参入にはチャンスとも考えられる。
 
・多くの探鉱プロジェクトでは、地元との対立はなく進んでいる。地元と良好な関係を築けば、悪質な環境NGOの入る余地はない。当国に環境NGOは多いが、多くは良識のある善良なNGOで、彼等はむしろ鉱業推進のパートナーに成り得る。問題なのは一部の悪質な環境NGOで、Juninプロジェクトが、この悪質な環境NGO対応に苦慮している典型例である。しかし、このJuninの問題はむしろ例外的である。少なくとも周辺国に比較して、地元問題により探鉱・開発活動に障害が出ているケースは少ない。
 
(2) 石油関係者からのコメント
 石油産業は当国最大の産業で、既に多くの外資が参入しているが、石油産業に詳しい人物よりエクアドルの投資環境等について下記のコメントがあった。
 
・エクアドルは、隣国に見られる様な政権交代による政策の大きな転換リスクは少なく、投資環境にとくに問題はない。現在の油価の高騰から、企業も高収益を上げ、政府も税収が増えている。
 
・但し、油価高騰の折、税収増を狙う政府はかなり強引な手法で石油開発会社の既得権益を脅かす事件も発生し、国際裁判になっているケースもある。従って、石油開発会社にとって政府との良好な関係維持は重要である。
 
・鉱業も将来的に発展し、政府から収益性の高い産業と認識されるようになると、周辺国で見られる様なロイヤルティ制度等、課税強化措置が取られる事は十分に有り得る。この点は、念頭に入れておく必要がある。
 
・石油開発に際し、地元問題で多少はこじれる場合もあるが、多くは対処可能であり、この問題でプロジェクトの成否問題にまで発展するケースはほとんどない。石油開発会社から見て環境NGOの多くは良識ある組織で、問題なのは一部の環境NGOのみである。

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