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報告書&レポート

2006年4月13日 バンクーバー事務所 中塚 正紀 e-mail:nakatsuka@jogmec.ca
2006年21号

Roundup 2006での非鉄金属メジャーのメッセージ-大鉱床と労働者不足を危惧-

 カナダの鉱業大会は、主に国内の探鉱活動が終了する晩秋から年末にかけて各州で順番に開催される。バンクーバーのRoundupは、BC州、Yukon準州、米国アラスカ州が中心となり、毎年1月末、地域鉱業大会の最後として開催され、企業間の探鉱プロジェクトの交渉がピークになるといわれている。2006年も1月23日から26日まで5,400名が参加し、盛大に開催された。本稿は、Roundup2006において人気を呼んだ講演等の概要紹介を通じ、Roundupから発信されたメッセージの変遷、大鉱床と労働者不足による鉱業界への影響を危惧するFalconbridge社長のコメントや非鉄メジャーの探鉱戦略等を紹介する。

1. Roundupに見るメッセージの変遷

 毎年3月にトロントで開催されるPDAC(Prospectors and Developers Association of Canada:カナダ探鉱開発協会)International Conferenceは、鉱山会社や探鉱会社、ボーリングや物理探査等の関連企業に加え、銀行やトロント証券取引所などの金融関係者、各国政府機関など幅広い鉱業関係者が参加する世界でも最も大きな鉱業大会である(2005年の参加者12,000人)。
 これに対し、バンクーバーのRoundupは、地元のAMEBC(Association for Mineral Exploration British Columbia:BC州鉱物探鉱協会※)が主催し、主にジュニア企業や探鉱関係者が中心に参加するもので、2つの大会は違った性格を持っている。
 現在の金属市況の上昇が始まった2004年以降、Roundupで発信したメッセージを思い返すと、カナダ鉱業関係者がどのような目標を持ちながら探鉱を展開してきたかわかりやすいので、まず始めにこれまでのRoundupが発信してきたメッセージの変遷を紹介する。
※BC & Yukon Chamber of Mines(BC州及びユーコン準州鉱業協会)がこの大会からBC州とYukon準州に分離されたことから、AMEBCに改組。本協会がRoundupを主催。ただし、従来どおりアラスカ州、ユーコン準州及びBC州が大会を構成。

 (1) 2004年は、前年後半からニッケルや銅など金属価格が上昇し始めたことから参加者も3,900人と大幅に増加。大会は多くのジュニア企業や探鉱者が復帰し、それまでの長期にわたる探鉱活動の低迷から目覚め、今こそ探鉱関係者はフィールドに出て活動すべきであると参加したジュニア企業関係者に宣言。
 (2) 2005年、中国の経済成長に伴う金属需要の拡大を背景に市況は高水準を維持。一般投資家が株式市場に戻り、探鉱活動が急速に拡大。参加者も5,200人に増加。メジャー企業や鉱業協会は、メジャー級の新たな鉱床発見を求めてモンゴルからロシア、そしてアフリカ等に探鉱活動の拠点を拡大し、未探鉱地域へのチャレンジを強調。
 (3) そして今年2006年は、当面、市況の高値安定と探鉱投資の堅調が予想される中、世界のメジャー企業8社の副社長クラスが自社の求める探鉱戦略をプレゼン。ジュニア企業とともに新たな大規模鉱床の発見に向けて一丸となって探鉱プロジェクトを推進する旨メッセージを発信。

 

2. “大鉱床と労働者不足”を危惧(Falconbridge社Aaron Regent社長のインタビュー)

 Inco社によるFalconbridge社買収が世界の注目を集める中、Roundup2006に出席したFalconbridge社Aaron Regent社長は、関係者のインタビューで今後の需要や鉱業界の問題について次のように語った。
 
・新たな大規模鉱床の不足
 鉱化帯の発見から生産鉱山への移行は、かつて今日言われているほど難しいものではなかった。初期の評価調査段階からより詳細なFS調査までに必要な時間は、少なくとも4年から5年へと長期化している。より大規模で複雑なプロジェクトは10年ぐらいかかるに違いない。それらの調査は、2,000万$から約2億$のコストがかかる。徐々に長期化するリードタイムや熟練労働者の不足などの要素は需要を満たそうとするベースメタル生産者を追い詰めるだろう。
 これらは1990年代の探鉱投資が縮小したことによる遺産であり、新たな鉱山が生産へ移行するのに長時間を要する原因となっている。新たな大規模鉱床の不足は今後10年にわたってベースメタルの需要を満たそうとする世界の鉱業活動の妨げになるだろう。
 
・今後の需要見通し
 他方、需要は拡大が期待されている。銅の需要は過去35年の間に年間約3%で安定した成長を続け、ニッケルの需要は、同様の期間に年間約4%で成長して来た。そしてこの傾向は続いていくだろう。中国の急速な工業化は過去5年にわたり金属価格を押し上げ、今後も市場を引っ張るだろう。金属使用量が農業から工業経済に移行する人口と同様に増加することに注目している。英国における産業革命による金属消費の拡大が、日本や韓国経済において再現されてきた。そして現在、中国やインドにおいてこうした動きが確かに始まっているという真実がある。
 
・熟練労働者の不足問題
 熟練労働者の不足問題は、新たなプロジェクトを開発する鉱山会社の事業拡大の妨げになるだろう。鉱業界は鉱業に価値を見出せず、若者が他の産業へと向かった1990年代の失われた時代の影響を痛感している。Falconbridge社としては、鉱山のマネジャーやその他の労働者の供給源として南米、特にチリに注目している。

3. 主要メジャー各社の探鉱戦略

 2006年の大会で参加したジュニア企業にとって一番人気があった世界のメジャー企業の探鉱担当副社長によるプレゼンテーションから具体的な目標等を発表した主要5社の探鉱戦略を以下に紹介する。
 
1) Teck Cominco社(Fred Daley Vice President Exploration)
 2001年にTeck社とCominco社の合併により世界の探鉱グループを創設。
 11か国に事務所を設置し、銅、亜鉛、金、ダイヤモンドやニッケルの探鉱を実施。探鉱グループは、全体の探鉱戦略を策定し、初期ステージの探鉱機会を明確に示すとともに個人探鉱家からメジャー企業までジョイントベンチャーのために選択すべきパートナーの評価を実施。
 鉱山における新たな資源の開発に加え、Teck Cominco社は、コア金属である亜鉛、銅、金の新たな鉱山の開発、非LME商品への多角化、新たな探鉱地域の拡大そして独自技術の適用の機会を探している。
 
・探鉱ターゲット等(鉱種・地域・規模)
 コア金属における新たな開発機会の発掘が、最優先課題である。
 最近の例として、以下地域で良質な探鉱プロジェクトを保有。(獲得も含む。)
  銅プロジェクト:カナダBC州、豪州、チリ、ペルー、メキシコ、ナミビア
  亜鉛プロジェクト:米国、豪州、アイルランド
  金プロジェクト:カナダ、米国、チリ、アルゼンチン、トルコ、ナミビア、豪州など
  他の商品への多角化:カナダのダイヤモンドやブラジルのニッケルの探鉱を展開。
 この他、ベースメタルや貴金属の新しい探鉱機会としてスウェーデン、アイルランド、東ヨーロッパ、西アフリカ、パプアニューギニア、中国及びモンゴル等の地域で評価を実施。
 単独Project, JV, Equity投資等の形態で上記のような地域で探鉱プロジェクトを実施しており、これらのプロジェクトの選定は、Risk analysis、人の健康・安全及び政治環境等により格付けし、実施している。また、株主には、最高の利益をもたらすため、製品の多様化を図っている。
 例えば、世界第二の供給量の無煙炭や、最近ではOil sand projectへの参画など、今後とも持続的な成長と拡大、金属以外の分野への多様化を目指す。
 興味のある鉱床タイプとしては以下のものである。
  Zinc-sedex, Irish, MVT, BHT
  Copper-porphyry, IOCG, Sediment-hosted
  Gold-High Sulphidation, greenstone hosted, sediment hosted, intrusion-related
  Nickel-Sulphide, laterite
 
2) BHP Billiton社(Steve Swatton, Head of Business Development, Exploration group)
 BHP Billiton社は、バンクーバー、リオ・ジャネイロ、ヨハネスバーグ、モスクワ、北京、パースの6か所に広域探鉱事務所を設置。この他、リマ、サンチアゴ、Conakry(ギニア)、Luanda(アンゴラ)、Lubumbashi(ザイール)、New Delhi(インド)、蘭州、Ulanbator(モンゴル)にField officeを設置し、各地域の探鉱を支援。
 2005/2006年会計年度は1億US$以上の探鉱費と更に、2,000万US$のパートナープログラムの探鉱費を計上。
 これらの予算は、BHP Billitonの価値を上げる鉱種を対象としており、Diamondに35%、Cuに30%、Niに25%、その他として石炭、鉄鉱石、ボーキサイト等。
 
・探鉱推進の考え方
 “Win-win relationships”は、我々の経営思想でもある全てのパートナーとの関係を大事にし、共存共栄を図るという理念である。具体的には、Junior企業のリスクの減少と同時にBHP Billiton社がより多くの場面に携わることを企図し、契約内容にも反映させている。最近では南豪州においてMinotaur社がパートナーとなり、Prominent Hill Cu-Au鉱床を発見したのが良い例である。
 パートナーとの関係構築においては、景気の浮き沈みにとらわれず、不況時は、優良なJuniorパートナーには資金調達の支援などを行い、好況時は、我が社(BHP)の探鉱理論や技術の移転を図っている。我が社の戦略は、絶えず技術面での開発や改良を通じて競争力を確保していくこと。
 21世紀は、既存の探鉱地域以外においても探鉱の実施能力を有し、これを推進することが成功の道である。一般的な固定観念では、大企業はリスクを避けたがるものだが、BHP Billiton社の実態はそうではない。その証拠に、中,南アフリカ、南米北方、アジアで成功してきた。
 探鉱を成功に導くためには、よいパートナーシップに拠るところが大きく、今後も こうしたパートナーシップを確約する。
 
3) Kennecott Exploration社(John Main, President & CEO)
 Rio Tinto Exploration(RTE)は多分に探鉱成功よって世界最大の価値を創出した企業である。Kennecott Exploration(KEX)はRTEの一部であり、RTEからKEXへの指示は、大規模で、長期採掘が可能な、低コストの鉱床発見である。
 
・探鉱ターゲット等(鉱種・地域・規模)
 RTEが求めている鉱床の発見や取得は、それを開発する時点で、Rio Tintoの資産に2-3%位の影響を及ぼすサイズであることが必要。それは、年間純利益で約1億$であり、年間売り上げにすると4-5億$位の規模。言い換えれば、年間生産量にして、金で100万oz;銅で22.5万t;Diamondで500万カラット程度の鉱山であって、約10-20年のマインライフを有することが、真のWorld classの鉱山と考えている。また、探鉱対象は 国際的に取引が行われている主要鉱種のみ。KEXは、これら限られた対象鉱種について必要量(品位 鉱量共に)を満たし、長期採掘が可能な鉱床を探している。
 具体的には、例えばPorphyry copperやマグマ起源Ni鉱床のようなマグマの活動に関連してできる鉱床、堆積盆地に大規模に生成しうる石炭、potash, phosphate, borate,或いは地表の広大な地域に出来るボーキサイト、Ni-ラテライト、鉄鉱床等が対象。
 探査は、対象鉱床が存在する既知の地域又は新たな地域を念頭に置き、地方-中央の政府関係等から得られる地質、物化探などのデータや情報を基に目標選定を行う。政治や社会環境が安定し、対象地域の土地の取得などが可能であり、商業契約などに有効な価値を持つものであればKEXは交渉に応じる。
 
4) Falconbridge社(Paul Severin, Vice President Exploration)
 Falconbridge社の探鉱部門は、長期雇用専門家等が119人とサービス関係者により構成。ケベック州Motreal、チリのSantiago、ブラジルのBelo Horizonte、豪州のBrisbanに4つのHub Officeを設置。これら事務所の管轄外の地区は、Torontoが見ている。
 探鉱チームは、Brownfieldの探鉱を行っており、最大のチームはSudburyをベースにしている。この他、Field officeは、必要に応じ設置することとし、現在はMexicoとNorwayに設置。
 先の長期にわたる不況時期は、ジュニア企業によるBase metalのGreenfield探鉱が不足し、自社で探鉱をせざるを得なかったが、我々は初期探鉱活動のリスクやコストを負担しあえる持続的なJV参加者を常に求めている。
 例えば、NorwayではBalackstone Ventures Inc.と、またBrazilではCastillian Resources Corp.とこうしたJVを行っている。この他Farm-inについても、有望なProject を求めており、Chileに於けるMetallica Resources Inc.のEl Morro Cu-Projectや、Tanzaniaに於けるBarrick Gold社とのKabanga Ni-Projectが良い例である。
 Falconbridge社(旧Noranda IncとFalconbridge Ltd)の2005年探鉱予算は68.5M$(2004年は38.7M$)。それぞれNi 61%;Cu 33%;Zn 6%で配分。
 
・探鉱ターゲット等(鉱種・地域・規模)
 Falconbridge社は、今後ともNiとCuの市場が基本的に明るいものと確信。同社の”New Business Group”は、探鉱、市場開発、Project & Engineeringなどの部門により構成され、そのミッションは、経済的に魅力のあるNiとCuの鉱床を発見又は獲得し、開発することにある。
 同グループの各部門は、直接社長に報告する体制をとり、Ni、Cu、Znのビジネスユニットと互いに緊密に連携し業務を推進。同Groupのターゲットは、最低15年以上のマインライフを有し、経済活動のサイクルにおける上昇期を一回以上経験できる規模の鉱床である。新鉱山の経済性(品質/サイズ)の基準は、新鉱床の存在する地域にもよるが、一般的な最低基準は、2千万tNi 1.5%(Ni-Sulfide。ラテライトだとサイズがより大)又はCu 1%相当で2億t。
 探鉱チームの対象とする鉱床は、以下のとおり。
 
 1) Ni-sulfide(含Cu-Pt-Pd)鉱床で特にThompson, Norilsk, Voisey Bayのような地質環境を有するもの
 2) Niラテライト鉱床で特に乾式製錬法に向くもの
 3) Porphyry Cu(含Au, Mo)鉱床で酸化帯を持つもの
 4) Iron oxide Cu-Au鉱床
 なお、これらはケースバイケースで評価され、火山性塊状硫化鉱床やZnも含まれる。
 5) Newmont社(M. Stephen Enders, Vice President Worldwide Exploration)
 Newmont社の探鉱部門は、約350名の地質技師に加え500名の補助人員や請負者より構成。
 主要探鉱事務所は、DenverとPerthにあり、その他、鉱山サイトに探鉱事務所を活用するなど、さまざまな地域やプロジェクトの事務所を設置。
 指導チームは、Vice President Exploration Business Development, Chief Geoscientist, General Manager Of Mineral District Exploration, 4人のRegional Exploration DirectorとVice President Worldwide Explorationへの連絡係で構成。
 2005年の探鉱予算は、1億8940万$。この内95%が金探鉱に配分。予算中66%(1億2,400万$)がnear-Mine Explorationに、22%(4,150万$)がGreenfield Explorationに配分。残りは探鉱Specialist, R & D, G & Aに使用。
 予算の10%はOpportunity Fundと称し、年初から別個に据え置き、良い結果が出たもののFollow-upまたはNew opportunityが出来た時に対応。
 予算の地域配分は:南米約30%、北米26%、Australia19%、Africa/Europe13%、Indonesia5%、support用7%。
 
・探鉱ターゲット等(鉱種・地域・規模)
 我々は、世界の金鉱床を14styleに分け、統計分析により経済モデルを作成、これらにより探鉱プロジェクトを判定。
 生成要因からGreenfieldの見通しまで、基本的に我々の最も必要とする規模と品位の鉱床をもたらしてくれると期待出来る鉱床、例えば堆積岩を母岩とする造山帯起因(Orogenic)、アルカリ岩系;古代砂金鉱床等を探鉱。
 我々がこうした地域に既に鉱区又は稼行鉱山を所有している場合、我々は探鉱対象を広げ、浅熱水性とPorphryタイプの鉱床も含まれる。地域や経済性にもよるが、最低限の鉱床規模は金100万から300万oz程度である。探鉱予算の約40%は造山帯源の金の探鉱に配分。
 Newmont社は、あらゆるスケールで統合されたgeological frameworkからアプローチし、最高の専門家により構成される総合的な検討チームがこれを評価し、統計的に有望地域のリスクとランク付けを行う。こうして地域が見えたら、これらのチームは、広域、地区、鉱兆地等の地質情報を集め、そして有望性、感度、探鉱リスクを分析する。すべてのProjectは、世界的にランク付けされ、最も良いものは、それらのExploration Protocol and strategiesと共にWorldwide Portfolioに保管される。

 
4. 最後に

 今回のラウンドアップは、これまでにない好景気の下、大盛況で終了した。今後とも中国等の経済成長が世界の資源需要の牽引車となることが予想される中、需要に見合った供給量の確保が重要課題との認識の下、世界の探鉱投資額が前回ピーク時にほぼ到達したもののその成果となる大規模鉱床の発見につながっていない現状を重視し、メジャー各社は探鉱を成功に導くための戦略を必至で追求している大会でもあったと感じている。

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