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報告書&レポート

2006年5月11日 リマ事務所 西川信康 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2006年28号

ペルー・アンタミナ鉱山及びワンサラ鉱山現地調査報告

 周知のとおり、ペルーは、鉱物資源ポテンシャルが高く(最新の2005/2006年版フレーザーレポートでは、地質鉱床ポテンシャル部門で世界トップにランク)、多くの鉱種で世界の主要生産国となっており、最近の経済情勢の安定化、非鉄市況の高騰を背景に、生産、探鉱開発とも活況を呈している。
 また、ペルーは、日本企業が古くから鉱業活動を展開している国としても知られており、三井金属鉱業他によるワンサラ鉱山(鉛・亜鉛)はその代表である。また、最近では、三菱商事が資本参加し2001年より生産を開始したペルー最大のアンタミナ鉱山(銅、亜鉛)がある。これら鉱山などペルーから日本へ供給される銅精鉱及び亜鉛精鉱の量は我が国全輸入量のそれぞれ、7.2%、18.6%(2004年)となっており、ペルーは我が国にとって重要な資源供給国の一つとなっている。今般、日本企業が参画しているこれら2つの鉱山を訪問する機会を得たので、これら鉱山の概要を紹介する。

1. ペルーの鉱山生産

 2005年のペルーの主要鉱産物の鉱山生産量は表1のとおりで、ペルーは、多鉱種にわたって世界の主要な生産国(2005年は、銅4位、亜鉛3位、鉛4位、金4位、銀1位)であり、特に、銅及び金はこの10年で約2.5倍と大きく拡大しているのが特徴的である。また、Metals Economics Groupによると、2005年のペルーにおける探鉱投資額(予算ベース)は、前年比23.6%増の241.9百万$で世界第5位(南米では第1位)となっており、将来に向けた鉱山開発投資も増加傾向にある。

表1 ペルー鉱山生産の世界ランク(2005年)
(金属量)
鉱種
ペルー生産量
世界生産量
生産比率
世界順位
銅(千t)
1,009.9
14,979.7
6.7%
4
亜鉛(千t)
1,201.5
9,227.5
13.0%
3
鉛(千t)
319.3
3,558.3
9.0%
4
金(t)
207.8
2,193.1
9.5%
4
銀(t)
3,193.1
19,342.2
16.5%
1
出典:WBMS

 ペルーの銅及び亜鉛鉱山別生産(表2、表3)では、銅、亜鉛ともアンタミナ鉱山が最大の生産規模を誇っているが、銅については、その多くが世界の大手非鉄企業が操業しているのに対し、亜鉛については、アンタミナ鉱山を除けば伝統的にペルーの民族資本の企業が操業する小中規模クラスの鉱山が多いのが特徴的で、我が国の三井金属鉱業他が40年近く操業しているワンサラ鉱山もこの一翼を担っている。

表2 ペルー銅鉱山別生産量(2005年)
(金属量)
順位
鉱山名
操業企業
生産量(千t)
1
ANTAMINA CIA.MRA.ANTAMINA
383,039
2
CUAJONE SOUTHERN COPPER CORP.
163,659
3
TOQUEPALA SOUTHERN COPPER CORP.
157,455
4
CERRO VERDE SOC.MINERA CERRO VERDE
93,542
5
TINTAYA BHP-BILLITON
73,930
  その他  
138,273
  総計  
1,009,898
出典:ペルー・エネルギー鉱山省

表3 ペルー亜鉛鉱山別生産量(2005年)
(金属量)
順位
鉱山名
操業企業
生産量(千t)
1
ANTAMINA CIA.MRA.ANTAMINA
218,265
2
ISCAYCRUZ EMP.MRA.LOS QUENUALES
158,567
3
CERRO DE PASCO VOLCAN CIA.MINERA
126,607
4
MILPO CIA.MRA.MILPO
89,346
5
ATACOCHA CIA.MRA.ATACOCHA
59,174
10
HUANZALA CIA.MRA.SANTA LUISA
38,100
  その他  
511,612
  総計  
1,201,671
出典:ペルー・エネルギー鉱山省

2. アンタミナ鉱山及びワンサラ鉱山へのアクセス

 アンタミナ鉱山、ワンサラ鉱山とも、アンカッシュ県のアンデス山系(海抜3,900~4,500m)に位置し、首都リマよりパンパシフィックハイウェイを約200km北上し、パティビルカからワラス街道、アンタミナ道路を経由、全面舗装道路で6~7時間を要する。また、2つの鉱山の移動時間は約1時間である。両鉱山とも4,000m級のアンデス山脈の高地にあるため、血圧や血中酸素濃度等、高山病に対するメディカル検査を受け入山することになっている。

アンタミナ鉱山及びワンサラ鉱山位置図

3. アンタミナ鉱山の概要

 アンタミナ鉱山は、ペルーで最大の銅、亜鉛鉱山で、世界でもトップクラスの露天掘り鉱山として知られている(2005年:銅5位、亜鉛7位)。同鉱山には三菱商事が開発段階から10%の資本参加をしており、日本には、銅精鉱、亜鉛精鉱ともそれぞれ約6万t(金属量)が供給されている(2004年実績)。以下にアンタミナ鉱山の概要を記す。

(1) 出資比率: BHP Billion 33.75%、Falconbridge 33.75%、Teck Cominco22.5%、三菱商事10%

(2) 沿革:1860年イタリア人により小規模な鉱床の存在が初めて報告される。
 1950年代Carro de Pasco社による探鉱の実施。
 1980~95年Minero Peruによる管理
 1996年~Rio Algom MiningとInmet Miningによる本格的な探鉱実施
 1997年BHP Billion、Noranda、Teckによる開発の決定
 1998年三菱商事による資本参加
 2001年~生産開始

(3) 地質鉱床
 アンタミナ地域の地質は下部白亜紀系地積岩類と中新統貫岩類からなる。鉱床は石灰岩からなるセンディン層とファシャ層に貫入したモンゾニ斑岩によって形成したスカルン鉱床。スカルン鉱化体は貫入岩体の周りにゾーニングしており、内側から外側にかけて以下の5つのゾーンに分類される。
 ・内帯:ピンクガーネットスカルン。黄銅鉱等の鉱染を伴う。
 ・中間帯:黄銅鉱主体の褐色ガーネットスカルン。
 ・外帯混合帯:褐色~緑色ガーネットスカルンへの移行帯。黄銅鉱及び少量の閃亜鉛鉱を伴う。
 ・外帯:緑色ガーネットスカルン閃亜鉛鉱を主体とし、黄銅鉱を伴う。
 ・珪灰石外帯:斑銅鉱と閃亜鉛鉱からなる。
 なお、埋蔵鉱量は、559百万t、品位:Cu 1.3%、Zn 1.06%、Ag 14.1g/t、Mo 0.03%。マインライフは約20年。

(4) 操業状況
 2005年の生産量は、銅38.3万t、亜鉛21.8万t、モリブデン6,722t(いずれも金属量)。従業員数は約2,000名(正社員約1,000名、短期契約社員約1,000名)。
 採掘は露天採掘法で、最新のディスパッチシステム(ショベルやダンプトラック等の稼動状況をモニタリングし、リアルタイムで採掘管理を行うシステム)を導入し、作業効率を大幅に向上。最終ピットサイズは直径1,200m深さ465m、剥土比は2.36:1である。
 選鉱は一般的な浮選処理を実施している。採掘された鉱石はオープンピット内にあるジャイレトリークラッシャーで一次破砕を実施後、選鉱プラントへ輸送され、磨鉱(SAGミル、ボールミル)、浮選が行われる。生産された精鉱は、パイプラインによるスラリー輸送により山元から302km離れたHuarmay港まで輸送される。また、選鉱廃さいは、自然の氷河湖を利用した堆積場に投棄している。
 
(5) 今後の見通し
 アンタミナ鉱山の特徴は銅に富む鉱体と亜鉛に富む鉱体が混在しており、採掘計画に応じて、それぞれの金属の生産量が変化するという点である。2006年は、銅主体の鉱石が採掘対象になるため、亜鉛生産量は前年比約30%減となる見込みである。但し、その後は、徐々に亜鉛リッチの鉱石の採掘に移行していくため、中長期的には、銅の生産量が減り、亜鉛の生産量が増加する見通しである。

アンタミナ鉱山遠景

4. ワンサラ鉱山の概要

 ワンサラ鉱山は三井金属鉱業及び三井物産が出資するサンタルイサ鉱業によって1968年より操業している歴史のあるペルーを代表する鉛・亜鉛鉱山の一つである。また、本邦企業の資本のみによって操業されている唯一の海外鉱山である点からも注目される。以下に概要を記す。

(1) 出資比率
 サンタルイサ鉱業(出資比率:三井金属鉱業:70%、三井物産:30%)

(2) 沿革
 1918年ペルー人Piaggio氏が鉱区を取得
 1957年CERRO DE PASCO社が探鉱を実施
 1961年三井金属鉱業、買山調査開始
 1966年サンタルイサ鉱業の全株式購入(出資比率 三井金属:70%、三井物産:30%)
 1968年6月開山式(ベラウンデ大統領出席)500t/日で操業開始
 1973年900t/日に増産、1985年1,000t/日に増産
 1992年~採掘、選鉱設備の近代化を開始し逐次増産、1998年1,700t/日体制へ
 2003年1,530t/日に減産

(3) 地質
 白亜紀のサンタ層及びカルワス層の石灰岩、石灰質頁岩を交代した熱水性鉱床(中低温タイプ:250~350度)で、レンズ状、層状、または不規則塊状を呈しており、5つの鉱床帯からなる。鉱化作用は、関係火成岩とされるストック状花崗岩斑岩を中心として北西~南東方向に6km以上に及ぶ。北からアルベルト坑、レクエルド坑、ワンサラ本坑、ワンサラ上部坑、ワンサラ南部坑に分けられる。鉱石鉱物は、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱が主体で、黄銅鉱などを伴う。2004年現在の鉱量は約550万t(銅0.5%、鉛4.5%、亜鉛10%)。

(4) 操業状況
 2005年の生産量は亜鉛74,381t(精鉱量)、鉛24,322t(精鉱量)。なお、累積生産量(1968年~2005年)は粗鉱1,340万t、亜鉛精鉱228万t、鉛精鉱76万tに及ぶ。従業員は約400名で、うち日本人が技術顧問として3~4名勤務している。
 採掘はカットアンドフィル法でトラックレス方式により鉱石を運搬する。主な採鉱機械は、油圧ジャンボ、LHD機、ルーフボルター等新鋭機で、クルーシステム(分業・専業化システム)を採用。
 選鉱は、先に鉛を浮かせ、次に亜鉛を浮かせる直接優先浮選方式を採用。なお、発電は雨季には水力発電(4,200kw)、乾季には自家発電(ディーゼル、3,500kw)を利用。
 生産された精鉱は30tトラックによりカジャオまで運搬。亜鉛精鉱の約8割は日本向けで、残りはペルー国内及びブラジル向け。一方、鉛精鉱は、ペルー国内及びスポット市場向けとなっている。
 環境対策は環境適正化プログラム(PAMA)に基づき実施中で、堆積場は2か所(1か所は植裁済み)、中和処理施設(処理能力 8m3/分 ph3からph8.5に中和)がある。また、現在、ウェットランド法(広大な湿地帯に、あしを生やし、バクテリアを利用した坑廃水処理技術)の採用を検討中。

(5) 今後の見通し
 ワンサラ鉱山は、操業開始からすでに38年になり、終掘が近づく中、2006年3月に同鉱山近傍に新たにパルカ鉱山(年間亜鉛精鉱31,400t:地金換算約16,000t/年)が誕生し、ポスト・ワンサラに向けて新たな一歩がスタートした。また、周辺地区の探鉱も鋭意実施中で、今後の成果が期待されている。
 

5. おわりに

 ペルーでは、日本企業が投資を行っている鉱山としては、パルカ鉱山を含めた上記3鉱山の他に、2006年中に銅精鉱の生産開始が予定されているセロベルデ鉱山(Phelps Dodge 53.56%、Buenaventura 18.21%、住友金属鉱山16.8%、住友商事4.2%等)があり、最近の原料不足等を背景に、我が国企業による鉱山開発投資は拡大傾向にある。また、JOGMECもパシュパップ地域(アンカッシュ県)におけるJVプロジェクト等、日本企業への継承を目指した探鉱活動を行っており、近い将来、ペルーにおいて日本企業が参画する新たな鉱山が立ち上がり、日本への資源安定供給の面で一層の貢献が期待される。
 最後に、今回のアンタミナ鉱山及びワンサラ鉱山の見学にあたって便宜・ご協力いただいた三菱商事株式会社及びサンタルイサ鉱業株式会社に感謝申し上げる。

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