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報告書&レポート

2006年5月18日 サンティアゴ事務所 中山 健、平井浩二 e-mail:(中山)nakayama-ken@entelchile.net (平井)hirai-koji@jogmec.go.jp
2006年30号

チリ新政権下の鉱業関連組織とその陣容について

 去る3月11日にBachelet新政権が発足し約2か月が経過した。鉱業エネルギー省および傘下の鉱業関連組織幹部の陣容が固まってきたので紹介するとともにその鉱業振興の観点から評価について解説する。

1. 組織

 今回の政権交代による組織の大きな改正は、これまでの経済エネルギー省(Ministerio de Econimia y Enerugia)にあったエネルギー部門が鉱業省に移管され、旧鉱業省は鉱業エネルギー省(Ministerio de Mineria y Energia)に、旧経済エネルギー省は経済省(Ministerio de Econimia)となった。鉱業大臣が国家エネルギー委員長を兼任。鉱業エネルギー大臣の下に鉱業次官とエネルギー次官が置かれた。
 第1図に鉱業エネルギー省鉱業部門の組織図を示すが旧鉱業部門自体の組織には変更はない。
 以下非エネルギー部門幹部のプロフィールを紹介する。

2. 鉱業関連組織幹部プロフィール

(1) 鉱業エネルギー省(Ministerio de Mineria y Energia)

鉱業エネルギー大臣(Ministra de Mineria y Energia):Karen Poniachik Pollak
 39歳。1987年:チリ・カトリック大学大学院(ジャーナリズム修士)卒業、1990年:ニューヨーク・コロンビア大学で国際関係博士号取得、1990-1995年:ECO/Televisa国際政治分析官、ニューズウィーク誌セミナー調査官、国連ラジオ・レポーター、チリ-アメリカ商工会議所会頭、1997-1998年:アメリカサミット・チリ顧問、1995-2000年:米州評議会企業プログラムディレクター、2000-2006年:チリ外国投資委員会執行副委員長(委員長は大統領)を歴任。2005年には日智経済委員会女性団長として日本を訪問した。チリ大蔵省、外務省及び民間企業の相談役を務めたこともある。所属政党なし。
鉱業次官(Subsecretaria de Mineria):Marisol Aravena Puelma
 42歳。チリ大学卒業の弁護士。2000-2002年:国家警察軍社会保障部門弁護士。2005年:鉱業次官アドバイザーとして近隣諸国、特にアルゼンチンとの各種委員会に参加。前職は社会保障省次官。社会民主党党員。

(2) CODELCO(チリ銅公社)
 国営化した大型銅鉱山経営のため1974年に設立された国営企業で世界最大の銅生産を誇る。経営審議会(取締役会)と執行役員会からなる。経営審議会は7名からなり、鉱業エネルギー大臣が会長を努め、その他大蔵大臣、エンジニア、経済学者、将校、CODELCO管理職組合代表、同労働組合代表がなることになっている(CODELCOの組織は金属資源レポート2006年1月号を参照)。総裁はBachelet大統領が推薦したArellono氏を経営審議会が任命した。副総裁以下の執行役員は当面Villarzu総裁時代の役員が残留。総裁は全業務掌握後に副総裁人事を行うと発表している。

総 裁(Presidente):Jose Pablo Arellano
 54歳。チリ・カトリック大学経済学部を卒業後、ハーバード大学で経済学博士号を取得。世銀、米州銀行、IMF、国連のコンサルタントを経て、1990-1996年:大蔵省予算局長、1996-2000年:文部大臣、直前はチリ財団理事長の他、国営テレビ会社取締役及び国営銀行取締役等を歴任。キリスト教民主党党員。
経営審議会(取締役会)
会長:Poniachik鉱業エネルギー大臣
委員:Andres大蔵大臣、Nicolas Majluf(エンジニア)、Jorge Bande(経済学者)、Eduaredo Gordon(国家警察軍将校)、Jorge Candia(CODELCO管理職組合代表)、Raimundoo Espinoza(CODELCO労働組合代表)。なおJorge Bande氏はCODELCO開発部門部長、Nicolas Majluf氏はCODELCO役員を務めたことがある。

(3) ENAMI(チリ鉱山公社)
 中小鉱山振興を目的とする。総裁は鉱業エネルギー大臣が兼務。
 副総裁(Vicepresidente Ejectivo):Oscar Landerretche Gacitua
 57歳。チリ大学経済学部を卒業後、オックスフォード大学で経済政治学博士号取得。1996-1998年:経済エネルギー省次官、1998-2000年:CNE(国家エネルギー委員会)委員長、2003-2006年3月:CORFO(経済開発公社)副総裁、2000-2003年:チリ21世紀経済プログラム基金代表及びSEP(公営企業審議会)副総裁を歴任。社会党党員。
 
(4) COCHILCO(チリ銅委員会)
 政府に対する鉱業政策アドバイス、CODELCO及びENAMIの監督、外国投資監視、鉱業関連情報提供を主要業務とする。総裁は鉱業エネルギー大臣が兼務。
 副総裁(Vicepresidente Ejectivo):Eduardo Titelman
 53歳。ハーバード大学政治学部修士、パリ大学経済学部DEA。前職はサンティアゴ大学政治学部教授。経済・鉱業・エネルギー大臣アドバイザー、鉱業大臣アドバイザーグループ代表、COCHILCO企画部長、イスラエル国立銀行調査員を歴任。民主主義のための政党党員。
 
(5) SERNAGEOMIN(国家地質・鉱業サービス局)
 地質情報サービス、鉱業権許認可、鉱山保安監督を担当とする。
 局長(Director):Patricio Cartagena
 41歳。チリ・カトリック大学法学部卒で弁護士の資格を持つ。Atacama大学大学院修士課程で鉱業法を専攻。1996年-1997年:SERNAGEOMINの主席弁護士、この間に鉱物、探鉱、エネルギー開発グループのチリ代表、南北アメリカ大陸鉱業大臣会議のチリ代表を歴任後、1997-2000年:COCHILCOの検査官(副総裁に次ぐ地位)、2000-2006年3月:COCHILCO副総裁、その間2001-2005年国際銅研究会議長を歴任。キリスト教民主党党員。なおPoniachik鉱業エネルギー大臣は、Cartagena氏の選任について、COCHILCOでの組織近代化の手腕をSERNEGEOMIN改革に活かしてもらうためとコメントしている。
 
(6) CIMM(チリ鉱山冶金研究所)
 鉱山及び製錬に関する科学技術的研究、特に1998年からは金属の環境への影響に関する研究を主体とする。9名の外部有識者(鉱業次官、CODELCO、MIDEPLAN、CORFO、COCHILCO、ENAMI、IMCH、CONICYT、弁護士)からなる理事会会長は鉱業次官が勤める。
 所長(Executive Manager):Sergio Villegas
 57歳。チリ大学卒。ヘルシンキ大学で経済学博士号取得。前職はCIMM総務財務部長。1987-1989年国連開発計画シニア顧問、1990-1995年Aysen鉱山会社部長、2000-2003年:農牧畜産会社総務財務部長、2003-2004年:労働省社会保険庁総務財務部長を歴任。上記幹部の中では唯一内部昇格者。社会民主党党員。
 

3. 今回の鉱業関連組織改正の評価

 Bachelet大統領は、閣僚は若手と女性を多く登用するという選挙前公約のとおり、20名の閣僚のうち女性が10名を占め、50歳以下の若手が10名となった。次官についても31名のうち15名を女性が占め、また大臣と同じ政党からの重複を避け、与党連合内のバランスが図られた。鉱業エネルギー省では、大臣、次官ともに若手女性が占めることになった。旧鉱業省と旧経済エネルギー省のエネルギー部門が統合され鉱業エネルギー省となったことで、ENAP(チリ石油公社)、CCHEN(チリ核エネルギー委員会)は旧鉱業省傘下であるが、国家エネルギー委員会他のエネルギー部門が旧経済エネルギー省傘下にあるというちぐはぐな状態が是正された。またチリの抱えるエネルギー問題とりわけ主要産業である銅鉱業発展に不可欠な新たな電力確保のため必要なエネルギー資源開発を重視して行こうという意図と思われる。
 鉱業関連組織幹部のうち、SERNAGEOMINのCartagena局長及びCOCHILCOのTitleman副総裁以外は、他分野での行政経験は豊富であるが鉱業行政あるいは鉱業実務経験が乏しいことがやや懸念される。部長クラスの人事はトップによる業務内容の掌握後となる見込みで暫く時間がかかることが予想されている。
 -チリ鉱業は現在銅価格高騰により活況を呈しているが、電力問題、鉱山用水問題、環境問題、CODELCO民営化問題、下請け労働者問題等将来の銅鉱業に大きな影響を及ぼす重要課題を抱えている。新体制による世界最大の産銅国のチリの鉱業行政が注目される。

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