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報告書&レポート

2006年6月15日 サンティアゴ事務所 平井浩二 e-mail:hirai-koji@jogmec.go.jp
2006年38号

第5回世界銅コンファレンス報告

 4月5日、6日の2日間、チリ・サンティアゴ市において第5回世界銅コンファレンス(World Copper Conference)が開催された。本コンファレンスは、イギリスのCRU社が毎年サンティアゴで開催しており、チリ、南米を中心に世界各国から政府機関、鉱山会社、研究所、大学などの鉱業関係者350人が参加し、銅鉱業に関する様々な話題について講演が行われた。今回のコンファレンスでは、銅価格の高騰による影響、銅生産コスト高問題、持続可能な鉱山開発、スクラップ需要の増大、中国の銅産業の現状、産銅鉱山会社の事業紹介等、多岐に亘るテーマが取り上げられた。そのなかの幾つかの話題を紹介する。

1. 銅価格の高騰と生産コストの増大

 CRU StrategiesのRicardo Morales氏は、「Structural increases in costs and how this drives long term prices」というタイトルで銅鉱業における最近のコスト高の要因と長期的な銅価格のトレンドについて講演。
 過去50年(1955~2005)の間、銅価格は年1.5%の割合で下落しているが、最近の銅価格の高騰は、需要の増加だけでなく生産コストの上昇によるものであり、半世紀続いた銅価格の下降トレンドに変化をもたらす可能性があると説明。
 エネルギーコストの上昇、スチール価格の高騰による鉱業機械価格の上昇、外注費の増加、タイヤ、火薬等の材料費の増加、技術を有する労働者の不足による労働コストの上昇、産銅国におけるロイヤルティの新設・増加により数年前から生産コストが急激に上昇している。また、クオリティーの高い(品位・埋蔵量・アクセス・選鉱成績等が良好な)鉱床の減少により新規プロジェクトの開発コストが上昇している。一方、開発・生産コストを大幅に下げる革新的な技術開発は当面期待できず、これらの要素を総合すると銅価格の長期的なトレンドが上昇に転じた可能性が否定できないと強調した。
 
 チリ・Catolica大学教授のJohn Tilton氏は「Short-run versus long-run trend in copper price」というタイトルで銅価格の今後の見通しについて講演。現在、銅価格は高騰を続けているが、1970年からの長期的な価格のトレンドは下降している。今後の銅価格を予測する上で長期トレンドがこれまでの下降から上昇に転じたかどうかを検討することが重要であると主張した。
 中国の需要の増加に対し供給が追いつかないため(鉱山開発までのタイムラグにより、短期的に銅生産量を増加させることは困難なため)、銅価格の短期的なトレンドは上昇している。これに対し長期トレンドは需要の増減より開発・生産コストに左右されると説明。1970年~2002年は新技術の開発や機器の大型化により開発・生産コストが減少したため長期トレンドが下降したと語った。
 この数年の急激な銅価格の高騰及び環境コストを含む生産コストの増加を理由に銅価格の長期トレンドが上昇に転じたとする意見があるが、生産コストの増加は銅価格高騰の結果、投資競争が行われ、労働力及び資源が不足したためであり、短期的な現象であると主張した。
 また、環境コストの増加についても、20年前から環境規制は強化されてきており、その間も生産コストは低下していると反論。今後の長期トレンドを予測するには、現在開発準備中の多くのMarginal Deposit(開発境界域にある鉱床)の生産コスト及び新技術の開発によるコスト低減化の可能性を考慮することが重要であると強調した。
 
 Rio Tinto社銅探査部門の最高取締役のTom Albanese氏は、「Copper : running out of resources or hard to mine?」というタイトルで講演。
 Rio Tinto社が信頼できる情報に基づき作成したデータベースによれば、現在操業中の鉱山の銅埋蔵量(reserves)は300百万t、銅資源量(resources)は200百万tで探鉱プロジェクトの埋蔵量及び資源量は500百万tである。これに対し世界の銅消費量は年間約15百万tであり、1990年以降、西側世界は150百万tの銅を生産したが、この間操業鉱山の埋蔵鉱量は60百万t増加しており、銅の枯渇の可能性は低いと主張した。
 また、鉱体の深部化、低品位鉱の処理に伴う選鉱の複雑化、環境保全費用の増加により、キャピタルコストの上昇と開発期間の長期化が避けられないと指摘した。
 さらに現在の銅価格高騰の原因となっている中国の需要の増加について触れるとともに、世界が中国に注目している中で、その第1の追従者であり、中国と同程度の人口と成長率を有するインドの動向にも注意を払うべきであると強調した。
 

2. 持続可能な鉱山開発

 Antamina鉱山社長のGerald Wolfe氏は、「Antamina : successfully operating in Peru」というタイトルでAntamina鉱山の概要、ペルーの輸出入額、インフレ率、カントリーリスクについて述べるとともに同鉱山が社会的責任を果たすために実施している取り組みについて講演。
 Antamina鉱山は社会的責任を果たすために、(1) 法律の遵守、特定の政治支援及び汚職の禁止、差別・ハラスメントの禁止により行動規律を厳守すること、(2) 従業員のスキルアップ、管理者と従業員のコミュニケーションの強化、安全性を第一とする文化の構築(従業員の家族を含む)により従業員の安全を確保し人権を尊重すること、(3) 国際的な環境管理システムを導入し、環境責任を果たすこと、(4) 地域住民を支援することを行っている。特に地域住民への支援のため、生活の質の改善、教育・公共医療サービスの充実、社会資本の整備と文化の保存を行っており、これまで38.2百万$を投資したと語った。
 また、地域住民との良好な関係を維持するためにもっとも重要なことは、地域のコミュニティーに予算を配分することではなく、住民に仕事を与えることであり、適当な仕事が無い場合は、橋や道路の整備、学校・病院の改修等、住民が従事できる小さな仕事を作ることが、最も難しくかつ最も効果的なことであると強調した。
 
 BHP Billiton Base Metalsの最高執行責任者Mike Anglin氏は、「BHP Billiton mining and sustainability」というタイトルで講演。
 同社の環境マネージメントシステムについて説明するとともに、持続可能な開発のための取り組みの事例として、チリ・Escondida鉱山の貧困地区に設立したFoundation School、ペルー・Tintaya鉱山での地域コミュニティーへの貢献、コロンビア・Cerro Matoso鉱山での4.4百万$投資した社会経済発展のための基金、南アフリカ、モザンビークでのHIV及びマラリヤ医療について紹介した。

3. 銅リサイクル

 Diehl Metall Stiftung社のLothar Krumbugel取締役は、「Scrap -ever-growing surface mine」というタイトルで銅及び銅合金スクラップの重要性について講演。
 現在、中国による積極的なスクラップの購入により、スクラップ在庫が極端に低下している。スクラップのリサイクルはPrimary Metalの生産に比べ、消費エネルギーが低い利点がある。鉱業において1tの銅を生産するためには、約200tの鉱石が必要であるが、スクラップのリサイクルでは、わずか14tのスクラップから1tの銅を再生産することができるとして、その重要性を強調した。
 また、いくつかの銅及び銅合金製品は代替品の使用が可能で、現在の銅価格の高騰が長期間続けば、多くの製品が代替品に変わる可能性があると指摘した。
 
講演タイトルと講演者
 ・ Impact of the Price Euphoria
  Marcelo Awad, Chief Executive Officer, Antofagasta Minerals S.A.
 ・ Antamina: Successfully Operating in Peru
  Gerald Wolfe, President & CEO, Compania Minera Antamina S.A.
 ・ The LME: A Unique Challenge
 Simon Heale, Chief Executive Officer, The London Metal Exchange
 ・ New Issues for Exchanges
 John Hanemann, Vice Chairman, COMEX Division New York Mercantile
 Exchange
 ・ Molybdenum – Boom and Beyond
 Tony Warwick-Ching, Principal Consultant, Special Steels, CRU
 ・ Short-Run versus Long-Run Trends in Copper Prices
 John Tilton, Pontificia Universidad Catolica de Chile & Colorado School of Mines
 ・ Structural Increases in Costs and How This Drives Long Term Prices
  Ricardo Morales, Senior Consultant, CRU Strategies
 ・ Chinese Copper Industry-Review and Prospect
 Wang Chiwei, Executive Director and Deputy General Manager, Jiangxi Copper
 ・ Back to Basics – The nexus between costs and long term prices is still fundamental to investment decisions
 Charlie Sartain, Chief Executive, Xstrata Copper
 ・ BHP Billiton – Mining & Sustainability
  Mike Anglin, Vice President Operations & COO, BHP Billiton, Base Metals
 ・ Copper – Are we running out, or is it just getting harder to mine?
 Tom Albanese, Chief Executive, Copper and Exploration, Rio Tinto plc
 ・ Grasberg
  Richard C. Adkerson, President & CEO, Freeport McMoRan Copper & Gold inc.
 ・ Oxiana – Copper Growth in Asia
 Owen Hegarty, Managing Director, Oxiana Limited
 ・ Managing and Taking Advantage of Risk – An IFC Perspective
  Clive Armstrong, Lead Economist, International Financial Corporation
 ・ Winning the Game of Risk
  Ben Cattaneo, Practice Leader-Mining and Metals, Controls Risk Group
 ・ An Overview of the World Market for Copper and Copper Alloy(“Brass Mill”) Products
  Jon Barnes, Principal Consultant, Copper CRU
 ・ Scrap – The Ever-Growing Surface Mine
  Lothar Krumbugel, Member of the Board, Diehl Metall Stiftung & Co. KG
 ・ Madeco – Returning from the Brink of an International Crisis
 -  Tiberio Dall’Olio, CEO, Madeco
 
 コンファレンス資料
  なお講演で使われたスライド(CD-ROM)が最近配布されたので金属資源情報センターに保管しています。

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