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報告書&レポート

2006年8月17日 シドニー事務所 久保田博志 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2006年57号

オーストラリア、活発化するウラン探鉱投資セミナー-「AusIMM Uranium Conference Tour,Australian Uranium Conference 2006」より-

 オーストラリアでは、中国・インドの将来のウラン需要拡大予想と価格の上昇、地球温暖化対策の観点から化石燃料の代替エネルギーとしての期待などから、近年、ウラン探鉱が活発化している。この動きに呼応して、国内各地で「ウラン探鉱投資セミナー」が開催されている。
 本稿では、オーストラリア国内で開催されているウラン探鉱投資セミナーの状況を報告する。

1. はじめに

 オーストラリアでは、近年、ウラン探鉱が活発化している動きに呼応して、国内各地で「ウラン探鉱投資セミナー」が開催されている。7月10日~12日には、「AusIMM Uranium Conference」と同セミナー主催の「Beberelyウラン鉱山現地見学会」が、7月25日~26日には、「Australian Uranium Conference 2006」が実施され、8月24日には、「6th International Mining Geology Congress」主催の「Rangerウラン鉱山現地見学会」予定されている。
 本稿では、オーストラリア国内で開催されているウラン探鉱投資セミナーの状況を報告する。
 

2. 「Australian Uranium Conference 2006」(7月25日、26日)

(1) セミナー参加者にみる中国の積極的な動き
 セミナーの参加者数は約400人、そのうち中国関係者は、本国からは政府関係者(China Atomic Energy Authority)、政府系企業(China National Nuclear Corporation:CNNC)、各省の企業等(江西省核工業地質局:Jangxi Nuclear Industry Geological Bureau、広東原子力発電:Guandong Nuclear Power Corporation)、大学(南京大学:Nanjing University)、貿易・ボーリング等の私企業のほか、オーストラリア国内の鉱山コンサルタント会社(役員は元中国政府関係者)などから20数名が参加し(2005年は数名以下)、同国のオーストラリアのウラン資源に対する関心の高さを示していた。
 中国は、CNNCがセミナーのスポンサーのひとつとして参加したほか、在ワシントンDC中国大使館勤務経験のある政府原子力担当者が流暢な英語で、中国の原子力開発が国際ルールに沿った平和利用であること、国際協力のもと高い技術力と安全性を強調していた。講演の殆どが将来の中国のウラン需要の伸びに言及し、また、会場のいたるところで中国関係者の姿が見え、「中国-オーストラリア ウラン・セミナー」の様相を呈していた。
 
(2) オーストラリアにおけるウラン資源
 オーストラリアの2005年のウラン生産は、11,217t U3O8(Ranger 5,910t U3O8、Olympic Dam 4,335t U3O8、Beverely 977t U3O8)で、カナダの13,712t U3O8に次いで世界第2位、米国、日本、EU、韓国、カナダなど12か国に輸出されている。資源量は、価格40US$/kgUでは716,000tUで、全世界ウラン資源量の36%を占め(全世界のウラン資源量の26%はOlympic Dam鉱山が占める)、同80US$/kgUでは732,000tUと見積もられている。
 ウラン鉱床タイプは、全世界的には不整合タイプ、砂岩タイプが多数を占めるが、オーストラリアでは、約85のウラン鉱床のうち、Ⅰ.IOCGタイプ(Olympic Dam、Prominent Hill鉱床)が全体の70を占め、Ⅱ. 不整合タイプ(ロールフロントタイプ、Ranger鉱床)が同19%、Ⅲ. 砂岩タイプ(古河川タイプ、Beverely、Hanymoon鉱床などIn-situによる現位置回収)が同4.4%、Ⅳ. カルクリート・タイプ(地表付近での風化作用による鉱化)同3.5%となっている。IOCGタイプはオーストラリアが世界のほぼ全てを占めている。
 (Aden Mckay, Geoscience Australia講演“Australian’s Uranium Deposits & Resources Global Context”より
 
(3) ウラン探鉱ジュニアの出現
 セミナー参加者の多くは、「探鉱ジュニア・カンパニー」と呼ばれる中小規模の探鉱を専門とする企業であるが、そのなかには、従来からウラン資源探査を中心に実施してきた企業のほかに、ここ1~2年の間に新たに設立された企業が多く含まれている。これらの企業はそれまでウランとその他の鉱種(ベースメタルや金など)を探査していた探鉱ジュニア・カンパニーがウラン探鉱プロジェクト(ウラン資産)を本体から分離して設立した場合が多い。
 ウラン資産を分離することのメリットを、近日中にウラン探鉱新会社を分離する予定の企業関係者は、「Ⅰ. ウラン探鉱は、探鉱方法、鉱石処理方法、地域社会や投資家を含めた一般社会の受け止め方などがその他の鉱種と異なるため、ウラン探鉱にとってもその他鉱種の探鉱にとっても企業として都合がいい。Ⅱ.ウラン探鉱ブームで、新規株式募集・上場することで資金調達が容易にできる」などと説明してくれた。
 2006年2月に誕生したToro Energy Limited社(本社アデレード、以下Toro社)の場合、探鉱ジュニア・カンパニーのMinotaur Exploration社と中堅産銅・金企業のOxiana社がそれぞれのウラン資産を統合し、新たにウランの探鉱ジュニア・カンパニーとしてToro社を設立(両者がそれぞれ株式24.74%を保有、その他株式50.52%はBHP Billiton社など少数株主)している。
 なお、Minotaur Exploration社は、Minotaur Resources社が有望鉱床Prominent Hill銅・金鉱床(南オーストラリア州)を発見した後、Oxiana社に買収される際に探鉱部門が独立したもの。このように探査ジュニア・カンパニーはプロジェクトの発展とともに企業売却・分割・設立等を繰り返し「進化」(生き残り)していくと言えよう。

(4) ウラン資源開発と原子力利用の議論
 7月24日の労働党Kim Beazley党首の「反ウラン鉱山政策の転換」を強く示唆する発言の翌日、労働党影の連邦政府一次産業資源林業観光大臣であるMartin Ferguson氏は、本セミナーで講演、Kim Beazley党首の発言を支持する姿勢を示し、「オーストラリアの国益と温暖化防止の観点からウラン輸出の拡大、新規ウラン鉱山開発は必要であること、一方で、ウラン関係施設での労働者の安全が第一である」、「ウラン輸出の拡大には核不拡散が大原則であり、労働党は、80年代の冷戦下に3ウラン鉱山政策を採った時から、ウラン輸出の拡大(新規鉱山開発を含む)を認めることを強く示唆した党首の発言に至っても、その基本方針に変化はない」と、労働党の方針の「一貫性」と大義名分を唱えた。
 ウラン鉱山開発は推進の方向で定まりつつあるが、議論は、連邦政府によるオーストラリア国内への原子力発電の導入、ウラン濃縮・再処理、核廃棄物の処分計画にまで広がっている。これらの問題については、ウラン鉱山開発ほどにその方向性は見出せていない。

3. Beverelyウラン鉱山現地見学会(7月12日)

(1) 見学会参加者にみるウラン探鉱・開発への関心度
 現地見学会の参加者は、約20名。中国(Bureau of Geology, CNNC)より5名、Ranger鉱山(北部準州)を操業するERA社(ダーウィン)とその親会社Rio Tinto社(メルボルン)、同鉱山のある北部準州政府ウラン資源担当者、北部準州等でウラン探鉱を実施するジュニア企業、地質コンサルタント、投資顧問会社などであった。
 
(2) Beverelyウラン鉱山とは、
 Beverelyウラン鉱山は、南オーストラリア州東部、アデレードから約500km北北東に位置する。同鉱山は、オーストラリアで最初のインシチューリーチング(In Situ Leaching: ISL)で、生産規模は年間1,000t U3O8で国内第3位の規模、資源量は11,667,000t、1.8% U3O8
 操業は、Heathgate Resources社(ASX非上場企業)が行っている。同社は、米国General Atomics社の「子会社」で、General Atomics社は軍需企業のGeneral Dynamics社から分離独立した企業。
 鉱床発見は、1969年、OTPグループ(Oilmin NL, Transoil NL, Petromin NL社)による。1982年にISL法による開発計画に係る環境影響調査(EIS)草案が作成されるが、1983年に労働党の3ウラン鉱山政策により、開発計画は中断した。1990年にHeathgate Resources社が権益を取得、その後、労働党から現在の連立与党に政権が移り、3ウラン鉱山政策が破棄されたことから、2000年より生産を開始した。
 ウラン鉱床は、古河川に沿って分布する堆積性鉱床の一種。ウランは周囲の花崗岩体から酸化環境のもとで抽出され、還元環境の場で堆積したとのモデル(古河川タイプとロールフロントタイプの折衷のようなモデル)が有力説。
 
(3) 生産プロセス
 生産プロセスは、井戸フィールドとプラント処理の2プロセスからなる。

  Ⅰ.井戸フィールド:砂岩層に含まれるウランを注入井から酸性溶液によって溶出、抽出井のポンプで汲み上げ、一時、貯水地に貯める(井戸フィールドは現在7区画。1区画当たり、注入井は約40か所、抽出井:注入井の比率=1:4)。
  Ⅱ.プラント処理:濃度調整を行い、抽出・沈殿プラントへ。ここでは、鉄系イオン交換樹脂を用いて、ウラン溶液を抽出し、沈殿・乾燥させてイエローケーキを製造。プラントは放射線量を管理する区域(入退時には放射線量の計測を行うなど)で、沈殿・乾燥は更に壁で囲まれている。製品はドラム缶(約200kg)に詰められ、一般のコンテナに収められ、トラック・鉄道により、アデレードへ輸送される。最終輸出先には日本も含まれる。

4. おわりに

 ウラン輸出の拡大を進めたい連邦政府に対し、新たなウラン鉱山の開発は認めないとする「反新ウラン鉱山方針」(旧労働党政権1980年代の「3ウラン鉱山政策」を継承したもの)を掲げていた労働党も方針転換の意向を表明し(7月24日、Kim Beazley労働党党首発言)、労働党が政権を握る各州政府もその方針に従うものと見られている。
 既に、ウラン鉱床探査を行う企業は、2003年の18社から2006年の約70社に急増し、また、BHP Billiton社のOlympic Dam鉱山は開発費用約50億A$で生産量を3倍にする拡張が計画されている。
 今、オーストラリアのウラン探鉱・開発現場は、ウラン鉱山開発の「解禁」の時を待って、沸騰寸前の状態と言えよう。
 
 参考文献
 Trade Topics, A Quarterly Review of Australia International Trade、Winter 2006
 The Australian Financial Review, July 14, 2006

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