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報告書&レポート

2006年10月12日 ロンドン事務所 高橋 健一 e-mail:takahashi@jogmec.org.uk
2006年73号

Mining Journal「Zinc Day」セミナー参加報告

 Mining Journal誌が主催する「20:20 Investor Series」と称されるセミナー・シリーズの一環として、「Zinc  Day」が、9月5日にロンドンで開催された。同シリーズは、主に欧州の投資家向けに、各金属、あるいは国ごとの テーマにより、年間4、5回程度、開催されている。個々のセミナーの共通テーマは、金属の需給・価格動向、各 国の鉱業法規、採鉱・生産動向、そして関連企業の事業内容・展望・投資ポテンシャルなどである。今回のセミ ナーでは、亜鉛にスポットを当て、需給・価格動向に関する講演が1件、探鉱企業による自社プロジェクトの概況 についての講演が8件行われた。自社プロジェクトに関する講演では、通常の鉱山開発案件に加えて、亜鉛の供給 面での不安が取りざたされる中、供給サイドの多様性も求められていることが反映されてか、閉山後の再開発プ ロジェクトや、鉄のリサイクルの過程で生じる粉塵から亜鉛を回収するプロジェクト、イギリスのウェールズに おける再始動プロジェクトなど、各種ユニークなプロジェクトについての紹介もなされた。
 以下、その概要を報告する。 

1.需給・価格動向に関する講演

「Zinc – Cinderella Turned Princess」
 -CHR Metals社(英)Ms. Claire Hassall, Co-Founder-
 
 世界のベース・メタル、特に鉛と亜鉛の市場動向に関する調査、コンサルティングなどを行っているCHR Metals社(英)による亜鉛産業、市場の展望に関する講演で、次の点にスポットを当てた内容であった。
 ・供給:業界・企業再編、その他の要素
 ・需要:中国へのシフト
 ・需給サイクル:現在の位置付け
 ・亜鉛価格:今後の価格予測
講演の概要は以下のとおり。
 
【亜鉛価格の上昇】
 まず、亜鉛と、その他のベース・メタルの価格動向についての分析が加えられた。
 LMEにおける2000年6月の価格を100として指標化すると、亜鉛の価格上昇は2005年12月より始まり、2006年6月には350超のピークをつけた。一般的に、価格を決定付ける主な要素、すなわち、産業成長率、在庫、ドル価格、投機資金のうち、2004年半ば以降、それまで皆無に等しかった投機資金が大幅に増加しており、この価格上昇の最大の要因は投機資金の資金流入であると分析することができる。
 
【供給面】
 亜鉛の生産市場の特徴として、次のような点があげられる。
 ・参入障壁が低いこと
 ・地域的な多様性/鉱床の小規模化傾向
 ・企業統合の欠如/主導的企業が少ないこと
 ・廃業にかかる費用(特に製錬所の閉鎖)が相対的に高いこと
 などがある。
 135の進行中の探鉱プロジェクトと、74の稼行鉱山を調査したところでは、亜鉛埋蔵量が100万t未満の鉱山が8割以上を占めており、このことは新規参入にかかる費用を相対的に低いものとして捉えることができる。一方、世界平均に比べ、中国の亜鉛鉱山の規模は、広く分散していると言えよう。亜鉛精鉱年間生産量でみると、1万以上2万t未満規模の鉱山での生産量がもっとも多く、当該規模鉱山の総生産量は2003年で60万t超であったが、2008年で120万t弱へと倍増すると予測される。
 中国以外では、鉱山のオーナーシップは統合傾向にあり、2003年には上位10社で38%を占めていたが、2006年には、41.8%へと寡占化が進んでいる。また、世界の主要企業では、亜鉛生産における総費用は低下傾向にある。
 
【中国の需要】
 中国の経済成長が世界の金属市場へ与える影響は、中国における純国内消費、及び輸出用工業製品に使用される需要。主な金属の消費量について、2000年から2005年の比較は以下のとおりであるが、中国の増加が際立っている。

金属
中国
その他の地域
アルミニウム
+3.6百万t
+2.9百万t
+1.9百万t
-0.3百万t
亜鉛
+1.5百万t
+0.2百万t
+0.8百万t
-0.3百万t

+6.4万t   

+9万t 
+150百万t 
 +30百万t

【需給サイクル】
 亜鉛需給・価格に関するサイクルは、現状、以下のように説明することができ、サイクル自体は依然として存在するが、現在のものは、過去のものとまったく同じという訳ではない。

 価格の回復と総費用の下落は、新しいプロジェクトの開始を促す。しかし、FSの完了や、認可取得、資金調達、施設の建設にはまだ時間がかかり、直ちに生産に反映されるわけではない。2007、2008、2009年に向けて、新しいプロジェクトが進行中だが、開発移行は遅れる可能性も高い。短期でみると、生産量の増加には限界がある。製錬所の稼働率も上昇しているが、新しい製錬所の計画や建設は、中国以外では進んでいないのが、現状であり、ここに供給サイドの時間的ギャップが生じている。
 
【価格予測】
 天然資源の供給量の低下傾向は、今後18~24か月間継続し、現在の価格水準も続くものと予測される。しかし、新しい鉱山開発が進むにつれて、供給面での不安は解消されていく。一方、亜鉛や他の金属の高価格は、生産機材、人材の獲得競争、又は労働争議の多発などをもたらし、生産に影響を与える懸念は残る。また、中国以外ではの亜鉛の製錬能力は、新たな製錬所の建設計画がなく、新規鉱山開発に伴う亜鉛精鉱生産量の増大に対応しきれないであろう。そのため、中国が、亜鉛精鉱の輸入量を急激に伸ばし、その後、再び亜鉛の輸出を開始することが予想される。
 講演の最後に示された同社の亜鉛需給、市場の予測は以下のとおりである。

亜鉛の需給バランスの推計

2. 亜鉛プロジェクトに関する講演

2-1. Union Resources 社(豪社、AIM、ASX上場)
 Mr. Rob Murdoch, Managing Director
 
 同社が実施するイラン南部のMehdiabad亜鉛、鉛、銀プロジェクトに関する講演である。プロジェクトの概要は以下のとおり。
 同プロジェクトは、現在までに、露天採掘場と選鉱施設建設についてのFSを完了している。プロジェクトは、イラン南部の都市Yazdから80km南東に位置しており、鉄道や、その他の利用可能な社会インフラに近接しているというメリットがある。FSにおける年産量は、亜鉛40万t、鉛10万t、銀700万ozである。現在、資金調達と鉱山開発に向けて準備を進めており、今後、バンカブルFSを行う予定。これまでのところ、総資本コストは16億US$と見込まれている。
 同プロジェクトは、同社とイラン政府、イラン企業ITOKの3者によるジョイント・ベンチャー(JV)によるもので、1999年にJV契約が結ばれた。出資比率は、当初、イラン政府が50%、Union Resources社とITOKが、それぞれ25%であった。探鉱の成果が出た2003年に、このJVプロジェクトは、プロジェクト企業であるMehdiabad ZincCompany(MZC)の管理下に移行された。Union Resources社は、発行済み株式と転換社債を合わせ、2006年3月時点でMZCに40%超出資しており、今後は、開発コストをより多く負担することにより、過半数の株式を取得する意向であるとしている。
 現在算定されている推定鉱石埋蔵量は、鉱床の上半部分のみであり、硫化鉱、酸化鉱合計で239百万t、品位は亜鉛3.7%、鉛1.1%、銀28g/t、酸化亜鉛と硫化亜鉛を同時に処理することのできる設備を導入し、亜鉛地金を生産するほか、他社向けの亜鉛精鉱も生産する。鉱山ライフは20年で、平均年産量は、亜鉛32万t、鉛9万t、銀700万ozの計画である。
 インフラについては、労働力の供給源は主に70km離れた都市Yadzからとなり、道路及び鉄道は採掘場から18km離れたTehran-Bandar Abbas線を利用することが可能である。また、電力は400Kvの送電線を敷設、鉱山用水はYadzからの供給に加え、地下水なども利用可能である。輸出は、鉄道を介し400km離れた港を使用する。
 採掘ライセンスは、25年ライセンスを取得済み(2005年11月発行)で、MZCへと移管される見通し。また、UnionResources社に対して、Foreign Investmentライセンスが発行されており、これまでの投資額に加え、さらに最大680百万US$が保護されるほか、最低でも75%の金属製品の輸出が許可される。また、配当、負債の返済なども海外での支払いが認められている。
 同プロジェクトのメリットは、世界的規模の鉱山が、12か月以内に採掘可能となる点、イラン政府からの支援(インフラ、低コストの燃料、労働力の提供、12年間の免税期間の付与、)がある点、採掘期間が長期20年(鉱床下部を含めた場合約40年とも予想されている)となる点、資金的に優良な案件(NPV1477百万US$)といった点である。 

2-2. ZincOx Resources社(英社、AIM上場)
 Mr. Andrew Woollett, Chairman
 
 鉱山開発プロジェクトに加え、リサイクル・プロジェクトを実施するZincOx Resources 社の講演である。概要は以下のとおり。
 同社のリサイクル・プロジェクトは、鉄くずから鉄を再生する際、電気アーク炉内に蓄積される「電気アーク炉ダスト」(EAFD:Electric Arc Furnace Dust)を対象とし、亜鉛や酸化亜鉛を抽出するものである。亜鉛メッキされた鉄くずを電気炉で溶解し、鉄を抽出した後のEAFDには、15~25%の亜鉛が含まれる。これは、平均的な亜鉛鉱石の3~5倍の含有量である。世界規模では年間3百万tのEAFDが排出されるが、そこには60万tの亜鉛が含まれると推定され、潜在的な需要が期待されている。同社のリサイクル関連プロジェクトにおいては、トルコのAliaga社(製鉄メーカー)プロジェクトとアメリカのBig River Zincプロジェクトの2つが進行しており、2007年に操業を開始する予定である。
 トルコのAliagaプロジェクトは、年間20万t産出されるEAFD(亜鉛品位22%)を対象とするもので、現在までにFSが完了している。FSの結果では、生産フェーズ1では、亜鉛年産2万t、資本コスト51百万US$、NPVが22百万£、IRRが21%となる。フェーズ2は、亜鉛年産3万tで資本コストは1.1百万US$上乗せされ、NPVが41百万£、IRRが26%と見込まれている。
 もう一つのリサイクル・プロジェクトは、アメリカのBig River Zincプロジェクトで、 現在操業中のBig River亜鉛製錬所(亜鉛年産10万t)を2007年5月にZincOx社が買収し、同社のアメリカにおけるEAFDリサイクル事業の拠点とするものである。当初の亜鉛年産量は、EAFDからのリサイクルのみで、3万tを計画している。現在、製錬所の買収価格の交渉中である。
 その他、同社が実施する鉱山プロジェクトとしては、イエメンのJabaliプロジェクト、及びカザフスタンShaimerdinプロジェクトが進行中である。イエメンのJabaliプロジェクトは、同社が60%権益を持ち、その他アングロ・アメリカン社など2社との間の共同プロジェクトである。現在までFSが完了し、鉱石埋蔵量9百万t、亜鉛品位9.2%が確認されており、開発資本コスト75百万US$、亜鉛年産7万tのプロジェクトである。カザフスタンShaimerdinプロジェクトは、これまで探鉱してきたが、Glencore社に売却する予定である。
 
2-3. Angus and Ross社(英社、AIM上場)
 Mr. Andrew Zemek
 
 グリーンランド西部にあるBlack Angel鉱山の再開発プロジェクトを進めているAngus and Ross社の講演である。概要は以下のとおり。
 Black Angel鉱山は、主に亜鉛と鉛を17年間採掘した後、1990年に閉鎖された。同鉱山跡には、187km2の範囲にわたって無数の坑道が残され、その中の1,000以上の坑柱には高品位の亜鉛(平均12%)が含まれている。同社では、坑柱中の80~95%が採掘可能であるとしている。本プロジェクトは、その坑柱の採掘を対象としたプロジェクトである。
 2006年1月に行われたFSでは、既存坑道だけを採掘するベース・ケースと、新たな坑道を加え採掘するインプルーブド・ケースの2つが算定された。ベース・ケースでは、亜鉛年産量69千t、鉛17千tで、鉱山ライフ4年、NPV109百万US$、IRR55%と試算されている。また、インプルーブド・ケースでは、年産量、亜鉛138千t、鉛33千tで、鉱山ライフ5年、NPVは336百万US$、IRRは109%と試算されている。2006年中に60か所で6,000~7,000m規模のボーリングを行う予定。
 同プロジェクトの利点は、過去の採掘データや人材が残されている点、活用可能な設備やインフラが残されている点であるとしている。

2-4. Anglesey Mining社(英社、LSE上場)
 Mr. Bill Hooley, Executive Director
 
 英国ウェールズ北部のParys Mountainプロジェクト(銅、鉛、亜鉛)を実施するAnglesey Mining社の講演である。プロジェクトの概要は以下のとおり。
 本プロジェクト・サイトは、古くは青銅器時代、また、近世では18~19世紀に採掘された歴史がある。現代に入ってからは、1960年以降、これまでに、延べ掘進長5万mのボーリング、地下300mの立坑掘削を始め、1,000mの坑道掘削による調査が行われ、1990年にFSまで完了したが、その後、金属価格の低迷により、開発計画は約15年間凍結されてきた。しかしながら、昨今の金属価格上昇に伴い、同プロジェクトは2005年に再開された。
 1990年のFS結果では、概測鉱物資源量2.25百万t、品位は、亜鉛6.72%、銅1.43%、鉛3.43%。加えて予測鉱物資源量4.2百万t、品位は、亜鉛4.62%、銅2.83%、鉛2.16%となっている。
 現在は、最新技術によるボーリング調査を実施するとともに、最終的なバンカブルFSを実施しているが、ここまでの見込みでは、開発資本コストは20~35百万£、資金調達後12~18か月の鉱山建設期間の後、開発へと移行する計画であるとしている。その他、本プロジェクトの諸リスクの点においては、開発地域の所有権及び開発許可も取得済みであり、地元政府の支持も得ているため、政治的リスクは皆無であるとしている。
 なお、補足として、同社は、LSE(London Stock Exchange)に上場しているものの、本プロジェクトの他に、鉄鉱石探鉱案件を保有しているのみであり、鉱山生産活動は実施していない。現在であれば、AIM上場というのが一般的であるが、本プロジェクトの開発が計画されていた時点、すなわち、1988年の同社設立当時は、AIMが存在しなかったため、LSE上場により、資金調達等を行ったものであるとしている。
 その他、Yukon Zinc社(加)、Kagara Zinc社(豪)、CBH Resources社(豪)、Pacifica Resources社(加)により、カナダ、豪州における亜鉛鉱山開発プロジェクトの講演が行われた。

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