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報告書&レポート

2006年10月26日 シドニー事務所 久保田博志、永井正博、研究スタッフ :Natalie J Barnes報告 e-mail:(久保田)kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp (永井)masahiro-nagai@jogmec.net
2006年79号

オーストラリアにおける資源外交

 近年、中国は首相をはじめとする政府首脳による資源確保を目的とした外交活動を、オーストラリアをはじめ、南太平洋諸国やアフリカなど全世界に渡って積極的に展開している。また、我が国も小泉前首相によるカザフスタン訪問が同国での本邦企業によるウラン開発の後押しをするなど、「資源外交」が注目されている。
 本稿は、オーストラリア連邦政府の「資源外交」に関する調査結果について報告する。

1. はじめに

 オーストラリアの鉱山関係企業は国内での探鉱・開発・生産だけではなく、大手鉱山会社による海外での鉱山経営や、ジュニア探査会社による周辺国やアフリカでの探鉱など海外での活動の場を広げている。これらオーストラリア企業の海外での鉱業活動は、他の先進諸国と同様に、各企業が独自に展開するもので、基本的に政府(連邦、州)は関与しない。
 しかし、最近の中国・インドへのウラン輸出交渉、石炭・天然ガスの輸出促進、オーストラリア企業の海外での鉱山開山式典への参加などに見られるように、主に鉱物資源輸出や海外でのオーストラリア企業の鉱業活動へのサポート的な関与も少なくない。
 

2. 調査対象

 オーストラリアの資源政策は連邦政府と州政府の双方が関わっている。即ち、個々のプロジェクトに関する探鉱権・採掘権の付与、鉱山保安などの権限は州政府に、環境問題や輸出等の外交関係に関する権限は連邦政府にあることから、資源に関する外交の状況を目的とした今回の調査対象は連邦政府とした。
 次に、連邦政府のうち、資源政策・外交に関わる主要閣僚である首相、副首相・貿易大臣、外務大臣、産業観光資源大臣、財務大臣を対象に、各大臣のWebサイトに掲載されている政府発表記事約10年間分(産業観光資源大臣は1年間)から資源外交に関わるものを検索し、必要に応じて当時の新聞記事、関連企業発表等の情報を参考に取りまとめた。
 (主要各大臣のWebサイト)

 首 相 http://www.pm.gov.au/news/media_releases/index.cfm
 副首相・貿易大臣 http://www.trademinister.gov.au/releases/index.html
 外務大臣 http://www.foreignminister.gov.au/releases/index.html
 産業観光資源大臣 http://minister.industry.gov.au/
 財務大臣 http://www.treasurer.gov.au/tsr/listdocs.asp?doctype=0

3. 調査結果

 オーストラリアは、先進国であり、かつ、資源輸出国であることから、資源外交は資源確保ではなく、主に、(1) オーストラリアの資源の輸出市場確保、(2) オーストラリア企業の海外での鉱業及び鉱業関連産業の活動支援等が主な目的となっている。
 鉱種は、石炭、天然ガス、ボーキサイト・アルミナ、鉄鉱石、銅などである。1990年代にはオーストラリア企業の海外での銅鉱山開発、2000年初頭には石炭輸出拡大、近年は天然ガスに関する交渉、民間契約の事前調整・支援が多い。対象国は、銅はチリ・ペルー、石炭はメキシコ・中国、天然ガスは、日本・韓国・中国・メキシコなどとなっている。そのほか、アルミニウム、ニッケル企業の輸出や現地生産などの支援がある。
 ウランに関しては、労働党政権の1996年までは3ウラン鉱山政策で輸出を制限し、自由党・国民党現政権では、中国、インドへの輸出交渉を行うなど政策は180度転換されている。ただし、現在までのところ、平和利用等の輸出の枠組みに関する取決めにとどまっている。今後、個々の契約が締結されるようであれば、立会などの形で直接的な関与があると思われる。
 過去に、貿易大臣を筆頭に官民による投資促進外交団が、チリ、イラン、中国などに派遣されている。
 基本的に「資源外交」は、海外で生産活動をする企業への支援で、ジュニア探査会社などへの直接的な関与は見られない。
 海外で生産拠点をもつオーストラリア企業ということで、結果的に多国籍企業であるBHP Billiton社が関係していることが多い。ただし、近年、Oxiana社のラオスでの契約調印式に首相が立ち会うなど中堅企業の例もある。

4. まとめ

 オーストラリアは、資源輸出国であり、資源輸出市場の確保との立場で政府が外交に関与している。この点は、供給元の確保が目的となる資源輸入国の中国や日本などとは大きく異なる。

表.オーストラリアの「資源外交」-連邦政府主要閣僚の動静から-

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