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報告書&レポート

2006年10月26日 リマ事務所 西川信康 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2006年80号

ペルーの銅鉱山開発プロジェクトの現状と銅鉱山生産動向-今後5年間で新規案件から80万t余りの銅精鉱が産出-

 ペルーの銅鉱山生産量は、この10年で約2.5倍に拡大し、現在では、チリ、米国、インドネシアに次ぐ世界第4位の産銅国となっている(2005年:101万t)。加えて、今後、5年以内に生産を開始する予定の新規中~大型銅鉱山開発プロジェクトも目白押しで、世界の銅市場が拡大傾向を強めている中、今後の進展次第では、近い将来、ペルーの産銅量は200万tを超え、チリに次ぐ世界第2位の産銅国に躍進することが期待されている。
 本稿では、これら今後開発の進展が注目されている新規中~大型銅鉱山開発プロジェクトの現状を紹介するとともに、ペルーの銅鉱山生産の動向について報告する。

1. 銅鉱山開発プロジェクトの概要と現状

 ペルーでは、主に、ペルー北部のカハマルカ県やピウラ県、南部のアプリマック県等を中心として、数多くの中~大型銅鉱床開発プロジェクトが存在する。ここでは、現地報道や各社ホームページ等から、それら開発プロジェクトの概要と現況について紹介する。
 
 (1) 今後5年以内(2011年まで)に生産開始予定のプロジェクト
 Ⅰ Cerro Corona
 ・位置:ペルー北部カハマルカ県カハマルカ市の北方約50km
 ・鉱業権者:Gold Fields(南ア)
 ・鉱量・品位:90百万t(proven and probable)、平均品位:銅0.52%、金0.98g/t
 ・調査状況:2005年5月より開発工事を開始し、現在実施中
 ・操業開始目標:2007年9月
 ・予想開発投資額:277百万$
 ・予想生産量:銅50千t/年(精鉱中)金8.7t/年(マインライフ:15年)
 
 Ⅱ Marcona
 ・位置:ペルー南部イカ県イカ市の南東方約170km
 ・鉱業権者:Chariot Resources(加)(70%)、Korea Resources(15%)、LG Nikko Copper(15%)
 ・鉱量、品位:218百万t(inferred)、銅0.8%、金0.12g/t
 ・調査状況:F/S実施中で、2007年内の開発工事着手予定
 ・操業開始目標:2009年
 ・予想開発投資額:248百万$(リーチング186百万$、精鉱62百万$)
 ・予想生産量:銅約100千t/年(精鉱+SX-EW)(マインライフ:13年)
 
 Ⅲ Toromocho
 ・位置:ペルー中部フニン県に位置。リマ市の東方約120km
 ・鉱業権者:Peru Copper(米)
 ・鉱量・品位:1,260.7百万t(Proven+Probable)銅0.53%、モリブデン0.018%、銀7.16g/t
 ・調査状況:現在、プレF/Sを実施中。2007年には、F/S開始を予定。
 ・操業開始目標:2009年
 ・予想開発投資額:1,500百万$
 ・予想生産量:銅273千t/年(精鉱中)、モリブデン5,390t/年(マインライフ:21年)
 
 Ⅳ Rio Blanco
 ・位置:ペルー北部ピウラ県ピウラ市の東方約150kmのエクアドル国境付近
 ・鉱業権者:Monterrico Metals(英)
 ・鉱量・品位:1,257百万t(Indicated+Inerred)、銅0.57%、モリブデン0.0228%
 ・調査状況:現在、バンカブルF/Sを実施中。2006年第4四半期に終了予定。
 ・操業開始目標:2010年
 ・予想開発投資額:914百万$
 ・予想生産量:銅210千t/年(精鉱中)、モリブデン2,450t/年(マインライフ:20年以上)
 
 Ⅴ Los Chancas
 ・位置:ペルー南部アプリマック県クスコ市の南西方約150km
 ・鉱業権者:Southern Copper Corp.
 ・鉱量・品位:200百万t(probable)、銅1.0%、モリブデン0.07%、金0,12g/t
 ・調査状況:現在F/S実施中。2006年後半に開発工事着手予定。
 ・操業開始目標:2009年
 ・予想開発投資額:500百万$
 ・予想生産量:銅約100千t/年(精鉱中)
 
 Ⅵ Magistral
 ・位置:ペルー北部アンカッシュ県トルヒージョ市の東方約150km
 ・鉱業権者:Inca Pacific(加)
 ・鉱量・品位:189百万t(measured, indicated and inferred)、銅0.51%、モリブデン0.02%
 ・調査状況:現在F/S実施中(2007年9月までに終了予定)。2008年3月までに環境影響調査の許可を取得し、その後開発工事に着手。
 ・操業開始目標:2010年第1四半期
 ・予想開発投資額:265百万$
 ・予想生産量:銅31千t/年(精鉱中)、モリブデン2,500t/年、銀50万oz/年(マインライフ:16年)
 
 Ⅶ Minas Conga
 ・位置:Cajamarca県カハマルカ市の北方約20km。世界最大の金山Yanacocha鉱山の北東部に隣接。
 ・鉱業権者:Newmont(51.35%)、Buenaventura(43.65%)、IFC 5%
 ・鉱量・品位:556百万t、銅0.26%、金0.66g/t
 ・調査状況:現在、F/Sを実施中。2007年末までに終了予定。
 ・操業開始目標:2011年
 ・予想開発投資額:1,000百万$
 ・予想生産量:銅70千t/年(精鉱中)、金18t/年(マインライフ:14年)
 
 (2) 主な中・長期的な開発プロジェクト
 Ⅰ Las Bambas
 ・位置:ペルー南部のアプリマック県コタバンバス郡の標高約4,500mに位置(クスコ市の南西約80km)。
 ・鉱業権者:Xstrata(スイス)
 ・鉱量・品位:300百万t(indicated and inferred)、銅1.1%
 ・調査状況:現在、鋭意、精密探鉱中。2006年度は、10万mのボーリングを計画。
 ・操業開始目標:2015年
 ・予想開発投資額:1,000百万$以上
 ・予想生産量:約200千t/年(精鉱中)(マインライフ:20年~30年)
 
 Ⅱ La Granja
 ・位置:ペルー北西部のカハマルカ県チョタ郡の標高2,000~2,500mに位置(カハマルカ市の北西約100km)。
 ・鉱業権者:Rio Tinto
 ・鉱量・品位:12億t、銅0.65%、金(0.05~0.1g/t)
 ・調査状況:2005年12月、Rio Tintoが政府入札により、22百万$で開発オプション権を取得。3年以内(2年延長可能)にF/S調査終了し、開発オプション権を行使するか否かを決定。
 本鉱床は、ヒ素の含有率が比較的高いことを特徴としており、これが開発に向けた大きな技術課題となっている。
 
 
 Ⅲ El Galeno
 ・位置:ペルー北部・カハマルカ県
 ・鉱業権者:Northern Peru Copper社(加)
 ・鉱量、品位:鉱量(indicated)504百万t(銅品位0.71%、カットオフ品位0.4%)、特に地表付近の高品位部では、鉱量148百万t(銅品位0.98%、カットオフ品位0.8%)
 ・調査状況:2006年4月プレF/S開始。内部収益率(IRR)は銅価1.2$/lbで21.7%
 ・予想開発投資額:853百万$
 ・予想生産量:銅144千t/年(最初の5年間は200千t/年)、金43千oz/年、モリブデン1.9千t/年(マインライフ:20年)
 
 Ⅳ Quellaveco
 ・位置:ペルー南部モケグア県
 ・鉱業権者Anglo American80%、IFC 20%
 ・鉱量・品位:947百万t(Cu 0.65%, Mo 0.019%)。うち、富化帯213百万t(Cu 0.94%)
 ・調査状況:2006年Anglo Americanは、市況が回復したことを受け、2000年に実施したQuellaveco銅プロジェクトのF/S結果を見直し、操業に向けて検討を進めていくことを表明。
 ・予想開発投資額:10億$。
 ・予算生産量:銅20万t/年。
 
 Ⅴ Michiquillay
 ・位置:ペルー北部のカハマルカ県に属し、県庁所在地カハマルカ市の東北東47km、標高3,000m~3,600m。
 ・鉱業権者:ペルー政府(Centromin Peru)
 ・鉱量・品位:鉱量は544百万t、平均銅品位0.69%、金品位0.1~0.5g/t
 ・調査状況:過去にAsarco及び日本企業等が探鉱、経済評価を実施。2006年12月15日に、国際入札を実施予定
 
 Ⅵ Tambo Grande
 ・位置:ペルー北部ピウラ県
 ・鉱業権者:ペルー政府(Centromin)
 ・鉱量・品位:176百万t(Au 0.76g/t, Ag 22.8g/t, Cu 0.93%, Zn 0.92%)
 ・調査状況:当初より開発地域住民の移転問題、農作物(特にペルーで有数のレモン産地)への汚染懸念から地元に強い開発反対運動が頻繁に発生。
 ・2003年12月、政府はManhattan社との開発オプション契約を、資格審査要件を満たさないことを理由に一方的に破棄。なお、それまでに同社の投じた資金は60百万$とされる。
 ・ペルー政府は、2007年以降の国際入札を検討中。
 

2. 今後の銅生産見通し

 図は、ペルーにおける2010年までの銅生産量の推移を予想したものである。なお、現在操業中の鉱山については、国際銅研究会資料(Directory of Copper Mines and Plants June 2006)を引用し、開発案件については、ここで紹介したデータを活用して作成した。なお、開発案件の開始時期は年単位で発表されているものが多いため、開始年の正確な生産量は把握することはできない。ここでは、年初からフル生産するという仮定で計算した。従って、この生産量の数字は上限値であることに留意いただきたい。
 図に示すように、2009年及び2010年に新規鉱山の立ち上げが相次ぐことが予想されるため、2010年には、ペルーの産銅能力が現在の年産100万tから200万t近くまで倍増する可能性がある。もちろん、これら開発プロジェクトが額面通り、進展していく保証はないが、仮にいくつかのプロジェクトで生産開始が数年遅れたとしても、2011年以降に立ち上がる可能性のあるプロジェクトも多数控えており、それらと併せ、2010年代前半には、200万tの大台に乗る可能性は高いものと見られる。
 

図 ペルー銅鉱山生産見通し
図 ペルー銅鉱山生産見通し

 また、特筆すべきは、ペルーの新規銅鉱山開発プロジェクトの多くは銅精鉱を生産するプロジェクトであるという点で、SX-EW法による銅地金生産を具体的に計画しているのは、Marconaの一部のみである。現在ペルーには、銅製錬所の拡張計画や新設計画に具体的なものはなく、このため、ペルーの銅精鉱供給国としての世界的なポジションは、今後一層高まり、特に、今後、自山鉱比率の向上を目指す我が国を始め、製錬能力の拡大が予想される中国、インド等との関係が一層深まっていくものと見られる。
 

3.今後の開発計画を巡る不安定要因

 ペルーでは、今後、10年間に、ここで紹介した13件の銅鉱山開発プロジェクトのうち、その多くが生産に至る可能性がある。しかしながら、その実現には、今後の探鉱成果・F/S結果の推移や金属価格の動きに加え、ペルーの鉱業法制度の安定化及び地元住民問題といったペルー固有の内的要因に大きく左右されるものと見られる。
 金属価格については、現在の異常な高値は継続する可能性は低いものの、世界の銅市場は、中国を中心としたBRICs諸国の経済発展等により、今後も拡大基調にあり、従って、当面大きな下落はないとの見方が一般的である。また、ペルーの鉱業法制度については、少なくとも、現ガルシア政権は、法の安定性を保障し、外資導入を促進させていくとの立場を強調し、今後5年間で10億$の投資が見込まれることを表明している。
 一方、ペルーでは、環境汚染の懸念や地元への利益還元を求めた地元住民による抗議デモが後を絶たず、一部で鉱山の操業が一時的に停止するケースや企業が撤退するなど好調な投資にブレーキをかける動きが顕在化しており、これが今後の鉱山開発を巡る最大の不安定要因であると言える。ここで紹介したプロジェクトの中にも表に示すような争議によってプロジェクトの遅延や凍結などが生じている。ペルー政府はこうした争議の沈静化を図るために、積極的な調停を行って足元で起こっている争議の迅速な解決に意欲的に取り組んでおり、最近では、Cerro Verde鉱山やYanacocha鉱山など一部で成果も出始めている。しかしながら、これら争議発生の根底には地域の貧困問題、格差問題があり、政府は地域住民に対し長期的なビジョンを示すとともに、それに向けた確実な実行が求められている。現在、政府は、カノン税、鉱業ロイヤルティ、さらに新たに企業側と合意した自発的拠出金等、最近の記録的な企業の高収益で潤沢にあるこれら資金を、地方の貧困対策や環境対策等に効果的かつ迅速に運用できるシステム作りを目指しているとされる。今後こうした政府、鉱山会社の具体的な取り組みの成果が地域社会、地域住民にいかに浸透していくかが、ペルーの持続的な鉱業発展に向けて重要なポイントになろう。

表 銅鉱山開発プロジェクトの主な争議

プロジェクト名

争 議 の 内 容

Rio Blanco

2005年6月、周辺河川の環境汚染を理由に発生した地元コーヒー栽培農家らによる反鉱山開発運動で一時、調査活動が停止。

Minas Conga

隣接するYanacocha鉱山では2000年の水銀汚染問題が発端となり、環境汚染や利益還元を求めた抗議デモが断続的に発生。本地区でも地元Sorochuco村の一部住民による鉱山反対運動が発生

Las Bambas

地元Cotabamba農民連合による環境汚染を懸念した反鉱山開発運動が顕在化。また、Xstrataが拠出する地元対策費を住民管理による信託基金にするよう求める動きがある。

Quellaveco

地元農民との間に水利権問題が発生し、2000年以降、凍結状態。

Michiquillay

2006年、一部地元住民グループによる調査地域のキャンプ襲撃事件が発生するも首謀者の逮捕に至っていない。

Tambo Grande

開発地域住民の移転問題、農作物(特にペルーで有数のレモン産地)への汚染懸念から地元に強い開発反対運動が頻繁に発生。2003年に政府は所有企業との契約を破棄。

5. おわりに

 以上、ペルーは、今後世界の銅需要の増加分を吸収する有力な産銅国の一つになるものと期待されており、こうした世界的な要求の確実な達成に向けて、ここで紹介した開発プロジェクトの調査の技術的な進展と併せ、地元住民問題解決の行方を見守っていく必要がある。
  なお、本報告の詳細については、11月下旬発行予定の「金属資源レポート11月号」に掲載予定であるので、こちらもご参照いただきたい。

ペルーの主要銅鉱山及び探鉱開発プロジェクト位置図

 

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